「共通基盤」領域 本格研究

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探索加速型 本格研究

酵素「活性」の診断と活用による、精密がん低分子セラノスティクス医療技術の創製

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研究開発代表者

浦野 泰照exlink

重点公募テーマ 「革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現」
研究開発期間 2024年4月~(探索研究 2021年10月~2024年3月)
グラント番号 JPMJMI24G2
研究概要 研究概要PDF(PDF:933KB)

 近年、最先端薬物治療法として、分子標的薬や免疫治療法などの個別化医療技術が注目を集めています。がんは遺伝子変異を原因とする病気であるため、がん患者毎に遺伝子診断を行い、適切な薬剤を選択する手法が進展している一方、現状では、本手法が実際に適用できる割合はおよそ10%程度に留まっており、より多くのがん患者に適用可能な新たな創薬手法の実現が望まれています。

 研究開発代表者は、がん細胞由来の特異的酵素活性がバイオマーカー注1)となることに着目し、有機化学合成による基質の精密分子設計技術を基礎に、本酵素の存在下で蛍光を示す蛍光プローブのライブラリーの創製に取り組んできました。その結果、本蛍光プローブライブラリーを活用することで、疾患部位に特徴的な酵素活性を検出することを可能とする独自のライブイメージング注2)手法(浦野方式)を確立することに成功しました。

 探索研究では、将来的な臨床に向けて、蛍光プローブライブラリーの充実を図るべく、新規の蛍光寿命特性を持つ色素群の開発に取り組みました。また、同一波長の蛍光色素の寿命特性に基づく分別検出、自家蛍光を排除した生細胞蛍光イメージングを実現し、1mm以下の微小がんの精密検出につながる有用な色素・プローブの開発に成功しました。加えて、大腸、卵巣原発・腹膜播種、膵がんに特異的な酵素を発見し、この酵素活性によって機能するプロドラッグを開発し、マウスモデルにおいて既存薬よりも低い副作用で、肺がんや腹膜播種がんの顕著な縮小・寛解を確認しました。

 本格研究では、探索研究で取り組んだ蛍光ライブイメージングを踏まえ、高精度・定量的な酵素活性診断法の確立に取り組みます。一方、深部がんの蛍光イメージングは困難であるため、蛍光イメージングプローブに代えて、核医学・光音響イメージングプローブの開発を行い、がんの超早期診断の実現を目指します。
さらに、治療面においては、蛍光プローブライブラリーで得た知見を活用し、プローブ中の蛍光物質部位を細胞傷害性物質へ置き換えることで、酵素活性によって初めて薬効を示すプロドラッグ注3)型低分子がん治療薬ライブラリーを創製します。さらに新たに開発する前記診断法と組み合わせて、副作用を最小限に抑えつつ、最大のがん治療効果を得るための薬剤投与量や投与方法を決定し、実効性の高い医療技術の実証を目指します。
これにより、がん患者毎にバイオマーカーとなるがん細胞由来の特異的酵素活性を診断し、これに対応するプロドラッグを投与する新たな個別化・精密がん治療に適用可能な低分子セラノスティクス医療注4)技術を創製します。

 酵素活性を基軸とする世界初のアプローチにより、従来は有効な治療選択肢がなかった、進行肺がんや膵がんなどを含む大多数のがん患者にも、有効性の高い治療選択肢を提供します。そして、がん以外の疾患、老化や認知症などunmet medical needsの高い疾患においても、これらに特異的な酵素活性を見出すことができれば、新たな治療法の提示につながることが期待されます。

注1)バイオマーカー:ある疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標
注2)ライブイメージング:生体組織や細胞を生かしたまま、個々の細胞のはたらきや遺伝子の発現の様子を可視化し、外部から観察する手法
注3)プロドラッグ:もとのままの形では薬理作用を示さず、生体内で代謝されることにより薬理活性を発揮する薬剤
注4)セラノスティクス医療:治療(Therapeutics)と診断(Diagnostics)を一体化した新しい医療技術

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図 本格研究が目指す疾患部位に特徴的な新たな「酵素活性」検出法(浦野方式)およびプロドラッグ型低分子がん治療薬の開発


研究開発実施体制

〈代表者グループ〉
 東京大学 大学院薬学系研究科 同医学系研究科

〈共同研究グループ〉
 がん研究会、大阪公立大学、防衛医科大学校、国立がん研究センター

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