「次世代情報社会の実現」領域 本格研究

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探索加速型 本格研究

香り再現にもとづいたデジタル香り技術の構築

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研究開発代表者

中本 高道exlink

重点公募テーマ 「AI・ビッグデータ・IoT を駆使した Human-centric デジタルツインによる新たな未来社会デザイン」
研究開発期間 2025年4月~(探索研究 2022年10月~2025年3月)
グラント番号 JPMJMI25H1
研究概要 研究概要PDF(PDF:735KB)

 人間の五感のうち嗅覚は化学感覚であることから、計測やデータ化、言語表現、および再現・提示などは容易ではなく、情報化社会でも活用の機会が非常に限られています。そのため既存のデジタル技術は視覚や聴覚、あるいは触覚など物理感覚に立脚したものが中心でした。しかし、感覚や感性において嗅覚に依存する部分は少なくなく、化学感覚をデジタル情報として取り込むことで、情報化社会の飛躍的発展が期待できます。

 従来も優れた嗅覚研究は行われてきましたが、香りを情報として扱うための技術、具体的には、香りを計測し、保存や流通が可能な形式でデータ化し、さらにデータに基づいて任意の香りを生成し、それを人に提示するという一連の技術は未踏の領域でした。本研究開発課題では、これらの技術群を統合した「デジタル香り技術」の実現を目指します。

 これまでに取り組まれてきた香りの研究開発の代表的なものとして、香りを提示する装置(香りディスプレー)や匂いセンサーが挙げられます。香りディスプレーはさまざまな方式が提案され、すでに一部は製品化されていますが、いずれも簡便に香りを発生させることに主眼が置かれ、多種多様な香りを柔軟に再現するコンセプトを有していませんでした。また、匂いセンサーも、金属酸化物を活用したものやバイオセンサーなどの提案がありますが、十分な性能と安定性を有するセンサーはまだ実現されていません。

 本研究開発課題は、研究開発代表者らが培ってきた要素臭を用いた香り再現技術を基盤として、匂いセンサーなどによる香りの計測とデータ化、香りデータの保存と伝達、および香りの再現や創作、そして提示までを包括的に含むデジタル香り技術の確立を目指すものです。ここで開発する香りの再現や創作の技術は独自性が高いため、日本がデジタル香り技術分野の研究開発をリードするとともに、主導権を持って国際標準化し、サービス化や製品化などを推進することが可能になります。

 研究開発代表者らは、探索研究期間において人間の知覚による要素臭作成方法を考案し、香りディスプレーによる28種類の精油の香りの再現、センサーを用いた混合臭の濃度定量、および言語表現から香りを創作する基礎実験に成功しています。本格研究ではこれらの成果を活用し、①少数の要素臭による悪臭を含む日常生活臭全体の7割の再現と香り情報の汎用的な表現法の確立、②言語表現を用いた対話型香り創作AIの開発、および③香りディスプレーとゲームやシミュレーターなどのコンテンツから成る香り提示技術による臨場感の高い香り疑似体験の実現、という3つの目標を掲げて研究開発を行います。

 本技術は、嗅覚情報の応用可能性を大きく広げるとともに、まったく新しい価値を持つ多様な製品やサービスを生み出す基盤となり、日本の産業界への多大な寄与が期待できます。具体的には、食品・飲料、ヘルスケア、広告・エンターテインメント、各種シミュレーター、教育、文化保存・継承など、多岐に渡る分野への適用が想定されています。

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図 デジタル香り技術の研究開発の全体像

研究開発実施体制

〈代表者グループ〉
 東京科学大学 総合研究院

〈共同研究グループ〉
 東京農工大学、文京学院大学、P&Gイノベーション合同会社、太陽誘電株式会社

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