北川パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO:北川 宏(京都大学 大学院理学研究科 教授)

【専門分野】固体物性化学、低次元電子系物性、錯体化学、ナノ物質科学

分⼦科学研究所、英国王立研究所、北陸先端科技⼤学、筑波大学を経て、2003年九州大学教授、2009年より京都大学教授を務め、2014年より理事補・副プロボストを兼任。その間、文科省科学研究費審査部会専門委員、文科省研究振興局科学官、JST「革新的触媒」研究総括、JSPS学術システム研究センター主任研究員、錯体化学会・会長などを歴任。井上学術賞、マルコ・ポーロイタリア科学賞、日本化学会学術賞、文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)、英国王立化学会フェロー、ドイツ研究振興協会メルカトール・フェローなどを受賞。博士(理学)。
レアメタル「パラジウム」や「ロジウム」を人工的につくり出す「元素間融合」を実現。このメカニズムを解明し、狙い通りの物質を合成するための機能設計や予測原理の確立を目指した研究を推進。

創発アドバイザー(五十音順)

岩佐 義宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
岡部 晃博
三井化学株式会社 新事業開発センター 主席部員
加藤 功一
広島大学 大学院医系科学研究科 教授
腰原 伸也
東京工業大学 理学院化学系 教授
佐々木 高義
物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 フェロー・理事長特別参与
田中 功
京都大学 大学院工学研究科 教授
田畑 仁
東京大学 大学院工学系研究科 教授
中井 浩巳
早稲田大学 理工学術院 教授
仲川 彰一
京セラ株式会社 研究開発本部 執行役員 本部長
新田 淳作
東北大学 大学院工学研究科 名誉教授
福間 剛士
金沢大学 ナノ生命科学研究所 教授
松村 晶
久留米工業高等専門学校 校長
山内 美穂
九州大学 先導物質化学研究所 教授

過去の創発アドバイザー

龔 剣萍
北海道大学 先端生命科学研究院 教授(~2023年10月)
 ※所属・役職は当時のもの

創発研究者一覧

2022年度採択

浅子 壮美

(北川パネル)

配向電場による非対称化を鍵とする反応制御
有機合成化学は、従来不可能であった物質変換反応を可能にする新たな活性種の創成とさまざまなエネルギーを駆動力とする反応場の創成を両輪として発展してきました。本研究では、分子性触媒内に人工的に誘起した配向電場を利用して「非対称化された反応場」を創発することにより、物質変換反応の選択性や速度を制御することに挑みます。

一川 尚広

(北川パネル)

三次元トポロジー制御に基づく高分子膜の革新機能創発
高分子膜は、食料・エネルギー・ライフサイエンスすべての分野で様々な形で重要な役割を果たしています。一般に、これらの高分子膜は、構成要素である高分子鎖が乱雑に絡まりあうことによって形成されています。本創発研究では、このような高分子膜内の構成要素(構成分子)の空間配列を極めて精密に制御した状態を創り出すことで、従来の高分子膜設計ではトレードオフになってしまう機能の両立や革新的な物性の創成を目指します。

猪股 雄介

(北川パネル)

光学活性な無機結晶の触媒化学の開拓
不均一系触媒は生成物と触媒との分離が容易である点、触媒の再利用が可能な点から、均一系触媒と比較して持続可能な化学プロセスとして位置づけられています。その一方、医薬品など生理活性物質の合成に重要な不斉触媒への展開は遅れています。本研究では、光学活性な結晶構造をもつ無機化合物を不均一系触媒とするという新たなコンセプトで、幅広く利用可能な不均一不斉触媒反応系の構築を目指します。

上杉 祐貴

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

光技術で革新する電子光学の探究と展開
原子レベルで物質を観察できる先端の電子顕微鏡法は、ナノ・量子科学の研究に欠かせない重要なツールです。従来、電子顕微鏡は電極板と磁石で構成されてきましたが、本研究では、強力なレーザー光で電子ビームを操作する革新技術の開発に取り組みます。レーザー光を用いることで、電子ビームをより小さく絞り込むことができる高性能のレンズや、電子ビームのスピン偏極を操作できる全く新しい電子光学素子の実現が期待されます。

小椋 優

(北川パネル)

転位と光の相互作用がもたらす新規材料特性
材料科学における一般認識として「セラミックスは硬いが脆い」とされていました。一方で、光のない暗闇環境に置くことで、金属のような柔らかく変形しやすい性質へと変化するセラミックス材料が近年、発見されています。さらに、その起源が、材料中に存在する欠陥(転位)と光の相互作用であることが明らかになってきました。本研究では、それら相互作用が材料にもたらす機能を評価し、新規材料機能創成を目指します。

岡崎 雄馬

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

音波の量子計測が拓く核音響共鳴の新展開
音波を利用して物質中の核スピンを計測・制御する核音響共鳴は、60年以上研究がなされているにもかかわらず、音波計測の難しさのために実用的な計測手法として発展していません。近年、機械振動子と量子技術の融合によって音波を高効率に計測・制御する量子計測が発展しました。本研究では、音波の量子計測の高度化・高機能化を研究するとともに、その核音響共鳴への応用を展開し、核スピンを計測・制御する新手法を開拓します。

加藤 俊顕

(北川パネル)

次世代量子コンピュータ用高機能原子層超伝導素子の創製
本研究では次世代情報処理素子として期待されている超伝導型量子コンピュータを対象として、材料科学の観点から、量子コンピュータ性能の向上が期待できる新材料探索を行います。具体的には原子厚みの層状物質である原子層材料に着目し、独自の合成・機能化手法により原子層材料に高機能を付加させ、コヒーレンス寿命の長時間化や誤り訂正問題の解決などの観点から量子コンピュータ性能向上に貢献できる新材料開発を目指します。

神戸 徹也

(北川パネル)

単原子層からなるXenes類縁体の液相化学合成の開発
単層構造からなるXenesは特異な電子物性から超省エネルギー材料などへの利用が期待されていますが、現状では不安定かつ微量合成しかできない問題があります。本研究では界面の成長制御を利用した新たな精密無機合成手法を駆使することで、単原子層からなる新規無機材料を開発します。この精密合成により高性能な電子物性と有機物の様な柔軟性を単原子層構造により引き出し、新たな脱炭素戦略を可能にする高機能無機材料を創出します。

北村 恭子

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

オールインクルーシブレーザーの創生
これまでの研究で萌芽させてきた面発光レーザーにおける機能性(空間的な偏光分布・位相分布の制御、ビームの2次元的な偏向制御、光軌道制御)を、ワンチップ上に集約化・集積化した、オールインクルーシブレーザーを提案し、高機能・高付加価値の面発光レーザーを創生します。この研究構想の下、他波長・他ビーム形状のフォトニック結晶レーザー集積化技術の開発に挑戦します。

