初代創発PO研究体制

創発研究者(2022年度採択)

あ行

相澤 直矢

伊丹/福島パネル

励起一重項と三重項のエネルギー逆転の創発
フントの規則より、同一電子配置において、最大のスピン多重度を持つ状態が最低エネルギーを持ちます。よって、励起三重項は一重項よりエネルギーが低く、それらのエネルギー差ΔESTは正であると知られています。本研究では負のΔESTを持つ有機発光材料群を開発し、希少金属フリーの高性能有機ELデバイスを実現します。さらに、多数の電子配置から創発する負のΔESTの基礎科学を開拓し、素子性能の飛躍的な向上に繋がる学理を確立します。

青山 一真

八木パネル

Cross Physics Nerve Stimulationによる高度な神経刺激手法の構築
この研究では、神経活動に対して異なる性質で効果を与える電気・磁気・熱・振動・圧力の5つの高い物理現象の特性の違いと、その相互作用を積極的に活用する事で、空間的・時間的・強度的に高度な神経刺激(Cross Physics Nerve Stimulation)を開発します。また、各刺激と化学物質や血流を含む複雑な物理現象を有限要素法によりモデル化し、神経がもたらす全ての身体的・生理的・心理的能力の拡張する刺激の設計を可能とします。

秋山 雅博

石塚パネル

化学修飾に立脚した環境曝露と腸内細菌の新たな関係
ヒトを含む生物は多種多様な化学物質に曝露されており、その生体影響が懸念されています。また、生体に共生する腸内細菌は様々な代謝物を産生し、宿主の生理機能調節に関与することが知られます。本研究では腸内細菌叢を「新たな代謝器官」と捉え、環境中化学物質による腸内細菌への化学修飾を介した菌叢代謝プロセスへの影響を明らかにし、環境曝露と腸内細菌の融合による新たな研究領域の創出を目指します。

浅岡 聡

石塚パネル

次世代メタン発酵と脂質藻類の融合でエネルギーを創る
メタン発酵過程で生成されるアンモニア・硫化水素による発酵阻害を回避してメタン生成菌を濃縮する担体を開発し、メタン収率の向上に挑戦します。さらに食品及び畜産廃棄物のメタン発酵で副生する消化液を利用した新たな脂質生産藻類の培養法を開発します。将来的にはメタン発酵消化液への栄養塩濃縮と藻類による効率的な脂肪酸生成を融合させ、日本の電源構成において最大で火力発電に次ぐ大きなエネルギーフローの創出を夢見ています。

浅子 壮美

北川パネル

配向電場による非対称化を鍵とする反応制御
有機合成化学は、従来不可能であった物質変換反応を可能にする新たな活性種の創成とさまざまなエネルギーを駆動力とする反応場の創成を両輪として発展してきました。本研究では、分子性触媒内に人工的に誘起した配向電場を利用して「非対称化された反応場」を創発することにより、物質変換反応の選択性や速度を制御することに挑みます。

蘆田 祐人

川村パネル

量子多体物理と量子光学の融合で探る強結合開放系の物理
従来の物性/統計物理学は、熱平衡系を記述する上で大きな成功を収めてきました。一方で、外界との相互作用が顕著な開放系の理解は未だ発展途上です。近年、人工量子系や固体物質などで開放系の強結合領域が多く実現しています。本研究では、量子多体物理と量子光学の融合により、強結合開放系の基礎理論を構築します。特に量子的な光による物性制御や、量子情報デバイスのデコヒーレンス制御に向けた道筋を示します。

東 直輝

DNA一分子の遺伝子検出による薬剤耐性菌の迅速検査
薬剤耐性菌の感染による死者数の増加が深刻な問題になっています。死者数の増加を抑制するには、感染者の早期治療と迅速な感染拡大対策の実現が必要であり、これには細菌の薬剤耐性の高速検査が必要です。しかし、これまでは細菌の薬剤耐性の検査に半日を要していました。そこで本研究では、細菌のDNA一分子で薬剤耐性に関する遺伝子を高速に検出する方法を創出し、飛躍的に高速な薬剤耐性検査を実現することを目指します。

