自然科学研究機構 分子科学研究所,理化学研究所,科学技術振興機構(JST)

令和3年3月24日

自然科学研究機構 分子科学研究所
理化学研究所
科学技術振興機構(JST)

ナノグラフェンの二重らせん構造が電子回折で明らかに

~分子の凹凸でパズルのように組み上がる~

ポイント

分子が自発的に集合して形成するナノメートルサイズの繊維状物質「超分子ナノファイバー」は、半導体材料やゲル化剤の有用な材料です。分子を1方向に自発的に集積させるためには分子同士に適切な相互作用部位を持たせる必要があり、酸素原子や窒素原子を含む置換基や長い炭化水素置換基が必須であるとされてきました。

今回、分子科学研究所の瀬川 泰知 准教授は、名古屋大学の伊丹 健一郎 教授、加藤 健太 大学院生(研究当時)、理化学研究所の高場 圭章 特別研究員、眞木 さおり 研究員、米倉 功治 グループディレクター(東北大学 多元物質科学研究所を兼任)らとの共同研究によって、有機溶媒中で自己集合しナノファイバーを形成する湾曲ナノグラフェンを開発しました。さらに電子回折結晶構造解析によってファイバー中での分子配列を決定し、湾曲ナノグラフェンが二重らせん構造を取っていることを明らかにしました。二重らせんの内部では、置換基を持たない湾曲ナノグラフェンがお互いの凹凸によってパズルのように組み上がっています。

本研究によって、分子の凹凸デザインという新しい超分子ナノファイバー形成方法が見いだされました。炭素ナノファイバーは分子エレクトロニクス材料として期待されている材料であり、本法によってこれまで不可能であったさまざまな炭素ナノファイバーの合成が期待できます。

本成果は2021年3月24日(日本時間)、アメリカ化学会誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されます。

本研究は、以下の支援を受けて行われました。

JST 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究 ERATO「伊丹分子ナノカーボンプロジェクト」(課題番号:JPMJER1302、研究総括:伊丹 健一郎)

日本学術振興会 科学研究費補助金 特別推進研究「未踏分子ナノカーボンの創製」(課題番号:JP19H05463、研究代表者:伊丹 健一郎)

日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B)「トポロジカルπ共役化学の開拓」(課題番号:JP19H02701、研究代表者:瀬川 泰知)

文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)「π造形科学」公募研究(課題番号:JP17H05149、研究代表者:瀬川 泰知)

日本医療研究開発機構(AMED) 医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)(研究代表者:米倉 功治)

JST 未来社会創造事業 探索加速型「共通基盤」領域「微小結晶構造の自動・高精度電子線解析」(課題番号:JPMJMI20G5、研究開発代表者:米倉 功治)

大幸財団(研究代表者:瀬川 泰知)

豊秋奨学会(研究代表者:瀬川 泰知)

<プレスリリース資料>

<論文タイトル>

“Double-helix supramolecular nanofibers assembled from negatively curved nanographenes”
(負曲率ナノグラフェンの集合による二重らせん超分子ナノファイバー)
DOI:10.1021/jacs.1c00863

<お問い合わせ先>

(英文)“Double-Helix Supramolecular Nanofibers Assembled from Negatively Curved Nanographenes”

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