阿部パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO:阿部 敬悦(東北大学 大学院農学研究科 教授)

【専門分野】応用微生物学(農芸化学)

東北大学卒業後、キッコーマン株式会社、米国Johns Hopkins大学を経て、1999年 東北大学へ。2009年より東北大学大学院農学研究科教授を務め、2017年東北大学未来科学技術共同研究センター副センター長、2019年より研究科長・学部長を兼務。
この間、日本農芸化学会理事、日本農芸化学会副会長等を歴任。日本農芸化学会BBB論文賞などを受賞。博士(農学)。専門は、応用微生物学で、産業微生物に関する新規バイオプロセスの研究開発を行っている。特に、微生物細胞表層機能の解明と応用展開として、輸送体を利用した化成品の発酵生産、糸状菌高密度培養技術の開発、糸状菌のプラスチック分解機構の解明、抗真菌剤探索技術の開発など、広範な分野での応用研究に取り組む。

創発アドバイザー(五十音順)

乾 将行
地球環境産業技術研究機構 バイオ研究グループ グループリーダー・主席研究員
熊谷 日登美
日本大学 生物資源科学部 教授
佐藤 和広
摂南大学 農学部 教授
白須 賢
理化学研究所 環境資源科学研究センター 副センター長
陶山 佳久
東北大学 大学院農学研究科 教授
高山 誠司
東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授
仲井 まどか
東京農工大学 農学研究院 教授
吉崎 悟朗
東京海洋大学 学術研究院 海洋生物資源学部門 教授

創発研究者一覧

2022年度採択

大坪 和香子

(阿部パネル)

動物性食品の健康的摂取の指針となる小腸フローラ制御方法の開発
乳・肉・卵などの動物性食品には必須アミノ酸「トリプトファン」が多く含まれますが、このアミノ酸は小腸で吸収されるほか、小腸内に生息する細菌群(小腸フローラ)によって糖尿病や認知症等の予防・改善効果が知られる「インドール誘導体」に変換されています。しかし、この「インドール誘導体」を作る腸内細菌の実態はよく知られていません。本研究では、小腸内において有益な「インドール誘導体」産生を促進する新手法の提案を目指し、「インドール誘導体」産生小腸細菌の性状解明と制御方法の開発に取り組みます。

岡野 憲司

(阿部パネル)

「-(引き算)の科学」が切り拓く腸内細菌の機能研究
腸内細菌叢の乱れは様々な疾患を引き起こします。どの微生物が発症の引き金となるかを特定するには、腸内細菌叢から任意の微生物を除去し菌叢機能の変化を評価する「-の科学」の適用が有効と考えられますが、これをなし得る技術は存在しません。そこで、本研究では、 標的細菌に感染し死滅させるバクテリオファージを人工合成する技術を開発し、菌叢の微生物構成を減算的に改変することで、疾患の原因菌の特定を目指します。

小倉 由資

(阿部パネル)

合成・酵素・計算化学の融合が拓く化合物創成の新展開
私は、人類にとって有益な化合物を供給する手段として進化してきた有機合成法と発酵法の利点の融合に挑戦し、環境調和的で新しい化合物の創成方法の開発を目指しています。本研究は、微生物等の生物の持つ代謝能力を引き出し・切り出して人工的に用いる技術の基盤形成に取り組むもので、これまでは十分量の供給が難しかった(疑似)天然有機化合物等の効率的な供給の実現を目標に、量子化学計算の支援も得ながら、生体触媒による合成化合物の酸化的変換反応に関する基礎研究を行います。

加藤 晃代

(阿部パネル)

翻訳制御機構の解明とバイオ産業への応用
本研究では、「翻訳促進可能な新生鎖」を様々な生物種で見出し、その制御メカニズム解明とタンパク質生産への応用を目指します。本研究では生命にとって普遍的な「翻訳工程」の新たな基本原理に迫ると同時に、持続可能な社会形成・環境調和型の食・農・バイオ産業創出につなげることを目的とします。

河合(久保田) 寿子

(阿部パネル)