楠本 周平

(北川パネル)

π結合性軌道設計による新規原子軌道混成状態の実現
高周期典型元素の未踏の軌道混成状態の実現を目的とします。これまで不可能と考えられてきた、高周期元素の軌道混成状態と幾何構造を可能にし、高周期元素の新たな可能性を開拓します。軌道混成の鍵として、これまでほとんど研究されてこなかった“強ルイス酸性カルベン”を配位子として利用します。

コ ソンジェ

(北川パネル)

“High Enthalpy”溶液を基軸にした新奇な電気化学機能の発現と蓄電デバイスの革新化
電池のイオン輸送媒体である電解液中キャリアイオンの配位子を、電子が酸素原子に局在化している溶媒(溶媒和)から、電子が分子全体に広く非局在化しているアニオンに置換(アニオン和)することで、キャリアイオンが得るクーロンエネルギーにペナルティーを与えると共に、アニオンの自由度を極限に低下させます。これによって、様々な副反応が熱力学的・速度論的に抑制され、高エネルギー密度の金属二次電池が実現します。

近藤 徹

(北川パネル)

揺らぎで拓く高次階層の生体光物理学
生体系は、分子⇒タンパク質⇒タンパク質超複合体⇒生体膜といった階層的な構造を利用して複雑な反応を制御しています。分子・タンパク質レベルの機能解析が進む一方で、より高次の階層については解析技術が確立できておらず、未知の領域です。本研究では、生体系に普遍的に存在する揺らぎを局所的な情報と捉えて利用する新しい顕微分光法を開拓し、生体膜中のタンパク質超複合体で制御される光合成光反応の全容解明に挑みます。

佐藤 勝俊

(北川パネル)

酸化物ナノフラクションの集積を基軸とした 新奇触媒活性サイトの創出
本研究では、多元素からなる酸化物のナノフラクションを金属粒子表面に集積させた、金属-酸化物協奏サイトを構築する技術の確立に取り組みます。この新奇な構造を触媒活性サイトとして活用し、CO2や水素、窒素といった気体状小分子を活性化させて物質変換反応へと導く新しいプロセスに展開することで、資源・エネルギー問題の解決やカーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指します。

佐野 航季

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

二次元物質の一次元自己集積化を基軸とする無機超分子ポリマー
本研究では、溶媒に分散した無機ナノシートなどを一次元的に自己集積化させることで無機超分子ポリマーを創成し、その基礎的理解・構造制御・機能探索を行います。無機ナノ物質固有の特性と一次元階層性とのカップリングによる創発的機能を示す次世代ポリマーの開拓を目指すとともに、無機物質の高機能性と超分子的構造由来の柔らかさ・動的性質を両立する革新的無機ソフトマテリアルの創出に挑戦します。

庄司 衛太

(北川パネル)

ゆらぎで分ける技術の創出
分離技術は、化学産業やエネルギー産業の根幹技術です。本研究では、装置内のゆらぎに基づき、微小流体要素にある種の熱力学的サイクルを形成・制御・連鎖させた、新たな分離技術を創出します。本研究の遂行を通じて、流体要素が経験するサイクルに着目した新たな工学分野を開拓するとともに、未利用熱利用・低コスト・低環境負荷・長寿命を兼ね備えた分離技術の実現を目指します。

高橋 駿

(北川パネル)

半導体カイラルフォトニック結晶を用いた無偏極下でのスピン流生成とその応用
三次元ナノ構造の作製手法を駆使することで、カイラリティを有するフォトニック結晶を半導体で作製し、円偏光を介して、無磁場・無偏極下で光エネルギーをスピン流に変換することを目的としています。さらに、このスピン偏極を応用し、将来の量子情報ネットワークを構築する上で不可欠な量子インターフェースに向けて、強磁性体を導入したカイラルフォトニック結晶におけるマイクロ波と光の高効率な変換を目指します。

武田 俊太郎

(北川パネル)

光量子技術の汎用化による量子アプリケーション創出
本研究では、私が開発してきた世界唯一の光量子コンピュータ技術を様々な用途に使いやすい形に汎用化・パッケージ化し、あらゆる分野へ光量子技術を導入する障壁を撤廃します。これにより光量子技術のユーザの幅と応用可能性を劇的に広げ、計算・計測・通信など多彩な量子アプリケーションの実用化を促進します。さらに、それら全てのアプリケーションを統合・連携した光量子融合プラットフォームを実現し、光量子イノベーションを誘起することを狙います。

田中 正樹

(北川パネル)

超高秩序有機アモルファス形成と機能開拓
非晶質(アモルファス)有機薄膜は分子位置に関する長距離秩序がない“無秩序な分子堆積膜”とみなされてきましたが、分子配向制御などにより様々な機能を付与できることが明らかになってきました。本研究では、分子秩序の精密制御により超高秩序アモルファスを創製し、従来の無秩序構造に埋もれている未踏機能の開拓および固体物性・デバイス物理に関する新たな学理を構築します。

湯 代明

(北川パネル)

CNT molecular junction based THz electromechanical systems
カーボンナノチューブ分子接合型テラヘルツ電気機械システムの開発

本研究では、カーボンナノチューブ分子接合に基づく極めてコンパクトな電気機械システムを創出します。最先端その場電子顕微鏡により原子構造変化メカニズムを解明して、機械学習により作製プロセスを最適化します。本研究を通じてテラヘルツレベルのナノ電気機械共振器を開発することによって、次世代通信に向けた超高周波発振素子や室温付近で作動する量子センサーへの応用展開を目指します。

土持 崇嗣

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

未踏化学を拓く革新的エンタングルメント量子計算
量子コンピュータは夢の計算機ですが、物質科学に活用するためには堅牢な計算アルゴリズムが必要です。本研究では、物質の状態を「複雑に絡まった紐」として捉え、これを正確にほどくための量子プログラムを展開することにより、量子計算機の性能を引き出します。これに応用数学やデータサイエンスなど古典ツールを融合することで、最先端のスパコンでも太刀打ちできない化学の未踏領域を切り拓くシーズを創出します。

天神林 瑞樹

液体建築学の開拓
液体は流動性により、決まった形状を持たず、触れると変形してしまいます。液体を、流動性を保ちながら任意の形状に固定できれば「液体は不定形状」の常識が破壊されます。本研究では、はつ液処理を施した「ぬれない液滴」をビルディングブロックとして構造を組み立てる“液体建築”を開拓します。液体を固体物質のように自由に成形することが可能となり、液体によるものづくり産業の基盤構築に貢献します。

