福島パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO:福島 孝典(東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 教授)

【専門分野】有機化学、高分子化学、超分子化学

東北大学にて博士号(理学)取得後、東北大学・助手、JST-ERATO相田ナノ空間プロジェクト・グループリーダー、理化学研究所・チームリーダーを経て、2010年東京工業大学 資源化学研究所・教授、2016年より同大学科学技術創成研究院 化学生命科学研究所・教授(改組による)。
高分子学会Wiley賞、長瀬研究振興賞、応用物理学会優秀論文賞、文部科学大臣表彰若手科学者賞および科学技術賞、高分子学会賞などを受賞。
専門は、精密分子自己集合による機能性ソフトマテリアルに関する研究、特に、π電子系分子・高分子を基盤とし、電子機能・エネルギー変換機能・刺激応答性などを有する材料の開発を通じ、分子性物質が織りなす新現象・新機能の開拓に取り組む。

前創発PO(2022年3月まで) 伊丹健一郎(名古屋大学 教授)

創発アドバイザー(五十音順)

伊藤 肇
北海道大学 大学院工学研究院 卓越教授
大神田 淳子
信州大学 学術研究院(農学系) 教授
陰山 洋
京都大学 大学院工学研究科 教授
加藤 昌子
関西学院大学 生命環境学部 教授
君塚 信夫
九州大学 大学院工学研究院 主幹教授
山東 信介
東京大学 大学院工学系研究科 教授
竹内 正之
物質・材料研究機構 高分子・バイオ材料研究センター センター長
佃 達哉
東京大学 大学院理学系研究科 教授
津本 浩平
東京大学 大学院工学系研究科 教授
寺西 利治
京都大学 化学研究所 教授
中村 恒夫
産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター 研究チーム長
前田 理
北海道大学 大学院理学研究院 教授
山田 容子
京都大学 化学研究所 教授
𠮷信 淳
東京大学 物性研究所 教授
若宮 淳志
京都大学 化学研究所 教授

過去の創発アドバイザー

有賀 哲也
京都大学 大学院理学研究科 教授(~2024年3月)
川合 眞紀
自然科学研究機構 機構長(~2024年3月)
濵地 格
京都大学 大学院工学研究科 教授(~2023年3月)
 ※所属・役職は当時のもの

創発研究者一覧

2022年度採択

相澤 直矢

(伊丹/福島パネル)

励起一重項と三重項のエネルギー逆転の創発
フントの規則より、同一電子配置において、最大のスピン多重度を持つ状態が最低エネルギーを持ちます。よって、励起三重項は一重項よりエネルギーが低く、それらのエネルギー差ΔESTは正であると知られています。本研究では負のΔESTを持つ有機発光材料群を開発し、希少金属フリーの高性能有機ELデバイスを実現します。さらに、多数の電子配置から創発する負のΔESTの基礎科学を開拓し、素子性能の飛躍的な向上に繋がる学理を確立します。

井本 裕顕

(伊丹/福島パネル)

有機ヒ素化学が拓く未踏機能物質
ヘテロ元素の力を使って、炭化水素系の有機物では達成できない機能を実現しようとする試みが行われてきました。網羅的な研究が行われた結果、機能物質の設計は複雑化の一途をたどってきました。本研究では周期表に立ち返り、未開拓元素である「ヒ素」に焦点をあて、新しい機能物質を開拓します。独自に開発した合成ルートにより多彩な機能性分子を開発し、有機化学から錯体化学・高分子材料まで幅広く展開します。

大松 亨介

(伊丹/福島パネル)

オルソゴナル結合変換が拓く新しい合成化学
複数の原子が「結合」でつながってできている分子には、切れやすい結合と切れにくい結合が存在します。合成化学では「切れやすい結合」を切ってつなぎ変える反応が常套手段として用いられていますが、「切れにくい結合」を狙って切れるようになると、分子変換の多様性が飛躍的に高まり、様々な分子を自由自在に作り変えられるようになります。本研究ではラジカルによる安定結合の変換法を開拓し、ものづくりの革新を目指します。

神谷 真子

(伊丹/福島パネル)

次世代型ラマンプローブの創製による生体機能多重解析
本研究では、ラマンイメージングの多重検出能を最大限に活用しつつ、有機合成を基盤としたケミカルバイオロジー研究を展開することで、細胞内滞留性・感度・空間分解能・特異性を高めた次世代型ラマンプローブ群を創製することを目指します。本研究課題の達成により、ラマンイメージングの性能を飛躍的に拡張するのみならず、多次元の情報を引き出しうるバイオイメージング法が提案できると考えています。

河崎 史子

(伊丹/福島パネル)

ヘテロな細胞運命を生み出す多階層な分子機構を測る
細胞が機能を獲得する過程でその運命決定に多様性が生まれるメカニズムを、複数タイプのRNA分子を介した多階層かつダイナミックな遺伝子制御の観点から解明することに挑みます。機能性ハイドロゲルを用いた1細胞の大量並列分画、核酸バーコード配列による1細胞識別、および時系列での生体分子解析を集約した独自のケミカルバイオロジーを基盤に、計測分子種の違いや時系列を超えて1細胞計測情報を結びつける技術の確立を目指します。

菊川 雄司

(伊丹/福島パネル)

