「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」について

本プログラムが貢献しうる「持続可能な開発目標(SDGs)」

Sustainable Development Goals
目標1:貧困をなくそう
目標2:飢餓をゼロに
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標4:質の高い教育をみんなに
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標6:安全な水とトイレを世界中に
目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
目標8:働きがいも 経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10:人や国の不平等をなくそう
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標12:つくる責任 つかう責任
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう
目標16:平和と公正をすべての人に
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

RISTEXのSDGsに関する取り組みについてはこちらをご覧下さい。

 RISTEXは、平成23年度から客観的根拠(エビデンス)に基づく政策形成の実現をテーマにした「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」を設定し、活動を推進しています。

 本研究開発プログラムは、文部科学省の「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』」推進事業(「SciREX事業」)の一環として実施しています。

本プログラムの詳細サイトは下記よりご覧ください。

プログラム総括

山縣 然太朗

山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座 教授

 人口減少と少子高齢化が進み、加えて厳しい財政状況にあるなかで、社会が持続可能性を維持していくためには、科学的な知見に基づいて政策を策定することで効果的にイノベーションを促していくことが重要です。しかし、近年、科学技術や研究開発のあり方に向けられる視線には厳しいものがあります。多額の研究開発費が投じられているにもかかわらず、社会に存在する様々な問題の解決に貢献できていないのではないかという批判です。

たしかに、科学技術をめぐるこれまでの政策のあり方をみると、必ずしも十分な根拠がないなかで政策の立案や決定がなされるケースも少なからずみられました。また、研究開発を通じて、せっかく優れた知見が得られたにもかかわらず、それを有効に活用することができないばかりに、社会的な課題の解決に具体的に結びつけられていない例も見受けられます。

その原因は、科学技術イノベーションを促すための政策形成のあり方それ自身について必ずしも客観的根拠に基づいた明確な方法が存在していないことによるといえるでしょう。

このプログラムは、こうした状況を改善するために、様々な社会的な問題の解決やイノベーションの促進に向けて、科学的な知見をどのようにして具体的な政策形成に結びつけていくのか、そのための方法論や手法の開発を目指すものです。

このプログラムが対象とする研究開発は実に多岐にわたります。社会の変化のありようそのものをとらえ、適応策を探索するための研究であったり、基礎的な研究の成果を政策や社会へと実装するための手法、既存の資源を有効に活用することを通じて効果的な政策形成に結びつけていくためのアプローチ、研究開発テーマのデザインやマネジメントのあり方、研究開発投資の経済や社会に対するインパクトを測定する方法、といった幅広いテーマが対象となります。同時に、そうした客観的根拠に基づく政策形成に向けた効果的な研究体制のあり方や、それを社会において推進するためのコミュニケーションのあり方についての工夫そのものも、斬新なアイディアに基づく提案を期待するところです。

「科学技術イノベーション政策のための科学の深化」と「客観的根拠に基づく政策形成プロセスの進化」に資する知見の創出を目指す柔軟かつ大胆な提案を期待しています。

プログラムの目的

 客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成に寄与するため、SciREX事業「重点課題2016」に基づき、新たな指標や手法等の開発や制度設計のための研究開発を公募により推進します。本プログラムの実施を通じて、政策形成の実践に将来的につながりうる、新たな発想に基づく研究開発成果の創出を目指します。

 上記の目的のために、研究開発プロジェクトを公募し、

  • 現実の政策形成に活用しうる新たな解析手法やモデル分析、データ体系化ツール、指標等の研究開発を推進します。
  • 幅広い分野と関連する学際的分野で、関与する研究者の層を広げます。あわせて、その活動状況を社会へ広く発信し対話の場を作り、コミュニティ・ネットワークの拡大を図ります。

(参考 SciREX事業「重点課題2016」https://www.jst.go.jp/pr/info/info1230/sankou1.html

研究開発カテゴリー

 本プログラムでは、以下の4つの観点からの研究開発プロジェクト(横断的・包括的に取り組むものも含む)を推進します。国や地方公共団体の政策形成プロセス、および大学・シンクタンク・企業・NPO・市民など幅広い主体における政策形成の実践に将来的につながりうる研究開発を対象とします。

