プロジェクト紹介

電力分野のイノベーションと研究開発ネットワークに係わる
評価手法の開発

研究代表者

研究代表者:秋山 太郎
秋山 太郎
横浜国立大学成長戦略研究センター 副センター長・教授

<プロジェクトのホームページ>
電力分野のイノベーションと研究開発ネットワークに係わる評価手法の開発

プロジェクトの目標

本研究開発プロジェクトでは、市場・制度の選択を考慮した次世代電力システムの影響を数量的に評価することにより、適切な電力市場の設計に寄与すると共に、燃料電池の共同R&Dネットワークの推定とそれに基づいた燃料電池への公的研究開発支出の評価を行う。

  • )技術の導入に対する適切な市場・制度の選択を考慮した、スマートグリッドと燃料電池による電力システムイノベーションの影響の数量的評価、それに基づく適切な電力市場の設計
  • )燃料電池の共同研究開発ネットワークを推定し、日本の燃料電池へ公的研究開発支出に対して共同研究開発ネットワークの観点から見た評価

こうした電力分野における先端技術を評価する取り組みを通じて、市場・制度の選択を必要とする技術イノベーション評価の一般的フレームワークと、公的研究開発投資のR&Dネットワークに対する効果を評価する汎用性のある手法を構築する。

プロジェクトの概要

この問題を取り上げる背景は、次の3点である。

  • (1)東日本大震災以後の電力事情の悪化から、電力需要の抑制、とくにピーク需要の削減の手段として、スマートグリッドの導入の必要性が強く認識されるようになったこと。
  • (2)次世代の電力源としての燃料電池の実用化が進展し、スマートグリッドの分散電源としての利用や電力網に依存しないオフグリッドの電力供給システムとしても利用できる。後者の形での燃料電池の普及が進めば、電力需要者の電力網への依存が低下し、スマートグリッドの導入に大きな影響を及ぼす可能性がある。
  • (3)震災後の日本において、スマートグリッドの議論と並行して、電力市場の改革が大きな問題となっている。リアルタイムプライシングをはじめとするスマートグリッド導入の効果・影響は、電力市場の構造や制度に依存している。逆に、自由化された電力市場におけるいくつかの問題が、スマートグリッド導入により緩和される可能性なども指摘されている。

したがって、現在問題となっている電力市場改革については、スマートグリッド等による電力システムのイノベーションと市場・制度の選択を組み合わせて議論を行った上で、改革に関する議論を行うことが必要となっているが、日本においては、適切な市場・制度を考慮した次世代電力システムの影響のインパクト評価は行われていない。また、燃料電池に関してはスマートグリッドの分散電源としての相互補完的な面が強調されがちであり、燃料電池と電力網との競争関係が電力網へ及ぼしうる影響については十分な注意が払われていない。さらに、多額の公的研究開発費の投入が行われているにも関わらず、燃料電池分野に関する個々のプロジェクトに関しての評価は行われているが、共同研究ネットワークの観点を取り入れた評価は行われていないのが現状である。

このような情勢を鑑み、本プロジェクトでは、スマートグリッドと燃料電池による電力イノベーションに着目し

  • )技術の導入に対する適切な市場・制度の選択を考慮した、スマートグリッドと燃料電池による電力システムイノベーションの影響の数量的評価、それに基づく適切な電力市場の設計
  • )燃料電池の共同研究開発ネットワークを推定し、日本の燃料電池へ公的研究開発支出に対して共同研究開発ネットワークの観点から見た評価

を行うことは、今後の電力分野のイノベーション政策に貢献することになる。以上の研究を通じて得られる、インフラなどの市場・制度の選択を必要とするイノベーションのインパクトの事前の評価のフレームワーク、公的研究開発投資のR&Dネットワークに対する効果の評価手法は、汎用性を持つ手法として、広く科学技術イノベーション政策に貢献することが期待される。


電力分野のイノベーションと研究開発ネットワークに係わる評価手法の開発

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