「共通基盤」領域 本格研究

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探索加速型 本格研究

超原子座標構造の可視化による創薬の革新

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研究開発代表者

米倉 功治exlink

重点公募テーマ 「革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現」
研究開発期間 2023年4月~(探索研究 2020年11月~2023年3月)
グラント番号 JPMJMI23G2
研究概要 研究概要PDF(PDF:769KB)

 現在、医薬品は世界で180兆円規模の市場となっており、今後さらに拡大すると予想されています。希少疾患は約7,000種類にも及び推定患者数は世界で3億5,000万人いるとされますが、このうち治療薬のない疾患は95パーセントにも上ります。また、国内においても指定難病に罹患している患者が100万人以上いると言われています。

 このような現状において、難病や新規感染症の患者に治療薬を一刻も早く届けることが急務となっています。しかし、現状の創薬プロセスでは、基礎研究の開始から新薬として承認を得るまで13~17年ほどかかるほか、患者数が少なく開発投資に対してリターンが期待できないため、治療薬の開発が進まないことがあるといった課題があります。

 研究開発代表者らは、探索研究において、有機半導体やポリペプチド、たんぱく質などの構造解析のため、①クライオ電子顕微鏡の単粒子解析と電子回折のデータ取得に機械学習を適用することで、効率と生産性を大きく向上させました。また、②最小原子である水素に加え電荷を単粒子解析によって可視化に成功、③クライオ電子顕微鏡とX線自由電子レーザーとを相補的に利用した計測・解析を行う技術を開発し、従来の原子座標だけでなく、水素の極性、電子の分布に関する情報を取得できる可能性を見いだしました。

 本研究開発課題では、探索研究の成果をさらに発展させ、原子座標のみならず、電荷分布や水素結合、高速な電子の変位といった情報を含む「超原子座標構造」の迅速な取得を可能にする計測・解析技術の開発を進めます。これにより、見えなかった物性や現象の可視化の実現を目標とします。さらに、日本電子株式会社と協力し、これらの技術を取り込んだ次世代クライオ電子顕微鏡システムへつなげます。

 これまで、創薬研究においては計算機シミュレーションと実験による検証を繰り返して薬剤開発候補化合物の絞り込み、最適化が行われてきましたが、ターゲットたんぱく質と候補化合物の構造(原子座標)のみの情報で結合を予測するのは不十分です。また、新規感染症や多様化しているターゲットに対しては、創薬研究開始から前臨床試験に到達するまでに3~5年の年月を要するのが一般的です。本研究開発の成果を用いて、多様なターゲットを迅速に解析し、電荷分布、水素結合の強度などの情報を取得することにより、精密構造に基づく定量的な結合評価から計算機探索の確度向上と、実験検証の高速化を目指します。これにより、候補化合物の最適化までの期間を50~90パーセント短縮することが期待されます。

 本技術を搭載した国産クライオ電子顕微鏡システムの市販と普及により、欧米に遅れをとったシェアを取り戻し、創薬分野の課題を解決するだけでなく、新材料開発を始めとする材料分野のほか、エネルギー、環境、生命科学など幅広い分野への応用が促進されます。以上から、共通基盤技術として研究開発現場の生産性向上に貢献します。



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図 本格研究が目指す原子分解能を超えた精細な構造解析による創薬の革新

研究開発実施体制

〈代表者グループ〉
 理化学研究所 放射光科学研究センター

〈共同研究グループ〉
 東北大学、東京大学、日本電子株式会社 等

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