光合成エネルギーの自在制御~空気からエネルギーを作る~
化石燃料に代わるエネルギーとして水素やアンモニアが注目されていますが、それらの大部分は化石燃料を消費して製造されているというパラドックスを含んでいます。本研究では、常温・常圧下で窒素固定が可能なニトロゲナーゼを利用して「光合成生物が太陽光エネルギ−から作り出す化学エネルギーをもとに、空気からエネルギー源としてのアンモニアを作り出すこと」を目指します。

城所 聡

(阿部パネル)

植物の温度ストレス感知機構の解明と応用
本研究では、常温・低温・高温によって標的遺伝子を切り替えることで成長とストレス耐性の両方を制御する植物の温度センサー転写因子の機能と制御を解析することによって、温度ストレス感知の分子機構を解明します。また、解明した分子機構をゲノム編集ツールによって改変することで、成長と環境ストレス耐性とを両立した作物の作出技術の開発を目指します。

木矢 剛智

(阿部パネル)

ステロイドホルモンを介した昆虫と植物の異種間相互作用
本研究は、「昆虫と植物の間にはステロイドホルモンを介した異種間相互作用があり、一見自由に見える昆虫の行動は、植物が作るステロイドホルモンによって植物から操作されている」という独創的な仮説を、神経科学・分子生物学・生態学などの様々なアプローチによって多角的に検証するものです。本研究によって、昆虫学と植物学が融合した新たな学問領域の創出、植物由来物質の新規な生物作用の発見と応用に繋がると期待されます。

草野 修平

(阿部パネル)

植物の物質生産機能を強化・拡張するケミカルバイオロジー
植物は光合成により大気CO2を吸収し、それを炭素源として、私たちの食料源である炭水化物から生活を支える化成品原料に至るまで実に様々な有機物を作り出します。しかし、農業生産や物質生産の各シーンにおいて、私たちが活用できている植物の物質生産機能はごく一部にしか過ぎません。本研究では、植物が備える物質生産機能を最大限に引き出すべく、ケミカルバイオロジーの技術を駆使して取り組みます。

杉本 真也

(阿部パネル)

アミロイドの制御分子から開拓する感染症・神経変性疾患の融合領域研究
難治性感染症の原因となる細菌のバイオフィルムの形成とアルツハイマー病などの神経変性疾患には、「アミロイド」と呼ばれる線維状のタンパク質凝集体が関与します。本研究では、細菌からヒトに至る様々な生物が備えた、細胞内へのアミロイドの蓄積を抑制する仕組みを解き明かします。そして、これまで独立した研究領域であった感染症研究と神経変性疾患研究の融合を図り、これらの問題を解決することで健康寿命の延伸に貢献します。

田中 茂幸

(阿部パネル)

植物病原菌エフェクタータンパク質輸送機構の分子基盤
持続的な食糧生産に被害を与える植物病原糸状菌は、エフェクタータンパク質と呼ばれる物質を植物細胞に送り込み寄生を確立します。しかし、エフェクタータンパク質が植物細胞膜を通過する輸送機構の実態は未解明です。私はこれまで、エフェクタータンパク質が細胞外小胞を介して分泌されることを明らかにしました。本研究では、細胞外小胞が植物細胞に取り込まれるために必要な分子の同定に挑戦し、これを阻害する防除薬剤の創出を目指します。

田畑 亮

(阿部パネル)

植物環状ペプチドの機能解明によるストレス応答の制御
植物が持つ多様な「環状ペプチド」の細胞間/器官間シグナルにおける役割はほとんど理解されていません。本研究では、化学・合成生物学・ゲノム科学的解析手法により、環状ペプチドライブラリー・環状ペプチド遺伝子クラスター破壊株を網羅的に作成し、環境ストレス応答における環状ペプチドの機能を解明します。さらに、構造生物学的解析を通じて、植物に環境ストレス耐性を付与させるキメラ環状ペプチド分子創製に挑戦します。

戸田 安香

(阿部パネル)

