プロジェクト紹介

感染症対策と経済活動に関する統合的分析

研究代表者

研究代表者:仲田 泰祐
仲田 泰祐
東京大学経済学研究科 准教授

プロジェクトの目標

本プロジェクトの主たる目標は、リアルタイムの政策分析に利用できる感染抑制と経済活動の統合的シミュレーションモデルを開発することである。その上で開発されたモデルをわかりやすく記述し、政策現場で使いやすいコードを提供したり、政策立案に関わる人々にワークショップ等を通じてモデル分析の応用例を解説し、次にパンデミックが発生した際、迅速にEBPMに基づく政策を実行できるよう準備する。

さらに、モデルを拡張し、ワクチンの最適配分戦略や、コロナショックが各産業に与えた影響、都道府県別の感染抑制に対する経済コストの定量化、GoToキャンペーンの効果等の事後検証を行い、将来に向けた改善点を追究する。事後検証の結果は広く一般の市民にも発信し、将来起こりうる危機に対して議論の幅を広げるべく努力していく。

プロジェクトの概要

2020年から広がった新型コロナウイルスの世界的パンデミックは日本国内にも大きな影響を及ぼした。年間GDPは約5%下落し、対人産業を中心として失業者も増加した。本研究では感染症と経済活動を統合的に考えるモデルを構築し、両者の関係性を定量化した上で長期的な見通しや、最適政策を追究する。本研究の主たる目的は「政策分析に活用できる透明性のあるモデルを構築し、過去のデータからパラメーターを精緻に推定し、妥当性のある感染症と経済活動のシミュレーションを提示する」ことである。そして政策立案者や広く国民に政策メニューとモデル分析から得られる新たな気づきを提供することを目指す。感染症対策では様々な政策が考えられるが、各政策がどのように感染症を抑制し、どれくらいの経済損失を出すかをメニューとして提示することは政策立案プロセスで非常に重要であり、人々の将来に対する不安の低減にも寄与する可能性がある。ベースラインとなる感染症と経済のモデルは疫学で標準的なSIRモデルに人流の要素を加え、それが経済活動と連動すると設定する。さらに基本モデルを拡張して、ワクチンの効果やグループターゲット政策(例えば高齢者のみの移動制限)を分析することができる。またワクチン供給が制限されている中での最適配分戦略も追究することができる。経済への影響という観点からは、月次の生産や労働データを使い、新型コロナウイルスが各産業の需要と供給に与えたショックを推定する。その上で特定産業を対象とした需要喚起策の効果を推定し、コロナ禍での経済政策の事後検証を行う。


プロジェクトイメージ

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