  1. 政策形成に資するエビデンスの創出やその利活用のあり方を考える上で有意義であり、特に、政策のための科学としての新たな発想に基づく指標や手法の開発、制度設計に資する方法論の提案等、オリジナリティのあるもの。
  2. SciREX事業において文部科学省が定める「重点課題」に基づく政策形成の実践に将来的に資する研究開発。
  3. 「科学技術イノベーション政策のための科学の深化」および「客観的根拠に基づく政策形成プロセスの進化」という観点からみて、提案する研究開発プロジェクトの位置づけやリサーチ・クエスチョンが明確である研究開発。
  4. 研究開発プロジェクトを通じて創出しようとする成果が、将来的に「誰に、何を」与えるのか(どのように寄与しうるのか)が具体的に構想されている研究開発。

参考: SciREX事業「重点課題2016」の一覧

A.科学技術イノベーション政策の実効性の確保と基盤強化

  • 重点課題A-① 政策のインパクト評価
    (重点取組分野:政策の経済的影響の分析に関する手法・指標の開発)
  • 重点課題A-② 政策マネジメントシステム
    (重点取組分野:政策のPDCAの確立のための指標・手法開発)
  • 重点課題A-③ パブリックセクターにおけるイノベーションシステム
    (重点取組分野:パブリックセクターの機能強化のための制度設計)
  • 重点課題A-④ 国家的課題への迅速・戦略的な対応
    (重点取組分野:国家的課題に対応した政策シナリオ等の作成手法の開発)
  • 重点課題A-⑤ 政策形成プロセスの改善
    (重点取組分野:共創的な政策形成プロセスの構築に向けた手法開発)

B.政策の柱(個別政策課題)への対応

  • 重点課題B-① 超スマート社会と科学技術イノベーション政策
    (重点取組分野:先端技術の研究開発実施と社会実装に向けた制度設計)
  • 重点課題B-② 少子高齢化社会と科学技術イノベーション政策
    (重点取組分野:少子高齢化社会に向けた医療・健康ビッグデータの利活用手法の開発)
  • 重点課題B-③ 地方創生と科学技術イノベーション政策
    (重点取組分野:地域イノベーション政策の政策形成立案支援ツール手法開発)
  • 重点課題B-④ オープンイノベーション政策と産学連携
    (重点取組分野:大学・研究機関における産学連携の役割等に関する制度設計)

プログラムの評価

中間評価

活動報告書 評価報告書

事後評価

活動報告書 評価報告書
(掲載予定) (掲載予定)

研究開発プロジェクト

【第3期】

2022年度採択

通常枠

政策形成過程における科学的知見の活用最大化のための中間人材の可能性について ―成育医療・母子保健領域を事例とした分析と実証―
千先 園子
(国立成育医療研究センター こどもシンクタンク 副室長/こころの診療部 医員)
新興感染症に対する非特異的対策のための行動変容と科学コミュニケーションに関する合理化および最適化研究
西浦 博
(京都大学 大学院医学研究科 教授)
原子燃料サイクル政策の受容に対する熟議的アプローチ:感情と技術の作用機序に着目して
林 嶺那
(法政大学 法学部政治学科 教授)

共進化枠:行政組織内部において「政策課題」として認識されている具体的な課題群の解決に向けた研究開発を推進する枠組み。

スポーツ参加の促進要因の探索と支援政策の評価研究 - 国・自治体・個人レベルの重層的アプローチ
近藤 克則
(千葉大学 予防医学センター 教授)

2021年度採択

通常枠

デジタルツイン都市を活用した危機管理下での政策決定支援
佐々木 邦明
(早稲田大学創造理工学部社会環境工学科 教授)
木質バイオマス熱エネルギーと地域通貨の活用による環境循環と社会共生に向けた政策提案
豊田 知世
(島根県立大学地域政策学部 准教授)
感染症対策と経済活動に関する統合的分析
仲田 泰祐
(東京大学経済学研究科 准教授)
幼児教育の「質」が子供の学力や非認知能力に与える効果の検証
中室 牧子
(慶應義塾大学総合政策学部 教授)

共進化枠:行政組織内部において「政策課題」として認識されている具体的な課題群の解決に向けた研究開発を推進する枠組み。

大学発シーズの上市に関わる価値連鎖診断プロトコルの開発と実装
坂井 貴行
(神戸大学バリュースクール 教授)
ライフサイエンスにおける誠実さの概念を共有するための指針の構築
田中 智之
(京都薬科大学病態薬科学系薬理学分野 教授)
研究分野の多様性を踏まえた研究公正規範の明確化と共有
中村 征樹
(大阪大学全学教育推進機構 教授)

