事業概要
現在の地球環境が抱える課題は、今や全人類的な問題です。その解決には各国の連携が不可欠であり、また、科学界、産業界、行政、市民団体など多様なステークホルダーとの協働による新しい取り組みが必要とされています。
このような認識の下、2012年のRIO+20の機会に、国際科学会議(ICSU)を中心として「フューチャー・アース(Future Earth)」構想が提唱され、2015年より本格的に始動しました。フューチャー・アースとは、これまでの地球環境研究の国際プログラム(Global Environmental Change Programmes : GEC)の統合と、持続可能な社会に関する研究(Sustainable Development Goals : SDGs)の2つの流れをくみつつ、グローバルな持続可能社会の構築を目指して地球環境変化に伴う様々なリスクに立ち向かう、10年計画の国際的な地球環境研究プログラムです。
フューチャー・アースでは、自然科学と人文・社会科学が強く連携すること、また、研究成果の直接・間接的なステークホルダー(国際機関、各国の中央及び地方政府、研究助成機関、国際協力・開発援助機関、産業界、市民社会、メディア等)との協働に基づく研究のCo-Design、Co-production、Co-Deliveryによる知の共創、すなわち「トランスディシプリナリー(Trans-Disciplinary)研究(超学際研究)」の重要性をうたっています。
政府においても、環境科学技術に関する研究開発は、ステークホルダーとCo-Designし、社会実装へとつなげるイニシアティブを推進することとし、そのために必要な科学的知見、技術、人材、システム等の基盤を構築する方向で検討するとされています。
RISTEXでは、日本におけるフューチャー・アースの取組みの一環として平成26年度に「フューチャー・アース構想の推進事業」を立ち上げ、令和元年まで研究公募を実施しました。
この事業では、トランスディシプリナリー研究(超学際研究)を推進しました。具体的には、研究者と社会の多様なステークホルダーが、共に取り組むべき課題を抽出して、その課題の解決をめざして協働で研究開発を実施しました。そして、そこで得られた成果は、他地域での実装・展開、情報発信等により普及を図ると共に、トランスディシプリナリー研究の方法論の発展にも貢献しました。
令和2年度からは、JSTが研究費配分機関として、今後さらに日本のTD研究を推進していくためのエビデンスを得るための調査活動を実施しています(詳しくは、「トランスディシプリナリー研究(TD研究)の動向調査」のページをご覧ください)。また、令和4年には初の試みとして、メタバース(oVice)上での同窓会を実施しました。
採択プロジェクト
日本が取り組むべき国際的優先テーマの抽出及び研究開発のデザインに関する調査研究
持続可能な地球環境研究に関して、日本の"強み"を活かし、アジア及び世界においてイニシアティブを発揮できる国際的優先テーマ群を探索し、トランスディシプリナリー研究の方法論に関わる調査研究を行いました。その成果として、Japan Strategic Research Agenda (JSRA)2016をまとめました。
課題名 | 「フューチャー・アース:日本が取り組むべき国際的優先テーマの抽出及び研究開発のデザインに関する調査研究」 |
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研究代表者 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構 総合地球環境学研究所 研究推進戦略センター Future Earth推進室 谷口 真人 教授 |
調査研究の概要 | フューチャー・アース(以下、FE)に関する日本及びアジアの課題と日本の地球環境学研究の現状と動向について、客観的なエビデンスに基づいて収集・調査する。また、日本の強みとトランスディシプリナリー研究の適応性を判断するための評価軸を検討し設定する。これらを用いて、日本が世界においてイニシアティブを発揮できるテーマ群と、TD研究として取り組むべきテーマ群を抽出し、さらに日本及びアジアにおける研究成果として波及効果が高いと思われるテーマ群の抽出も行う。課題の収集・抽出及び評価軸の設定においては、自然科学、人文・社会科学の研究者に加え、社会各層のステークホルダーとの協働を通して取り組む。そのため、これまで構築してきたFEに関する国内外の関係機関・組織等との連携体制を生かすとともに、関連するステークホルダー等とのネットワークの構築や、国内及びアジア地域のプラットフォームの形成に取り組む。 |
関連URL | フューチャー・アース構想の推進事業:日本が取り組むべき国際的優先テーマの抽出及び研究開発のデザインに関する調査研究 |