静電場を制御した分子性金属酸化物のプロトニクス
プロトン伝導体はエネルギーの効率化に貢献する材料です。低温域、高温域では優れた材料がそれぞれありますが、100°Cから600°Cの中温域で十分な性能を示す新材料が切望されています。本研究では、新規プロトン伝導性材料群として分子性金属酸化物クラスターに注目しています。分子レベルでのクラスター構造制御や原子レベルでの金属置換により、材料内部のプロトン伝導経路を設計したイオン性化合物の創出を目指します。

草田 康平

(伊丹/福島パネル)

多元素ナノ物質による革新的材料の創出
本研究は、元素周期表上に存在する多様な元素を混ざる混ざらないの相性に関わらず、原子レベルで混合・配列させるナノ粒子合成技術を確立することで従来の材料探索空間を爆発的に拡張し、単純な元素の掛け合わせでは予測できないような新物性の発現が期待される多元素ナノ酸化物を主軸とした物質開発を行い、未来に向けた新しい価値の創造と単なるバルク物質のナノサイズ化から脱却した新しいナノ材料研究分野の開拓を狙います。

草本 哲郎

(伊丹/福島パネル)

スピン相関磁性発光体の科学
本研究では、電子スピンと発光が相関した機能(=スピン相関発光機能)を示す物質であるスピン相関磁性発光体(Spin-COrrelated Magnetic Emitter, SCOME)を多様に創製します。通常の閉殻分子には無いSCOME ならではのスピン⾃由度が、物質の電子状態、非平衡ダイナミクス、物性に与える作用および原理を解明します。これらを通して、分子磁性と分子発光の交差領域を開拓し、スピン相関発光機能を理解・制御する分子科学を確立します。

倉重 佑輝

(伊丹/福島パネル)

相対論的多配置理論による光化学スピントロニクスの開拓
分子のもつ電子のスピン自由度を精密に制御することで、その量子性を利用した高速かつ低損失の情報伝達や、重ね合わせの原理による処理速度の爆発的な加速などが期待されています。本研究では、それらの分子スピン機能の理解において最先端の相対論的化学電子論に基づく学理を構築することにより、所望のスピン機能を持つ分子を合理的に設計するための理論的な指針など、分子スピントロニクス時代の到来に貢献します。

近藤 美欧

(伊丹/福島パネル)

革新的物質変換に向けた協奏的機能統合戦略
天然で行われている物質変換反応の人為的な再現は、人類社会の発展に資する極めて魅力的な研究です。しかしながら、生体と同様の構造を人為的に構築することは極めて困難です。そこで本研究では、私が独自に提案する「協奏的機能統合戦略」に基づき、生体系を凌駕する高度な人工機能性システムを創製することを目指します。本研究の遂行により、多岐に渡る社会問題を一挙に解決しうる革新的物質変換システムの創出が期待できます。

佐藤 弘志

(伊丹/福島パネル)

4次元多孔性結晶の科学
私はこれまで多孔性結晶に関する新発見を見出してきましたが、いずれも「平衡論的」な考えに基づいた研究でした。一方、最近独自に見出した萌芽的知見はいずれも「非平衡論的」な、重要だが未解決な問題を内包することに思い当たりました。非平衡状態の視点をナノ空間科学へと展開することで、ナノサイズ領域の界面におけるゆらぎが重要な役割を果たすナノ空間物質の科学、『4次元多孔性結晶の科学』の創成を目指します。

杉本 敏樹

(伊丹/福島パネル)

次世代アクアナノ界面機能化学を拓く高次非線形分子分光
水分子は種々の物質表面に凝集し、その界面は環境エネルギー分野においては水分解反応や蓄電デバイス等の基盤的な化学技術の舞台となっています。ナノ界面水の化学的機能は、多体の水分子と物質の間のヘテロな相互作用が織りなす協同的現象がその根源にあると考えられますが、従来の手法ではその実像に迫ることが困難でした。本研究では、非線形分光法に立脚し、ナノ界面水系の機能化学を開拓することに挑戦します。

須田 理行

(伊丹/福島パネル)

カイラルイオントロニクスによる電磁交差物性創発
キラルイオン液体を用いたイオントロニクス、すなわちカイラルイオントロニクスという新概念を用いて、凝縮系物質に対する空間反転対称性とキャリア密度の同時制御を実現します。これによって、非自明な電磁交差物性を創出するとともに、スピントロニクス・スピン依存電気化学反応などへの応用を指向した、これらの物質の材料化・デバイス化への展開も行い、空間反転対称性の破れに基づく新たな物性科学基盤を開拓します。

樽谷 直紀

(伊丹/福島パネル)

ナノ粒子の多元複合クラスター化が拓く機能材料開発
10 nmを下回る大きさのナノ粒子はバルク材料とはまったく異なる性質を示します。私の研究ではそのような微小な粒子を複数種用意し、所望の形に集積させた“多元複合クラスター材料”を創製します。多元複合クラスター材料を構成するナノ粒子の組み合わせ、粒子間距離、表面・界面構造、集積形態を様々に制御することで、粒子間の機能協奏や異種物質間の融合を引き起こす未踏の機能材料開発に挑戦します。

中島 祐

(伊丹/福島パネル)

力と化学変化のカップリングによるゴム様材料の力学機能創発
ゴム・ゲルなどの柔軟高分子網目材料に対して機械的な力を加えることにより、網目鎖上での力誘起化学反応を引き起こし、材料の力学特性・機能を力によって制御します。材料力学・化学の両視点から高分子網目構造を精緻に設計・制御し、マクロな力・ミクロな化学変化・材料機能変化を高効率にカップリングさせます。力を加えると分解が促進されるゴム材料、力によって機能のON/OFFを制御出来る触媒材料などの創製を目指します。

