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第13回社会技術フォーラム~新領域に関する社会との対話~ 「人と情報のエコシステム 情報技術が浸透する超スマート社会の倫理や制度を考える」開催報告
2016年02月17日 丸ビルホール (東京都千代田区)

JST社会技術研究開発センター(RISTEX) https://www.jst.go.jp/ristex/


山形浩生氏

高西淳夫氏

福井健策氏

中島孝氏

久木田水生氏

平成28年2月17日、JST社会技術研究開発センター(RISTEX)が平成28年度に新しい研究開発領域を創設するにあたっての活動の一環として、第13回社会技術フォーラム「人と情報のエコシステム〜情報技術が浸透する超スマート社会の倫理や制度を考える」が開催された。会場の東京駅前・丸ビルホールは約250名が集まる盛況で、新領域が包含する対象の幅広さや深さが顕わになるとともに、新領域への期待も感じられる内容となった。最初に、主催者を代表して、泉紳一郎 社会技術研究開発センター長が挨拶し、矢島章夫 RISTEXシニアフェローによる新規研究開発領域の構想説明の後、異なる立場から「人間と機械/人工知能」「人と情報」に携わる5名の講演が始まった。

翻訳家・評論家の山形浩生氏は、「人工知能vs人類」と題し、「人間と機械は戦わなくてはならないものなのか?」「戦う理由は?」「機械や人工知能にとっての“意味”“価値”とは?」、そして「技術は純粋に自動化・無人化に向けて発展させるべきか」といった、人間と機械や人工知能の関係に関する命題を投げかけた。

続く、早稲田大学理工学術院創造理工学部総合機械工学科 高西淳夫教授の講演「情報技術の可能性と社会適応時に考慮すべきこと ーロボット工学者の視点から」では、高西教授が工学から見た“超スマート社会”の不安定要因を掲げ、その不安定要因を工学的なアプローチによって安定化する方策を語った。

“機械による自動制作”や情報を独占する巨大プラットフォームを取り上げた、弁護士(日本・ニューヨーク州)/日本大学芸術学部 客員教授の福井健策氏(講演タイトル「人工知能・著作権・プラットフォーム」)は、機械創作の作品の著作権や所有権が国によって異なることを紹介し、また、Googleのような巨大プラットフォームに対抗して、日本においては文化や漫画の独自プラットフォームの育成、知財のシステムのリフォームなどの選択肢がある旨を説明した。

4題目の「ロボットスーツHAL®の医療応用における健康概念の変更と主観評価アウトカムに関する研究ーサイバニックニューロリハビリテーションの治験実施」では、独立行政法人国立病院機構新潟病院の中島孝副院長が患者の主観評価PRO(Patient-reported outcome)を臨床試験に入れた理由を説明し、臨床試験のあり方や健康の概念の見直しが必要であることを強調した。

最後の講演「人と科学技術の複雑な関係:過去から未来へ」では、名古屋大学大学院情報科学研究科の久木田水生准教授がテクノロジーは単に道具ではなく、私たちを取り囲む環境、物理的・心理的・社会的に相互作用するエージェント、私たちが世界を認識する媒介(メディア)であると話し、「テクノロジーが人類を導くのではなく、人類がテクノロジーを導くためには、しっかりした知識に基づくオープンな議論と人々の間の信頼の醸成が必要」と締めくくった。

専門性が異なるパネラーが“超スマート社会”の倫理や制度設計を議論

慶應義塾大学総合政策学部 國領二郎教授がモデレーターを務めたパネルディスカッションには、政治学・行政学、科学技術社会論、工学、バーチャルリアリティー、医学、哲学と専門性が異なる6名のパネラー(別掲)が登壇。国領教授からの①超スマート社会の予測は可能か、②多様で変化もしていく人間において「価値」や「目的」をどう捉えるか、③技術とともに人間の認識も変えることも必要かといった問いに、それぞれの専門性や経験を踏まえて意見を述べ、会場からの質問にも応答した。

最後に、津田博司 RISTEX企画運営室 室長が「本領域自体が内外の技術動向の把握や積極的な外部発信を行い、批評も受けるエコシステムとなりたい」と抱負を述べ、4時間半を超えたフォーラムは閉会となった。

■パネルディスカッション

【モデレーター】
國領二郎(慶應義塾大学総合政策学部 教授)

【パネリスト】
城山 英明(東京大学公共政策大学院・法学政治学研究科 教授)
江間 有沙(東京大学教養学部附属 教養教育高度化機構 特任講師)
鳴海 拓志(東京大学大学院情報理工学系研究科 助教)
高西淳夫(早稲田大学理工学術院創造理工学部総合機械工学科 教授)
中島孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 副院長)
久木田水生(名古屋大学大学院情報科学研究科 准教授)