プロジェクト紹介

原子燃料サイクル政策の受容に対する熟議的アプローチ:感情と技術の作用機序に着目して

研究代表者

研究代表者:林 嶺那
林 嶺那
法政大学 法学部政治学科 教授

プロジェクトの目標

本研究開発は、熟議的アプローチに基づくエビデンスベースの原子燃料サイクル政策の推進を大きな目的とする。具体的には、政策体系の全体を射程においたマクロな構造、科学技術の受容に関わる人々の感情も考慮したミクロレベルの判断過程、そうした人々の判断において熟議を通じて示される動態に関し、科学的なエビデンスを創出する。そうした知見を基礎に政策担当者や事業者等のステークホルダーとのコミュニケーションを図り、フィードバックを得るだけではなく、政策ニーズの掘り起こしも行う。こうしたコミュニケーションを通じてエビデンスの創出と政策案の改善の好循環を機能させ、より良質な政策提言と社会的な実装を目指す。

プロジェクトの概要

本プロジェクトは、自然科学と社会科学の融合的なアプローチに基づきエビデンスの創出を担う活動と、そうしたエビデンスを基礎に国内外の実務家や研究者と連携を深めつつ政策実装を目指す活動に大きく分かれる。前者は、(a)社会科学グループ、(b)自然科学グループが担い、後者は(c)政策実装グループが担う。

前者のエビデンス創出は、大きく3つのステージに分かれる。第一のステージは、原子燃料サイクル政策に関わるシナリオの検討である。まず自然科学グループが担当し、原子力工学の革新技術を用いた原子燃料サイクルオプションの検討を行う。並行して、社会科学グループは政策実装グループとも協働しつつ、海外を中心とした原子燃料サイクル政策の分析を行う。さらに原子燃料サイクル政策を、エネルギー政策、原子力政策、安全保障政策、科学技術政策の中でどのように位置づけられることができるのか、また日本においてはどういった扱いがなされてきたのか、に関する分析を行う。

第二ステージでは、コンジョイント実験を用いて各オプションの諸特徴を人々がどのように認識しているのかを解明する。一般市民がオプションを評価する際にどの要素を重視するかを明らかにでき、機械学習と組み合わせることで、ありうるオプションの中での選好順位を知ることもできる。実験前に異なる情報を与えて回答者の感情や認知を操作し、例えば感情が受容の程度や評価軸に与える影響も検証する。

第三ステージでは、コンジョイント実験を通じて得られた実証的知見を基礎に、自治体DXでも注目されている「市民参加型プラットフォーム」を構築し、熟議が人々の認識に与える影響を分析する。具体的には、オンライン上で一般市民が原子燃料サイクル技術について討議するミニパブリックスという社会実験を実施する。

第二・第三ステージにおける実証を踏まえ、政策オプションの検討と改善を繰り返す。こうして、原子燃料サイクルシナリオ全体を射程においた効果的な合意形成に関する制度設計が提案できる。

政策実装グループは、(c-1)実務家とのネットワーク強化構築や対外的発信、(c-2)日本における原子燃料サイクル政策に関する議論の経緯と現状の解明、(c-3)ライフサイクルモデルの構築、(c-4)政策提案の取りまとめ、という4つの実施項目を通じて、日本における原子燃料サイクル政策の文脈を的確に理解した上で、社会科学グループや自然科学グループが創出したエビデンスを政策に結びつける取組みを展開する。


プロジェクトイメージ

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