【終了】「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域について

「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域は、平成20年度に始まり、平成25年度に活動を終了しました。

地球規模の環境問題は、20世紀における石油依存型の急速な開発がもたらした現代社会の本質にかかわる問題です。この研究開発領域では、温室効果ガス排出量60~80%削減につながる社会変革の道筋を描くことを大目標に、「現場目線に立った」分野横断の柔軟なアプローチにより、実効性のある温暖化対策の構築に取り組み、「地域が元気になる脱温暖化」の理念を広く全国に普及させることに活動を行いました。

本領域の詳細サイトは下記よりご覧ください。

領域総括

堀尾 正靱

東京農工大学 名誉教授
※所属・役職はプログラム終了当時のもの

地球温暖化と大規模な気候変動の危機の解決は、私たち人類の活動が環境と共生しえない水準に達したことから発生している多様な問題の中でも、最も重要な課題の1つとなっています。特に先進国では、80%程度の温室効果ガス削減は避けられない戦略的課題です。

しかし、脱温暖化に向けた取り組みでは、観測や分析、新しいエネルギーなどの先端的な技術の開発を進めることに重きが置かれ、技術を私たちの生活の中に生かしていく方法を、社会のシステムも含めて見直そうとする試みはあまり実施されてきませんでした。

本領域では、温暖化対策を、新技術の開発や導入のレベルだけでとらえるのではなく、産業革命以来の近代化の流れの中の、とくにこの50-60年間の、大きな社会変化の中でとらえます。具体的には、産業経済から人々の生活習慣にまで広く深く浸透し、きわめて整備された法制度や各種の許認可制度、税制など社会システムとの関係において、現場目線から問題を検討し、その担い手づくりを含めて、エネルギー自給能力のある地域づくりに取り組むといったことを、重要な課題として掲げます。

また、これまで、保全・再生という観点のみでとらえられてきた自然と人間の共存の問題も、手入れの行き届いた森林や湿原の炭素貯蔵庫としての機能の維持拡張といった視点を加味して評価したり、木材利用による炭素の社会的ストックを正当に評価したり、過疎地域を住みたくなる地域とすることがもつ脱温暖化効果にも視点を当て、石油漬けの近代化からの脱却と連結していく可能性に期待します。

領域の目標

  1. 脱温暖化・環境共生に関わる研究開発を、横断的で総合的な、新たな発想に基づく持続可能な社会システム実現のための取組みとして構想し、地域の現場においてその科学的実証を試みました。また、それらが国内外で有効に活用されるよう、一般化、体系化を目指しました。
  2. 活力ある地域づくりを、脱温暖化・環境共生の視点から再定義して進めるため、既存の取組みや施策、行政システム、制度等を科学的に整理・分析し、地域の新しい価値を見出すための分野横断的な計画・実践手法、新しい価値の評価手法、及びそれらの普及方法を開発しました。

目標の達成に向けて、下記のような点が考慮されています。

  • 地域社会を分野横断的・総合的な視点から持続性のある複合システムに発展させる豊かな問題把握
  • 産官学市民や人文社会科学研究者と自然科学系研究者の適切な連携
  • 地域やプロジェクトの性格に合わせた、持続的・自律的な地域社会の主体となる人材の形成のための方法論の構築と実践
  • 地域住民やステークホルダーが地域の未来を共有する多様な「場」の形成の重要性を考慮します。

領域の構成

本領域では以下の構成で研究開発活動を推進しました。

領域の成果のまとめと提言

本研究開発領域では、地域が元気になる脱温暖化社会を実現するために、地域と現場の目線に徹して行ってきた5年間の研究開発活動をもとに、さらに今後、地域・市民の内発力の形成を重視しながら、社会実装を進めていくための提言と、地域で取り組むべき指針をとりまとめました。

本研究開発領域の活動の記録やプロジェクト成果等は、領域webサイト上で公開しています。

  • 提言:ともに進化し、地域が元気になる脱温暖化社会を!
    人類がぶつかっている「多様な環境エネルギー問題」1)を、これまでの一極集中型・一直線型の近代化の結果としてとらえ、公正で地域に有用な「適正技術」と社会の様々な構成員が共に進化する「もやい直し」2)の方法で、それぞれの地域や現場が元気になる、真に持続力のある脱温暖化社会(「近代のつくり直し」)を実現しよう。