【第2期】

政策形成の実践に将来的につながりうる新しい発想に基づく研究開発成果の創出を目指し、SciREX事業における重点課題に基づいた新たな指標や手法の開発と制度設計のための研究開発を推進。

令和2年度採択

研究公正推進政策のための電子ラボノート実装ガイドライン作成を通したガバナンス研究
飯室 聡
(国際医療福祉大学未来研究支援センター 教授)
医療情報化推進に向けた課題解明と2020年代における政策基軸の形成
奥村 貴史
(北見工業大学工学部 教授)
農林業生産と環境保全を両立する政策の推進に向けた合意形成手法の開発と実践
香坂 玲
(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
生態系サービスの見える化による住民参加型制度の実現可能性評価と政策形成過程への貢献
乃田 啓吾
(東京大学農学生命科学研究科 准教授)
シビックテックを目指した気候変動の「自分事化」に基づくオンライン合意形成手法の開発と政策形成プロセスへの実装
馬場 健司
(東京都市大学環境学部 教授)

平成31/令和元年度採択

科学的エビデンスに基づく社会インフラのマネジメント政策形成プロセスの研究
貝戸 清之
(大阪大学大学院工学研究科 准教授)
市民科学とパーソナルデータを基盤とした発達障害支援の臨床の知の共財化
熊 仁美
(特定非営利活動法人 ADDS 共同代表)
※令和4年4月に「オープンサイエンスに基づく発達障害支援の臨床の知の体系化を通じた科学技術イノベーション政策のための提言」から名称変更しました。
研究力の「厚み」分析による社会インパクトの予測と政策評価手法の開発
小泉 周
(自然科学研究機構新分野創成センター 特任教授)
脱炭素社会の構築に向けた科学技術イノベーションの社会的受容性と価値創造の評価
高嶋 隆太
(東京理科大学理工学部 教授)
イノベーションを支えるデータ倫理規範の形成
横野 恵
(早稲田大学社会科学部 准教授)

平成30年度採択

子どもの貧困対策のための自治体調査オープンデータ化手法の研究
阿部 彩
(東京都立大学人文社会学部 教授)
病床の減床と都市空間の再編による健康イノベーション
伊藤 由希子
(津田塾大学総合政策学部 教授)
医学・医療のためのICTを用いたエビデンス創出コモンズの形成と政策への応用
加藤 和人
(大阪大学大学院医学系研究科 教授)
家族を支援し少子化に対応する社会システム構築のための行動科学的根拠に基づく政策提言
黒田 公美
(理化学研究所脳神経科学研究センター親和性社会行動研究チーム チームリーダー)

平成29年度採択

レジリエンス強化のための省エネルギー機器導入制度設計
上道 茜
(早稲田大学理工学術院 准教授)
先端医療のレギュレーションのためのメタシステムアプローチ
加納 信吾
(東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
スター・サイエンティストと日本のイノベーション
牧 兼充
(早稲田大学大学院経営管理研究科 准教授)
多様なイノベーションを支える女子生徒数物系進学要因分析
横山 広美
(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 教授)

平成28年度採択

政策過程におけるエビデンス記述・解釈に関する調査研究
梶川 裕矢
(東京工業大学環境・社会理工学院 教授)
先端生命科学を促進する先駆的ELSIアプローチ
三成 寿作
(京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門 特定准助教)
コストの観点からみた再生医療普及のための学際的リサーチ
八代 嘉美
(神奈川県立保健福祉大学 イノベーション政策研究センター 教授)

【第1期】

客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成に中長期的に寄与することを目指し、現実の政策形成に活用しうる新たな解析手法やモデル分析、データ体系化ツール、指標等の研究開発を推進。

平成26年度採択

通常枠:エビデンスを与えるうえで有意義であり、かつ、政策のための科学として新規性や独自性を追求する提案

国際特許出願・審査過程と関連した審査品質ベンチマークの開発
和田 哲夫
(学習院大学経済学部経営学科 教授)