中野 匡規

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

強相関ファンデルワールス超構造の量子物質科学
薄膜エピタキシー技術を駆使することで、様々な積層配列構造や層間配列構造を有する強相関ファンデルワールス超構造を構築し、単一物質では得られない創発量子物性や従来型デバイスでは得られない革新量子機能の実現を目指します。また、試料の大面積性を活かして多角的な構造・物性評価を行い、創発量子物性の微視的な起源を明らかにすることで、強相関ファンデルワールス超構造を対象とする量子物質科学の学理構築を目指します。

林 博之

(北川パネル)

新規多元系物質群の自律探索システム開発
新物質の発見は産業的にも学術的にもブレークスルーの起点であり、これまで様々なアプローチによる探索的研究が積み重ねられてきました。一方、最先端の手法を以てしても解決困難な問題の一つに多元系物質の合成条件予測があります。本研究では、単純な組成から多元系物質までを網羅する潜在的記述子を創出し、これを用いて広大無辺な合成条件空間を開拓することで、未知の多元系材料を効率的に発見します。

藤原 宏平

(北川パネル)

トポロジカル物質群のアモルファス薄膜材料化
量産プロセスに適したアモルファス薄膜は、様々な機能材料や素子に用いられています。本研究では、特殊な結晶秩序や対称性が巨大物性を生み出す結晶性トポロジカル物質を対象に、その機能物性を構造の乱れたアモルファス薄膜で引き出すための学理構築に挑みます。短距離秩序の構造物性相関の解明と先進素子への応用を通して「アモルファストポロジカル電子材料」を創製し、次世代材料開発にブレークスルーを引き起こします。

蒲 江

(北川パネル)

原子層モアレ超格子の自在構造制御による量子機能デバイスの創製
原子層物質の積層ヘテロ構造に生じるモアレパターンは新奇物性・機能創発の舞台として物質科学に新たな潮流を生みつつあります。本研究では、歪み効果と組成変調を導入したモアレパターンの新しい構造制御技術を提案することで、既存手法では実現し得ない異方性・周期性・次元性・対称性を有するモアレ超格子を実現します。これにより、特殊なモアレポテンシャルに起因したユニークな量子物性を活かしたデバイスの創製に取り組みます。

松永 隆佑

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

テラヘルツ駆動高速ホール伝導ダイナミクスの精密計測と学理構築
現代の情報通信および処理技術はギガヘルツ帯の電子輸送を駆使して行われています。これをテラヘルツ帯まで拡張して次世代高速エレクトロニクス実現に貢献するため、本研究では、テラヘルツ電場で駆動される高速ホール効果に注目します。物質が持つ多彩な情報を内在したホール伝導を非平衡下で精密に計測することで、高速磁気デバイス開発やスピン流の高速ベクトル制御の実現に向けた計測技術開発と学理構築を目指します。

丸山 美帆子

(北川パネル)

生物における準安定形から安定形への相転移科学
生物は、結晶の相を自在に制御してバイオミネラル(結晶と有機物の精巧な複合組織)を作ります。例えば骨や歯はしなやかで強靱です。一方で病的組織である尿路結石や血管石灰化は、溶解や除去が困難で厄介な存在です。私は、生物の結晶相制御のメカニズムを解明し、骨や歯の欠損・尿路結石・血管石灰化の新規治療法や予防法の開発を目指します。さらに、生物の結晶化戦略を応用した、新しい結晶材料合成技術を開発します。

森山 貴広

(北川パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

反強磁性体によるスピン・テラヘルツ波変換
本研究では、反強磁性体の超高速物性の理解・解明を通して、反強磁性体が次世代テラヘルツ情報技術の主材料となりうることを実証することを目的とし、「スピン⇔テラヘルツ波変換基盤」を創発することを目指します。本研究は、超高速通信や超高速情報処理、情報ストレージ技術、センシング技術に関わるものです。また、本研究を通して、実験的に未知の部分が多い反強磁性体のテラヘルツ物性の学理を構築します。

2021年度採択

安楽 泰孝

(北川パネル)

脳内情報を血液中に持ち帰る自立駆動型ナノマシンの開発
私は精密設計した高分子を構成分子とする集合体(ナノマシン)を薬物送達システムとし、脳への薬剤輸送を制限する血液脳関門(BBB)を効率良く通過させることに成功しています。本研究では、このBBB通過型ナノマシンを基盤技術とし、高分子化学、材料科学、分子生物学的観点から洗練し、既存技術では着想もしない「脳分子を回収」、「血液中に帰還」する自立駆動型ナノマシンを構築し、中枢神経系疾患の治療・診断法へと展開します。

石井 智

(北川パネル)

光学微細構造を用いたサーマルフォトニクス
熱放射を担う赤外光を波長より小さな微細構造によって制御し、実効的に高屈折率を得たり非平衡状態を創出したりすることで、熱放射による熱輸送を飛躍的に増大することを目指します。本研究によって熱放射が増大することで、放熱や放射冷却を高効率で行えるようになることが期待されます。また、微細構造の光熱変換を用いた局所加熱にも取り組みます。本研究を通してサーマルフォトニクスの分野開拓を進め、新たなシーズ創出に繋げます。

井手上 敏也

(北川パネル)

2次元結晶ナノ構造の設計原理と量子機能性開拓
本研究では、2次元結晶の曲率構造やヘテロ界面、ツイスト積層界面といったナノ構造を利用して、通常の結晶では実現できないユニークな非周期構造や対称性を創発し、それらを反映した様々な量子機能性の開拓に取り組みます。2次元結晶特有のナノ構造の設計原理を基軸としたナノ物質科学の学理構築を行うと同時に、それを様々な量子自由度へと応用し、量子流の自在制御に向けた物質科学の新潮流の構築を目指します。

井上 和俊

(北川パネル)

マルチスケール粒界理論の構築による新材料開拓
結晶同士の界面である粒界の原子構造と機能特性との間には、深い相関性があります。本研究では、幾何学および整数論に基づく原子論的アプローチにより、すべての粒界構造を普遍的に記述する理論を完成させ、原子構造予測を効率化します。さらに、微分幾何学に基づくメソスケール粒界理論の構築により、多結晶体の機能予測に挑みます。そして双方の粒界理論を統合し、粒界構造を制御した材料設計指針の確立に貢献します。

井上 久美

(北川パネル)

バイポーラ電気化学顕微鏡による生命システムの計測
細胞間の物質伝達を直接観察できる、これまでにない解像度(250 nm)と高速性(75 fps)を併せ持つ電気化学顕微鏡を創出します。バイポーラ電極素子を工夫することで、自由行動ラットの脳内情報やエネルギー物質伝達の可視化に挑戦します。本技術は、バイオイメージング法の新しい学術領域を創成するとともに、生命システム解明への道を開き、生命を模した超省エネルギー化など、イノベーション創出の基盤となります。