永島 佑貴

(伊丹/福島パネル)

周期表横断型の多元素光化学が拓く高度分子変換
本研究では、光エネルギーを利用した高活性種を周期表横断的に設計し、従来法では難しい高度な分子変換法を創出します。周期表における元素の組合せは膨大であるため、それぞれの光化学を理論と実験の両面から解明していくことで、高機能性材料、次世代医薬品、持続可能社会の実現などに資する革新的な光反応を開発します。それにより、「多元素光化学」と呼べる新しい学術領域を形成し、合成化学の変革に挑みます。

中島 裕美子

(伊丹/福島パネル)

ケイ素およびリン資源循環に向けた新規ライフサイクルの構築
本研究では、ケイ素化学工業およびリン化学工業において再生可能な二次資源として注目されるクロロシラン類およびリン酸を、高付加価値化合物へと変換する、アップサイクル物質変換手法の確立を目指します。開発する物質変換手法を用いては、従来法では合成困難な新しい構造を持つケイ素およびリン原料の合成が可能となり、将来的には、革新的な機能性材料の開発へとつながることも期待されます。

西井 祐二

(伊丹/福島パネル)

三次元芳香族クラスターを活用した高性能触媒の開発と応用
医薬品研究からマテリアルサイエンス分野に至るまで、現代の有機化学関連分野は多様な拡がりを見せており、その原動力となるのが有機分子の構造多様性です。本研究では「三次元芳香族クラスター」を活用した新たな分子設計戦略を提案し、従来法を凌駕するような高効率&高選択的な合成手法の確立を目指します。化学産業の省資源化&省エネルギー化資源を実現することで、持続可能な発展に貢献することが期待できます。

原渕 祐

(伊丹/福島パネル)

量子化学計算に基づく光機能性分子の自在設計
光機能性分子は我々の社会において重要な役割を担っており、現在も新規分子開発が進められています。一方で、分子の光応答に対する無輻射失活過程の寄与の予測は難しく、分子開発には一般的に繰り返しの合成実験が求められます。本研究では、無輻射失活経路に対する量子化学計算と速度論に立脚した発光量子収率・反応収率の予測を実現し、さらに、機械学習・化学情報学を組み合わせることで光機能性分子の自在設計を目指します。

星本 陽一

(伊丹/福島パネル)

反応空間を歪めて実現する「有機分活化学」
本研究は、持続可能な社会を実現するために、エネルギ-損失を前提とした発エルゴン的な結合形成反応の枠組みから抜け出し、結合の「分解」と「再活用」に基づく「有機分活化学」の視点から高難度分子技術を創出します。具体的には、従来の分子技術において殆ど反応起点にならなかった強固な炭素-炭素結合の切断を鍵とする「ベンゼン環の連結・組替手法」を、破壊的イノベーションのシーズとして開発します。

正木 慶昭

(伊丹/福島パネル)

微量副反応解析による長鎖核酸の化学合成法の開発
本研究では、核酸化学合成における微量副生成物を網羅的に定量する新たな手法を開発するとともに、長鎖核酸合成を可能にする新しい化学合成法を開発します。これまでの化学合成研究では、極微量な副生成物を定量できず、更なる最適化が困難でした。本研究では核酸分子の特徴を利用した高感度な定量法を開発し、核酸化学合成で起こっている現象を深く捉え、これまでにない長さの核酸化学合成を実現します。

松野 敬成

(伊丹/福島パネル)

微小な圧力を駆動力としたナノ多孔質圧電触媒の開拓
ありふれた圧電物質に対して精緻なナノ細孔構造を導入することで、微小な圧力を駆動力としたレドックス触媒の実現と物質変換への利用を目指します。反応メカニズムの理解および反応系の探索を通じて、ナノ構造の観点から圧電触媒の設計指針を確立します。そして、一般的な物質合成プロセスで自然発生しうる、従来は有効活用できていなかった桁違いに小さい力学的エネルギーを活用した新たな物質変換システムの構築へと展開します。

三代 憲司

(伊丹/福島パネル)

酸性官能基の水中での修飾技術を基盤とする生命科学研究
タンパク質、核酸等の生体分子の化学修飾技術は、分子の検出による診断、分子への薬効付与や物性改善による医薬品開発、分子間相互作用の可視化による生命の仕組みの解明等、様々な目的で利用されます。カルボキシ基、リン酸基等の酸性官能基は生体分子に多く含まれますが、これらの官能基の水溶液中での化学修飾は一般に困難であり、高い需要がありながら未発達でした。本研究では酸性官能基の効率的修飾法の開発及び診断・創薬への活用を行います。

村山 恵司

(伊丹/福島パネル)

人工核酸の自己複製・翻訳反応の開発と分子進化法への応用
非酵素的鎖伸長反応を利用し、人工核酸L-aTNAの自己複製システム及び配列解析法を開発します。更に、L-aTNAから人工ペプチドを合成する人工翻訳システムの構築を行い、最終的にこれらの技術を統合することで酵素反応に頼らない分子進化法を実現し、機能性L-aTNA配列や新奇人工ペプチドの獲得を目指します。本技術は全く新たな創薬及び機能性中分子の開発技術として利用できるだけでなく、人工生命の創造、原始生命システムの解明への応用が期待されます。