雨宮 歩

田中パネル

在宅介護を支えるポイントオブケアAI
ポイントオブケアAIが在宅で音声や動作等のデータから本人の認知機能低下の早期発見と介護者の状況を、看護の観点でアセスメントします。具体的には受診の必要性や予測される症状を知らせ、必要に応じて地域ネットワークとつなげ活用可能な社会資源の情報を提供します。本人に対する認知機能低下早期発見だけでなく、介護者の状況もアセスメントし、持続可能な介護の促進を通して地域の高齢者を支え、住みなれた地域で安心してくらせる社会の実現に貢献します。

雨宮 智浩

八木パネル

身体融合錯覚による感覚運動体験の拡張
本研究では、物理世界の自分の身体とは異なる身体像に生じる擬似体験を、自分自身のものとして身体や運動に帰属させる「身体融合錯覚」を提唱し、それを利用した体験拡張手法の設計論の確立を目指します。 VR やAR などの工学的な手法で提示・合成された感覚情報によって多彩な感覚運動体験を創出し、ソーシャル VR などの情報通信技術を媒介した身体的コミュニケーションの新手法の構築や教育訓練への応用に挑戦します。

有松 唯

吉田パネル

鉄の文明:起源と形成のパラダイム転換
鉄の実用化によって人類社会は飛躍的に進歩したと考えられてきましたが、技術の起源や伴う社会変化、背景とされる環境変化には不明点が残されています。そこで、地表探査や非破壊分析の技術を高精度化し、最古の鉄製品の発見と技術復元に挑みます。また、当時の環境変化と人類の行動変化・技術選択の変化をフィールド・プロジェクトで明らかにします。文明のターニングポイントについて、技術、環境、社会のインタラクションを長期スパンで解明することで、人類社会を今に至らしめているメカニズムについて新たなパラダイムを構築します。

安藤 康史

水島パネル

脳内ペリサイトの新規生理機能の探求
脳内では神経・血管・グリア細胞などが、互いに密に連携する神経血管ユニットを形成することで、複雑かつ秩序だった中枢高次機能が発揮されます。本研究では、知見が乏しい毛細血管を被覆するペリサイトを基軸とし、新たなペリサイト-周囲細胞間相互作用を解析することで、新たな脳内ペリサイトの生理機能の探求と、その分子制御機構の解明に挑戦します。これらの解析を通して、中枢高次機能の調節機構の解明や中枢疾患の制圧を目指します。

安藤 智暁

天谷パネル

眼が物質を取捨選択し能動的に取り込む機構の解明
私達は、従来、光を取り込むための器官として認知されてきた眼が、物質を取捨選択して能動的に取り込み、情報処理を行うという新たなパラダイムを確立することを試みます。どのように取捨選択するのか、取り込んだ物質をどのように解釈し役立てるのか、その代償は何か、その制御に失敗すると何が起こるのかなど、この経路の特徴を明らかにすることにより、新たな眼の理解とその応用シーズの創出を目指します。

五十嵐 歩美

八木パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

実応用に即した資源配分メカニズムの開発
仕事をどう分担するか、医療物資をどう配分するかなど、我々の社会ではさまざまなものを公平に分ける場面に遭遇します。ユーザーがどのような公平感を求めるかは応用例によって変化し、応用と理論の両輪に基づいた研究の発展が必要不可欠です。本研究では、利用者の負担を最小にする、公平かつ効率的な資源配分メカニズムの構築、さらに実応用に則した適切な理論構築のために業務分担などの一般向けWebサービスの開発を目指します。

生田 力三

川村パネル

非線形量子光学に基づく量子ネットワーク
量子情報ネットワークはこれまでにない様々な応用を可能にします。実現のためには、通常、光量子系と物質量子系がもつ互いに相補的な性質を使いこなす必要があります。本研究では、非線形量子光学を駆使することで従来の光にはなかった物質的な機能を有する光量子系を実現し、従来の意味での「光」と「物質」の双方の役割を果たす光量子系を用いて高効率な量子ネットワークを確立することを目指します。