調査研究報告書 | 初年度 | 平成26年度調査研究報告書 |
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2年度 | 平成27年度調査研究報告書 | |
成果報告書 | 成果報告書 | |
終了報告書 | 終了報告書 | |
成果物一覧(リンク) | 成果物一覧(リンク) | |
事後評価報告書 | 事後評価報告書 |
課題解決に向けたトランスディシプリナリー研究
平成26年度から27年度にかけて、トランスディシプリナリー研究(以下、TD研究)として推進すべき研究開発の可能性調査(Feasibility Study. FS)を、Phase1(研究課題の設計)及びPhase2(研究企画の試行)の2段階で実施してきました。平成28年度から令和元年度にかけては、すでに可能性調査を実施したプロジェクトを対象とし、可能性調査を通じて得られた研究開発課題(リサーチアジェンダ)と構築された実施体制に基づいたTD研究のCo–Productionの実践に取り組みました。
平成29年度開始(課題解決に向けたTD研究)
- 貧困条件下の自然資源管理のための社会的弱者との協働によるトランスディシプリナリー研究
佐藤 哲(愛媛大学 社会共創学部 教授)
研究開発実施報告書 | 初年度 | (平成29年度)初年度研究開発実施報告書 |
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2年度 | (平成30年度)2年度研究開発実施報告書 | |
成果報告書 | 成果報告書 | |
終了報告書 | 終了報告書 | |
事後評価報告書 | 事後評価報告書 |
貧困層に属する社会的弱者をパートナーとしたトランスディシプリナリー(TD)研究により、貧困層が直面する課題と彼(女)らが生業を通じて実践している内発的イノベーションを抽出し、貧困解消に役立つ知識・技術の協働生産と実装等を実施した。
平成28年度開始(課題解決に向けたTD研究)
- 環境・災害・健康・統治・人間科学の連携による問題解決型研究
矢原 徹一(九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター センター長)
研究開発実施報告書 | 初年度 | (平成28年度)研究開発実施報告書 |
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2年度 | (平成29年度)研究開発実施報告書 | |
3年度 | (平成30年度)研究開発実施報告書 | |
成果報告書 | 成果報告書 | |
終了報告書 | 終了報告書 | |
事後評価報告書 | 事後評価報告書 |
環境・災害・健康・統治・人間科学の各分野で、決断サイクル(IDEAサイクル)を基に優れた事例を示しながら、その成果を統合して社会問題の解決に結びつける方法論として、多様な関与者による意思決定のあり方を科学的に追求する「決断科学」を提示した。
平成28年度採択(課題解決に向けたTD研究(試行))
- 持続可能な社会へのトランスフォーメーションを可能にする社会制度の変革と設計
西條 辰義(高知工科大学 フューチャー・デザイン研究センター 教授)
TD研究(試行)終了報告書(PDF:1,444KB) - 貧困条件下の自然資源管理のための社会的弱者との協働によるトランスディシプリナリー研究
佐藤 哲(総合地球環境学研究所 研究部 教授)
TD研究(試行)終了報告書(PDF:1,378KB)
平成27年度採択(FS Phase1)
- 半乾燥熱帯農村部における気候変動レジリアンス構築へ向けた総合的支援策策定のためのトランスディシプリナリー研究の可能性
梅津 千惠子(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:1,358KB) - 分野間連携による水災害リスク管理の社会実装
小池 俊雄(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター センター長)
可能性調査終了報告書(PDF:1,039KB) - 貧困条件下の自然資源管理のための社会的弱者との協働によるトランスディシプリナリー研究
佐藤 哲(総合地球環境学研究所 研究部 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:1,121KB) - 持続可能な社会へのトランスフォーメーションを可能にする社会制度の変革と設計
西條 辰義(一橋大学 経済研究所 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:1,164KB) - グリーンインフラによる持続的な国土構築に関する可能性調査
