初代創発PO研究体制

創発研究者(2022年度採択)

か行

加藤 孝信

塩見(美)パネル

一次繊毛を介したベクトル情報による多細胞統御メカニズム解明
私たちのからだの中のほとんどの細胞は繊毛というアンテナで外部の環境を受容しています。私はこの「細胞のアンテナ」が細胞外の力のベクトル(大きさ+方向)を感知していることを発見しました。本研究では私の得意とする革新的光学顕微鏡技術によるブレークスルーで、このベクトル受容の「しくみ」と「はたらき」を明らかにし、新たな生体情報「ベクトル情報」による生体機能制御という新たな研究領域の創出を目指します。

加藤 晃代

阿部パネル

翻訳制御機構の解明とバイオ産業への応用
本研究では、「翻訳促進可能な新生鎖」を様々な生物種で見出し、その制御メカニズム解明とタンパク質生産への応用を目指します。本研究では生命にとって普遍的な「翻訳工程」の新たな基本原理に迫ると同時に、持続可能な社会形成・環境調和型の食・農・バイオ産業創出につなげることを目的とします。

加藤 俊顕

北川パネル)※2024年3月卒業

次世代量子コンピュータ用高機能原子層超伝導素子の創製
本研究では次世代情報処理素子として期待されている超伝導型量子コンピュータを対象として、材料科学の観点から、量子コンピュータ性能の向上が期待できる新材料探索を行います。具体的には原子厚みの層状物質である原子層材料に着目し、独自の合成・機能化手法により原子層材料に高機能を付加させ、コヒーレンス寿命の長時間化や誤り訂正問題の解決などの観点から量子コンピュータ性能向上に貢献できる新材料開発を目指します。

金子 賢太朗

田中パネル

脂質構造マップによる母子間相互作用の理解と肥満研究の展開
高脂肪である母乳はなぜ乳児の肥満を誘導しないのでしょうか。私は母乳に含まれる特殊脂質構造が食欲中枢の視床下部において摂食抑制ホルモン作用を増強し抗肥満効果を示す可能性を見出しました。本研究で視床下部機能や内分泌機能、高次脳機能と母乳特異的な脂質構造の関わりを紐解くことで母乳が高脂肪である生理的意義の解明を目指すとともに、脂質構造の質と視床下部機能に着目した抗肥満機序の解明から、脂質のイメージを覆す新しい肥満と老化の研究を展開したいと考えております。

金子 直樹

天谷パネル

多様な疾患環境下で病態に関与する自己抗体産生B細胞の同定
自己の細胞や組織に対して産生される抗体は自己抗体と呼ばれ、その存在は免疫寛容の破綻を示唆し、自己免疫疾患を始めとする異常な免疫反応下において産生が認められます。本研究では、どのような免疫細胞(B 細胞)が自己抗体を産生するのか、自己抗体産生のメカニズムと共に解明を目指します。この研究により成果を得られれば、自己抗体産生を特徴とする多くの疾患に適応可能な治療法開発への道が開けると考えています。

神谷 真子

伊丹/福島パネル

次世代型ラマンプローブの創製による生体機能多重解析
本研究では、ラマンイメージングの多重検出能を最大限に活用しつつ、有機合成を基盤としたケミカルバイオロジー研究を展開することで、細胞内滞留性・感度・空間分解能・特異性を高めた次世代型ラマンプローブ群を創製することを目指します。本研究課題の達成により、ラマンイメージングの性能を飛躍的に拡張するのみならず、多次元の情報を引き出しうるバイオイメージング法が提案できると考えています。

亀尾 佳貴

井村パネル

脳形態形成における構造・機能創発の統合的理解
脳の構造と機能との関連を明らかにし、形態形成過程を通じてそれらが安定的に創発される基本原理の解明に挑戦します。そのために、脳形態形成における分子、細胞、組織の振舞を包括的に解析し、力学と情報理論に基づいて、脳の構造と機能を同時に評価可能なシミュレーション実験基盤を開発します。これにより、擾乱に対する安定性と環境変化に適応する可塑性の両立を可能にする生命システムの本質的な理解を目指します。

唐木田 亮

八木パネル

学習力学を数理基盤とした革新的ニューラルネットワークの開拓
深層学習の登場によりニューラルネットワークは機械学習や人工知能の基盤技術として急速に発展しています。しかし高い性能を発揮するために、大量のデータや計算資源と、それを必要とする特定の情報表現や学習様式に強く依存して開発が進んでいます。本研究では、 深層学習のもとで発展しつつある学習力学の数理を足場としながら、生物の脳神経回路モデルに着想を得た構造や学習様式 を取り組み、より効率的で柔軟な神経計算の実現を目指します。

