マルチスケール計測・計算技術の融合による高スループットデバイス開発支援プラットフォーム
重点公募テーマ | 「革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現」 |
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研究開発期間 | 2024年4月~(探索研究 2021年10月~2024年3月) |
グラント番号 | JPMJMI24G1 |
研究概要 | 研究概要(PDF:1MB) |
2050年のカーボンニュートラルの実現には、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みが重要となります。蓄電池は、運輸分野の脱炭素化や、太陽光や風力等の再生可能エネルギーの主力電源化の鍵となる技術です。一方、蓄電池の本格的な導入拡大に向けては、蓄電池の容量・出力・コスト・信頼性の向上と希少資源の課題解決が急務です。
蓄電池は、複数の「マテリアル」の化学反応や輸送現象等を組み合わせた「デバイス」です。日本は、マテリアルにおいては60%以上の高い世界シェアを占める一方、液系リチウムイオン電池のようなデバイスでは近年著しくシェアが低下しています。従来の大量の試作・評価を前提とした手法では、潤沢な研究開発費と人材を擁する海外諸国に対抗できなくなっており、日本が強みを持つマテリアルを迅速にデバイスとして製品化する、新たな研究開発の方法論の確立が強く求められています。
研究開発代表者らは、デバイスをマテリアルの粒子レベルまで一貫してモデル化し、実物での試作評価を繰り返すことなく、モデルに基づくシミュレーションを行いながら設計開発を進めるモデルベース開発(MBD)手法を提案しています。本手法の活用により、設計工程段階から製品検証を行うことで手戻りを減らし、開発工数の大幅な短縮と高品質化が期待されます。また製品検証の結果を、マテリアルや化学反応、輸送現象等のメカニズムにフィードバックすることで、研究開発力の強化にもつながります。このとき、各工程において実物試作評価を伴うPDCAサイクル(Plan・Do・Check・Action)ではなく、OODAループ(Observe(内部評価)・Orient(データ処理)・Decide(現象計算)・Act(最適設計))を仮想空間上で実行することで、様々な試行錯誤を高速に行います。
探索研究では、デバイスとして全固体電池を対象に、①化学反応や輸送現象等とそれらの相互作用を解析する、非定常な高速シミュレーションモデルを作成し、劣化に伴う電池内部の面内反応分布や電気抵抗成分の変化要因を解明することに成功しました(井上課題)。また、②X線CT-XAFS(X線吸収微細構造)を基盤とし、マテリアル・デバイスの深部・内部における微細構造・物理化学状態を3Dマルチスケール/モーダルオペランドで分析可能なプラットフォームを開発し、電池内部の現象を俯瞰的に理解することに成功しました(雨澤課題)。そして、①②を組み合わせることで、容量劣化や充放電による応力とクラック発生という接触界面不良による劣化機構を解明しました(図1)。
本格研究では、OODAループの高度化を柱とし(図2)、井上課題の計算技術と雨澤課題の計測技術を統合し、高度計測によって統合計算モデルを構築することで、全固体電池の状態予測と最適設計を行う高速・高精度MBDを開発し、リードタイムを1/160に短縮します(図3)。
そして、全固体電池で確立した高速・高精度MBDを燃料電池や水電解等のデバイスに適用し、開発工数の大幅な短縮と高品質化を実現することで、カーボンニュートラル達成等に貢献します。
図1 計測計算技術の連携による劣化機構の解明
図2 計測・データ処理・計算・最適設計の連携
図3 未来社会実現のために導入するべき計測・計算連携技術とその効果
研究開発実施体制
〈代表者グループ〉
九州大学 大学院工学研究院 化学工学部門
〈共同研究グループ〉
東北大学、東京大学、京都大学、北海道大学、立命館大学、九州大学
高輝度光科学研究センター、国立情報学研究所、東京農工大学
トピックス
Coming Soon
※統合前の探索研究課題
「3Dマルチスケール/モーダルオペランド化学分析プラットフォームの確立」(雨澤 浩史)、「非破壊計測・時空間逆解析・モデリングの融合によるマルチスケールデジタルフィードバックの構築」(井上 元)
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