島谷 幸宏(九州大学 大学院工学研究院 環境社会部門 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:3,162KB) - 物質好循環型社会に向けた技術と暮らしの価値観の共創の可能性調査
吉岡 敏明(東北大学 大学院環境科学研究科 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:2,876KB)
平成27年度採択(FS Phase2)
- インドネシアにおける小規模アブラヤシ農園の持続可能ガバナンスの樹立に向けて
岡本 正明(京都大学 東南アジア研究所 准教授)
可能性調査終了報告書(PDF:5,035KB) - 気候工学(ジオエンジニアリング)のガバナンス構築に向けた総合研究の可能性調査
杉山 昌広(東京大学 政策ビジョン研究センター 講師)
可能性調査終了報告書(PDF:1,317KB) - 環境・災害・健康・統治・人間科学の連携による問題解決型研究の可能性調査
矢原 徹一(九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター センター長)
可能性調査終了報告書(PDF:920KB)
平成26年度採択(FS Phase1)
- インドネシアにおける小規模アブラヤシ農園の持続可能ガバナンスの樹立に向けて
岡本 正明(京都大学 東南アジア研究所 准教授)
可能性調査終了報告書(PDF:615KB) - 水・食料・エネルギーネクサスを考慮した地域の持続可能性構築に関する予備研究
沖 大幹(東京大学 生産技術研究所 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:443KB) - 持続可能な開発目標(SDGs)実施へ向けたトランスディシプリナリー研究
蟹江 憲史(慶応義塾大学 大学院政策・メディア研究科 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:487KB) - 地域・伝統知と科学知の融合を活かしたアジア太平洋地域における社会・生態システムの将来シナリオとガバナンス
齊藤 修(国際連合大学 サステイナビリティ高等研究所 学術研究官)
可能性調査終了報告書(PDF:961KB) - 気候工学(ジオエンジニアリング)のガバナンス構築に向けた総合研究の可能性調査
杉山 昌広(東京大学 政策ビジョン研究センター 講師)
可能性調査終了報告書(PDF:388KB) - 気候・社会変動への対応を推進するイノベーション創出フレームワークに関する調査
福士 謙介(東京大学 国際高等研究所 サステイナビリティ学連携研究機構 教授)
可能性調査終了報告書(PDF:1,554KB) - 指標開発を通じたメガ都市のサステイナビリティの実現
森 宏一郎(滋賀大学 国際センター 准教授)
可能性調査終了報告書(PDF:775KB) - 環境・災害・健康・統治・人間科学の連携による問題解決型研究の可能性調査
矢原 徹一(九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター センター長)
可能性調査終了報告書(PDF:765KB)
- I:FS(Phase1)。TD研究として取り組むべき研究開発課題の協働設計(Co-Design)の実践を行う。
- II:本格研究(試行)/FS(Phase2)。FS(Phase1)の実施機関を対象に、TD研究のCo-productionの試行を行う。
- III:本格研究。FS(Phase1およびPhase2)の実施機関を対象に、TD研究のCo-productionの実践を行う。
関連リンク
- フューチャー・アース 国際本部事務局(英語HP)
- フューチャー・アース 国際本部事務局・日本ハブ事務局:日本学術会議 (英語HP)
- フューチャー・アース アジア地域事務局:総合地球環境学研究所(英語HP)
アクションレポート
- 【開催報告】フューチャー・アース構想の推進事業 公開シンポジウム
- 【受賞】杉山プロジェクトの論文が、Sustainability Scienceの2017 best paper awardを受賞
- 【開催報告】「世界社会科学フォーラム(WSSF:World Social Science Forum)2018 福岡 開催(共催)」その1(全3ページ)
- 【開催報告】「世界社会科学フォーラム(WSSF:World Social Science Forum)2018 福岡 開催(共催)」その2(全3ページ)
- 【開催報告】「世界社会科学フォーラム(WSSF:World Social Science Forum)2018 福岡 開催(共催)」その3(全3ページ)
- 【書籍発行】「九州の防災-熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ-」