河合 喬文

水島パネル

細胞が持つ「電気信号」の意義を多面的に理解する
脳や心電図に代表されるように、我々の身体では至るところで「電気信号」が生成されます。この電気信号の生成・感知機構では、「電位依存性イオンチャネル」と呼ばれる分子が主たる役割を担っています。しかし私は近年、生体内の電位感知には、それ以外のメカニズムも関わっていることを見出しています。本研究では、これまで見過ごされてきた新たな電位感知機構にスポットを当て、幅広い生体組織を対象に研究を行います。

河合(久保田) 寿子

阿部パネル

光合成エネルギーの自在制御~空気からエネルギーを作る~
化石燃料に代わるエネルギーとして水素やアンモニアが注目されていますが、それらの大部分は化石燃料を消費して製造されているというパラドックスを含んでいます。本研究では、常温・常圧下で窒素固定が可能なニトロゲナーゼを利用して「光合成生物が太陽光エネルギ−から作り出す化学エネルギーをもとに、空気からエネルギー源としてのアンモニアを作り出すこと」を目指します。

河崎 史子

伊丹/福島パネル

ヘテロな細胞運命を生み出す多階層な分子機構を測る
細胞が機能を獲得する過程でその運命決定に多様性が生まれるメカニズムを、複数タイプのRNA分子を介した多階層かつダイナミックな遺伝子制御の観点から解明することに挑みます。機能性ハイドロゲルを用いた1細胞の大量並列分画、核酸バーコード配列による1細胞識別、および時系列での生体分子解析を集約した独自のケミカルバイオロジーを基盤に、計測分子種の違いや時系列を超えて1細胞計測情報を結びつける技術の確立を目指します。

河野 佑

井村パネル

非線形大規模ネットワークの分散多様化制御
スマートグリッドの運用や遺伝子発現ネットワークの細胞生成を含む様々な問題は、「非線形大規模ネットワークの分散多様化制御」の枠組みで定式化できます。しかしながら、現状の理論では、定式化された問題の大部分は解くことが非常に困難です。本研究では、最先端の制御理論「Contraction理論」を「錐非負性」と呼ばれる新たな視点から駆使し、これらの未解決問題を解く統一的な数理基盤の創出に挑戦します。

神戸 徹也

北川パネル

単原子層からなるXenes類縁体の液相化学合成の開発
単層構造からなるXenesは特異な電子物性から超省エネルギー材料などへの利用が期待されていますが、現状では不安定かつ微量合成しかできない問題があります。本研究では界面の成長制御を利用した新たな精密無機合成手法を駆使することで、単原子層からなる新規無機材料を開発します。この精密合成により高性能な電子物性と有機物の様な柔軟性を単原子層構造により引き出し、新たな脱炭素戦略を可能にする高機能無機材料を創出します。

菊川 雄司

伊丹/福島パネル

静電場を制御した分子性金属酸化物のプロトニクス
プロトン伝導体はエネルギーの効率化に貢献する材料です。低温域、高温域では優れた材料がそれぞれありますが、100°Cから600°Cの中温域で十分な性能を示す新材料が切望されています。本研究では、新規プロトン伝導性材料群として分子性金属酸化物クラスターに注目しています。分子レベルでのクラスター構造制御や原子レベルでの金属置換により、材料内部のプロトン伝導経路を設計したイオン性化合物の創出を目指します。

菊田 順一

天谷パネル

線維症の時空間的動態解析による新規治療法の開発
生体の組織修復は、恒常性維持に重要な生体防御反応ですが、修復機構が破綻すると臓器の線維化が引き起こされます。本研究では、最新の生体イメージング技術とオミクス解析技術を融合させ、生体内の「組織修復」と「線維化」の違いを明らかにし、「線維化がなぜ起こるのか」という謎に迫ります。また、線維症の新規バイオマーカーや創薬標的を創出することで、副作用の少ない理想的な線維症治療法の開発を目指します。