脊椎動物における旨味・甘味の起源の解明
味覚は食物を摂取するか否かを決定する上で重要な化学感覚です。私はこれまでに、旨味・甘味センサーであるT1R受容体の機能を解析するための培養細胞アッセイ系を構築しました。さらに、鳥類や霊長類において、T1R受容体の機能が食性と深く結びついていることを明らかにしました。本研究では、解析対象を脊椎動物全般へと拡大することで、嗜好味(旨味・甘味)とは何かという、おいしさの基本原理の理解を目指します。

永井 啓祐

(阿部パネル)

イネの茎をモデルとした新規作物耐水性機構の解明
イネの茎は、タケに見られるような節間と節から構成されています。節間の中央部には髄腔と呼ばれる空洞が形成され、これがシュノーケルのように機能して水面下の組織に酸素を供給するため、イネは水田でも栽培が可能です。しかし髄腔形成の分子メカニズムは明らかになっていません。また、髄腔は節によって物理的に隔てられているため、どのように酸素が節を透過しているのかも未解明です。本研究課題では、イネを耐水性植物のモデル植物と捉え、イネの茎の髄腔形成および節の酸素透過性を分子レベルで解明するとともに、育種的な応用を目指します。

吉村 柾彦

(阿部パネル)

細胞模倣マテリアルによる物質生産テクノロジー
本研究では、有機合成化学、タンパク質工学、核酸化学を総動員した「ものづくり」により、細胞を模倣したマテリアルを創出することで、新しい物質生産テクノロジーを開発します。これまでの有機合成化学とも、合成生物学とも異なる新たな物質生産技術を開発することで、複雑な構造を有する有用分子群の効率的な合成を目指します。複数標的の中でも、多様な生理活性をもつ植物二次代謝産物の生産に強い関心を寄せています。

米山 香織

(阿部パネル)

植物-植物コミュニケーションにおけるストリゴラクトンの機能解析
ストリゴラクトン (SL)は、陸上植物の80%以上が共生するアーバスキュラー菌根(AM)菌を呼び寄せ、植物体内では地上部枝分かれを抑制します。一般的に植物は、リン酸欠乏条件下で、SLの生産・分泌量を促進し、AM菌から効率的に無機養分を得ると同時に、枝分かれを抑えてエネルギーを節約します。本研究は、植物がどのようにSLを介して自己と他者を認識しているのかを明らかにすることを目的としています。

LAOHAVISIT Anuphon

(阿部パネル)

植物におけるキノン受容の分子機構の解明
Molecular mechanisms of quinone perception in plants

植物が外的・内的刺激を感知し、適切に応答する過程において、キノン分子が重要な役割を担っていますが、そのメカニズムは未解明でした。私は最近、植物のキノン受容体の同定に成功し、分子メカニズム解明の端緒を拓きました。そこで本研究では、陸上植物においてキノンが担う役割を明らかにすべく、キノンシグナル伝達機構の解明を目指します。更に、有用なキノン誘導体を合理的に設計し、農業への応用展開を目指します。

2021年度採択

浅井 秀太

(阿部パネル)

植物病原菌寄生成立機構の解明と圃場での応用
植物の病害は、病気にかかる体質をもつ植物、これを侵すことができる病原菌、ならびに病気の発生に必要な環境条件がそろった時に発生します。本研究では、土壌微生物のゲノム情報を基に、病原性の特定を可能にする手法(モニターシステム)を開発し、全国の圃場環境調査による、植物を取り巻く環境のビックデータに基づいた病害発生予測モデル(予測システム)を構築することで、病害防除に繋がるシステム基盤の構築を目指します。

飯嶋 益巳

(阿部パネル)

新規食品品質マーカーの探索とその高感度検出
「食の安全・安心」を実現するためには、科学的根拠に基づく食品の検証が必要不可欠なだけではなく、簡便かつ高感度に検証できることが重要です。本研究では、食べ頃や賞味期限が主観的に決定されている熟成肉等の熟成食品を例に、品質管理の指標となる新規低分子マーカーを探索し、さらにそのマーカーと、独自のバイオ分子整列化足場技術を活用して、製造現場でも簡便かつ高感度に食品の検証ができる新規評価技術を開発します。

入枝 泰樹

(阿部パネル)

