科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラムの設定について

平成23年度戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)における新規研究開発プログラムの設定及びプログラム総括の選定について

平成23年度発足の新規研究開発プログラムについては、"科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」の推進"の公募型研究開発プログラムとしての設計を進めることとし、文部科学省、文部科学省科学技術政策研究所およびJST研究開発戦略センターと共同して有識者へのインタビューや事業の具体化に向けた検討を行ってまいりました。
これらの検討および「科学技術イノベーション政策のための科学」推進委員会(平成23年5月19日開催)での審議等に基づき、文部科学省よりJST対して、「戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)における『科学技術イノベーション政策のための科学』の方針について」(平成23年6月3日 文部科学省 通知)が示されました。
JSTでは、本通知を受けて社会技術研究開発主監会議(平成23年6月8日)を開催し、その審議を経て、下記の通り新規研究開発プログラムを設定し、プログラムの運営責任者であるプログラム総括を選定しました。

  • 研究開発プログラムの名称:
    「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」
  • プログラム総括:
    森田 朗(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)

1.研究開発プログラムの内容

(1)研究開発プログラムの目的

客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成に中長期的に寄与する。

上記の目的のために、研究開発プロジェクトを公募し、

  • 現実の政策形成に活用しうる新たな解析手法やモデル分析、データ体系化ツール、指標等の研究開発を推進する。
  • 幅広い分野と関連する学際的分野で、関与する研究者の層を広げる。あわせて、その活動状況を社会へ広く発信し対話の場を作り、コミュニティ・ネットワークを拡大させる。

(2)研究開発プログラムの設置期間

平成23年度から平成29年度の延べ7年間(4年度にわたる新規採択を想定)

(3)対象とする研究開発プロジェクト・方向性

 社会的問題の解決に資する科学技術イノベーション政策の形成に向け、客観的根拠(エビデンス)に基づく合理的な政策形成プロセスを構築するための研究開発を推進する。
 具体的には、以下に示すような課題に関わる、新たな手法・指標等の研究開発を対象とし、第5期科学技術基本計画策定時などの中長期の政策形成において実際に活用され得る成果等を求める。

  • 科学技術イノベーション政策全体の戦略性の向上
  • 政府の研究開発投資が社会・経済へ及ぼす影響の把握
  • 科学技術イノベーション政策を推進するシステム(制度・体制等)のあり方と推進システムの科学技術イノベーション過程への影響の把握
  • 科学技術イノベーション政策に関連して、政策形成において社会の参画を促進するための仕組みの設計・方法論の開発と、実際の政策形成プロセスにおける活用

 研究開発にあたっては、自然科学と人文・社会科学の双方にまたがる知見を活用した分野横断的な研究開発を進めること、研究開発の一環として現場における実践的な取り組みや政策形成への活用を前提としたシミュレーションを行うこと、研究開発の適切な段階で研究者と政策担当者等の関与者とが協働すること、国際的な動向にも留意しつつ関連する他の取り組みとの連携を図ること等、政策や社会への実装・定着が可能な成果を創出するための研究開発アプローチを求める。
 なお、文部科学省の基本構想の趣旨を踏まえ、東日本大震災に関連する科学技術イノベーション政策上の課題についても配慮する。

(4)研究開発プロジェクトの期間・規模

  • ①研究開発プロジェクトの実施期間
    1年半~3年とし、研究開発の内容に応じて調整する。
  • ②研究開発費:
    15~20百万円未満/年
    研究開発費については、各プロジェクトの内容および採択方針に応じて、柔軟に取り扱う。また、プロジェクトの進捗等に応じて適宜、適正化を図る。
  • ③公募の実施、採択件数
    各年度、数~十件程度の新規課題採択を想定。提案の応募の内容・状況により、年度ごとに柔軟に判断する(計4回の募集を実施予定)。

2.プログラム総括について

 (平成30年度~)
 山縣然太朗氏は、20年以上にわたり妊娠期からの母子保健縦断調査活動を地域と連携して行っている。2006年から2009年まで社会技術研究開発センター「脳科学と社会」領域で「日本における子どもの認知・行動発達に影響を与える要因の解明」の研究統括を担った。現在は日本疫学会理事、日本公衆衛生学会理事等の活動とあわせ、「研究は住民にはじまり住民に終わる」をモットーに、環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」(甲信ユニットセンターセンター長)を中心に母子保健領域の研究を実施しており、ゲノム科学や脳科学など先端科学と社会との接点も研究テーマとしている。また、厚生労働省「健やか親子21推進検討会」委員(中間評価研究会座長)、「次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会」委員、文部科学省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会」委員等も務めている。
 本プログラムは、文部科学省「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(SciREX事業)の一環として、客観的根拠に基づく科学技術イノベーション政策の形成に中長期的に寄与することを目的とし、現実の政策形成に活用しうる新たな解析手法やモデル分析等の研究開発、および幅広い分野と関連する学際的分野での研究者の層とコミュニティ・ネットワークの拡大を推進するものであり、その運営には、本プログラムが取り組む課題に関する幅広い知見はもとより、研究者のみならず、行政、地域住民など、多様なステークホルダーの連携・協働を促すバランスの取れた視点が求められる。山縣氏は、前述の経歴・実績から、本プログラムの設置時よりプログラムアドバイザーとして本プログラム推進の中核的な役割を担っている。
 以上のことから、山縣氏がプログラム総括として適任であると判断する。

 (平成23年度~平成29年度)
 森田朗氏は、長年、行政学の分野において、公共管理論、政策過程、地方自治等の研究と教育に従事してこられた。
 東京大学公共政策大学院 院長や日本行政学会の理事長(現職)を務める等、公共政策の分野を牽引する研究者のお一人であるとともに、複数の省庁や地方公共団体等の有識者会議や委員会等の委員や長を歴任し、現実の政策形成に関しても多くの知見や経験を有しておられる。
 また、2008年から2010年には、東京大学政策ビジョン研究センターの初代センター長として、社会の諸問題の解決に向け最先端の研究成果を活用して政策を形成していく必要性や政策形成に対して大学の知的リソースを提供していく必要性を掲げ、個々の研究・教育活動に留まらず、提言の発信やネットワーク構築等、実際の政策プロセスや社会を対象とした活動、多分野の研究者の参画を促す取り組みを主導してこられた。
 科学技術についても、公共政策学会の理事在任中に「技術と社会」をテーマとした研究大会を企画するなど造詣が深く、関与者とのネットワークも有しておられる。
 「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」は、社会的問題の解決に資する科学技術イノベーション政策の形成に向け、客観的根拠に基づく合理的な政策形成プロセスを構築するための研究開発を、多様な分野の研究者や関与者の参画のもとに推進するものである。したがって、公共政策や政策形成に関する豊富な知見やマネジメントの経験を有するプログラム総括を中心として、研究者を含む社会の多様な関与者がアドバイザーとなり、各々の専門性を発揮できる運営体制が適当である。
 森田氏は、上述の通り、科学技術政策を含む公共政策の幅広い分野において、豊富な知見と経験を有し、優れた先見性とマネジメント力を発揮して実績を上げておられる。特に、公共政策の分野において科学技術を取り上げてきた氏の知見や実績は、科学技術と社会システムを含む科学技術イノベーション政策を対象とする本プログラムの推進やコミュニティ拡大に向けた取り組みをリードするにふさわしいものである。

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