北村 恭子

北川パネル

オールインクルーシブレーザーの創生
これまでの研究で萌芽させてきた面発光レーザーにおける機能性(空間的な偏光分布・位相分布の制御、ビームの2次元的な偏向制御、光軌道制御)を、ワンチップ上に集約化・集積化した、オールインクルーシブレーザーを提案し、高機能・高付加価値の面発光レーザーを創生します。この研究構想の下、他波長・他ビーム形状のフォトニック結晶レーザー集積化技術の開発に挑戦します。

北本 祥

天谷パネル

N:Nの臓器連関が切り拓く難治性膵疾患医療の未来
近年、無菌的と思われていた膵臓に微生物が棲みつき膵癌の病態形成に関与することが明らかになっています。ごく最近、私はこの”微生物の不自然な散在”が、一見すると膵臓とは無関係に見える遠隔の他(多)臓器での異変の連鎖に起因し得ることを見出しました。本研究では、この不自然な散在の裏にある臓器間因果関係を洗い出し多臓器ネットワークに投影することで、難治性膵腫瘍における革新的な医療介入法の開発というイノベーションの創出を目指します。

城所 聡

阿部パネル

植物の温度ストレス感知機構の解明と応用
本研究では、常温・低温・高温によって標的遺伝子を切り替えることで成長とストレス耐性の両方を制御する植物の温度センサー転写因子の機能と制御を解析することによって、温度ストレス感知の分子機構を解明します。また、解明した分子機構をゲノム編集ツールによって改変することで、成長と環境ストレス耐性とを両立した作物の作出技術の開発を目指します。

木村 善一郎

吉田パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

環境微生物ゲノム編集で希少微生物を「狙って」釣る
環境中の原核微生物のほとんど(一説には99.98%とも)は未分離であり、従って環境中には大量の未踏バイオリソースが埋蔵されています。この資源活用には狙った菌を釣り上げる技術(=特異性)、その技術があらゆる菌種を対象としうること(=一般性)そして技術が自動化可能なこと(=網羅性)の3点が重要です。本研究では、ゲノム編集を技術基盤に上記3点を満足させる技術体系の確立、さらには未踏資源踏破スキーム確立を目指します。

木矢 剛智

阿部パネル

ステロイドホルモンを介した昆虫と植物の異種間相互作用
本研究は、「昆虫と植物の間にはステロイドホルモンを介した異種間相互作用があり、一見自由に見える昆虫の行動は、植物が作るステロイドホルモンによって植物から操作されている」という独創的な仮説を、神経科学・分子生物学・生態学などの様々なアプローチによって多角的に検証するものです。本研究によって、昆虫学と植物学が融合した新たな学問領域の創出、植物由来物質の新規な生物作用の発見と応用に繋がると期待されます。

清光 智美

塩見(美)パネル

初期胚分裂の染色体継承機構とその適応・潜在能の理解
ゲノム情報を担う染色体は、受精に始まる一連の有糸分裂サイクルにおいて、安定に維持、継承される必要があります。しかし、人を含む脊椎動物の初期胚は、体細胞とは顕著に異なる特徴を持ち、その染色体継承の仕組みは謎に包まれています。本研究では、先端の可視化、操作技術をメダカ初期胚に導入し、脊椎動物の初期胚分裂における染色体継承機構の基本原理の確立と、秘められた適応力、潜在能力の抽出に挑みます。

久我 一喜

堀パネル

新興感染症に備えるマルチスケール感染現象学の構築
本研究では、生体細胞スケールから社会システムスケールにおける感染現象の数理構造を抽出、シームレスに連結し、新たな学理「マルチスケール感染現象学」を構築することを目指します。各スケールの境界面で各種の保存則を満足した接続モデルを開発・提案することで新興感染症の流行における各種の要因を加味した包括的な感染予測を可能にします。

草田 康平

伊丹/福島パネル

多元素ナノ物質による革新的材料の創出
本研究は、元素周期表上に存在する多様な元素を混ざる混ざらないの相性に関わらず、原子レベルで混合・配列させるナノ粒子合成技術を確立することで従来の材料探索空間を爆発的に拡張し、単純な元素の掛け合わせでは予測できないような新物性の発現が期待される多元素ナノ酸化物を主軸とした物質開発を行い、未来に向けた新しい価値の創造と単なるバルク物質のナノサイズ化から脱却した新しいナノ材料研究分野の開拓を狙います。

草野 修平

阿部パネル

植物の物質生産機能を強化・拡張するケミカルバイオロジー
植物は光合成により大気CO2を吸収し、それを炭素源として、私たちの食料源である炭水化物から生活を支える化成品原料に至るまで実に様々な有機物を作り出します。しかし、農業生産や物質生産の各シーンにおいて、私たちが活用できている植物の物質生産機能はごく一部にしか過ぎません。本研究では、植物が備える物質生産機能を最大限に引き出すべく、ケミカルバイオロジーの技術を駆使して取り組みます。

