開催概要
- 開催日時
- 2025年3月14日(金) 13:30~17:15
- 会場
- 東京理科大学 野田キャンパス、Zoomオンライン会議
- 主催
- 本格研究「ヒト感染性ウイルスを迅速に検出可能なグラフェンFETセンサーによるパンデミックのない社会の実現(松本課題)」
- イベント
プログラム - 「ナノテクノロジーを駆使したバイオセンサーと2次元材料の最前線」
(PDF:588KB)
報告
2023年3月15日 、2024年3月22日 に続いて3年連続で、本格研究「ヒト感染性ウイルスを迅速に検出可能なグラフェンFETセンサーによるパンデミックのない社会の実現(松本課題)」(研究開発代表者:松本和彦(大阪大学))のシンポジウムが2025年3月14日、東京理科大学野田キャンパスおよびオンラインにて、第72回応用物理学会春季学術講演会のシンポジウムとして開催され、会場参加にてほぼ満席の約70名、オンラインにて約50名の方に参加いただきました。最新のナノテクノロジーとバイオセンシングについて多方面から俯瞰するシンポジウムであり、会場からの質問が活発になされるなど、多くの関心を集めました。
松本和彦先生による本シンポジウムの趣旨説明に続いて、田中健一運営統括より挨拶とともに当事業ならびに当研究課題の概要や特徴が紹介されました。続く講演では、研究チームによる最新の研究成果の報告だけでなく、バイオセンサーや2次元材料の研究開発に取り組む4名の先生より当該分野の概況やホットな研究成果について紹介されました。
研究チームによる講演では、研究開発代表者の松本和彦先生よりグラフェンFETセンサーに関する最新の研究成果が紹介されました。正電荷を有する添加物を用いてグラフェン表面の負電荷を制御することにより感度を向上する技術において、添加物の濃度と感度の関係が実験と理論の両面から説明され、高感度化のための最適条件が明確にされました。また、高感度化や安定化に資するデバイス構造やプロセスについても報告がありました。牛場翔太氏(村田製作所)よりラマン顕微鏡を用いて計測したラマン散乱光とFET特性の相関が示され、完成前の工程で電気特性のバラツキが予見できる新しい技術が報告されました。木村雅彦氏(村田製作所)よりグラフェンFETセンサーの社会実装に向けた研究開発シナリオならびにこれに沿って進めている技術開発戦略、特に信頼性や安定性への取り組みについて紹介されました。
渡邉力也先生(理化学研究所)よりウイルスを増幅することなく高感度かつ迅速に定量できる世界最速の非増幅遺伝子検査法(SATORI法)が概説され、最新の開発状況、実用化に向けた取り組み、その先にある感染症対策の未来像や他分野への展開構想が述べられました。早水裕平先生(東京科学大学)よりペプチドを用いた2次元材料表面上のバイオ分子とナノ材料界面の自己組織化による制御に関する研究の最新の進展が報告され、ホットな話題として生体の嗅覚受容体を模倣したペプチドを利用したグラフェンベースの匂いセンサーが紹介されました。吾郷浩樹先生(九州大学)より2次元物質を成長と転写で積層することで拓かれる「2.5次元物質科学」という概念が紹介され、六方晶窒化ホウ素の多層膜のCVD合成とグラフェンFETへの応用や、高品質なグラフェンを転写するための革新的なUVテープ転写方法について詳細に報告されました。廣瀬大亮先生(北陸先端科学技術大学院大学)より酸化物薄膜トランジスタ型バイオセンサーの最新の開発状況として、教師あり機械学習(ランダムフォレスト法)を導入することで正答率を向上できることが報告されました。
今後、松本課題では、デバイスの更なる高性能化、安定化を図るとともに、誰でも、どこでも、簡単に扱えるウイルス検出システムを実現します。これらの技術開発により、生活空間に潜む様々なウイルスを迅速に見つけることを可能とし、安全・安心で快適な社会の実現に貢献します。

会場の様子

松本和彦先生

田中健一運営統括

牛場翔太氏

木村雅彦氏

渡邉力也先生

早水裕平先生

吾郷浩樹先生

廣瀬大亮先生
以上