持続的な食糧生産を可能にする野生植物の新奇食糧資源化
重点公募テーマ | 「社会の持続的発展を実現する新品種導出技術の確立」 |
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研究開発期間 | 2023年04月~(探索研究 2020年11月~2023年03月) |
グラント番号 | JPMJMI23C1 |
研究概要 | 研究概要(PDF:895KB) |
世界的な人口増加に伴い、2050年には今の1.7倍の食糧が必要との報告があります。一方で、地球温暖化による環境変化は、想像以上のスピードで進行しており、各地で深刻な塩害や植物病害の発生を引き起こし、作物生産に大きな影響を及ぼしています。この環境変化は、食糧の生産・安定供給に対する最大のリスク要因であり、早急に対応を取らなければ、日本だけでなく地球規模で食糧安全保障体制が崩壊し、さらに大きな混乱に直面する可能性があります。野生植物(雑草)だったほとんどの栽培作物は、数千年から一万年以上前に、人為選抜により栽培に必要な形質(難脱粒注)・穀粒肥大・収量増など)を付与されることにより、栽培植物に変化しました。この過程で、多くの栽培植物は遺伝的多様性を失い、環境変化やストレスに脆弱になりました。このため、新たな栽培作物を早急に開発する必要がありますが、栽培作物を用いた育種やゲノム編集では、この環境変化に耐えうる新たな作物を短期間で開発するのは難しいことが知られています。
本研究では、気候変動強耐性の野生植物(雑草)に独自の技術で新たに栽培形質を付与し、超短期間で新たな食糧資源へと改変する技術基盤を確立することを目指します。具体的には、国立遺伝学研究所が保有する世界的に貴重な野生イネ遺伝資源を活用し、茎頂ゲノム編集や顕微授精技術により栽培に必要な形質を付与、環境変化に耐えうる新たな作物を開発します(図)。
探索研究では、茎頂ゲノム編集を用いて多数の野生イネ系統への遺伝子導入に成功し、さらに、一部系統で有用形質(穀粒肥大など)の付与が可能であることを示しました。また、顕微授精技術を用い、野生イネと栽培イネの交雑体や異質倍数体を作出し、それぞれの優良形質をもつ雑種開発の可能性を示しました。
本格研究では、世界的に喫緊の対応が求められている耕作地の塩害問題を解決するために、耐塩性の野生イネに栽培形質を付与した新たな食糧資源の開発を目指します。加えて、他の有用形質をもつ野生イネやコムギ、トウモロコシに対しても形質の改変を行い、栽培化を可能にする汎用的な技術としての確立を目指します。これにより、今後、温暖化で変化する地球環境においても、持続的な食糧生産が可能となる、豊かな未来社会を実現します。
注)脱粒:種子が成熟に伴い穂や莢(さや)から自然に離れ落ちること。
図 野生種を用いた新奇食糧資源開発
研究開発実施体制
〈代表者グループ〉
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所
〈共同研究グループ〉
東京都立大学、名古屋大学、岡山大学、理化学研究所、横浜市立大学、鳥取大学、(株)グランドグリーン
トピックス
Coming Soon※統合前の探索研究課題
「三大穀物間Cybrid植物を核とする異種ゲノム育種」(岡本 龍史)・「野生遺伝資源を活用したイネ科新奇食糧資源の開拓」(佐藤 豊)
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