草本 哲郎

伊丹/福島パネル

スピン相関磁性発光体の科学
本研究では、電子スピンと発光が相関した機能(=スピン相関発光機能)を示す物質であるスピン相関磁性発光体(Spin-COrrelated Magnetic Emitter, SCOME)を多様に創製します。通常の閉殻分子には無いSCOME ならではのスピン⾃由度が、物質の電子状態、非平衡ダイナミクス、物性に与える作用および原理を解明します。これらを通して、分子磁性と分子発光の交差領域を開拓し、スピン相関発光機能を理解・制御する分子科学を確立します。

楠本 周平

北川パネル

π結合性軌道設計による新規原子軌道混成状態の実現
高周期典型元素の未踏の軌道混成状態の実現を目的とします。これまで不可能と考えられてきた、高周期元素の軌道混成状態と幾何構造を可能にし、高周期元素の新たな可能性を開拓します。軌道混成の鍵として、これまでほとんど研究されてこなかった“強ルイス酸性カルベン”を配位子として利用します。

倉重 佑輝

伊丹/福島パネル

相対論的多配置理論による光化学スピントロニクスの開拓
分子のもつ電子のスピン自由度を精密に制御することで、その量子性を利用した高速かつ低損失の情報伝達や、重ね合わせの原理による処理速度の爆発的な加速などが期待されています。本研究では、それらの分子スピン機能の理解において最先端の相対論的化学電子論に基づく学理を構築することにより、所望のスピン機能を持つ分子を合理的に設計するための理論的な指針など、分子スピントロニクス時代の到来に貢献します。

黒田 純平

塩見(美)パネル

コラーゲン繊維を直交させずに平面状に一方向に配向させる原理の解明
私たちの身体を構成する組織・器官がそれぞれ最適な機能を発揮するためには、コラーゲン繊維を適切な配置に並べる必要がありますが、この仕組みはこれまでに明らかにされていません。理由は、生体内のコラーゲン繊維の動態を「見る」ことが極めて難しいからです。私は、コラーゲン繊維と細胞の相互作用をライブで見ることが可能な実験系を用いることで、「直交させる」「平面上に並べる」「束にする」といったコラーゲン繊維の配向化パターンが生みだされる基本原理の解明に挑戦します。

コ ソンジェ

北川パネル

“High Enthalpy”溶液を基軸にした新奇な電気化学機能の発現と蓄電デバイスの革新化
電池のイオン輸送媒体である電解液中キャリアイオンの配位子を、電子が酸素原子に局在化している溶媒(溶媒和)から、電子が分子全体に広く非局在化しているアニオンに置換(アニオン和)することで、キャリアイオンが得るクーロンエネルギーにペナルティーを与えると共に、アニオンの自由度を極限に低下させます。これによって、様々な副反応が熱力学的・速度論的に抑制され、高エネルギー密度の金属二次電池が実現します。

上妻 馨梨

吉田パネル

反射分光による植物生理応答のリアルタイム計測
植物は常に変化する外的環境に応答しながら生きています。本研究では、反射分光を応用して光合成生物のリアルタイムな生理変化を非破壊的に可視化するイメージング技術の開発を目指します。この技術を用いることで、これまで不明であった夜間の光合成活動の生理学的意義や分子メカニズムの解明に取り組みます。さらに、生態・環境の計測技術の発展へ貢献します。

高麗 正史

川村パネル

大気観測の未踏領域 乱流エネルギー散逸率の全大気分布
大気科学の進展と数値モデルの発展は強く結びついており、今後数値モデルの一層の高解像度化が進むと考えられますが、小スケールの乱流的な大気運動を検証する大気観測データは存在していません。本研究では、乱流パラメータの精密推定手法を提案し、全世界で行われているラジオゾンデ観測に基づき、その全地球分布を得ることを目指します。さらに、種々の気象システムのライフサイクルにおける乱流の役割を明らかにします。

小澤 祐市

井村パネル

空間トランスフォーム光学の創出
観察対象の3次元空間情報を自在に取得する空間トランスフォーム光学を創出し、この原理に基づく新しい光イメージング法を実現します。本概念による光計測技術を基盤として、3次元的な物質評価・分析における超高速化や高度化を目指し、生命科学や物質科学を含む基礎科学だけでなく、製造ラインの高速検査技術などへの産業応用、3次元高速センシングや立体ディスプレイといったコンピュータビジョン分野の革新に挑戦します。