池田 暁彦

川村パネル

新世代量子ビームによる超100テスラ量子物性の解明
本研究では私が独自展開するポータブル100テスラ発生装置PINKを先端量子ビームと組み合わせることで、100テスラ超強磁場におけるミクロ物性計測をはじめて実現します。この技術を利用し、超強磁場における物質の非摂動論的巨大応答を探索・解明します。これまで未開の地であった超強磁場物性科学を開墾し、新規な物質科学を創出するフィールドに育てます。

池田 佳奈美

八木パネル

光情報解析システムの創生
AI処理技術・機械学習技術は社会に今後さらに大きな影響を与えると予測できます。 AI や機械学習を用いて有用な知見を得るためには、情報解析のみではなく情報取得も重要な要素です。本研究では、光計測と光情報処理を融合した、情報取得と情報解析の境界がない光情報解析システムの可能性を追求します。

伊里 友一朗

井村パネル

高エネルギーイオン液体推進システムの創発
宇宙探査技術の発展により人類の活動可能領域は地球軌道を越えて月面または深宇宙へと拡大しつつあります。本研究では高エネルギーイオン液体推進剤の着火・燃焼反応を電気化学反応場によって能動的に制御することを達成し、革新的な宇宙機化学推進システムの創発を目指します。当該推進剤を搭載した宇宙機推進システムは既存システムと比較して小型軽量・高性能であり、人類の宇宙活動を支える重要な宇宙インフラとなります。

石綿 整

塩見(美)パネル

革新的な生体量子解析法の創生による細胞内動的機能の解明
NVセンタを利用した量子計測は、~(5nm)3の微小領域におけるNMR/ESR解析と生体微小環境の構成因子である(pH、温度等)の高感度同時計測が可能です。本研究では高感度量子計測による生体解析を新たなナノ構造により細胞内において実現することで、細胞内動的機能を解明し、量子ダイナミクス生物学の創生により神経変性疾患の解明・治療法の開発など社会的イノベーションを実現します。

一川 尚広

北川パネル

三次元トポロジー制御に基づく高分子膜の革新機能創発
高分子膜は、食料・エネルギー・ライフサイエンスすべての分野で様々な形で重要な役割を果たしています。一般に、これらの高分子膜は、構成要素である高分子鎖が乱雑に絡まりあうことによって形成されています。本創発研究では、このような高分子膜内の構成要素(構成分子)の空間配列を極めて精密に制御した状態を創り出すことで、従来の高分子膜設計ではトレードオフになってしまう機能の両立や革新的な物性の創成を目指します。

伊藤 綾香

田中パネル

脂質リモデリングから読み解く自己・非自己認識と治療への応用
自己免疫疾患は、免疫が自分自身の組織や細胞に過剰に反応して発症します。その治療は、免疫抑制薬が主流であり、副作用として感染症罹患が大きな問題となっています。本研究では、免疫細胞における脂質の量的・質的変化に着目して自己・非自己認識が破綻する機構を解明し、副作用を回避できるような自己免疫疾患の診断・予防・治療・食事療法の確立につなげることを目的とします。

稲垣 舞

天谷パネル

胎盤由来エクソソームを中核とする胎盤関門機能予測
妊婦さんに対する薬物投与は、薬物の胎盤透過性を指標として慎重に行う必要があります。しかしながら、薬物の胎盤透過性についての科学的エビデンスは著しく不足しており、妊婦さんへの薬物投与設計は経験則に基づいて行われているのが現状です。本研究は、妊婦さんの循環血液中に存在する胎盤由来細胞外小胞の構成因子を解明し、ヒトにおける薬物の胎盤透過性予測法開発の技術的基盤を構築することを目的とします。

犬伏 俊博

天谷パネル

エネルギー代謝から紐解く疾患生物学〜ヒアルロン酸に着目した新たなアプローチ〜
本研究では、エネルギー代謝という新たな視点から、ヒト疾患におけるヒアルロン酸の合成・分解機構の異常を明確にし、疾患特異的にヒアルロン酸の合成・分解異常を制御することで、これら疾患を根本的に治療する革新的治療法の開発を目指します。本研究は、生命科学の根源の理解につながり、またヒト難治性疾患の理解や新たな診断・治療体系の提案につながる破壊的イノベーションを引き起こすことが期待されます。