王 謙

(北川パネル)

ソーラー燃料の高効率製造に向けた波長帯域の補完的技術の融合
本研究では、高性能光触媒材料を利用した高効率人工光合成に、太陽熱技術などの補完的技術を融合した革新的なエネルギー変換システムの実現を目指します。このシステムでは、太陽光の全スペクトルを利用することで、従来技術を凌駕する高い効率で、二酸化炭素と水からソーラー燃料を合成することが期待されます。本研究の成果を実用化できれば、脱炭素社会の早期実現に貢献できます。

大岡 英史

(北川パネル)

非平衡状態における触媒反応ネットワーク理論の開拓
触媒は将来のクリーンエネルギー技術にとって不可欠であり、良い材料を見つけるためには、設計指針となる理論が必要です。本研究では、実際の反応環境(非平衡状態)による特性変化を予測できる新理論の確立を目指します。このため、応用数理の手法である化学反応ネットワーク理論を既存の触媒理論に取り入れます。このことにより、触媒開発を強力に推進し、数理・機械学習・物理化学の融合による新たな学問領域を樹立します。

太田 泰友

(北川パネル)

集積磁気ナノフォトニクスの開拓
単結晶からなる磁気光学薄膜を絶縁体層上に形成した光学基板をプラットフォームとして、磁気光学とナノフォトニクスを融合した集積磁気ナノフォトニクスを開拓します。誘電体のみではアクセスの難しい非相反な光物質相互作用を扱い、集積フォトニクスに有用なナノ光デバイスの創出を図ります。本研究では、ナノフォトニクスにおける新たな研究プラットフォームを構築することで、創発的研究を生み続ける土壌の形成を目指します。

片山 哲郎

(北川パネル)

光励起を伴わない超高速化学反応計測装置の開発
化学者の共通の夢は思いの通りの分子を合成することで、この夢の実現が化学者にとって究極の破壊的イノベーションです。このシーズとなりうる技術はあらゆる合成反応を計測する装置です。この装置を開発するために、私は時間分解分光でノーリッシュ、ポーター教授らの報文以降70年間誰も崩せなかったバイアスである「光や電子パルスを用いた反応トリガーが超高速化学反応計測には必要という常識」を破壊します。本研究ではポンプ・プローブ法と単一分子光子統計の概念を組み合わせた新規超高速反応計測装置を開発します。

小林 玄器

(北川パネル)

ヒドリドイオン導電性材料の開拓と新規イオニクスデバイスの創製
ヒドリドイオン(H–)は高速イオン拡散に適した一価のイオンでありながら、プロトン(H+)との間で二電子反応(H– ⇄ H+ + 2e–)が可能です。H–を電荷担体として活用することで、蓄電では高エネルギー密度化、燃料電池では過電圧の低下、物質変換では反応効率の向上など、多様な効果が期待できます。私は、H–導電性の電極、電解質材料を開拓し、水素の電荷自由度を活用した新たなイオニクスデバイスの創出を目指します。

猿山 雅亮

(北川パネル)

ナノ結晶の自己集積化による構造特異的反応場の構築
液相中で様々な無機物質のナノ粒子をすばやく組み上げる手法を確立し、さらにナノ粒子の形状制御やイオン交換反応などの手法を組み合わせることで、多様なナノ粒子三次元超格子群の創製を目指します。また、ナノ粒子同士が近づくことではじめて現れる集団物性と、ナノ粒子間の隙間でつくられる小さな化学反応場を組み合わせた新しいエネルギー変換材料としての応用展開にも挑戦します。

三宮 工

(北川パネル)

電子線を用いた多次元多空間ナノスケール光計測
電子線を用いることで、光の回折限界をはるかに超えた空間スケールで光の情報が計測できます。光速の50%程度まで加速された高エネルギーの電子線は、ナノスケールの白色点光源として機能します。電子線励起発光のエネルギー・角度・発光位置等を同時に分解することで、多次元・多空間計測が可能になります。この多次元・多空間的な情報を元に、新たなナノ光計測・光デバイス応用の基盤を創ります。

篠北 啓介

(北川パネル)

半導体モアレ超構造を用いた量子電磁力学の創生
光と物質が強く相互作用した量子電磁力学の手法は、光による物質の量子状態制御だけでなく、量子情報処理において重要な役割を果たしています。本研究課題では、こうした量子電磁力学をモアレ超構造という巨大な量子二準位系を用いて実現し、量子電磁力学の新しい局面を切り開きます。従来の共振器量子電磁力学を超えた、未踏の量子光学現象が実現し、次世代の量子情報処理の基盤技術となる可能性が期待されます。

杉本 泰

(北川パネル)

誘電体ナノアンテナの増強キラル近接場による不斉光反応場の創成
キラル分子の円二色性を利用した光不斉反応は、達成可能な異性体純度と収率が課題となっております。本研究では、新たなナノアンテナを開発し、強く捻じれた近接場を形成することで、キラル分子の円偏光選択的な光学応答(光吸収など)を増大します。増強領域にキラル分子を配置できる構造の設計・作製を行い、キラル近接場を不斉源とする新しい光反応を提案します。これにより、光不斉分解・合成の高効率化を目指します。

鈴木 康介

(北川パネル)

原子レベルで精密設計された分子状担持金属触媒の創製
革新的な触媒技術の開発は、環境・資源・エネルギー問題への取り組みやものづくりにイノベーションをもたらすことが期待されます。本研究では、原子レベルで精密設計された金属微粒子と酸化物担体からなる新概念の分子状担持金属触媒を開発します。各要素の構造、組成、原子配列、電子状態等の制御に加え、界面における協奏作用の制御が可能な触媒設計法を開発し、高難度反応や高効率反応を実現する無機分子触媒の学理を構築します。

芹澤 愛

(北川パネル)

軽金属のプラットフォーム化技術の確立
カーボンニュートラルの実現に欠かせない軽量材料であるアルミニウム合金に対して、水蒸気を駆使して材料内部および表面の性能を同時に引き出すことに挑戦します。材料中の原子の拡散を操る「組織制御学」と、材料表面を自在に機能化させる「表面工学」、これらの学問を水蒸気を基軸として斬新に融合することによって、自動車や電池といった多分野で利用でき、次世代の社会基盤形成に欠かせない革新的軽量材料を創出します。

田中 嘉人

(北川パネル)