病原糸状菌群に対する重層的植物免疫システムの解明と体系化
環境中の大多数の病原糸状菌を撃退する植物の非宿主抵抗性は多くの免疫経路(因子)により重層的に構築されます。しかし、遠縁の糸状菌株ほど有効な植物免疫に差が生じ、糸状菌群に対する非宿主抵抗性の体系的な構造把握は困難です。私は、シロイヌナズナの変異体スクリーニングによる免疫因子の網羅的同定を、植物侵入能に差を示す多様な菌株が活用できる炭疽病菌群を用いて実施します。同じ植物侵入様式を示す同一属の糸状菌群に対する植物免疫の水平および垂直方向の重層構造を解明します。

小川 剛伸

(阿部パネル)

AIを用いた俯瞰統合による食-生命システムの理解
食に係る生命システム(食-生命システム)は、非常に複雑であり、全体を真に理解するには、システムを構成する要素の把握だけでなく、各要素の関係を含めた包括的な解明が不可欠です。そのため、俯瞰統合的な扱いが可能な解析法において、パラダイムシフトが強く求められています。本研究では、新たな「AI網羅的・逆解析法」を構築し、食-生命システムにおける最重要課題の一つである「食の美味しさの認知」の解明に挑戦します。

加藤 豪司

(阿部パネル)

GAS細胞を起点とする魚類独自の鰓粘膜免疫機構
魚類は獲得免疫系を有する進化的に最も下等な動物です。リンパ節がなく、抗体のクラススイッチ機構も持たない魚類ですが、地上よりも圧倒的に病原体の多い水中に生息しています。私たちは、魚類の鰓で病原体の認識と免疫応答の誘導を同時に行う鰓上皮抗原取込(GAS)細胞を発見しました。本研究ではGAS細胞に着目し、病原体の多い水中に適応した魚類独自の鰓粘膜免疫機構を解明し、水産用ワクチン技術への応用を目指します。

加藤 節

(阿部パネル)

無秩序な細胞死の機構解明と制御
細胞の死は、細胞が生命を維持する能力に限界があることを示しています。この研究では様々な条件での微生物の死過程を1細胞レベルで観察し、多様で無秩序な死過程の共通点を整理して死の基本原理を解明することを目指します。その過程で細胞の脆弱点を特定し、その克服により応用微生物学、医学的な応用展開に繋げます。得られる成果は低炭素社会実現や人の健康促進に貢献し、持続可能で健康な社会の実現に役立つと考えられます。

久住 亮介

(阿部パネル)

三次元磁場配向NMRによるセルロース生合成機構の全容解明
天然セルロース繊維の持続可能な生産・供給を支える新たな仕組みが求められています。本研究では、三次元磁場配向を通じて微粒子の精密な構造・動態解析が可能な「MOMS-NMR法」を駆使し、天然セルロース産生微生物のセルロース生合成機構を“生きた状態”で解析して、天然繊維の人工合成系の構築につながる“生きた知”を獲得します。他の多糖産生系・生物系へと展開し、種々の“生きた生命現象”の理解にも貢献します。

佐久間 俊

(阿部パネル)

異種ゲノム導入技術の開発による作物の多様化
気候変動下における食糧生産問題の解決に向けて、画期的な作物新品種の開発が求められています。本研究では、遠縁交雑を抑制する遺伝子を明らかにすることで、パンコムギに多様な自然環境に生育する野生植物のゲノム(遺伝子群)を効率的に追加する技術を開発します。バラエティに富んだ多品種開発の基盤技術を確立し、画一的な少数品種による大量生産からの脱却、不測の事態に備えた持続的な食糧資源の開拓を目指します。

櫻井 勝康

(阿部パネル)

味覚のインタラクティブ・ブレインマップの作成と応用
健康的な食の理想は、こころとからだの栄養を満たすようなおいしい食です。本研究ではこのような理想の食に近づくために、味の情報が脳内のどこで、どんな細胞や神経回路によって、どのようにして処理されるのか、それらの情報を網羅的に含んだ味覚の脳地図の作成を目指します。さらに、味覚以外の感覚システムなどの内的、外的要因がどのようにして味覚の変化を生み出しているのか、そのメカニズムの解明も目指します。