井上 陽登

井村パネル

フレキシブルかつ超高安定なX線顕微鏡の開発
大型放射光施設の世界的普及に伴い、高輝度X線を利用したオペランド計測が実現しつつあります。しかし、X線光学素子の開発は非常に困難なため計測条件が限られており、真価が発揮できない現状です。これを打破するために、全く新しい構造を有する形状可変ミラーの開発に挑戦します。そして新規ミラーに基づき、柔軟性と安定性という相反する性質を兼ね備えたX線顕微鏡の実用化を目指します。

猪股 雄介

北川パネル

光学活性な無機結晶の触媒化学の開拓
不均一系触媒は生成物と触媒との分離が容易である点、触媒の再利用が可能な点から、均一系触媒と比較して持続可能な化学プロセスとして位置づけられています。その一方、医薬品など生理活性物質の合成に重要な不斉触媒への展開は遅れています。本研究では、光学活性な結晶構造をもつ無機化合物を不均一系触媒とするという新たなコンセプトで、幅広く利用可能な不均一不斉触媒反応系の構築を目指します。

井本 裕顕

伊丹/福島パネル

有機ヒ素化学が拓く未踏機能物質
ヘテロ元素の力を使って、炭化水素系の有機物では達成できない機能を実現しようとする試みが行われてきました。網羅的な研究が行われた結果、機能物質の設計は複雑化の一途をたどってきました。本研究では周期表に立ち返り、未開拓元素である「ヒ素」に焦点をあて、新しい機能物質を開拓します。独自に開発した合成ルートにより多彩な機能性分子を開発し、有機化学から錯体化学・高分子材料まで幅広く展開します。

井元 佑介

川村パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

1細胞ダイナミクスの多層分解による細胞地図の構築
細胞分化における単一細胞内の遺伝子発現量の変化(1細胞ダイナミクス)を詳細に捉えることができれば、細胞分化の運命を決定する遺伝子の機能が明らかになり、生命の設計原理の解明につながります。本研究では、高次元ダイナミクスの分解理論に基づき、1細胞遺伝子発現データから1細胞ダイナミクスの情報を最大限引き出す解析技術を創出し、出力構造から細胞分化の全体像や経路を記述する細胞地図を構築することを目指します。

岩崎 由香

塩見(美)パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

非コードRNAを用いた核内コンパートメントの制御と理解
ゲノムの極めて大きな領域を占める非コードゲノム領域には、ゲノム中を転移するトランスポゾンや、タンパク質をコードせずRNAとして機能を果たす非コードRNA等が含まれます。本研究では、これら非コードゲノムの機能メカニズムを明らかにし、さらに人工的に制御する技術の開発を目指します。非コード領域の存在が細胞の遺伝子発現パターンや運命決定にどのように寄与するか?といった、新たな生物学領域の開拓につなげていきます。

上杉 祐貴

北川パネル

光技術で革新する電子光学の探究と展開
原子レベルで物質を観察できる先端の電子顕微鏡法は、ナノ・量子科学の研究に欠かせない重要なツールです。従来、電子顕微鏡は電極板と磁石で構成されてきましたが、本研究では、強力なレーザー光で電子ビームを操作する革新技術の開発に取り組みます。レーザー光を用いることで、電子ビームをより小さく絞り込むことができる高性能のレンズや、電子ビームのスピン偏極を操作できる全く新しい電子光学素子の実現が期待されます。

植松 朗

合田パネル

不快刺激を克服する神経機構の解明
脳には外界からの生得的な快・不快情報を区別して行動へと移す神経機構がある一方で、学習によって価値を変える機構も備わっています。本研究では不快刺激を快もしくは中立とする学習の神経分子基盤について解明を目指します。脳における不快刺激を克服する機能について解明することにより、新規の神経回路や分子機構といった基礎的知見を深めるとともに、こころの病に対する新規診断法や治療に貢献します。