ナノ構造が拓くマクロな物体の光マニピュレーション
ナノ構造による光制御によって光圧・光トルクをエンジニアリングする、私独自のアイデアに基づき、レーザービーム内のマクロな円板の位置と姿勢をナノ構造によりパッシブ制御する新しい方法を創出し、マクロな光マニピュレーションを実現します。これは、レーザーの優れた指向性を活かした宇宙船のレーザー推進や光学浮上させた光バネ振動子による超高感度力センサなど、次世代技術・デバイスの要素になることが期待されます。

都留 智仁

(北川パネル)

欠陥ダイナミクスに基づく力学機能設計と材料開発への挑戦
現代社会では、構造材料として多くの金属材料が使われています。これらの合金は試行錯誤や経験的知見によって開発されてきましたが、多様な元素を含む最先端の材料では、最適な合金設計を行うことはできなくなっています。本研究では、金属材料の力学機能を決める欠陥構造とその動的挙動を、電子構造に基づいて記述する枠組みを構築し、経験的知見に頼ることなく、戦略的に力学機能を設計できる材料開発基盤の確立を目指します。

所 裕子

(北川パネル)

ナノと双安定性の相関による新奇機能性物質の探索機構の創出
本研究では、環境や健康への害が少ないサスティナブルな材料を舞台とします。物質形状をナノスケールで制御して双安定性をコントロールすることで、新奇な物性および先端的な機能性を発掘し、環境問題およびエネルギー問題解決の礎となる物質を創出します。そして、本研究の“ナノと双安定性の関係を利用した物質探索機能”の有用性を実証し、世の中に提案することを目指します。

富永 依里子

(北川パネル)

海洋光合成細菌が化合物半導体を結晶成長する機構の全貌解明
本研究は、細菌が呼吸をする際に利用する呼吸鎖 (電子伝達系) のはたらきによる金属イオンの酸化還元反応を制御するという着眼点を基軸として遂行します。これまでの実験の過程で私が独自に得たIII-V族化合物を部分的に結晶として体外に合成する細菌を用いて、菌体最表層での酸化還元反応機構と合成重金属や化合物半導体の結晶化の過程を解明し、光照射による半導体結晶の合成効率の向上と結晶化の制御を達成します。

長久保 白

(北川パネル)

nm/サブTHz領域における極限超音波技術の創出
私は光(フェムト秒パルスレーザ)を用いて音(サブTHz超音波)を操る究極の計測技術を開発します。音・超音波は身体内部のイメージング、配管の非破壊検査、材料の力学特性の計測など、幅広い分野で重宝されてきました。しかし従来の超音波技術は波長が長いためナノスケールでの計測には不向きでした。そこで私はフェムト秒パルスレーザを用いて可視光よりも波長が短い超音波を操り、更にナノスケールで焦点化する極限超音波技術の創出を目指します。この究極の超音波計測技術は半導体やタンパク質などの構造・力学特性・形態変化を計測することができるため、幅広い分野における科学技術の発展に大きく貢献します。

丹羽 健

(北川パネル)

高エネルギー密度窒化炭素の創製と機能創出
炭素と窒素は地球上に豊富に存在し、様々な物質・材料の構成元素を担っています。しかしそのポテンシャルはまだまだ未知数です。本研究では、物質の状態を大きく変えることができる圧力場を駆使し、地球深部に相当する環境(百万気圧、数千℃)で炭素と窒素からなる新奇な炭化窒素の創製を目指し、そこに潜む高エネルギー密度物質としての可能性や、ダイヤモンドを上回る超硬質性など、新しいユビキタス物質・材料科学の開拓に挑みます。

橋本 綾子

(北川パネル)

ホモロジー解析によるTEM/STEM画像からの微細構造の定量的深層抽出
透過型電子顕微鏡は微細構造観察に適した計測手法ですが、得られた画像の解析は定性的な比較になりがちです。本研究では、画像解析の新たな指標としてホモロジーを導入します。顕微鏡画像から組織構造や原子構造を定量的に解析する手法を確立し、抽出された微細構造の深層と物性・特性との関連性を議論します。また、コンピュータ科学と融合させ、解析処理の高速化、高精度化を図り、微細構造の最適化や特性予測を行います。

畠山 歓

(北川パネル)

プロセスに強いMIの創出と複合機能材料での実践
材料研究をデータ科学の視点で推進するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)は産学の競争力を高める新基軸です。本研究では斬新な全固体電解質の創出を例題に、プロセスを含む日常の研究情報を電子化し、自動解析するシステムを構築します。製法・構造・物性の関係をデータ科学の視点で俯瞰すると共に、電子データとしての「生の研究情報」を世界中でシェアする、全く新しいオープン科学・材料研究の在り方を提示します。

服部 梓

(北川パネル)

強相関電子系固体のフレクソ物性科学
固体の変形を新たなナノテクノロジーとして操ることで、元素の掛け合わせだけではなしえない機能性の創出を実現します。変形された固体材料中で機械-電気結合効果によって生み出されるフレクソエレクトリック効果に注目し、本質的な支配因子や材料横断的な法則を解明し、材料開発に新分野を打ち立て技術革新をもたらします。

宮田 耕充

(北川パネル)

原子シート高次構造の構築と機能開拓
エレクトロニクスのさらなる高性能化に向け、原子厚の配線や半導体の3次元的な自在配列は、電子素子や回路の究極的な微細化と高密度化に繋がる重要な技術といえます。本研究では、数原子厚の2次元原子シートを利用し、コイル等の3次元構造を持つ電子素子から半導体量子ナノ構造まで自在に構築する基盤技術の開発を目指します。

柳澤 実穂

(北川パネル)

ナノ-マクロ空間相転移の学理によるシン材料科学
分子よりも大きな細胞サイズ空間での高分子挙動は、表面を含む複数の弱い相互作用により決定するため、ナノ系ともマクロ系とも異なる相転移現象が観察されます。本研究では、平均場理論で記述可能なマクロ系での高分子挙動が、どのような空間特性により変化し、制御されるのかを定式化します。本研究により、ナノ-マクロ空間に至る相転移の全容解明と、空間を介した高分子材料の物性操作という新展開が期待されます。

横田 紘子

(北川パネル)

カイラル分域壁科学の創成
本研究では、物質内に存在するカイラリティに関わる分域壁に着目し、これらの分域壁で発現する新機能およびカイラリティの導入による自由度の増加を利用し、”カイラル分域壁科学”として確立させることを目標にします。このために、カイラリティの識別および分域壁の内部構造を観察可能な非破壊3次元可視法を開発します。これにより、従来では成し得なかったカイラル分域壁に起因する新機能性を開拓していきます。

義永 那津人

(北川パネル)

