「顕在化する社会課題の解決」領域 本格研究

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探索加速型 本格研究

衛星観測とモデルシミュレーションとの融合による長時間洪水予測の実装:洪水を災害にさせない社会の実現に向けて

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研究開発代表者

芳村 圭exlink

重点公募テーマ 「持続可能な環境・自然資本を実現し活用する新たな循環社会システムの構築」
研究開発期間 2024年4月~(探索研究 2021年10月~2024年3月)
グラント番号 JPMJMI24I1
研究概要 研究概要PDF(PDF:848KB)

 洪水による被害額は世界では毎年約4兆円、国内でも2019年の台風19号では1兆8千億円に上る規模となっています。気候変動による極端降水の増加により洪水被害は今後も一層激甚化すると懸念され、洪水の防止・減災は喫緊の社会課題となっています。

 洪水による被害・災害を防ぐには、堤防等のハードの整備・増強はもとより、洪水発生前のダム放流や水門制御等を適時に実施するとともに、気候変動も踏まえた洪水予測に基づく土地利用や防災施設の計画が必要です。また、洪水による減災には、洪水を事前把握し、誰もが発災前に効果的な諸対策をうつための時間的余裕をもてるような防災対応が必要です。これらを実現するためには、3つの課題があります。第1は洪水の予測技術です。現状の洪水予測は早くても6時間前であり、その時点からでは十分な防災対応を行うための時間が不足しています。加えて、予測精度や情報の詳細さが不足しているため、例えば、洪水リスクが高い局所地域の水防施設を前もって集中的に強化する等の対応が困難です。第2は、予測情報が自治体や企業等の多様な属性の受け手ニーズに応じた形で適時かつ確実に伝達されていないことです。第3は、予測時間が短いこともあいまって、予測情報の受け手が最適な防災対応を自身で能動的に判断・実行できないことです。

 本研究では、上記の3課題を解決するために、まず、高度(早期・高精度・詳細)な洪水予測技術を開発し、加えて、洪水に関連する情報伝達と防災対応を連動させ最適化する技術基盤を開発します。その上で、自治体・企業・市民との連携による、社会実験等を通じて行動変容に導く手法を確立し、国や自治体への中長期的な効率的ハード増強計画を提案することにより「洪水を災害にさせない社会」の実現を目指します。

 探索研究では、機械学習を用いて降水予測を補正することで実際の観測値とほぼ同等の降水予測が可能であることや、詳細な地形データを基にダウンスケーリングする手法を用いることで浸水深さ分布分析の高解像度化(30m)が可能であることを実証しました。また、自治体との協働により予測情報に対する具体的ニーズを洗い出すとともに、予測精度が60%を超えると実施可能な対応が大幅に増えることを明らかにしました。

 本格研究では、予測技術に関し、人工衛星データをはじめ多様な観測情報や知見のデータ同化による早期洪水予測(3日前)と、浸水予測の全世界での高解像度化を達成します。上記第2と第3の課題に対しては、災害状況を再現・生成するサイバーフィジカル空間を構築し、予測情報の伝達・活用が防災行動と洪水防止につながるかを検証します。また、自治体の防災訓練等で行う社会実験を通じ防災行動を分析し、能動的な判断・行動につながる防災計画の立案手法を構築します。そして、それらを踏まえ国や自治体の中長期的治水・土地計画の策定にも貢献します。以上を通じ、洪水発生を最大限防止し、かつ誰もが能動的に防災対応を判断・行動できる「洪水を災害にさせない社会」の実現に貢献します。

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図 洪水の防止・減災に関する課題と、「洪水を災害にさせない社会」実現に向けた挑戦

研究開発実施体制

〈代表者グループ〉
 東京大学 生産技術研究所

〈共同研究グループ〉
 名古屋大学、京都大学、宇宙航空研究開発機構、九州大学、大阪大学、名古屋工業大学
 大日本ダイヤコンサルタント、長野県庁、あいおいニッセイ同和損害保険、Gaia Vision
 三井住友海上火災保険、ミチ クリエイティブシティデザイナーズ、日本放送協会

プロジェクトHP

https://isotope.iis.u-tokyo.ac.jp/exlink

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