【開催報告】第23回SciREXセミナー 『いま、あらためて日本のレジリエンスを考える ~もう想定外とは言わせない~』

開催日:2018年(平成30年)3月12日
会場:霞ヶ関ナレッジスクエア エキスパート倶楽部

RISTEXの『科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム』は、2018年2月23日、同プログラムのプロジェクト成果を発信するサイト『POLICY DOOR』をオープンしました。第一回の公開記事『もう想定外とは言わせない』は、「市民生活・社会活動の安全確保政策のためのレジリエンス分析」プロジェクトの成果紹介です。
今回のSciREXセミナーでは、研究代表者の古田一雄先生をお招きし、研究開発内容を解説していただきました。

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霞ヶ関、文科省のすぐお隣にある小さなレストランが、セミナーの会場です。お仕事の帰りに立ち寄っていただけるよう、SciREXセミナー はいつも夕刻にスタートします。
入口から中を覗けば、セミナーにしては柔らかく、居心地のいい雰囲気が。チャタム・ハウスルールなので、ココだけの本音や、ぶっちゃけた質問も歓迎?

インフラの「相互依存性」に注目した
生々しい復旧シミュレーション

古田PJが手掛けたのは、具体的には、首都直下型地震が発生した際にインフラが受ける被害や回復過程のシミュレーションです。発災時のダメージから、回復、復旧までの経過を追い、レジリエンス強化に必要な要素までを分析・予測していきます。
災害のタイムラインに沿って画像が切り替わるレジリエンスマップは他でも目にしたことがありますが、このシミュレーションはとりわけ生々しく感じます。特徴は、複数のインフラとサービスの関わり合い、「相互依存性」に着目していること。たとえば道路が壊れたら発電に使う燃料も運べなくなるし、仕事に行く交通手段もなくなる、という具合ですね。インフラだけでなく生活者の観点も取り入れての分析は、他に類をみません。
市民生活や企業活動は、どこでどう停止し、どこからどんなふうに復旧するのか。「そこに住んでいる自分、家族」がリアルに重なります。

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森田朗プログラム総括からの紹介ののち、講評が始まりました。熱心にメモを取られるかた、資料をはさんで隣の席と小声で何か遣り取りを始めるかた。研究内容への大きな期待を感じます。

目標は「オールハザード」型の危機管理政策の支援
エビデンスベースドなツールとして、さらに精度を上げたい!

質疑応答の時間には、全国展開を期待するご意見や、より精度を高めるためのリクエストを、会場からいただきました。精度に関しては、インフラを対象にした研究であるがゆえの弱点もあります。セキュリティ上非公開のデータも多く、たとえば上水道管の位置は、道路から推定するしかなく、よりリアルなデータをどのように収集し精度を高めていけるかが今後の大きな課題となります。
とはいえ、このツールは最終的には、現場の緻密な防災対策を講じるためではなく、自治体や政府における災害対策の立案などの危機管理政策の策定する際の「エビデンス/根拠」としてご活用いただくことを目指しています。発災によるインフラの被害と復旧を、複合的に、かつ生活者視点で見える化する手法は、リアルでわかりやすいだけでなく、地震、津波、台風、テロなどさまざまな種類・規模の災害に対応できます。「地震のとき」「台風のとき」と個別の被害想定を行うのではなく、あらゆる災害に対する柔軟な対応を可能とする「オールハザード」という考えかたですが、英米に比べて日本の遅れの目立つ部分だそうです。

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関係府省から、大学、研究機関まで、43名においでいただきました。お若いかたからご年配のかたまで、参加者の幅広さが印象的でした。

開催日の3月12日は、東日本大震災の翌日です。7年前のこの日、福島第一原発1号機が爆発した映像が、日本中に流れました。安全神話の崩壊とともに、データや統計・分析、評価指標といったエビデンスに基づく政策形成が注目され始めています。
オールハザード型の危機管理政策には、国家レベルで取り組む必要があります。ご参加いただいた皆さま、今回のセミナーの内容を、周囲にもお伝えいただけたらうれしいです!

(文責:RISTEX広報)

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