森本 大智

(伊丹/福島パネル)

生体内の流れによるタンパク質の構造破壊の理解
構造生物学とレオロジーを融合した新規の解析手法レオロジーNMR・MD・SAXS法による協同的な研究体制を確立します。その上で、流体力学的ストレスによるタンパク質の高次構造の破壊を血中から細胞内に至る様々なタンパク質を対象に「その場」かつ原子からメゾスケールで定量的に調べます。構造破壊の規則性や可逆性、線形性を明らかにし、構造破壊の数式化、理論化をおこない、新学理「蛋白質流動学」を構築します。

森本 裕也

(伊丹/福島パネル)

光変調された電子線と原子・分子・固体の衝突
電子ビームは、微視的な観測から物質加工まで多くの科学・産業技術で使用されています。しかしながら、電子ビームと物質の相互作用、例えば試料の損傷確率や加工効率の制御は困難です。本研究では、電子ビームの時間およびエネルギー構造を、光を用いた独自の方法によってアト秒の超高精度でうまく変調することで、電子ビームと物質の相互作用を制御する新技術を開発し、次世代の顕微鏡法や加工法の創出につなげます。

矢崎 亮

(伊丹/福島パネル)

非天然α-アミノ酸が拓くコンパクトペプチドワールド創発
タンパク質は複雑で精密な立体制御を行うことで、生命にとって重要な機能を果たしていることが知られています。本研究では、独自の非天然アミノ酸の合成法の開発を基盤として、コンパクトなペプチドの創成を行います。独自の合成・解析・連結技術を集積させることで、機能を有するコンパクトなタンパク質の完全人工合成の基盤技術の確立に挑戦します。

2021年度採択

稲木 信介

(伊丹/福島パネル)

無給電式バイポーラ電解反応システムの構築
外部電場の影響によりワイヤレスで駆動するバイポーラ電極を利用する電気化学系が注目されています。本研究では、流路への送液により生じる流動電位を用いてバイポーラ電極を駆動することを着想し、電解反応でありながら給電を必要としない電気化学系の構築に挑戦します。駆動原理の本質的理解と技術の確立に加え、新規反応場や微小エネルギー利用の観点を含め広く無給電電解反応システムの応用分野を探索しながら、社会的価値創出を目指します。

猪熊 泰英

(伊丹/福島パネル)

「中分子ひも」を鍵とする巨大機能性分子の創成
本研究では単分散ポリケトン分子を、小さい分子の精密さと高分子の大きさを合わせ持つ「中分子ひも」と位置づけ、より巨大な分子を多彩かつ高精度に作り出す合成技術を開発します。この新しい合成技術により、光によって導電性を変化させる分子ワイヤーやイオンを選択的に抽出する巨大環状化合物、分子を柔軟に取り込んで構造解析を実現する単結晶といった巨大機能性分子材料を作り出します。

岡田 智

(伊丹/福島パネル)

磁性分子による脳階層構造の統合解析
脳の機能は、シナプス結合、神経回路、脳領域などに分かれた階層構造によって統合されています。本研究では、複数の異なる神経活動を磁気共鳴イメージングで同時に検出したり、特定の神経回路のみを磁場で活性化したりする磁性分子の創出を目指します。開発した磁性分子によって、脳の異なった階層間で起こる活動の相関を明らかにし、個々の思考や行動を予測・制御する技術シーズの確立につなげます。

沖野 友哉

(伊丹/福島パネル)

マルチスケール分子ダイナミクス計測法の開発
時間偏光写像法とマルチプレックス計測を駆使してマルチマス、マルチスケールおよびマルチモーダルな性質を有するイオン画像法を開発し、多原子分子におけるアト秒時間スケールで誘起される電子分布の変化からタンパク質分子等で見られるマイクロ秒の時間領域での三次元構造変化を統一的に理解することに資するマルチスケール分子ダイナミクス計測法の開発を行います。

奥野 将成

(伊丹/福島パネル)

新規非線形ラマン過程の開拓による振動分光の革新
新規非線形振動分光法であるコヒーレント・ハイパーラマン分光を開発します。“サイレントモード”およびテラヘルツ領域の高速測定により、これまで得られなかった分子構造情報を取得可能な次世代の振動分光法を創出し、その基盤を形成します。さらに、顕微分光法と組み合わせることでマルチモード・イメージング技術を開発し、先端物質科学分野およびライフサイエンス分野へと新たな分析ツールを提供します。

勝田 陽介

(伊丹/福島パネル)

新しい機序で作用する核酸医薬の開発
RNAは複雑な構造を形成することで様々な機能を発現します。私はこの点に着目し、人工的に特殊な構造の形成を強制的に誘導し、新しい生命現象を生み出す研究を進めようと思っています。この研究を進めて、今まで治療法がなかった病気の医薬品開発への応用や生体内反応の分析ツールへと発展させたいと思っています。

茅原 栄一

(伊丹/福島パネル)

全共役型環状高分子の化学の開拓
合成高分子は、現代社会を支える基盤材料であり、持続可能な社会の実現に向けて更なる機能の向上が求められています。本研究では、従来の線状構造を持つ高分子とは異なる、環状高分子に着目します。構造の制御された、全共役型構造を持つ新しい環状高分子を自在に設計、合成できる方法を開発するとともに、その高分子のトポロジーとπ電子系に由来する物性解明、機能開拓を通して、環状π共役高分子を鍵とする次世代高分子材料創製を行います。

