「持続可能な社会の実現」領域 本格研究

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CFRPの疲労劣化の機構解明と余寿命推定法の確立

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 複合材料の一種である炭素繊維強化プラスチック(CFRP, Carbon Fiber Reinforced Plastics)は、母材であるプラスチック樹脂と強化材である炭素繊維の組み合わせで構成され、高強度・軽量性といった特徴を有しています。このため、省資源・省エネルギー化を目指してさまざまな産業分野で構造部材としての展開が有望視されていますが、使用に伴う疲労や劣化が破損・破壊に及ぼす影響を定量化できていないことから、安全性・信頼性確保のために強度余裕を過剰に確保した設計をせざるを得ず、軽量であることのメリットを十分に活かせていないケースがあります。また、疲労や劣化による変化を詳細に把握できていないことから、一度使用した製品・部品に残された機能や寿命の高精度な評価ができないため、品質保証が難しく、継続使用・再使用が進んでいません。

 持続可能な社会の実現のためには、製品の長期使用やリサイクルを前提とした設計が必要です。CFRPに代表される複合材料についても、信頼性を担保しながら長期に使用し、本来の高強度・軽量などの特性を最大限有効に活かすことが課題となっています。この課題解決のためには、複合材料における疲労・劣化のメカニズムを明確にし、高精度な余寿命推定を可能にすることで、安全性が担保可能な範囲で限界まで使い続ける技術の構築が必要となります。

 本研究開発課題の探索研究期間には、異なる負荷を加えた共通試験体を、様々なミクロな観察手法を用いて現象を観察し、エントロピー(熱的な乱雑さを表す物理量)の変化、比熱・熱伝導特性の変化、電子スピン量(分子レベルでの結合状態を示す値)の変化とCFRPの疲労・劣化状態が良い相関を持つことを明らかにしました。また、分子動力学のシミュレーションにより、ナノ、ミクロ、メゾのスケールにわたる劣化をエントロピーで記述するモデルの構築を進め実験結果と整合することを確認しました。さらにメゾからマクロな損傷の発生から破壊への現象を詳細に調べ、その進展を記述するモデルを構築し、精度良く余寿命推定ができる可能性を示しました。本格研究ではCFRPが疲労・劣化によりナノ・ミクロな損傷からマクロな破壊に至る現象を記述する統合モデルを構築します。併行して、従来困難であったCFRPの疲労・劣化診断技術を確立し、得られた損傷パラメータをデジタルツインのシミュレーションにインプットすることで、高精度な余寿命推定技術を実現します。これにより損傷パラメータをモニターしながらCFRPを安全にその寿命まで使い続けることや、疲労・劣化を想定した限界設計により更なる軽量化が期待できます。さらには軽量化、耐久性を向上させた新しい複合材料開発にフィードバックすることで、省エネルギー化に貢献し持続可能な社会の実現を推進します。


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図 研究目標と検討内容の概念図

研究開発実施体制

〈代表者グループ〉
 名古屋大学 工学研究科

〈共同研究グループ〉
 高エネルギー加速器研究機構、筑波大学、東京理科大学、名古屋大学、北海道大学


※統合前の探索研究課題
「エントロピー損傷に基づく熱可塑CFRPの寿命定量化」(小柳 潤)・「疲労・劣化の根源となる欠陥/き裂の非破壊観察技術の実現」(木村 正雄)・「熱伝搬挙動の高感度計測に基づくミクロ劣化評価」(長野 方星)・「CFRP複合材劣化のオペランドミクロ計測分析法と余寿命推定モデル」(丸本 一弘)・「CFRPの長期信頼性向上を目的とした材料設計・評価システムの開発」(荒井 政大)

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