研究開発の俯瞰報告書
  • 環境・エネルギー

研究開発の俯瞰報告書 環境・エネルギー分野(2021年)

エグゼクティブサマリー

本報告書は、JST-CRDSが環境・エネルギー分野における最新の研究開発動向やトピックス、研究課題、国際動向などの情報を中立的かつ客観的に俯瞰調査、分析した結果をまとめたものである。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は私たち人類社会の様々な側面に影響を及ぼしている。特に社会経済活動の抑制・停滞は深刻である。一方、人為起源の温室効果ガス(GHG)の排出量が一時的に減少すると見込まれている。しかし、その減少量はそもそもの排出量全体から見れば、残念ながらごく一部に過ぎない。パリ協定の目標達成に向けた取組みが、引き続き必要である。気候変動緩和や適応への取組み以外にも、人間活動に伴ってもたらされる様々な環境負荷や生物多様性の損失への対応など、世界が直面する重要課題は多い。エネルギーの安全かつ安定的な供給も不可欠である。環境・エネルギー分野の研究開発には、こうした様々なリスクや社会的要請への貢献が求められている。

本書では、環境・エネルギー分野を取り巻く社会経済的な動向を把握するとともに、30の研究開発領域を設定し、個別領域における研究開発動向を俯瞰した。俯瞰調査にあたっては、各領域の専門かつ最新の知見を有する学協会、有識者の協力を得た。領域を超えて共通的に見られた潮流は「科学的知見や技術の総合化・統合化、技術間の協調・調和」、「観測・計測、分析、予測などの高精度化・高解像度化」、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)・CPS(サイバー・フィジカル・システム)による仮想化・知能化」の3点である。

今後一層重要性が増す環境・エネルギー分野の研究開発としては、「社会の移行(transition)を促進する研究開発」と予測される。持続可能性と包摂性を共通の価値観として、目指す社会の方向性として「ネットゼロエミッションな社会(気候変動緩和)」、「アダプティブな社会(気候変動適応)」、「レジリエントな社会(強靭性)」、「サーキュラーな社会(循環経済)」の4つが考えられる。その促進の鍵となるのは「DX化」および「人の行動や社会との関わりの深化」である。社会の移行を各国が加速させる中、これに貢献することが研究開発にも求められている。

環境・エネルギー分野の研究開発は極めて広範囲にわたる。現在の社会の発展とともに、より良い社会と地球環境を将来世代へと引き継いでいく責務も担っている。コロナ禍に直面し、明日の生活にも不安を抱かざるを得ない状況が続いているが、この困難を乗り越えてたくましく発展していく社会を支える柱として研究開発を力強く進めていくことが求められている。

目次

研究開発の俯瞰報告書 環境・エネルギー分野(2021年)

  • 分野概要図
  • エグゼクティブサマリー
  • Executive Summary
  • はじめに
  • 目次
  • 1.研究対象分野の全体像
    • 1.1 俯瞰の範囲と構造
      • 1.1.1 社会の要請、ビジョン
        1.1.2 科学技術の潮流・変遷
        1.1.3 俯瞰の考え方(俯瞰図)
    • 1.2 世界の潮流と日本の位置付け
      • 1.2.1 社会・経済の動向
        1.2.2 研究開発の動向
        1.2.3 社会との関係における問題
        1.2.4 主要国の科学技術・研究開発政策の動向
        1.2.5 研究開発投資や論文、コミュニティー等の動向
    • 1.3 今後の展望・挑戦課題
      • 1.3.1 今後重要となる研究の展望・方向性
        1.3.2 日本の研究開発の現状と課題
        1.3.3 国として推進すべき重点テーマ
        1.3.4 研究開発体制・システムのあり方
  • 2.俯瞰区分と研究開発領域
    • 2.1 エネルギー
      • エネルギー資源探査・開発技術、CCS、火力発電、原子力発電、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電・利用、その他の再生可能エネルギー発電(水力、海洋、地熱、太陽熱)、電気エネルギー利用(エネルギーマネジメントシステム)、電気エネルギー利用(電力貯蔵)、熱エネルギー利用(産業熱利用)、熱エネルギー利用(民生熱利用)、化学エネルギー利用、地域熱供給(地域冷暖房)、エネルギーシステム評価、反応性熱流体、トライボロジー、破壊力学、計算工学
    • 2.2 環境
      • 気候変動観測、気候変動予測、水循環(水資源・水防災)、水利用・水処理、除去・浄化技術(大気、土壌・地下水)、有機化学物質分析・毒性評価、無機化学物質分析・動態把握、生態系・生物多様性の観測・評価・予測、社会-生態システムの評価・予測、循環利用とライフサイクル評価、都市環境サステナビリティ(気候変動適応、感染症、健康)、農林水産業における気候変動適応・緩和
  • 付録
  • 謝辞
  • 奥付

参考:研究開発領域別に読む(全分野一覧を別ウインドウで開きます)

解説記事