新屋 良治

(阿部パネル)

線虫化学コミュニケーションの理解と寄生線虫防除への応用
本研究のねらいは、植物寄生線虫の行動を制御する化学コミュニケーション分子と、それらを受容する分子神経基盤を理解し、環境負荷の低い、新しい植物寄生線虫防除技術を開発することです。特に、マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウの性フェロモンに焦点を絞り、性フェロモンの受容機構を分子および神経レベルで明らかにします。その後、線虫の繁殖を人為的に制御する全く新しい防除手法の開発を目指します。

永野 惇

(阿部パネル)

野外トランスクリプトームの化学的制御手法の確立
生物本来の生育場所であり、主たる農業生産の場でもある野外では、温度や光などが刻一刻と複雑に変化します。本研究では、独自の遺伝子発現予測技術と、大規模な環境制御、ケミカルトランスクリプトミクスを組み合わせることで、複雑な野外環境下における遺伝子発現の化学的制御を合理的に設計する技術の開発を目指します。この技術によって、野外における環境応答の分子機構の解明、その自在な制御につながることが期待されます。

中村 彰彦

(阿部パネル)

プラスチックを探して壊すバイオマイクロドローンの創出
マイクロプラスチックによる海洋汚染が深刻化していますが、そのサイズゆえ物理的に除去するコストが高く解決策がありません。一方で海洋中では微細甲殻類が生産する大量のキチンが分解代謝されています。そこで微生物のキチン探索分解システムのキチン分解酵素をプラスチック分解酵素に置き換え、またキチン分解物検出酵素をプラスチック分解物が結合するように改変することで自律的にプラスチック片を探索し、集まって分解する微生物を作成します。

西村 俊哉

(阿部パネル)

鰭(ヒレ)から魚を創る
魚のヒレは切断されても素早く再成長して元の形に戻ります。この時、傷口には再生芽細胞と呼ばれる特殊な細胞集団が形成されます。
本創発的研究では、この高い再生能力を持つヒレの細胞からiPS細胞を創り出し、さらに生殖細胞に分化させることで、ヒレから新たな魚を再生する技術の確立に挑戦します。

根本 理子

(阿部パネル)

がん細胞内過剰鉄を酸化鉄に変換する革新的技術の開発
がん細胞は細胞内に多量の遊離鉄を蓄積し、この遊離鉄を利用して増殖・転移を活発化させています。驚異的な鉄代謝能力を持つ軟体動物のヒザラガイから見出した鉄酸化酵素および鉄沈着タンパク質の遺伝子をがん細胞に導入することで、細胞内の遊離鉄を不活性な酸化鉄として沈着させる技術の開発を目指します。本技術は、がんの治療だけでなく、磁気検出装置を用いたがんの早期診断にも応用可能な革新的技術となることが期待されます。

細川 正人

(阿部パネル)

大規模1細胞ゲノムから設計する微生物叢の戦略的制御
本研究では、地球上に生息する多様な微生物のゲノム情報を次世代の産業資源として活用するプラットフォームを築きます。大規模1細胞ゲノム解析技術・合成生物学技術・ロボティクスを駆使し、ゲノム情報からプロダクトを持続的に創出する仕組みを創り出します。具体的な活用として、1細胞ゲノムで明らかとなるウイルス-宿主の相互作用関係などにもとづき、微生物叢を自在に操作する革新的微生物制御技術を生み出します。

八幡 穣

(阿部パネル)

生と死を瞬時に可視化するイメージングAIで解明する細胞死の意味
微生物細胞の画像を撮影するとその生死や死因が表示されるような技術を開発します。微生物の死を「見える化」できれば、例えば殺菌処理の結果をその場で確認できるようになるだけでなく、私たちの健康や地球環境に有益な微生物の力をよりよく引き出すことにもつながります。

2020年度採択

石井 孝佳

(阿部パネル)