KONG LINGBING

(伊丹/福島パネル)

A Novel Strategy to Discover Rare Sugar Oligosaccharides' Potentials in Immunological Applications
生体分子複合体は、様々な病原体に対する免疫誘導因子として医療現場への適用が検討され始めています。オックスフォード大学・香川大学での抗菌誘導に関する研究成果を基に、本研究では免疫学的応用に向けた様々な病原菌標識に用いる希少糖オリゴ糖を含む多機能生体分子を作成します。これらの生体分子は、病原体のみが持つ酵素による活性化で標的細胞の膜に沈着され、このタグ付けされた細胞を除去する手法の確立を目指します。

貞清 正彰

(伊丹/福島パネル)

規則性ナノ細孔を駆使した超多価イオン伝導材料の創出
固体中をイオンが自在に伝播するイオン伝導体は、二次電池電解質等に利用される重要な固体材料です。二価以上のイオンであるマグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン等の多価イオンは、常温での効率的な伝播が困難であると考えられてきました。本研究では、固体内にナノメートルサイズの規則的な微小細孔を持つ物質を用いて、従来固体では実現し得なかった高価数を持つ多価イオンを伝播する新規物質を開発します。

澤田 敏樹

(伊丹/福島パネル)

繊維状ウイルスの合目的配列制御に基づく機能物性創発
本研究では、安全な繊維状ウイルスを素材とし、マテリアルズ・インフォマティクスに基づいてその配列を合目的に制御することで、バイオ素材からなる環境低負荷材料を創成することをねらいます。遺伝子工学により配列が改変されたウイルスを設計・構築し、それら改変が機能物性に与える効果を明らかにしながら機械学習モデルを構築し、その機能物性を自在創発して高機能な材料を自在構築します。

杉原 加織

(伊丹/福島パネル)

異種の抗菌ペプチド混合により発現する新機能を用いた抗菌薬開発
新型コロナ感染症と同様の感染力で致死率がずっと高い耐性菌パンデミックが近い将来起こると危惧されています。抗菌ペプチドはそのきたる危機の有力薬候補ですが、副作用が高いという欠点があります。本研究では、異種の抗菌ペプチドを混合することで細菌に対する毒性が上り、人間細胞に対する毒性が下がるという私たちが昨年発見した「ダブル・コオペラティブ効果」の原理を解明し、効果が高く安全な抗菌薬開発を目指します。

瀬川 泰知

(伊丹/福島パネル)

革新的有機半導体を指向した周期的3次元π共役構造体の創製
本研究では、3次元方向に規則正しく連なり、さらに半導体としての電子的性質をもった有機構造体の系統的合成法を確立します。新しい3次元π共役ユニット分子の合成やユニット同士を立体的に連結する新反応の開発を行うとともに、トポロジーなど空間幾何学的な戦略を積極的に用いることで、これまで困難だった3次元に電子的につながった有機構造体の開発を実現し新たな機能性材料の創出を行います。

瀬戸 義哉

(伊丹/福島パネル)

植物病原菌が生産するストリゴラクトン様活性分子の探索
植物の生長を制御するホルモン分子であるストリゴラクトンは、根圏シグナルとしての作用を併せ持っています。アフリカで深刻な農業被害をもたらす根寄生雑草は寄生する相手の根から放出されるストリゴラクトンを認識して発芽します。本研究では、植物病原菌から、ストリゴラクトンと同様に寄生雑草の発芽を誘導できる分子を探索します。また、トリプトファン関連分子による、根寄生雑草の生長制御メカニズムを分子レベルで解明します。

恒松 雄太

(伊丹/福島パネル)

超炭素鎖有機分子の生合成
ポストゲノム時代にある今日においてもなお、その生合成遺伝子・酵素はおろか、真の生産者の正体すら謎に包まれている化合物群「超炭素鎖有機分子(SCCM)」について、その生成機構解明を目指します。SCCMが検出される渦鞭毛藻培養液中にて渦鞭毛藻―細菌の細胞内外共生系が成立している点を手掛かりとし、抗生物質等ツール化合物による本共生系の撹乱にて、SCCM産生に寄与する新規因子(微生物種・核酸・タンパク質・代謝産物)を同定し、その機能解明を目指します。

鳥屋尾 隆

(伊丹/福島パネル)

外挿的探索が可能な機械学習を用いた未踏触媒空間の探索
人工知能(AI)技術を活用し、革新的な固体触媒を創出します。実験・理論・データ科学を融合した新しい触媒研究を展開し、学術的にも産業応用上も重要な反応に有効な触媒探索を行います。科学者の経験値と勘に基づいて行われてきた新触媒開発の手法を転換する、新しい触媒研究の方法論を提案することを目指します。

羽田 真毅

(伊丹/福島パネル)

高コヒーレンス・極短パルス電子線創出によるナノ構造体の動的構造解析の新展開
本研究では、高い空間コヒーレンスとサブピコ秒のパルス幅を合わせ持つ電子線源を開発し、ナノメートル領域の原子構造体・分子集合体の集団的な運動を直接的に観測します。複雑な原子構造体・分子集合体に対して、オングストローム領域からナノメートル領域にわたって階層的にその運動を観測する基盤技術を創出し、物質科学、化学、将来的には分子生物学の進展に貢献します。

林 正太郎

(伊丹/福島パネル)

