- 環境・エネルギー
研究開発の俯瞰報告書 環境・エネルギー分野(2023年)
エグゼクティブサマリー
本報告書は、JST-CRDSが環境・エネルギー分野における最新の研究開発動向やトピックス、研究課題、国際動向などの情報を中立的かつ客観的に俯瞰調査、分析した結果をまとめたものである。
持続可能で豊かな社会の実現に向けて取り組むべき課題は社会、経済、地球環境など広範にわたり山積している。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の世界的流行、気候変動や自然災害、各地での紛争等の影響もあり状況は多くの面で停滞または後退している。いかにして歩みを進め、持続可能で豊かな社会への移行(トランジション)を実現するかが改めて問われている。
本書では、環境・エネルギー分野を取り巻く社会経済的な動向を把握するとともに、35の研究開発領域を設定し、各領域の研究開発動向を俯瞰した。俯瞰調査にあたっては個々の領域の専門的かつ最新の知見を有する学協会関係者や有識者の協力を得た。
研究開発動向を概観すると、近年の中心的課題は気候変動対応であった。パリ協定の目標達成に向けた温室効果ガス排出の正味ゼロ、いわゆるカーボンニュートラルに関する取組みが一層活発化していた。しかし同時にロシアのウクライナ侵攻により国際エネルギー市場が混乱し各国はエネルギー安全保障の重要性も改めて認識させられる状況となっていた。
カーボンニュートラルの実現に向けて長い時間をかけて社会の移行(トランジション)を進める中では、新規技術・システムの社会実装の停滞や不測の事態の発生など、様々な不確実な事柄が付きまとう。これらに柔軟かつ動的に対応しながら着実に前進していくことができなければ野心的な目標の達成は難しい。
そのためトランジションの過程においては不確実性のマネジメントという観点が重要になると考えられる。気候変動対応とくに気候変動の緩和に向けた取り組みでこうした傾向が顕著だが、気候変動適応、防災・減災、生物多様性、循環型経済、化学物質管理、都市環境等、持続可能な社会への移行の様々な側面で共通するテーマであると考えられる。
環境・エネルギー分野の研究開発は極めて広範囲にわたる。現在の社会の発展とともに、より良い社会と地球環境を将来世代へと引き継いでいく責務も担っている。不確実性に備え、対処しながら、たくましく発展していく社会を支える柱として研究開発を力強く進めていくことが求められている。
※本文記載のURLは2023年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。
目次
研究開発の俯瞰報告書 環境・エネルギー分野(2023年)
1.研究対象分野の全体像
- 1.1 俯瞰の範囲と構造
- 1.1.1 社会の要請、ビジョン
1.1.2 科学技術の潮流、変遷
1.1.3 俯瞰の考え方(俯瞰図)
- 1.1.1 社会の要請、ビジョン
- 1.2 世界の潮流と日本の位置づけ
- 1.2.1 社会・経済の動向
1.2.2 研究開発の動向
1.2.3 社会との関係における問題
1.2.4 主要国の科学技術・研究開発政策の動向
1.2.5 研究開発投資や論文、コミュニティー等の動向
- 1.2.1 社会・経済の動向
- 1.3 今後の展望・方向性
- 1.3.1 今後重要となる研究の展望・方向性
1.3.2 日本の研究開発の現状と課題
1.3.3 わが国として重要な研究開発
- 1.3.1 今後重要となる研究の展望・方向性
2. 研究開発領域
- 2.1 電力のゼロエミ化・安定化
- 2.2 産業・運輸部門のゼロエミ化・炭素循環利用
- 2.3 業務・家庭部門のゼロエミ化・低温熱利用
- 2.4 大気中CO2除去
- 2.5 エネルギーシステム統合化
- 2.6 エネルギー分野の基盤科学技術
- 2.7 地球システム観測・予測
- 2.8 人と自然の調和
- 2.9 持続可能な資源利用
- 2.10 環境分野の基盤科学技術