プロジェクト紹介

政策形成過程における科学的知見の活用最大化のための中間人材の可能性について ―成育医療・母子保健領域を事例とした分析と実証―

研究代表者

研究代表者:千先 園子
千先 園子
国立成育医療研究センター こどもシンクタンク 副室長/こころの診療部 医員

プロジェクトの目標

成育医療・母子保健領域の「こども政策」においてEvidence-Based Policy Making(EBPM)サイクルをより機能させることが重要である。
しかしEBPMの各ステップごとにステークホルダー間のギャップや様々な課題がある。
本プロジェクトでは、こども政策領域において「中間人材」の有効活用に注目しつつ、
①EBPMサイクル全体における阻害・促進因子の把握、
②研究者と技官のギャップに対する介入の検討、
③中間人材の実態とニーズ把握、支援パッケージの開発・試行・評価、
④実装のボトルネックに対する介入の検討を行う。
本プロジェクトを通じて、わが国のこども政策におけるEBPMサイクルがより円滑になることに加え、他の領域への応用・展開の視座を得ることを目指す。

プロジェクトの概要

・対象とする政策とその動向: 少子高齢化、人口減少は国家危機となり、こどもや子育て支援のための「こども政策」は日本にとって重要な政策領域になった。こどもの疾病構造の変化や、取り巻く課題の複雑化が進み、成育医療、母子保健政策は、2018年成育基本法成立、2023年こども家庭庁設立等、ダイナミックな社会制度の転換点を迎えている領域だといえる。研究代表者の千先は、小児科医として臨床現場で働く中で、問題の上流である政策など社会的側面に働きかける重要性を感じ、厚労省に入省したが、EBPMの実現が容易ではない現状に課題意識を持った。。EBPMはなぜ機能不全を起こしつつあるのか。EBPMのサイクルには、図に示したステップにそれぞれに求められているエビデンスと課題があると考えられる。こうした課題は、単に「こども政策」領域だけでなく、他の健康領域でも広く生じている。

・EBPMサイクルとその課題(図参照): EBPMサイクルは主に、①現状と課題の把握、②課題設定、③政策立案、④合意形成、⑤政策実装、⑥受益者へのサービス提供、というステップがあり、それぞれのステップやそのステップ間に、さまざまな課題がある。例えば、研究者における課題設定が、現場や政策側のニーズに必ずしも一致しないこと、科学的に高度なエビデンスでも必ずしも政策立案に繋がらないこと、政策決定されても、自治体や事業者による実装において地域格差や持続可能性に課題があることなどである。
では、どのようにアプローチすればいいのか。EBPMサイクル全体を俯瞰して、介入可能性と期待される効果幅が大きいボトルネックとして以下の4つの研究課題に取り組む。特に、「研究者」と「技官」のギャップに着目し、方法論として「中間人材」の橋渡しによる介入を主要課題とする。

研究課題①:理想のEBPMサイクルの全体像の把握と顕在化していない促進・阻害因子の同定
研究課題②:研究者と技官のギャップに対する介入策の開発
研究課題③:中間人材の実態・ニーズ把握・支援パッケージの開発・施行・評価
研究課題④:実装のボトルネックに対する介入策の検討(自治体や民間事業者)


プロジェクトイメージ

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