「共通基盤」領域 本格研究

本ページの目次

ロボティックバイオロジーによる生命科学の加速

pic
重点公募テーマ:「革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現」
研究開発代表者: 高橋 恒一(理化学研究所 生命機能科学研究センター チームリーダー)
研究概要ロボティックバイオロジーによる生命科学の加速(PDF:1.1MB)

 ロボティックバイオロジー(ロボットによる生命科学系実験の自動化)は、生命科学研究全体の進展を加速させます。実現すれば、再現性の危機や研究不正の問題が解決するだけでなく、多くの研究者を日々単純作業に時間を費やさざるを得ない状態から解放し、研究の生産性を飛躍的に向上させることが可能となります。

 例えば細胞培養生命科学実験では研究者の9割の時間が単純作業に費やされています。このため、研究者の作業に実験結果が依存し、熟練研究者の匠の技や暗黙知を他の実験室で再現することも困難になっています。さらに、操作のパラメーター化やログの取得もできません。一部の個別機器では自動化、ロボット化できているものもありますが、生命科学系実験プロセス全体では、機器と機器の間の仲介作業は研究者が担っており、実験全体を自動化する際のボトルネックとなっています。

 そこで、本課題では、実験現場における熟練研究者の匠の技や暗黙知をデータ化してロボットに移植し、その上で生命科学実験を部分ごとに分解し、個々の工程をロボット、機器に自動で配分する「プログラミング」によって実験全体プロセスを最適化することを目指しています。また、実験をロボット化することで遠隔地へ実験プロトコルを転送することも可能になり、さまざまな拠点で同じ実験を同じ品質で再現できるようになります。コロナ新時代にふさわしい研究現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)注1)を実現します。

 探索研究では、異種ロボットや実験機器を相互に連携させるネットワークシステム、実験プロトコル共通記述言語を開発し、AI、ロボット、計測機器の連携による完全自律継代培養技術や、異種ロボット、機器連携の並列実行をゲノム編集実験で実証しました。本格研究ではこれらの成果を基に、(1)人よりも高精度、高再現性、低コストで実験可能な並列自動化システムの確立、(2)人の能力を超える複雑な細胞培養条件を自律的に特定するAI、ロボット連携技術の確立、(3)全ゲノム臨床診断の全自動化を目指します。本研究により、細胞治療や個別化医療などを始めとする新たな医薬品、治療法の開発が加速すると考えられます。また、将来的にはこれまでコストメリットが成立せず開発の進まなかった希少疾患注2)などの治療法開発への貢献が期待されます。

 科学実験を「プログラミング」と捉えてAIと接続し新たな科学的知識の発見や研究の進展を加速するという本課題の考え方は、生命科学分野以外にも合成化学や物質科学などを始めとしたさまざまな実験科学分野に適用可能です。本課題の取り組みは、新たな科学研究のスタイルである「第五の科学」注3)の確立に向けた一歩とも考えられ、未来社会創造事業の他課題との連携や国内、国際的な議論を通じた他分野への展開にも積極的に取り組みます。

注1) デジタルトランスフォーメーション(DX)
情報技術を、単なる業務の効率化に留まらず業務プロセス、組織構造、組織文化にまで踏み込んで変革し競争力を向上することを目的として導入すること。
注2) 希少疾患
患者数が少ない疾患の総称。欧州基準、米国基準でそれぞれ患者数が1万人に5人あるいは6人未満とされる。日本では厳密に直接対応するものはないが、類似の基準として難病法が指定する難治性疾患の患者数は1万人におよそ10人、薬事法における希少疾病用医薬品の指定基準は日本全土で5万人未満。
注3) 第五の科学
AI駆動型科学とも呼ばれる。実験、理論、シミュレーション、データの4つの方法論をAI、ロボット技術で統合して飛躍的に向上する新たな方法論。



画像

図 本研究が目指すロボティックバイオロジーによる生命科学の加速

研究開発実施体制

〈代表者グループ〉
 理化学研究所

〈共同研究グループ〉
 産業技術総合研究所、東京大学、慶應義塾大学、筑波大学

〈連携機関〉
 株式会社安川電機、テカンジャパン株式会社、RBI株式会社、エピストラ株式会社

プロジェクト代表拠点

〒565-0874 大阪府吹田市古江台6-2-3
理化学研究所 生命機能科学研究センター 生命システム研究棟
https://www.bdr.riken.jp/jp/index.html

クイックアクセス

本ページの目次