1) 公害、ごみ問題、生物多様性、シックハウス、地球温暖化・気候変動、油価高騰、燃料枯渇等
2) 水俣病に苦しんだ水俣の人々が再出発するときに使ったことば。「もやい直し」とは、もともとは「ひもの結び直し」。
 地域の問題に正面から向き合い、対話と協働で新たな仕組みや関係性をつくること。

指針1 地域の資源で地域がうるおう再エネ・省エネ社会をめざすための基盤をつくる

  • 指針1-1 地域の資源を地域で活用するためのルールをつくる
  • 指針1-2 適正な再エネ・省エネ技術とそれを支える基盤をつくる
  • 指針1-3 再エネ・省エネ社会の実現を支える地域内ネットワークとヒトをつくる:「まちまるごとネットワーク」と「ネットワーク型人材」

指針2 脱温暖化・再エネ時代の新しい価値とシステムの創造をめざす

  • 指針2-1 再エネで人口の「共生対流」を促すパラダイムシフトと百業的生存戦略を展開する
  • 指針2-2 バリューチェーンの脱温暖化イノベーションをすすめるために、消費者・流通・生産者の関係の「もやい直し」をすすめる

領域・プロジェクトの成果発信

領域成果報告書・出版物、および各プロジェクトの研究開発実施報告書は領域webサイトでご覧いただけます。

成果報告書
成果報告書(PDF:48.9MB)

また、ICAE2014(応用エネルギー国際会議:2014 年5 月30日~6月1日、於:台湾・台北)の中で特別セッション「Community-based Low Carbon Scenarios(コミュニティベースの低炭素シナリオ)」を開催し、領域・プロジェクトの成果を発信しました。

ICAE2014での領域特別セッションの様子
ICAE2014での領域特別セッションの様子

研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」

研究開発テーマの概要

領域目標の達成のため、公募による研究開発プログラムを推進しました。プログラムの推進にあたっての問題意識と課題は以下のとおりです。

  1. 地域に根ざした脱温暖化・環境共生に関わる研究開発の構想とその実現。国内外における成果の有効活用のための一般化、体系化
     地球温暖化対策として、要素技術の開発や未来の日本社会のシナリオを提示する等の取組が行われています。こうした取組は、施策の方向性を提示する観点からも必要ですが、対策を実のあるものにするためには、石油依存型の社会システムの中で展開されてきた制度や社会システムの見直しも必要です。そのような立場から、本研究開発プログラムでは、技術的合理性を追求しつつ、対応する制度的社会的課題を検討し、さらに、新しい時代の担い手を育成していくことを課題とします。
  2. 既存の取組等の科学的な整理・分析。地域の新しい価値を見出すための計画・実践手法、新しい価値の評価手法、普及方法の開発
     グローバル化と産業構造の変化により、多くの地域が経済的に厳しい状況に置かれており、地域の資産の経済的価値の下落が取りざたされています。しかしながら、地域の資産は経済的なものばかりでなく、自然環境や生態系の豊かさ、生活様式、景観、地域の文化・伝統、社会制度、地域コミュニティの機能など多種多様なはずです。こうした多様な要素を具体的に活用し、「住みたくなる地域づくり」を脱温暖化の立場から積極的に定量化し、温室効果ガス吸収産業としての林業や、温室効果ガスの発生を加速する開発を抑制した場合の効果などすべてを加味した総合評価の方法論を確立していくことを課題とします。

研究開発プロジェクト

平成22年度採択課題

【カテゴリーⅠ】:問題解決のために必要な調査研究などを行い、選択肢の提示、政策提言などをアウトプットとするもの

【カテゴリーⅡ】:問題解決のための技術(システム)・手法の開発と実証を目指すもの

平成21年度採択課題

【カテゴリーⅠ】:問題解決のために必要な調査研究などを行い、選択肢の提示、政策提言などをアウトプットとするもの

【カテゴリーⅡ】:問題解決のための技術(システム)・手法の開発と実証を目指すもの

平成20年度採択課題

【カテゴリーⅠ】:問題解決のために必要な調査研究などを行い、選択肢の提示、政策提言などをアウトプットとするもの

【カテゴリーⅡ】:問題解決のための技術(システム)・手法の開発と実証を目指すもの

プロジェクト企画調査

平成21年度採択課題

平成20年度採択課題

評価

事後評価

「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域・プログラム 事後評価について

研究開発領域「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」、同プログラム研究開発プロジェクト事後評価について

中間評価

研究開発プログラム「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」、同プログラム研究開発プロジェクト中間評価・同プログラム研究開発プロジェクト事後評価について

アクションレポート

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