翁 岳暄

井村パネル

Design-Centered Governance for Human-Robot Co-Existence: Fromthe Ethical Design Perspective
人間とロボット共存のためのデザイン中心ガバナンス:エシカルデザインの視点から

現在のAIガバナンスに関する学術的な議論は、ソフトウェアレベルでの機械学習の設計と利用に焦点が当てられていることが多いです。AIとロボットの融合による身体性から生じる安全や倫理に関するリスクは、現在の機械学習ガバナンスの枠組みの範囲を超えています。本研究では、IEEE P7017工業用AI倫理基準を用いて「エシカルデザイン」を実現する方法に着目し、ソーシャルロボットの新しいガバナンス枠組みを提案したいと考えます。

宇野 正起

吉田パネル

化学反応による岩石破壊が拓く加速度的CO2鉱物固定
二酸化炭素を岩石と反応させて固定する鉱物炭酸塩化は、最も安定的なCO2貯留方法ですが、利用には反応の促進が必要です。一方、岩石は二酸化炭素との反応で体積が膨張するため、目詰まりしたり、破砕したりします。本研究は、「体積膨張により破砕して反応が加速する過程」をフィールド調査、室内実験および数値シミュレーションを通して系統的に解明し、反応性・恒久性に優れた二酸化炭素鉱物固定の学術的な礎を築きます。

浦川 優子

川村パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

次世代重力波実験で解き明かす宇宙創世と対称性の破れ
宇宙創世期であるインフレーション、現在の宇宙に多様な構造をもたらした暗黒物質は、素粒子標準模型の枠内では説明できていません。これらの正体の解明は物理学にパラダイムシフトをもたらすと考えられています。本研究では、初期宇宙模型に新規計算手法を適用することで原始揺らぎに関する理論的予言を与え、LiteBIRD、LISA、SKAなどの次世代の重力波実験による検証を通じてインフレーション、暗黒物質の起源に迫ります。

浦田 淳司

堀パネル

災害時都市活動支援のためのsoftware2.0型シミュレータの構築
リアルタイム観測データを活かした交通シミュレーションの技術開発に取り組みます。活動需要予測の高精度化のため、高自由度下での行動モデル探索技術を開発します。同時に、モデルパラメータのリアルタイム更新に向け、パラメータ推定の高速化を目指します。高精度な活動需要予測によって、時々刻々と状況がかわる非常時において、臨機応変な都市・交通マネジメントを可能にします。

遠藤 裕介

脂質代謝による病原性T細胞系譜の追跡と革新的治療法の創出
医学が発展した現在でも、多くの炎症性疾患に対しては根治治療の実現は困難です。本課題では、脂質代謝という新たな観点からアレルギーや自己免疫疾患など難治性疾患に取り組み、従来の手法では捉えることのできなかった難治性の原因となる「病原性T前駆細胞」を同定します。また、病原性T前駆細胞特異的な因子を標的として、これまでには実現し得なかった世界初の革新的根治治療法の創出に貢献します。

王 青波

水島パネル

ゲノム制御機構を解明する、解釈可能な汎用予測モデルの構築
本研究は、任意のゲノム変異がどの細胞種/状態でどの遺伝子の発現を制御するのかを、その機構と共に参照できるスコア体系の構築、即ち遺伝暗号表のゲノムワイドな拡張を目指します。生物学研究の現場、及び臨床の現場で誰もが第一の選択肢として利用するゲノム変異の「辞書」を提供する破壊的イノベーションとしての可能性を含む研究です。

大島 一正

合田パネル

昆虫が持つ植物操作能を例に進化の方向性を決める要因を探る
昆虫の中には、植物を操作して虫こぶという異常器官を作らせ、自身の食料にする仲間がいます。この植物操作能は、昆虫の中で何度も独立に進化しています。その一方で、普通に植物を食べている昆虫も進化の過程で食べる植物種を頻繁に変えてきました。では、虫こぶを誘導するか、食べる植物種を変えるか、という進化の分かれ道はどのように決まるのでしょうか?本研究では、昆虫類の植物への適応をテーマに、進化の方向性を決める要因を探ります。