染色体脱落の克服による遺伝資源概念の拡張
育種において最も重要な課題は交雑による多様性の導入です。しかし、交雑後の胚発生で片親の染色体が選択的に脱落する染色体脱落現象により、多様性の導入が不可能な場合があります。本研究では、雌親にパンコムギとエンバクを使用した際の染色体脱落の程度が異なるペニセタム属の起源地での多様性を解明します。最終的には、染色体脱落を克服する方法の確立を目指します。染色体脱落を克服し、遺伝資源概念の拡張をもたらします。

鬼塚 和光

(阿部パネル)

革新的化学ツールによるRNA機能の制御と理解
RNAは次世代の医薬品標的分子として世界中で注目されています。RNAに関する正確かつ大規模な情報を簡便に取得できる化学ツールは、新しい制御分子の開発やRNAの新たな機能の発見を加速するため、非常に重要です。本研究で提案する化学ツールはRNA-小分子間相互作用と高次構造形成位置の新しい大規模情報取得法で、確立すれば革新的手法としてRNA標的創薬をはじめとした世界中のRNA関連研究を大幅に加速することが可能になります。

河村 奈緒子

(阿部パネル)

革新的な合成化学を用いた多糖の機能研究と応用
独自の化学合成技術と分子イメージング技術の融合により、神経接着、神経可塑性の制御に関わる多糖の役割の解明と神経機能制御法の開発、そして細菌固有の多糖を応用した糖鎖ワクチンの候補分子の開発に取り組みます。将来的には、神経系シグナルの人為的な制御法を確立し、神経疾患の治療・創薬開発を目指します。加えて、致死率が高く、これまで効果的な治療法がない細菌感染症に対する初めての強力なワクチン開発を目指します。

古賀 大尚

(阿部パネル)

生物素材を用いた持続性エレクトロニクスの創成
近年、電子機器の使用量が急増し、金属や石油など枯渇性資源の消費が加速しています。また、大量の電子ゴミが発生し、人体への悪影響や環境破壊を招いています。本研究では、持続生産可能な生物素材を原料として、電子機器に必要な絶縁体・半導体・導体を創り、全て生物素材由来の持続性エレクトロニクスを実現します。生物素材で創る高機能電子機器で豊かに暮らし、使用後は自然に還す、持続可能な循環社会の構築に貢献します。

佐藤 伸一

(阿部パネル)

生物活性分子のプローブ化不要な結合タンパク質網羅的同定
生物活性分子の標的タンパク質同定は、生体関連化学分野における最も重要な研究課題の一つであり、多くの研究者の共通の研究対象です。従来の標的タンパク質同定研究では生物活性分子のプローブ化工程が大きな研究障壁となっています。本研究では独自のタンパク質化学修飾技術を活かしたケミカルプロテオミクス技術により、生物活性分子のプローブ化を必要とせず、未知の標的タンパク質を網羅的に同定する革新的手法を開発します。

實友 玲奈

(阿部パネル)

バレイショF1育種に向けた近交系の作出とヘテロシスの解明
バレイショでは、塊茎での増殖率の低さやウイルス病感染リスクなどの問題から、種子を利用するF1育種(種まき育種)に大きな期待がかかっています。これが可能になれば、今までの育種・増殖・生産体系を崩壊させる夢のバレイショ生産となります。本課題では実用的なバレイショF1雑種の作出と、雑種が両親よりも生育旺盛になる雑種強勢(ヘテロシス)の解明に取り組むことで、農業生産性の飛躍的な向上に貢献します。

髙田 匠

(阿部パネル)

蛋白質中D-アミノ酸を基盤とした未知生命科学研究領域の開拓
アミノ酸にはL型とD型の二種類ありますが、蛋白質を構成するのはL型アミノ酸のみという常識がありました。しかし最近、蛋白質中のL型アミノ酸がD型アミノ酸へと変化する現象が発見されています。これまでの生命科学では説明できない病気の原因や、生命現象の謎を解き明かす答えが蛋白質中D型アミノ酸の役割にあると考え、私は自ら開発したD型アミノ酸分析法を駆使し、蛋白質中D型アミノ酸の役割を解明する研究を進めます。