柔軟性分子性結晶の創出とその機能開拓
「分子結晶は脆い。」この一般常識とも言える概念を覆す「柔軟性分子結晶」を新たな材料学問とします。そのために、柔軟性分子結晶の新奇創成、機構解析、現象解析、素材進化、そして応用基礎を柱とした横断的総合研究を行います。本研究の遂行によって、分子・結晶構造デザインに基づいた素材化学のイノベーションを目指します。

平野 康次

(伊丹/福島パネル)

多価カチオン種の創発と合成化学への展開
合成化学は「ものづくり」の根幹をなす基盤的学問です。新たな反応性化学種の創出は、合成化学に革新をもたらし、社会を物質創成面から変革してきました。未踏の反応性化学種である「多価カチオン種」の創発により、同じく物質供給面から社会を変革できると信じます。また、レアメタルに依存する現代の合成技術からの脱却を促し、埋蔵資源の乏しい我が国の持続可能な発展(SDGs)にも貢献できると期待されます。

福山 真央

(伊丹/福島パネル)

タンパク質核生成解析のための界面化学的液液相分離サイズ調整
本研究では、細胞内の膜のないオルガネラ(MO)が100nm-1μmサイズである意味は何か?という問いに答えることを目指します。特に、疾患発症メカニズムとの関連の深いMOからのアミロイド核生成に焦点を当て、MOサイズ依存的な機能について議論します。この問いを明らかにすることにより、細胞内MOを模倣した人工MOが作成可能なり、創薬スクリーニングの高速・簡便化などが可能になると期待します。

真鍋 良幸

(伊丹/福島パネル)

合成糖鎖を用いた細胞表層グリココードの解読と利用
細胞表層にはグリコカリックス(糖衣)と呼ばれる糖の層があり、さまざまな生命現象に関与します。細胞表層糖鎖の機能解明・制御は、生命科学における重要な課題ですが、糖鎖の多様性・不均一性が原因で、現状では、ほとんど進んでいません。本研究では、細胞表層グリココード(糖鎖情報)の解読・制御を可能とする革新的なツールを開発し、これを利用して生体膜における新しいサイエンス・テクノロジーを展開します。

眞弓 皓一

(伊丹/福島パネル)

強相関ソフトマターの時空間階層構造解析
ソフトマター・高分子材料では、複数の構成要素が互いに相互作用を及ぼし合うことで複雑な物性を示します。本研究では、コントラスト変調中性子散乱法を基軸として、強相関ソフトマター系における分子の協同的な時空間階層構造を解析する実験手法の確立を目指します。さらに、実測した時空間階層構造と物性・機能をつなぐ分子論的理解を深めることで、機能性ソフトマター材料の材料設計指針にフィードバックします。

宮崎 晃平

(伊丹/福島パネル)

アニオン駆動型電気化学の創発と応用展開
身の回りに存在する機能性の無機化合物の多くは、カチオン(陽イオン)とアニオン(陰イオン)からなる化合物ですが、研究開発のターゲットは主にカチオンに集中してきました。本研究では、「アニオン駆動型電気化学」という新機軸で電気化学的な機能材料の探索を新たな領域まで押し広げ、複数の元素を含むポリアニオン、ハロゲンや酸素、窒素、硫黄などのアニオンが主役として躍動する電気化学システムの学理構築と応用展開を目指します。

村岡 貴博

(伊丹/福島パネル)

細胞膜から着想する生体操作分子の開発
細胞膜は、細胞内外の区画化と情報伝達を担う組織であり、その働きは生体全体の活動と密接に関わります。従って細胞膜を操作する技術は、疾病治療や生体活動操作を可能にすると期待されますが、特に分子スケールでの細胞膜操作技術は未確立です。私は、物質輸送と情報伝達を制御する人工膜操作分子の開発を通じて、生体操作に関わる破壊的イノベーションにつながるシーズ創出に取り組み、「膜操作の材料科学」を開拓します。

2020年度採択

新井 敏

(伊丹/福島パネル)

細胞熱工学の深化と生命システム制御
細胞1個のミクロな世界の温度を精密に制御する革新的な技術を開発します(細胞熱工学)。これを根幹技術として、細胞で起きている事象を熱力学の新しい視点で紐解きながら、生命システムを細胞レベルから制御する実践的研究へ大きく展開します。動物や植物などの種の垣根を超えた普遍的なバイオテクノロジーとして確立、医療・食料・エネルギー分野も含め、多様なシーズが湧き出るプラットフォームの創出を目指します。

奥村 正樹

(伊丹/福島パネル)

細胞内高次会合体の動態解析
高次会合体とはタンパク質の不可逆的及び可逆的会合体形成によって生じたアミロイド線維や生物学的相分離を指します。高次会合体は正常な細胞で起きる生命現象だけでなく神経変性疾患等とも深く関わっていますが、未だ細胞内高次会合体の構造解析例は殆どなく、その動態の多くは謎に包まれています。そこでタンパク質分子が実際に働いている現場でのin situ構造解析に挑戦し、関連疾患の新たな治療戦略を目指します。

桶葭 興資

(伊丹/福島パネル)

DRY & WET:界面分割法による多糖の再組織化技術
本研究では多糖の再組織化技術の確⽴を⽬指し、独⾃に⾒出した「界⾯分割法」によって物質拡散やエネルギーの⽅向制御材料を創製します。特に、⽔との歴史が⻑い⽣体⾼分⼦「多糖」に着⽬し、乾燥環境下で形成する幾何学パターンについて系統的に探求するとともに、階層的な秩序化法則を解明します。21世紀のネイチャーテクノロジーを創発するためにも、材料工学、物理、化学、および数理の観点から挑戦します。