ソフトマテリアルの構造形成プロセスを理解するための数理モデルとデータ科学の協奏
ソフトマテリアルは、高分子、コロイド、液晶など多数の構成要素分子が階層性を持った構造を持つ材料です。環境に柔軟に応答する特異な興味深い機能を持っていますが、非線形、非一様、そして非平衡であるためにその理解は非常に困難です。そこで、ソフトマテリアルの支配方程式をデータ駆動科学的手法で推定することにより、構造・機能形成を理解しつつ新奇な材料開発に貢献します。

2020年度採択

阿南 静佳

(北川パネル)

液晶と金属-有機構造体の異種相間複合化と機能開拓
液晶は電場や磁場などの外場により配向方向を動的に制御可能ですが、結晶中の分子配列は外場による大きな影響を受けない静的な配列と考えられます。本研究では多孔性の結晶と液晶という二つの異なる相を複合化し、結晶の静的な分子配列を外場として利用することで液晶の多方向への配向制御と、電場に応答する動的な光学結晶の実現に取り組みます。従来の複雑な光学デバイスの単純・小型化につながる技術となることが期待されます。

安藤 和也

(北川パネル)※2022年6月卒業

角運動量流電子技術
電流に基づく現代のエレクトロニクスに対し、電流に加え、電子スピンの流れ「スピン流」により革新的機能を実現するスピントロニクスがあります。本研究は、さらに軌道角運動量の流れ「軌道流」の基礎物性を開拓し、スピン流・軌道流を包括する概念 「角運動量流」に基づく新たな電子技術を切り拓きます。これにより、電流・スピン流・軌道流に基づく新たなテクノロジー体系の基盤構築を目指します。

石川 亮

(北川パネル)

3次元・ダイナミック原子分解能電子顕微鏡法の開発
従来の2次元に投影された原子構造解析から脱却し、3次元での立体原子構造解析手法および原子ダイナミクスを捉える高速電子顕微鏡法の開発・高度化を行います。これらの最先端電子顕微鏡法を用い、代表的な不均一触媒である貴金属ナノ粒子と酸化物基板の間に形成されるナノ界面の原子・電子構造を明らかにし、ナノ粒子の凝集・反応過程の直接観察、触媒活性点および劣化機構の解明を目指します。

稲葉 央

(北川パネル)

内部構造操作による微小管の機能進化
細胞骨格の一種である微小管は、骨格としての強固な構造や運動システム、形成・解離などの特異な機能を有し、生命活動に重要な役割を果たしています。その性質を利用することで、微小管は運動性材料の部品や細胞操作のための標的として注目を集めています。本研究では、独自に開発した微小管の内部空間に分子を導入する技術を活用することで、これら微小管の機能を人工的に進化させる新手法を開拓します。

植村 隆文

(北川パネル)

シート型バイオモニタリングシステムによる生体代謝物計測
本研究では「超軽量・フレキシブル電子回路技術」と「バイオテクノロジー」の融合により「シート型バイオモニタリングシステム」を実現します。このシステムは、生活習慣病予防、未知の感染症への備えに繋がる種々の生理指標(生体代謝物)を日内変動も含めて「低侵襲かつ常時計測」するための革新的技術です。この技術革新により、将来的な予防医療・遠隔医療につながる破壊的イノベーションを創出します。

大野 誠吾

(北川パネル)

モアレ励起によるトポロジカル情報の物質系への転写
モアレは2つの周期が重なり干渉するときにできる新たな周期です。これまで2次元周期モアレはある種のベクトル場として扱うことができトポロジカルチャージと呼ばれる渦構造が並んでいることがわかってきました。本研究では、モアレのもつトポロジカルな性質を、光を媒介させて物質系へ転写する方法を提案します。もし実現できれば物質系に新たな振動状態の励起や秩序状態の発現など新たな物性物理の開拓へとつながります。

笠松 秀輔

(北川パネル)

不規則材料系のマテリアルズインフォマティクスへの展開
近年、大量の材料データにAI技術を適用することで、所望の特性を有する新材料の探索を行う「マテリアルズインフォマティクス(MI)」が注目を浴びており、規則的に原子が並ぶ材料ではかなりの成功を収めています。これに対して本研究では、原子の並びをあえて不規則にすることで様々な特性や機能を付与できることに着目します。不規則材料系に対応した高速・高精度な物性計算フレームワークを確立し、不規則材料系のMIを展開します。

金澤 直也

(北川パネル)

新世代コンピューティング素子のためのスキルミオン物質基盤創成
多数のスピンで構成されたナノサイズの磁気粒子「スキルミオン」の2つの特徴(安定な粒子性・巨大な実効磁場)を引き出す物質を開拓します。様々な形態に自己組織化したスキルミオン集団に現れる非線形現象や量子伝導現象を開拓することによって、数〜数百ナノメートルという階層に現れる新しい物理を切り拓き、量子/ニューロモルフィックコンピューティングといった新世代計算機技術への応用可能性に挑戦します。

川上 恵里加

(北川パネル)

ヘリウム表面上の電子を用いた量子ビットの実現
量子コンピューターは、量子ビットの持つ不思議な状態を上手く利用することによって、現在のコンピューターでは解くことが出来ない問題を解くことが出来ます。そのためには、高精度な量子ビットを準備する必要があります。本研究では、真空中に浮揚している電子を用いて量子ビットを実現することを目指します。真空中では量子ビットの状態を撹乱するものが少ないので、高精度な量子ビットを実現出来ることが期待出来ます。

北野 政明

(北川パネル)

ヘテロアニオンサイトを反応場とする新規固体触媒の創出
本研究では、様々な酸窒素水素化物材料を合成しそれらを基軸とする新触媒の開発を行います。この触媒系では、酸窒素水素化物のヘテロアニオンサイトを反応場として直接もしくは、単原子触媒を導入し間接的に利用することで、従来触媒プロセスよりも温和な条件下でN2, H2, NH3, CO2, CH4などを活性化することに加え、従来の触媒では実現できなかった化学反応を進行させることを目的としています。

XU XIAO

(北川パネル)

マイクロマルテンサイト変態 -多機能性材料物質群の創出-
本研究は、マルテンサイト変態という変位型相変態の中で、約1%以下の微少な変態歪みを示す物をマイクロマルテンサイト変態と定義します。「微小型」でありながらも超磁歪を超え、かつ「微小型」であるからこその超省エネの特性を生かし、将来的に超省エネアクチュエータ、超磁歪材料を超える次世代磁歪材料、高効率次世代磁気冷凍材料および省エネ次世代相変化型メモリー材料の破壊的にイノベーションの創出に挑戦します。

