【終了】「人と情報のエコシステム」研究開発領域(HITE)について

本領域が貢献しうる「持続可能な開発目標(SDGs)」

Sustainable Development Goals
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

RISTEXのSDGsに関する取り組みについてはこちらをご覧下さい。

「人と情報のエコシステム」研究開発領域は、平成28年度に活動を開始し、令和5年度に活動を終了しました。

ビッグデータを活用した人工知能、ロボット、IoTなどの情報技術の急速な進歩により、より豊かで効率性の高い社会が実現されるとの期待が高まっている一方、情報技術は様々な問題をもたらしうるとの指摘もなされています。

「人と情報のエコシステム」では、それらの問題に適切に対処していくために、社会の理解のもとに技術と制度を協調的に設計していくための研究開発を推進し、情報技術と人間のなじみがとれた社会の実現を目指して活動を行いました。

本領域の詳細サイトは下記よりご覧ください。

領域総括

國領 二郎

慶應義塾大学総合政策学部 教授

近年、IoTを介したビッグデータ集積、収集されたビッグデータを活用した人工知能、さらには人工知能を搭載したロボットなどの情報技術の連鎖的で加速度的な進化が起こっています。そして、人間がコンピュータに対して優位だと思われてきた認知や文脈判断などにおいてまで、コンピュータが勝りはじめ、ショックをもって受け止められています。

出現しつつある大きな力に対して、社会的にその利便性に対する大きな期待がある一方で、その潜在的な負の側面に不安感が持たれるのはむしろ健全なことでしょう。確かに技術の力が人間に危害を与える方向に使われたり、暴走したりした時、その力が大きい分だけ被害も大きくなりえます。また、問題の現れ方が多様で、予測が難しいところも課題です。

私たちは、技術をめぐる多様なステークホルダーの間に、技術の萌芽段階から有効な対話を行うことで、情報技術を人間に真に貢献するものとして進化させることが可能だろうと思っています。また、逆に社会に向けて各種技術に関する情報提供(リスクコミュニケーションも含め)や技術リテラシー教育を進めることで、社会として技術を受け入れたり、活用したりする能力や意識も高めることも可能だと考えます。つまり人も技術も相互作用しながら変化を続けるものであることから、その双方への働きかけが可能であるというのが基本認識です。技術を社会的に配慮あるものにする努力と、人間の技術を活用する能力の向上の2つが合わさって、人間と技術が「なじんだ」状態を作ることができれば、技術開発と利用の相乗効果で、技術進化を加速させることにつながるでしょう。

私たちは、情報技術に関して、メリットや負のリスクをバランスよく評価し、技術開発や製品開発、あるいはそれらを実装していく際の社会的な意思決定にフィードバックするメカニズムが設計可能だと考えています。本研究開発領域では、情報技術を上流工程から人間を中心とした視点で捉え直し、制度と技術を協調的に設計していくための共進化プラットフォームの設計を推進していきます。

領域の目標

情報技術と人間のなじみがとれている社会を目指すために、情報技術がもたらすメリットと負のリスクを特定し、技術や制度へ反映していく相互作用の形成を行います。具体的には、

① 情報技術がもたらしうる変化(正負両面)を把握・予見し、アジェンダ化することで、変化への対応方策を創出する。

② 情報技術の進展や各種施策に対し、価値意識や倫理観、また現状の制度について検討し、望まれる方向性や要請の多様な選択肢を示していく。

①②のような、問題の抽出、多様なステークホルダーによる規範や価値の検討、それに基づく提示や提言までをサイクルとみなし、その確立のための研究開発を行います。また、このような社会と技術の望ましい共進化を促す場や仕組みを共創的なプラットフォームとして構築することを目指し、その機能のために必要な技術や要素も研究開発の対象とします。

研究開発テーマの概要

領域の目標を達成するために、下記A~B-5の研究開発テーマの公募による研究開発プログラムを推進します。「A.共進化プラットフォーム」は、領域全体が目指すアウトプットそのものですが、仕組みの構築や方法論自体も研究開発の対象とします。また、B-1~B-5の応用テーマへの取り組みの際にも、「A. 共進化プラットフォーム」の構築に貢献することが期待されます。

  • A:共進化プラットフォーム
    情報技術がもたらしうる潜在的なリスクやメリットを的確に特定し、評価を行うための方法論の研究開発。評価を情報技術の人間中心設計に反映させる方法論の研究開発。
  • B-1:法律・制度
    情報技術がもたらしうる潜在的な負のリスクを軽減し、潜在的なベネフィットを最大化するための、法的課題の特定と措置の提言を行う研究開発。
  • B-2:倫理・哲学
    情報技術がもたらしうる潜在的な倫理的・哲学的課題の特定と指針を提示する研究開発。
  • B-3:経済・雇用
    情報技術がもたらしうる潜在的な負のリスクを低減しながら、ベネフィットを最大化するための研究開発。
  • B-4:教育
    情報技術が浸透する社会における変化への対応力を身につけるための研究開発。
  • B-5:人間中心視点による技術開発
    開発の上流段階から社会的要請を意識し、多様なステークホルダーとの対話を通じた人間中心の技術開発の実証研究。他の競争的な研究資金などとの連携によって、具体的な技術開発の中で人間中心の考え方を取り込んだ際の課題や対応策について研究を行う。

領域の評価

中間評価

活動報告書 評価報告書

事後評価

活動報告書 評価報告書
(掲載予定) (掲載予定)