嘉部 量太

(伊丹/福島パネル)

安定電荷分離状態を利用した電荷・励起子制御技術の実現
有機材料の電荷・励起子は有機ELや有機太陽電池などの有機半導体デバイスにおいて最も重要な役割を占めます。従来、励起子は非常に短寿命で観測する技術が限られており、制御することも困難でした。本研究では励起子を安定化し、超長寿命化することによってその外部制御を可能とし、有機蓄光や光刺激発光材料をはじめとする新しい光機能デバイスを創出します。

久保田 浩司

(伊丹/福島パネル)

固相メカノラジカルの化学と応用
本研究では、機械的な力に応答して駆動する新反応・新材料の開発を目指します。これまで化学者は、化学反応を促進する方法として熱や光、電気エネルギーを主に利用してきましたが、機械的な力による分子変換反応の例は限られています。私は、有機高分子材料と無機・金属材料をメディエーターとして利用することで機械的な力により駆動する革新的な分子変換、重合反応および機能性有機材料の創製を行います。

熊谷 崇

(伊丹/福島パネル)

時空間極限における革新的光科学の創出
走査プローブ顕微鏡と超高速レーザー分光とを組み合わせた先端計測を開発し、時空間極限における究極的な顕微分光を目指します。この新しい計測よって光励起に伴う物理的・化学的現象のダイナミクスを原子・分子レベルで解明し、時空間極限における革新的光科学を創出していきます。

倉持 光

(伊丹/福島パネル)

室温・溶液中における単一分子の極限時間分解分光
本研究では10 フェムト秒という極限的な時間分解能で単一分子の光応答を観測し、さらにそのマイクロ秒スケールでの変遷を追跡することができる革新的な方法論を開発します。これにより、常温・溶液中で揺らぐ一つ一つの分子の個性が反映された反応ダイナミクスだけでなく、それに紐付いた量子コヒーレンスの実時間観測を実現します。また、この方法論に基づき、単一分子レベルでの反応制御に向けた技術基盤の構築を目指します。

齊藤 尚平

(伊丹/福島パネル)

分子技術によるπスタック機能分子系の刷新
分子の動きを活かしつつ、πスタックの多重化・多方向化を試み、狙い通りに高分子・液晶・超分子などの凝集系で配列させることで、従前のπ共役分子系の機能を超越します。分子骨格からオーダーメイドで作りあげる独自の分子技術により、他の系では達成できない光・力学・電子機能をもつ材料を開発し、社会的価値を創出します。また、機械学習がもたらすゲームチェンジを柔軟に取り込み、従来の研究推進法を根本から刷新します。

坂本 雅典

(伊丹/福島パネル)

赤外光をエネルギーに変える透明太陽電池の開発
太陽光の約半分を占める未開発エネルギー資源である赤外光(熱線)を電力に変換する透明なデバイス(透明太陽電池)の開発を通じて熱線のエネルギー資源化を目指します。地球温暖化の原因である熱線をエネルギー資源に変える科学技術の開発を通じて、熱線制御(省エネ)、未利用再生可能エネルギーの開発(創エネ)という二つの面で、太陽光利用に関連する研究、産業に大きなインパクトを与える破壊的イノベーションを創出します。

相良 剛光

(伊丹/福島パネル)

超分子メカノフォアライブラリーの構築と新分野創発
ロタキサンなどの特殊な超分子構造を積極活用した超分子メカノフォアを多数作製し、超分子メカノフォアライブラリーを構築します。これらの超分子メカノフォアは、pNオーダーの力を可視化・評価することができ、他分野での微細な力を観察したいというニーズにオンデマンドで応えることができます。最終的には我々の体を構成する細胞などの生体組織が1分子レベルで生み出す力の高精度解析を目指します。

床波 志保

(伊丹/福島パネル)

バイオミメティック電極による外場誘導型エコシステムの創成
生体模倣型のハニカム電極上に有用微生物を生きたまま高密度・大面積で外場(光などの電磁場)により集積する技術を開発・駆使し、人工的に創出した高密度微生物共生系での代謝機構の解明を目指します。この取組により、有機物-電気エネルギー変換微生物エコシステムのプラットフォーム構築、および疑似腸内フローラ構築による免疫強化など、エネルギー環境問題や人類の健康長寿につながる基礎原理を解明します。

西村 智貴

(伊丹/福島パネル)

高分子フォルダマーを基盤としたDDSナノファクトリーの創製
本研究では、構造が一義的に決まった様々なかたち・サイズの高分子集合体の創出法を確立し、その分子集合体に触媒や酵素などの分子変換システムを組み込んだナノデバイスを作製します。このナノデバイスを疾患部位でくすりを産生する医用反応場へと応用することで、高い治療効果、低い副作用を可能にする新しい医療技術の構築を目指します。

野々山 貴行

(伊丹/福島パネル)

生物に習う高温でガラス化する高分子材料の創製とその学理解明
プラスチック製品が高温で軟化する経験から、一般的な高分子は低温側で硬い状態、高温側で柔らかい状態を示します。私は、高分子に普遍なこの熱的性質とは真逆の「高温で硬化」する新奇な現象を世界で初めて発見し、その構造的特徴が好熱菌等の極限環境生物のタンパク質に共通することを見出しました。本研究はこの高温ガラス化現象の学理を解明し、これまでの温度制約から開放された新たな社会の創造を目指します。