好田 誠

(北川パネル)※2023年3月卒業

電子スピン波情報担体の創発
電子スピンが回転しながら空間伝搬するスピンの「波」を新たな情報担体に利用する学理構築と原理実証を目指します。半導体の電子スピン波は長い寿命と優れた制御性を兼ね備え、光情報通信の独壇場であった波の並列・多重性を、半導体に組み込むことが可能となります。半導体素子のスケーラビリティと融合させ、既存技術の延長線上にない方法で、膨大な情報量を伝送・処理できる固体スピン波情報プラットフォームを構築します。

小塚 裕介

(北川パネル)

トポロジカル超伝導ヘテロ接合の材料科学
現在、電子や光子の量子性を用いた量子センサーや量子コンピュータの開発が盛んに行われています。しかしながら、量子性は外乱に脆弱であるため、量子性の保持と制御性を両立することは現状容易ではありません。本研究では、量子性を長時間保ち、かつ外部制御を可能にすると期待されている特殊な超伝導状態を異種物質接合で実現し制御するための材料開発を行い、新たな固体量子系構築の土台とすることを狙います。

斉藤 一哉

(北川パネル)

デジタルとフィジカルが融合した生物模倣スマートマテリアル
世界の持続可能性のため、完全な炭素循環型社会を実現している生物の技術体系に学ぶ必要があります。生物の骨格や巣に見られる複雑な3次元構造は「かたち」そのものが様々な「機能」を持っており、この仕組みの解明が3次元の生物模倣工学における技術革新の鍵となります。本研究では最新のデジタルファブリケーション技術と折紙や木工などの伝統技術との融合によりこの自然のシステムを工業的に再現する技術体系を構築します。

坂本 良太

(北川パネル)

分子性ナノシートの合理的応用展開の追究
新規ナノ材料としての二次元物質「ナノシート」の重要性・注目度は近年飛躍的に増大しています。「分子性ナノシート」は有機分子・金属イオンから二次元構造を直接構築する新ナノ材料候補ですが、現状ではその機能創出と応用展開は不十分です。本研究では、解決すべき学術的問題点も考慮しながら、社会・産業に破壊的イノベーションをもたらす分子性ナノシートの応用展開を追究します。

佐藤 真一郎

(北川パネル)

ランタノイド・ナノフォトニクス量子デバイス
高品質かつ高い微細加工・デバイス技術を有する窒化ガリウムを基盤材料とし、量子ビットとして優れた特性をもつランタノイドイオンの発光とスピン状態を高度に制御する量子デバイスを開発することで、これまで達成されていない「室温で電気的に制御する光通信波長帯の単一光子源」「オンチップ量子もつれ光源」「量子センシングによるデバイス内部リアルタイム診断」を実現し、Society5.0のための量子技術基盤を構築することを目指します。

塩見 雄毅

(北川パネル)

相変化材料を用いたスピントロニクス機能開拓
物質中の電子スピンを利用したスピントロニクス技術と相変化メモリで用いられる技術・材料を組み合わせることで、これまでにないスピントロニクス機能の創出を目指します。相変化材料の結晶相とアモルファス相の間の相変化を利用して、電流よりも低消費電力であるスピン流の高速スイッチや、次世代メモリへの応用が期待される磁気ナノ構造の生成・伝搬、さらには新しい複合メモリとして相変化磁気メモリを実現します。

正直 花奈子

(北川パネル)

半導体の結晶歪みを利用したオペランドチューニング可能な量子光源の開発
高セキュリティおよび大容量化のため、量子計算機および量子情報通信技術の構築が求められています。現在商品化される量子計算機は、絶対零度に近い低温かつ低ノイズが必要な超伝導材料を基本に動作しています。これに対し本研究では、光の粒子を基本とする室温動作可能かつ小型な半導体材料を用いた量子光源の実現を目指します。本研究は、現在の量子計算機の置き換えに加え、安全性の高い量子暗号通信への発展に寄与します。

杉本 宜昭

(北川パネル)

原子間力顕微鏡を用いたナノ磁性の力学制御
磁気記録媒体に用いられるナノ磁石の磁気を、電流を用いずに読み出して書き込むことができれば、省エネルギー、低発熱、超大容量な磁気記録デバイスという破壊的イノベーションが実現します。そこで、本研究では、原子間力顕微鏡を用いて個々のナノ磁石の磁気を力学的に検出し操作できることを示します。その機構を明らかにして、磁気記録の力学的読み出しと書き込みの指導原理を与えます。

高橋 康史

(北川パネル)

化学・ナノ構造カップリングの解明に資する対話型分析技術の創成
バイオロジーの発展に新しい計測・イメージング技術の開発が不可ですが、オルガネラレベルや、組織深部の分析・操作技術が欠けています。そこで、これまで培ってきたナノピペットによる分子レベルの刺激技術や、生細胞イメージングのノウハウを活用し、細胞と対話するようにセンシングと刺激を印加できる新しい技術の走査型プローブ顕微鏡技術を開発し、化学・ナノ構造カップリングによる新たなバイオロジーの世界を開拓します。

土井 謙太郎

(北川パネル)

極希薄濃度場におけるイオン種の識別
本研究では、プロトンをはじめとした液中のあらゆるイオンについて、極低濃度場を測定する手法の確立を目指します。従来、イオン濃度の測定にはイオン電極法等が知られますが、各種イオン選択性物質に依存するため、対象が特定のイオン種に限られています。本研究では、少数のイオンを捉えるためのナノスケールの流路構造を製作し、それを用いた物理的な測定原理を見出すことで、材料に依存しないイオン測定手法の開発を行います。

冨岡 克広

(北川パネル)

半導体構造相転移材料の創成
本研究は、これまで半導体ナノ構造の結晶成長で偶発的に生じる半導体準安定結晶の構造相転移現象を人工的に制御し、自然には存在しないウルツ鉱型結晶のIII-V族化合物半導体材料の結晶成長技術の確立を目的とします。これにより、従来の半導体材料にはない新しい物性と学理を見出し、これらの知見を活かした半導体デバイス分野の更なるパラダイムシフトへ繋がる科学技術の創成を目指します。

名村 今日子

(北川パネル)

バブルアレイのマイクロ・ナノ構造化による新規熱輸送技術の創出
とても小さな気泡の周りの温度分布や液体中の成分を調整すると、気泡は自発的に高速振動します。本研究では、この振動原理の解明と、気泡配列の集団振動制御に挑戦します。一つ一つの気泡の動きが協調して、集団で液体や熱を移動させる大きな力を生むことを期待します。特に、光を利用した高速温度分布測定や制御を駆使して気泡配列の周りの熱の移動を明らかにします。将来的には電子部品冷却などの技術革新に貢献します。

日出間 るり

(北川パネル)