研究開発プロジェクト

平成31/令和元年度採択

ヘルスケアにおけるAIの利益をすべての人々にもたらすための市民と専門家の関与による持続可能なプラットフォームの設計
山本 ベバリーアン
(大阪大学 理事・副学長 国際(教育)担当)
PATH-AI:人間-AI エコシステムにおけるプライバシー、エージェンシー、トラストの文化を超えた実現方法
中川 裕志
(理化学研究所革新知能統合研究センター チームリーダー)
法制度と人工知能
角田 美穂子
(一橋大学社会科学高等研究院 教授)
AI等テクノロジーと世帯における無償労働の未来 : 日英比較から
永瀬 伸子
(お茶の水女子大学基幹研究院 教授)
マルチ・スピーシーズ社会における法的責任分配原理
稲谷 龍彦
(京都大学大学院法学研究科 教授)
都市における感情認識 AI ~日英発倫理的生活設計に関する異文化比較研究
Peter Mantello
(立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部 教授)

平成30年度採択

データポータビリティ時代におけるパーソナル情報のワイズ・ユース実現支援プラットフォームに関する研究
柴崎 亮介
(東京大学空間情報科学研究センター 教授)
パーソナルデータエコシステムの社会受容性に関する研究
橋田 浩一
(東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
人と情報テクノロジーの共生のための人工知能の哲学2.0の構築
鈴木 貴之
(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
想像力のアップデート:人工知能のデザインフィクション
大澤 博隆
(慶應義塾大学理工学部 准教授)
人文社会科学の知を活用した、技術と社会の対話プラットフォームとメディアの構築
庄司 昌彦
(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 主幹研究員)
過信と不信のプロセス分析に基づく見守りAIと介護現場との共進化支援
北村 光司
(産業技術総合研究所人工知能研究センター 主任研究員)
人と新しい技術の協働タスクモデル:労働市場へのインパクト評価
山本 勲
(慶應義塾大学商学部 教授)

平成29年度採択

人間とシステムが心理的に「なじんだ」状態での主体の帰属の研究
葭田 貴子
(東京工業大学工学院 准教授)
自律機械と市民をつなぐ責任概念の策定
松浦 和也
(東洋大学 文学部 教授)
自律性の検討に基づくなじみ社会における人工知能の法的電子人格
浅田 稔
(大阪大学先導的学際研究機構 特任教授)
情報技術・分子ロボティクスを対象とした議題共創のためのリアルタイム・テクノロジーアセスメントの構築
標葉 隆馬
(大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授)

分子ロボットELSI研究とリアルタイム技術アセスメント研究の共創
小長谷 明彦
(恵泉女学園大学 人文学部 客員教授)

冪則からみる実社会の共進化研究 -AIは非平衡な複雑系を擬態しうるか-
田中(石井) 久美子
(早稲田大学 理工学術院・基幹理工学部 情報理工学科 教授)

平成28年度採択

多様な価値への気づきを支援するシステムとその研究体制の構築
江間 有沙
(東京大学 国際高等研究所 東京カレッジ 准教授)
日本的Wellbeingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及
安藤 英由樹
(大阪大学 大学院情報科学研究科 准教授)
「内省と対話によって変容し続ける自己」に関するヘルスケアからの提案
尾藤 誠司
(独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床研究センター 政策医療企画研究部臨床疫学研究室 室長)
未来洞察手法を用いた情報社会技術問題のシナリオ化
鷲田 祐一
(一橋大学 大学院経営管理研究科 教授)
法・経済・経営とAI・ロボット技術の対話による将来の社会制度の共創
新保 史生
(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)

プロジェクト企画調査

  • 所属・役職は、プロジェクト企画調査終了時のもの

平成29年度採択

情報アクセスリテラシー向上のための不便益的視点からの方法論に関する調査
川上 浩司
(京都大学デザイン学ユニット 特定教授)
人とAIシステムの協働タスクモデルの構築に向けた調査
山本 勲
(慶應義塾大学商学部 教授)
人工知能と労働の代替・補完関係
川口 大司
(東京大学大学院経済学研究科 教授)
見守り技術の実装のための現場変容ライブラリの構築
北村 光司
(産業技術総合研究所人工知能研究センター 主任研究員)

平成28年度採択

分子ロボット技術に対する法律・倫理・経済・教育からの接近法に関する調査
小長谷 明彦
(恵泉女学園大学 人文学部 客員教授)
社会システムと情報システムの相互作用を促す共進型社会実験プロジェクト管理手法の検討~ITS(高速道路交通情報システム)の実用化を事例として
手嶋 茂晴
(名古屋大学 未来社会創造機構 特任教授)
人間と情報技術の共進化を目指す共創コミュニティALife Lab.の構築
岡 瑞起
(筑波大学 システム情報系 准教授)
多種ステークホルダーが関与した教育・育児支援ロボット技術の開発手法に関する調査
田中 文英
(筑波大学 システム情報系 准教授)
高度情報社会における責任概念の策定
松浦 和也
(秀明大学 学校教師学部 専任講師)
リアルタイム・テクノロジーアセスメントのための議題共創プラットフォームの試作
標葉 隆馬
(大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授)

関連情報

第13回社会技術フォーラム~新領域に関する社会との対話~

平成28年2月17日、平成28年度に新しい研究開発領域を創設するにあたっての活動の一環として、第13回社会技術フォーラム「人と情報のエコシステム~情報技術が浸透する超スマート社会の倫理や制度を考える」を開催しました。

詳しい情報は以下のURLからをご覧ください。

2016年度 人工知能学会全国大会

平成28年6月7日、人工知能学会全国大会にて本領域の構想を発表しました。

アクションレポート


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