後藤 義幸

田中パネル

腸内細菌が司る感染感受性・抵抗性体質の理解
感染症では、体内に病原体を保持しながら健康な人(保菌者)もいれば、重篤な症状を呈する人もいますが、このような感染に対する感受性・抵抗性体質が、どのように決まるのか明らかになっていません。本研究では、腸内細菌叢を制御することで感染症モデルマウスを新たに創出し、感染症を制御する腸内細菌を同定・分離・投与することで、感染感受性・抵抗性体質の理解と感染抵抗性体質を獲得する戦略の確立を目指します。

小早川 和

天谷パネル

グリア瘢痕形成メカニズムの包括的理解
一度傷ついた中枢神経にはアストロサイトが構築するグリア瘢痕と呼ばれる組織が障壁となってニューロンの軸索伸展を阻みます。このグリア瘢痕形成を抑制もしくは除去する手法を開発しない限り、中枢神経の再生は困難と言わざるを得ません。そこで今回『アストロサイトが外傷環境下で様々な細胞とともに活性化・遊走してグリア瘢痕を形成・維持し、脊髄再生を阻む過程の包括的メカニズム』の全容を解明し、中枢神経損傷治療法を開発します。

小林 祥久

水島パネル

薬剤耐性から迫る発がん機構
がんはあらゆる治療薬に耐性を獲得するため根治が難しいです。私は、肺がんの薬剤耐性の研究をしてきた中で「薬剤耐性に必須の要素は何か」という観点からアプローチすることで、予想外に発がん遺伝子ファミリーRASの弱点とその回避機構の解明に成功しました。本研究では、1〜2年で起こる様々な薬剤耐性を長年の蓄積で生じる発がんの縮図と捉えて、薬剤耐性の切り口から新規発がん機構解明に挑戦してがんの根治を目指します。

小松 紀子

水島パネル

T細胞分化可塑性に基づく組織恒常性の破綻機構の解明
T細胞は免疫応答の司令塔として重要な役割を果たしますが、線維芽細胞など体を支持する間質細胞も免疫応答を制御する機能をもつことが知られつつあります。本課題では新たに見出した外的環境に応じて柔軟に性質を変える T 細胞と組織特異的に存在する間質細胞との相互作用に着眼して、免疫疾患および非免疫疾患における組織の恒常性破綻機構を解明し、新たな疾患概念を創出することを目指します。

近藤 徹

北川パネル

揺らぎで拓く高次階層の生体光物理学
生体系は、分子⇒タンパク質⇒タンパク質超複合体⇒生体膜といった階層的な構造を利用して複雑な反応を制御しています。分子・タンパク質レベルの機能解析が進む一方で、より高次の階層については解析技術が確立できておらず、未知の領域です。本研究では、生体系に普遍的に存在する揺らぎを局所的な情報と捉えて利用する新しい顕微分光法を開拓し、生体膜中のタンパク質超複合体で制御される光合成光反応の全容解明に挑みます。

近藤 美欧

伊丹/福島パネル

革新的物質変換に向けた協奏的機能統合戦略
天然で行われている物質変換反応の人為的な再現は、人類社会の発展に資する極めて魅力的な研究です。しかしながら、生体と同様の構造を人為的に構築することは極めて困難です。そこで本研究では、私が独自に提案する「協奏的機能統合戦略」に基づき、生体系を凌駕する高度な人工機能性システムを創製することを目指します。本研究の遂行により、多岐に渡る社会問題を一挙に解決しうる革新的物質変換システムの創出が期待できます。

近藤 侑貴

塩見(美)パネル

内的・外的要因による植物幹細胞運命制御網の解明
維管束は、植物の物質輸送を担う重要な組織系です。維管束は多様な機能細胞から構成されており、それらは維管束幹細胞から作られます。本研究では、私が新規開発した維管束分化誘導系VISUALを駆使することで遺伝要因と環境要因がおりなす制御ネットワークがどのように維管束幹細胞の運命を決定するのかを明らかにしていきます。またそれらの知見を基にして、維管束幹細胞運命を自在操作できる技術開発へとつなげます。

Researchmap 本サイトの研究者情報はResearchmap登録情報に基づき更新されます。