小椋 優

北川パネル

転位と光の相互作用がもたらす新規材料特性
材料科学における一般認識として「セラミックスは硬いが脆い」とされていました。一方で、光のない暗闇環境に置くことで、金属のような柔らかく変形しやすい性質へと変化するセラミックス材料が近年、発見されています。さらに、その起源が、材料中に存在する欠陥(転位)と光の相互作用であることが明らかになってきました。本研究では、それら相互作用が材料にもたらす機能を評価し、新規材料機能創成を目指します。

大坪 和香子

阿部パネル

動物性食品の健康的摂取の指針となる小腸フローラ制御方法の開発
乳・肉・卵などの動物性食品には必須アミノ酸「トリプトファン」が多く含まれますが、このアミノ酸は小腸で吸収されるほか、小腸内に生息する細菌群(小腸フローラ)によって糖尿病や認知症等の予防・改善効果が知られる「インドール誘導体」に変換されています。しかし、この「インドール誘導体」を作る腸内細菌の実態はよく知られていません。本研究では、小腸内において有益な「インドール誘導体」産生を促進する新手法の提案を目指し、「インドール誘導体」産生小腸細菌の性状解明と制御方法の開発に取り組みます。

大松 亨介

伊丹/福島パネル

オルソゴナル結合変換が拓く新しい合成化学
複数の原子が「結合」でつながってできている分子には、切れやすい結合と切れにくい結合が存在します。合成化学では「切れやすい結合」を切ってつなぎ変える反応が常套手段として用いられていますが、「切れにくい結合」を狙って切れるようになると、分子変換の多様性が飛躍的に高まり、様々な分子を自由自在に作り変えられるようになります。本研究ではラジカルによる安定結合の変換法を開拓し、ものづくりの革新を目指します。

岡崎 友輔

吉田パネル

湖間比較で拓く高解像度な生態系多様性研究基盤
湖はそれぞれ、祖先的背景を共有しながらも湖独自の進化を遂げた、遺伝的に「似て非なる」微生物生態系を擁しています。本研究では異なる湖の微生物多様性をゲノム解像度で相互比較可能な研究基盤を創出し、その進化的背景に迫ります。これにより、個々の生態系の観察では捉えられなかったゲノム進化の普遍メカニズムを炙り出し、「生物の多様性はいかにして生まれ、維持されているのか?」という問いに挑戦します。

岡崎 雄馬

音波の量子計測が拓く核音響共鳴の新展開
音波を利用して物質中の核スピンを計測・制御する核音響共鳴は、60年以上研究がなされているにもかかわらず、音波計測の難しさのために実用的な計測手法として発展していません。近年、機械振動子と量子技術の融合によって音波を高効率に計測・制御する量子計測が発展しました。本研究では、音波の量子計測の高度化・高機能化を研究するとともに、その核音響共鳴への応用を展開し、核スピンを計測・制御する新手法を開拓します。

岡野 憲司

阿部パネル

「-(引き算)の科学」が切り拓く腸内細菌の機能研究
腸内細菌叢の乱れは様々な疾患を引き起こします。どの微生物が発症の引き金となるかを特定するには、腸内細菌叢から任意の微生物を除去し菌叢機能の変化を評価する「-の科学」の適用が有効と考えられますが、これをなし得る技術は存在しません。そこで、本研究では、 標的細菌に感染し死滅させるバクテリオファージを人工合成する技術を開発し、菌叢の微生物構成を減算的に改変することで、疾患の原因菌の特定を目指します。

岡本 直樹

塩見(美)パネル

栄養応答性を司る新規内分泌システムの探索
多細胞生物にはホルモンを介して栄養状態の変化に柔軟に適応できる内分泌システムが備わっています。本研究では、モデル生物であるショウジョウバエの組織・細胞特異的な遺伝子操作技術、独自の実験系、最新技術を最大限に駆使し、生命活動の根幹を支える栄養応答に関わる内分泌システムの普遍性と多様性を明らかにします。本研究を通して、既知の内分泌システムを改めて見直し、栄養応答に関わる新たな内分泌システムの全体像を理解します。