坪内 知美

(阿部パネル)

細胞融合を用いた新規リプログラミング技術の創出
本研究では多能性幹細胞をまるごと融合することで、任意のターゲット細胞を短時間に、高効率で、かつ遺伝情報を損なうことなく多能性幹細胞へ誘導する(リプログラミング)技術を創出します。私たちはこれまでに融合細胞の単離・追跡・評価を1細胞レベルで行うことを可能にし、融合後24時間以内にリプログラミングが開始することを見出しています。個々の融合細胞をプロファイル化し、リプログラミング条件の最適化を行います。

西川 悠

(阿部パネル)

小型浮魚類回遊生態の解明と漁場予測技術の確立
群れで回遊する魚が日本の水産重要種に占める割合は高く、回遊魚の漁場を予測することができれば漁業の大きな助けとなりますが、回遊魚の分布生態には未知の部分が多くあります。本研究では、魚群探知機による観測に機械学習を組み合わせることでこれまで難しかった網羅的な観測を可能にし、回遊魚の生態を解き明かすとともに、その知見を元に魚群間の相互作用を取り入れた世界初の回遊魚漁場予測シミュレーションを行います。

晝間 敬

(阿部パネル)

植物微生物共生体における糸状菌の休眠二次代謝物群の役割
植物と相互作用する糸状菌は多様な二次代謝物を合成する遺伝子群を有していますがその多くは既存の環境では発現が認められない休眠状態です。本研究では、糸状菌の本来の生育環境である植物と無数の微生物から成り立つ共生体を人工的に再構築することで休眠二次代謝物遺伝子群を覚醒化させ、その共生体における役割を明らかにします。二次代謝物を活用した共生菌の効果を安定化させ最大化する制御技術の開発につなげていきます。

モリ テツシ

(阿部パネル)

難培養微生物の完全利用に向けた生細胞特異的識別・培養基盤技術の開発
環境に生息微生物は有用な遺伝子資源として長年において、様々な分野の発展・進展に貢献してきました。しかし、この多くの有用微生物は難培養性であり、従来の単離・分離技術ではその獲得そして応用まで用いるのは非常に困難です。本研究では、新規そして独創性がある種特異的生細菌識別手法および難培養微生物の培養に向けたシステムの開発に挑戦し、難培養微生物叢から有用微生物の獲得および完全利用を目指します。

湯澤 賢

(阿部パネル)

合成生物学的手法による抗生物質の自在合成基盤の確立
人類の健康長寿にこれまで最も貢献した薬はおそらく抗生物質です。一方で抗生物質の開発事例は減少の一途を辿っており、2050年には多剤耐性菌によって毎年1000万人以上が死亡するという予測も発表されています。そこで、本研究では抗生物質様の人工化合物を短期間で供給する微生物生産プラットホームの開発を行い、抗生物質の開発速度を加速します。本研究により多剤耐性菌のない未来を我々人類の子孫に残したいと考えています。

横田 慎吾

(阿部パネル)

バイオナノ繊維界面を活かした新奇融合粒子の創製
バイオマス素材が持つ両親媒特性を引き出した独特のナノ繊維を活用することによって、これまでは馴染みにくかった天然素材と合成素材を融合する新しい粉体材料の創製を目指します。化学的に安定な樹脂マイクロ粒子上に密に担持させたセルロースナノファイバーを起点として、さらに突起状の分子鎖を付与した融合粒子(Corona融合粒子)を構築し、そのナノ/マイクロの各スケールでの構造制御に伴う高機能化や新物性発現に挑戦します。

吉田 昭介

(阿部パネル)

微生物代謝に着目した廃PET資源化手法の開発
プラスチックの持続利用は人類の課題です。我々はその解決の第一歩となるポリエチレンテレフタレート(PET)分解・代謝細菌Ideonella sakaiensisを発見し、そのメカニズムを明らかにしてきました。本研究では、微生物よるPET代謝の理解を深め、その代謝によって生産可能な多様な有用化合物の生産系を開発し、さらにその生産性を向上させることで、廃PET資源化の新たな道を切り拓きます。

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