非線形非平衡現象を駆使した化学プロセスの創成
日本のエネルギー消費全体で非常に大きな割合を占める化学産業において、高効率・省エネルギーな化学プロセスが実現されれば、莫大なエネルギー消費の抑制につながります。本研究は、化学産業で頻繁に用いられる高分子や界面活性剤を含む溶液が示す、相転移的、時間発展的な流動の学理を明らかにした上で、この非線形・非平衡な流動現象を利用し、時空間を制御した、高効率・省エネルギーの全く新しい化学プロセスを創成します。

福本 恵紀

(北川パネル)

あらゆる半導体デバイスに適用できるオペランド観測技術の確立
昨今のエネルギー問題を解消すべく、クリーンエネルギー創出や省エネ化のための半導体材料やデバイスが次々と開発されています。これらの性能は、電荷キャリアである電子と正孔(電子が抜けた穴)の動きにより左右されます。本研究では、半導体デバイスが動作している状態下での電荷キャリアの動きを空間、時間、および、エネルギー的に評価する新規手法を開拓し、素子開発のスピードアップ、また、性能向上を目指します。

藤枝 俊宣

(北川パネル)

バイオインテグレーション工学によるデジタル生体制御
本研究では、生体組織への追従性に優れる高分子ナノシートを基盤技術とし、エレクトロニクスやセンシング技術を融合させることでバイオインテグレーション工学の創成を目指します。具体的には、ナノシートと印刷技術を融合させることで得られる「プリンテッドナノ薄膜」を生体貼付型デバイスへと深化させ、各種センサを通じて得られる生体情報をもとに、革新的な診断・治療技術の開発に挑みます。

藤田 大士

(北川パネル)

分子スーツ装着による生体分子の機能強化と動態制御
本研究で挑むのは、化学的・生物学的に不安定な生体分子(タンパク質や核酸)を化学の力で機能強化し、生体内外の環境で狙った機能・動態を自在に発現できるようにする新しい方法論開発です。従来の化学的修飾法ではなく、いわば宇宙服の様に、目的分子の一分子ずつに精密に装着できるカスタム分子スーツを設計・合成する独自アプローチを採ります。複数目標の中でも、特にRNA分子のデリバリーの実現に強い関心を寄せています。

古瀬 裕章

(北川パネル)

革新的異方性透明多結晶セラミック材料の創出
多くの結晶粒で構成される多結晶セラミックスでは、これまで光学的異方性材料を十分に透明にすることは困難とされてきましたが、結晶粒を従来の1000分の1程度の大きさに制御することでレーザー発振が可能な程、透明にすることに成功しました。本研究では、この技術をさらに発展させて、まだ透明体が実現していない革新的な光学材料を創出し、幅広い分野への応用展開を目指します。

松田 信幸

(北川パネル)

時間領域フォトニックデバイスの創成
本研究では、空間的な屈折率分布に基づく光学素子の概念を時間の領域へと拡張した新たな光デバイス技術を創出します。時間的な屈折率境界における光学現象の観測と理解を進めながら、ビームスプリッタなどの光学素子を時間領域に作製し、その動作を実証します。さらにそれら素子を組み合わせ、高度な光情報処理のための光回路を構築します。これにより、空間的な制約から解放された新たな光デバイス技術の確立を目指します。

松本 翼

(北川パネル)

超高濃度ドーピング技術で拓くダイヤモンドパワーエレクトロニクス
究極のパワーデバイス材料と期待されるダイヤモンドを用いたパワーエレクトロニクスを学問だけではなく、産業としても創成し、革新的な省エネルギー技術を世界に発信することで、温室効果ガス排出量の大幅削減、持続的発展可能なエネルギーの超高効率社会を実現することを目的としています。最重要課題である低抵抗なn型ダイヤモンド半導体を実現し、誰しも効率的かつ安全に電力を使用できる破壊的イノベーションを起こします。

三浦 大樹

(北川パネル)

金ナノ粒子―他元素協働が拓く不均一系有機合成の新展開
本研究では、金ナノ粒子と他元素の協働触媒作用を利用することで種々の分子間結合形成反応に対して優れた分子変換効率を示す触媒系を開発し、高付加価値かつ真に有用な有機合成中間体の実用的製造を可能とするプロセスへと展開します。また、無機固体材料上において効率的な協働触媒作用が発現する原理を解明することで、環境調和的かつ高効率な有機分子変換を実現可能とする不均一系触媒の新たな構造設計指針を構築します。

宮本 吾郎

(北川パネル)

界面組成の高度制御法確立による構造用金属材料の力学特性向上
高効率・高信頼性社会の実現には構造用金属材料の高強度化が不可欠です。構造用金属材料を高強度化すると破壊が粒界から生じるようになるため、特性向上のボトルネックとなっています。そこで、本研究では、粒界における元素間の相互作用を実験的に解明したうえで、計算状態図の考え方を粒界に適用し、粒界への元素濃化(粒界偏析)を設計する粒界偏析設計の概念の有効性を実証し、力学特性を向上させる指導原理を確立します。

山田 勇磨

(北川パネル)

ミトコンドリア人工共生が拓く新しい細胞生物学
ミトコンドリアの質および量は細胞間で異なり、細胞の働きに大きな影響を与えます。本研究では、ミトコンドリアを人工的に目的の細胞に共生させ、細胞機能を変化(ミトコンドリアの質・量による制御)させる技術を開発します。具体的には、ミトコンドリア共生用人工ナノカプセル 【TransMIT】を用いて細胞へミトコンドリアを導入し、細胞の働きを変化させます。新しい細胞生物学の創出、難治性疾患治療に貢献したいと思います。

吉井 一倫

(北川パネル)

光ファンクションジェネレーターで拓く光周波数エレクトロニクス技術
「光の電場そのもの」により電気信号のオンオフとその向きを制御し超高速情報処理を目指す「光周波数エレクトロニクス」という新しい科学テーマが開花しました。「光パルスの分散補償の限界」というパラダイムを打破し物質深部でモノサイクルパルス光を発生できる『光ファンクションジェネレーター』を独自の手法で開発します。これにより既存の光集積プラットフォーム上で光周波数エレクトロニクスを構築できる未来を目指します。

Le ThuHacHuong

(北川パネル)

光検出核磁気共鳴分光法の創成及びナノ流体デバイス工学の深化による革新的分析基盤技術の確立
本研究では、特殊な微細構造体で発生された巨大なキラリティーを有する光子と原子核のスピンとの磁気的結合を制御することを通して、物質のスピン情報を光で高感度に計測する方法論を創出すると供に、革新的な光検出の核磁気共鳴分光法(NMR)と核磁気共鳴画像法(MRI)の開発に挑戦します。光を用いた検出は、従来の方法の電磁気学に基づいた測定感度と時空間分解能の原理的な限界を突破し、超空間分解能 MRI や極微小体積のNMRを可能にします。

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