小川 亜希子

天谷パネル

エピトランスクリプトームが開拓する新しい眼内病態生理学
加齢により目の機能が低下して様々な眼疾患リスクが高くなります。目は前房水や硝子体といった液性成分に満ちており、加齢や病気によってその中の液性因子が変動しますが全容は未解明です。本研究では RNA 修飾(エピトランスクリプトーム)に着目し、緑内障をはじめとする加齢性眼疾患で変動する RNA 修飾の変容を細胞内外の両輪から解析することで病態解明のブレイクスルーを創出し、健康長寿社会実現への貢献を目指します。

小川原 亮

川村パネル

新たな実験領域を切り開くためのビームリサイクル技術の開発
原子核は身の回りの全ての物質を構成する根源的な要素の一つです。しかし、放射性崩壊をする不安定核についてはまだ未解明な現象が多く存在します。そのため現在世界中で不安定核の実験競争が行われていますが、生成数の少ない稀少な不安定核を用いた実験は非常に困難とされています。そこで私は、従来の1万倍以上の効率で稀少不安定核実験を可能にするビームリサイクルという技術を提案し、本研究ではその原理実証実験を行います。

小倉 由資

阿部パネル

合成・酵素・計算化学の融合が拓く化合物創成の新展開
私は、人類にとって有益な化合物を供給する手段として進化してきた有機合成法と発酵法の利点の融合に挑戦し、環境調和的で新しい化合物の創成方法の開発を目指しています。本研究は、微生物等の生物の持つ代謝能力を引き出し・切り出して人工的に用いる技術の基盤形成に取り組むもので、これまでは十分量の供給が難しかった(疑似)天然有機化合物等の効率的な供給の実現を目標に、量子化学計算の支援も得ながら、生体触媒による合成化合物の酸化的変換反応に関する基礎研究を行います。

小栗 靖生

田中パネル

脂肪組織の栄養・代謝学的な多様性の解明
生活習慣病を打破するためには、疾患の発症や食事・栄養療法において個人差を生み出す基本原理を理解する必要があります。脂肪組織は、栄養学的に最も重要な代謝部位の1つであり、発現部位によりその役割が異なります。しかし、栄養学的な役割の違い(多様性)を規定する要因は未解明です。そこで本研究では、脂肪組織の栄養代謝能を一細胞単位で解析することにより、脂肪組織の栄養・代謝学的な多様性の全容解明に挑戦します。

尾﨑 和海

吉田パネル

地球化学進化史から汎生命惑星進化論への展開
地球環境の化学状態は生命進化と密接に関連し、なぜ地球が生命の星であるのかといった根源的問題に関わっています。本研究では、地球化学環境を規定している生元素の物質循環過程を包括的に考慮した理論モデルを構築し、地球化学進化史の全容解明に挑戦します。さらに、広汎な惑星進化を議論可能な「汎生命惑星進化論」へと一般化することで、2030年代に計画されている生命惑星探査に貢献することを目指します。

越智 陽太郎

天谷パネル

癌のエピゲノム不均一性の解明
癌は非常に多彩な「個性」を持つことが知られていますが、癌の個性の確立には遺伝子変異のみではなく、エピゲノムも重要な役割を果たすことが分かってきました。本研究では、白血病などの癌検体を用いて、大規模なエピゲノム・ゲノム同時解析や、最新鋭の単一細胞エピゲノム解析を行います。個人間、あるいは癌組織内の各癌細胞間のエピゲノムの違いを調べることで癌の個性を理解し、革新的な分子診断法の確立と新規治療の創出を目指します。

小野田 淳人

超微小粒子は如何にして脳の老化を加速させるのか
ナノサイズの超微小粒子は粗大な物質にはない性質を持ち、生物に対しても特異な作用を示します。本研究では、体内に取り込まれた超微小粒子の表面相互作用によるタンパク質の異常構造化を軸に、脳機能異常が生じる基本原理を解明します。その原理に基づき、環境汚染粒子による影響を動物や細胞を用いずに予測するDXモデル、医療用ナノマテリアルの生体適合性向上に向けた設計や迅速スクリーニングに資する技術的知見を創出します。

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