橋本 卓也

(伊丹/福島パネル)

新たな分子結合の創発と材料・医薬への応用
日用品から医農薬品や電子機器まで、それぞれが用途に合わせた機能を発揮できるのは、原子と原子・分子と分子が適切に「結合」しているからです。本研究では、この材料から創薬までの基盤となる結合そのものを創発します。 具体的には「ジオキサアザボロール動的共有結合」という作りやすさと使いやすさを兼ね備えた可逆性のある結合様式を開発します。またこの新技術をSDGsに貢献しうる様々な科学分野に応用していきます。

長谷川 丈二

(伊丹/福島パネル)

分子設計と細孔構造制御によるハード柔軟多孔体の創出
スポンジのように大きく圧縮変形して元に戻ることが可能な柔軟材料は柔らかく、反対に消しゴムのように固い材料は大きく変形することはできず、割れたり砕けたりします。本研究では、ポリマー多孔体の分子構造と細孔構造の両方をデザインすることにより、固いにもかかわらず大きく圧縮変形して元に戻ることが可能な新たな材料を開発します。軽量・衝撃吸収・吸音・高断熱といった特徴を活かし、様々な応用が期待できます。

平田 修造

(伊丹/福島パネル)

生体内の高解像蓄光イメージング技術の創生
励起光の照射停止後に長く発光が残る蓄光を用いると、周囲に発光するものが存在しても標的のみを高いコントラストで検出することが可能です。しかし既存の蓄光材料は蓄光輝度が弱く、高い空間分解能が得られないという課題があります。本研究では、独自の分子設計によって高輝度の赤色長寿命室温りん光分子を開発し、蓄光材料は輝度が出ないという既成概念を破壊し、生体内での高解像イメージングの実現を目指します。

北條 元

(伊丹/福島パネル)

革新的酸化物触媒実現のための格子酸素の反応性制御指針の確立
酸化セリウム、酸化チタンなどの酸化物はそれ自身、またはそれに(貴)金属を担持したものが様々な触媒材料として用いられています。格子酸素の反応性はしばしばこれらの酸化物の触媒活性を決める重要な因子です。本研究ではこれらの酸化物を基盤材料として、原子構造・電子状態の精密な解析と制御により、格子酸素の反応性を支配する因子を明らかにし、その知見に基づいて高機能酸化物触媒を設計・実現することを目的とします。

萬井 知康

(伊丹/福島パネル)※卒業(研究開始前)

スピン偏極電子を用いた化学反応制御

村田 亜沙子

(伊丹/福島パネル)

RNA標的のケモインフォマティクス
RNAの機能不全が種々の疾患に関わることが分かっており、RNAは次世代の創薬標的として注目されています。しかしRNAを標的とした低分子創薬は進んでいません。その理由として、RNAに結合する低分子と分子設計指針の少なさが挙げられます。本研究は、低分子-RNAペア(低分子とそれが結合するRNA)の網羅的探索法を開発し、低分子-RNAペアのビックデータ解析により、RNA標的薬の設計指針を獲得します。

楊井 伸浩

(伊丹/福島パネル)※2024年3月卒業

MRI・NMRの未来を担う「トリプレット超核偏極の材料化学」
核磁気共鳴を用いた分光法(NMR)や画像化法(MRI)は、感度が非常に低いという本質的問題を抱えています。感度向上のための現行技術は高価でアクセスが制限されるのに対し、本研究では「誰でもどこでも超高感度NMR・MRI を利用できる」破壊的技術のためのシーズ創出を目指します。更に、従来技術では不可能な「生体内でNMR・MRI を高感度化する」という新概念創出にも挑戦します。

山﨑 優一

(伊丹/福島パネル)

電子・原子の運動量顕微鏡による化学動力学研究
本研究では、物質中の電子および原子がどのような速度で運動しているかを自由自在に可視化するための「運動量顕微鏡」を開発し、電子・原子の運動量分布やそれらの変化から分子の諸性質の起源を明らかにすることを目指します。とくに、単純な分子の化学結合や分子間の相互作用および化学反応において、電子運動の変化が原子にどのような「力」を与えているかを実験的に解明し、広く物質科学に資する化学原理の発見を試みます。

Li Xiang

(伊丹/福島パネル)

量子散乱による超高均一ゲル形成の学理解明とその展開
ゲルなどの高分子架橋材料は、不均一な微細構造を持つことが知られています。私は、架橋前の高分子の空間充填状態を調整することで、常識を覆す超均一ゲルの合成に成功しました。均一化によって、ゲルの力学強度などの物性は大きく向上し、理論限界にほぼ到達しました。本研究では、均一架橋構造形成の学理を、量子散乱による構造解析で解明し、ゲルのみならず、ゴムや樹脂などの種々の架橋材料の超均一化を目指します。

渡邉 峻一郎

(伊丹/福島パネル)

コンデンスドプラスチックの電子論と機能性の創成
物質と電子を凝縮可能な独自の基盤技術を用いて、高分子半導体に金属材料と同様の周期的結晶ポテンシャルを設計します。固体物性論が予言する結晶電子相転移などの未踏の機能性をプラスチックに付与します。有機合成化学の多様性と固体物性論の普遍性の融合により、超系統的・超効率的な原理検証・材料探索を行うと同時に、これらの社会還元を達成する実装科学を三位一体として戦略的に遂行します。

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