超高エネルギー密度・高安全性全固体電池の開発
重点公募テーマ | 「ゲームチェンジングテクノロジー」による低炭素社会の実現 |
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研究開発期間 | 2023年4月~(探索研究 2018年11月~2023年3月) |
グラント番号 | JPMJMI23E1 |
研究概要 | 研究概要(PDF:657KB) |
世界の電池市場規模は急激に拡大しており、2050年には100兆円に達すると試算されています。その要因のひとつに、二次電池を搭載した電動車両の普及が挙げられます。地球温暖化問題の原因である温室効果ガス、特に二酸化炭素の排出を抑制し「低炭素社会」を構築するねらいの下、電動車両の普及が世界的に進んでいます。
しかし、現行の二次電池は、リチウムやコバルト、銅といった希少資源を必要とするコスト上の課題や、繰り返し使用に伴う変形や破損といった安全性の課題が挙げられています。また、現行の車載用リチウムイオン電池では、航続距離が十分ではなく、電動車両普及の障壁となっています。そのため、安全性や体積エネルギー密度が高く、かつ資源リスクのない電池の開発が急務となっています。
そこで、本研究開発課題では、次世代車載用電池として「全固体フッ化物イオン電池」の可能性を検討しました。これまでは、適合する電極材料や固体電解質材料がなかったことや、両者を組み合わせる際の問題も明らかでなかったため、本電池の作製技術は全く手つかずの状態でした。研究開発代表者らは、それらの問題にひとつずつ取り組み、ついに車載用電池としての全固体フッ化物イオン電池の可能性を見いだしました。
具体的には、超高容量なフッ化物イオンが挿入脱離する正極材料を発見しました。これにより、正極の容量は、現行リチウムイオン電池、およびアドバンストリチウム電池と比べて、2~3倍増加しました(図)。また、界面反応の活性化エネルギーが小さい理想的な界面を形成し、電池動作に問題がないことを確認しました。さらには、高いイオン電導性を示すイオン伝導パスを見いだすことに成功し、固体電解質の新たな設計指針を確立しました。
本格研究では、車載用電池としてのポテンシャルを確認した全固体フッ化物イオン電池の形成技術の確立に重点的に取り組みます。例えば、正極探索では、窒化物イオンの酸化還元反応を活用し、鉄系材料で1.5倍の高容量化を試みます。また、探索研究から蓄積している複合アニオン化合物の教師データを用いて固体電解質の材料探索を加速することを計画しています。電池試作により新たに生じる課題を解決し、固体電池形成技術の確立とセル(電池の最小構成単位)による技術検証を目指します。
最終的には、現行の車載用リチウムイオン電池の3.5倍以上の体積エネルギー密度を持つ安全性の高い全固体フッ化物イオン電池の構成要件を明確にし、従来にはない全く新しい電池の実現を目指します。性能・安全性・資源リスクといったさまざまな面において、現行電池の性能を大幅に上回る電池システムの概念実証を行い、広く普及させることで、低炭素社会への実現に貢献します。
図 本研究課題がひらく電気自動車の本格普及
研究開発実施体制
〈代表者グループ〉
京都大学 大学院人間・環境学研究科
〈共同研究グループ〉
東北大学、物質・材料研究機構、トヨタ自動車株式会社
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