特別枠:特定の社会的課題の解決を対象とし、科学技術の研究成果を社会で生かす仕組みや政策・制度の形成段階の議論までを含む研究開発。

製品ライフサイクルに立脚した環境影響評価基盤の構築と社会実装によるグリーン購入の推進
伊坪 徳宏
(東京都市大学環境学部 教授)
医療の質の地域格差是正に向けたエビデンスに基づく政策形成の推進
今中 雄一
(京都大学大学院医学研究科 教授)
感染症対策における数理モデルを活用した政策形成プロセスの実現
西浦 博
(北海道大学大学院医学研究科 教授)
生活空間の高度リスクマネジメントのためのエビデンス情報基盤構築
三上 喜貴
(長岡技術科学大学安全安心社会研究センター センター長・教授)

平成25年度採択

通常枠:エビデンスを与えるうえで有意義であり、かつ、政策のための科学として新規性や独自性を追求する提案

イノベーション実現のための情報工学を用いたアクションリサーチ
梶川 裕矢
(東京工業大学環境・社会理工学院 准教授)

特別枠:特定の社会的課題の解決を対象とし、科学技術の研究成果を社会で生かす仕組みや政策・制度の形成段階の議論までを含む研究開発。

環境政策に対する衛星観測の効果の定量的・客観的評価手法の検討
笠井 康子
(国立研究開発法人情報通信研究機構 テラヘルツ研究センター 上席研究員)
先端医療を対象とした規制・技術標準整備のための政策シミュレーション
加納 信吾
(東京大学大学院新領域創成科学研究科 准教授)
市民生活・社会活動の安全確保政策のためのレジリエンス分析
古田 一雄
(東京大学大学院工学系研究科レジリエンス工学研究センター センター長・教授)

平成24年度採択

STIに向けた政策プロセスへの関心層別関与フレーム設計
加納 圭
(滋賀大学大学院教育学研究科准教授/京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) 特任准教授)
地域科学技術政策を支援する事例ベース推論システムの開発
永田 晃也
(九州大学科学技術イノベーション政策教育研究センター センター長・教授)
科学技術イノベーション政策の経済成長分析・評価
楡井 誠
(一橋大学大学院商学研究科イノベーション研究センター 准教授)
リソースロジスティクスの可視化に立脚したイノベーション戦略策定支援
松八重 一代
(東北大学大学院工学研究科 准教授)
イノベーション政策に資する公共財としての水資源保全とエネルギー利用に関する研究
天野 良彦
(信州大学工学部 教授)※平成25年6月~
村山 研一
(信州大学人文学部 教授)※平成24年10月~平成25年5月

平成23年度採択

電力分野のイノベーションと研究開発ネットワークに係わる評価手法の開発
秋山 太郎
(横浜国立大学成長戦略研究センター 副センター長・教授)
ファンディングプログラムの運営に資する科学計量学
調 麻佐志
(東京工業大学大学院理工学研究科 准教授)
科学技術への社会的期待の可視化・定量化手法の開発
玉村 雅敏
(慶應義塾大学総合政策学部 准教授)
イノベーションの科学的源泉とその経済効果の研究
長岡 貞男
(一橋大学大学院商学研究科イノベーション研究センター 教授)
共同事実確認手法を活用した政策形成過程の検討と実装
松浦 正浩
(東京大学公共政策大学院 特任准教授)
未来産業創造にむかうイノベーション戦略の研究
山口 栄一
(京都大学大学院総合生存学館 教授)

プロジェクト企画調査

(構想は優れているものの研究開発プロジェクトとして実施するためにはさらなる具体化が必要と判断されたものについて、年度内で企画を具体化するための調査を行うこととしたもの。)

平成25年度採択

学際連携・異分野融合の設計・推進・評価手法の事例検証
仙石 慎太郎
(京都大学物質-細胞統合システム拠点特定拠点 准教授)
医療健康情報の一元化と社会実装に向けた基盤研究
中山 健夫
(京都大学大学院医学研究科 教授)

平成24年度採択

医療介護システム等協創の科学技術イノベーション政策のための企画調査
今中 雄一
(京都大学大学院医学研究科 教授)
情報工学を用いた研究開発課題の設計支援手法の開発
梶川 裕矢
(東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科 准教授)

平成23年度採択

イノベーション創出に向けた「科学技術への潜在的関心層」のニーズ発掘
加納 圭
(京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)科学コミュニケーショングループ 特定拠点助教)
科学技術イノベーション政策のマクロ経済評価体系に関する調査
楡井 誠
(一橋大学イノベーション研究センター 准教授)

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