石塚パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO:石塚 真由美(北海道大学 大学院獣医学研究院 教授)

【専門分野】化学物質影響、環境農学、獣医学

北海道大学にて博士号(獣医学)取得後、国立環境研究所を経て、北海道大学獣医学部へ。2010年より同大学院獣医学研究院教授。文部科学省学術調査員、内閣府食品安全委員会専門調査委員、厚生労働省薬事・食品衛生審議会臨時委員、環境省中央環境審議会専門委員を歴任。また日本学術会議会員。日本トキシコロジー学会奨励賞、日本農学進歩賞、文部科学大臣表彰・若手科学者賞、ソロプチミスト日本財団女性研究者賞、日本環境化学会学術賞などを受賞。専門は、環境化学物質の毒性学的影響に関して、人や実験動物、野生動物を対象に研究。特に、in vivo, in vitro, in silicoからの解析を行い、国内だけでなくアフリカなど海外フィールドにおいて、国際協働のサーベイランスも行っている。

創発アドバイザー(五十音順)

磯部 友彦
国立環境研究所 環境リスク・健康領域 主幹研究員
菅澤 薫
神戸大学 バイオシグナル総合研究センター 教授
田中 あかね
東京農工大学 農学研究院 教授
野口 伸
北海道大学 大学院農学研究院 研究院長
福田 晋
九州大学 理事・副学長
万年 英之
神戸大学 大学院農学研究科 教授
吉村 崇
名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 教授

創発研究者一覧

2022年度採択

秋山 雅博

(石塚パネル)

化学修飾に立脚した環境曝露と腸内細菌の新たな関係
ヒトを含む生物は多種多様な化学物質に曝露されており、その生体影響が懸念されています。また、生体に共生する腸内細菌は様々な代謝物を産生し、宿主の生理機能調節に関与することが知られます。本研究では腸内細菌叢を「新たな代謝器官」と捉え、環境中化学物質による腸内細菌への化学修飾を介した菌叢代謝プロセスへの影響を明らかにし、環境曝露と腸内細菌の融合による新たな研究領域の創出を目指します。

浅岡 聡

(石塚パネル)

次世代メタン発酵と脂質藻類の融合でエネルギーを創る
メタン発酵過程で生成されるアンモニア・硫化水素による発酵阻害を回避してメタン生成菌を濃縮する担体を開発し、メタン収率の向上に挑戦します。さらに食品及び畜産廃棄物のメタン発酵で副生する消化液を利用した新たな脂質生産藻類の培養法を開発します。将来的にはメタン発酵消化液への栄養塩濃縮と藻類による効率的な脂肪酸生成を融合させ、日本の電源構成において最大で火力発電に次ぐ大きなエネルギーフローの創出を夢見ています。

田中 貴

(石塚パネル)※2024年1月卒業

On-farm experimentationによる農学研究の転換
On-farm experimentation(農家圃場における栽培の試行錯誤)を実践する農家ネットワークを構築し、農家間や他のステークホルダーとのデータ共有・解析プラットフォームを確立させます。国内のみならず、海外で収集されるビックデータも対象に網羅的な解析を実施することによって、不確定な要素から影響を受けやすい農家圃場のデータ解析手法を確立し、現場で科学する新たな農学研究の基盤を創出します。

田上 瑠美

(石塚パネル)

環境リスクの高い未規制化学物質の探知とリスク低減措置の検討
私は、液体クロマトグラフ-高分解能質量分析計(LC-QToF-MS/MS)を用いたワイドターゲット・ノンターゲット分析により、水環境および水生生物に残留する未規制化学物質とその分解・代謝産物について、それらの存在と挙動を包括的に解析します。検知された未規制化学物質とその分解・代謝産物について、in silico予測、in vitro試験、試験魚を用いたin vivo曝露試験により、発生毒性・中枢神経毒性・内分泌かく乱作用を評価します。これらの結果を統合し、魚類に対して高濃縮性・高毒性を示す未規制の環境汚染物質の提示を目指します。また、南・東南アジアに適した費用対効果の高い環境リスク低減策の提案も試みます。

中沢 由華

(石塚パネル)

転写共役DNA修復の分子機構と老化関連疾患の分子病態解明
遺伝情報を格納しているDNAは放射線や紫外線など様々な環境要因により常に傷ついています。DNAの傷は、遺伝情報を読み出す転写機能を阻害します。細胞機能を維持するためには、転写中のDNAに生じた損傷を速やかに除去する、転写共役DNA修復システムが必須です。本研究では、転写共役修復の分子機能解明と、さらに本機能の破綻により種々の環境因子に高感受性を示す、各種疾患や老化の分子病態の理解を目指しています。

西田 梢

(石塚パネル)

多様な生物の行動生態解明に向けた同位体ロギング法の確立
環境変動や環境改変が深刻化するなかで、持続可能な環境利用・保全のためには生物の生息する環境の情報を知り、環境変動が生物に及ぼす影響を評価することが重要です。生物硬組織の安定同位体比は生息環境や生物の代謝活動を記録し、追跡の難しかった生物の環境・生態情報が解読できます。本研究では、萌芽的な同位体比分析技術の開発を行い、多様な生物の硬組織から環境や生態の履歴を復元する「同位体ロギング法」を提案します。

的場 章悟

(石塚パネル)

胎盤による胚発生の保護メカニズムとその破綻
哺乳類の胚は胎盤によって制御された環境で発生します。本研究ではマウスをモデルとして、胎盤の機能異常が胎児の発生や生後発育、さらに成体になってからの健康に対してどのような影響があるのかを理解することを目的とします。そのため、胎盤の成り立ちから細胞種ごとの機能解析まで包括的に胎盤の研究およびその研究素材開発を推し進めます。開発した胎盤機能異常モデルマウスをもとに胎盤機能の理解と、その異常を治療する技術の開発につなげます。

水野 聖哉

(石塚パネル)

ミニマル染色体コンソミックマウスの創出
生体での遺伝子機能を明らかにするため、一つの遺伝子を欠損させたノックアウトマウスが作出・解析されています。一遺伝子ノックアウトマウスはとても有用な遺伝子機能解析モデルですが、複数の遺伝子が相互に機能を代償する場合には役に立ちません。そこで本研究では、代償性を持つ可能性がある100以上の遺伝子をシステマティックに刈込んでいくことで、疾患に関連する複数遺伝子の『組み合わせ』を特定することを目指します。

山本 真也

(石塚パネル)

内集団・外集団の形成メカニズムと集団心理の進化・発達
ヒトは協力し平和な社会を築くこともできれば、戦争のような悲劇も生み出してしまいます。このような両極端な性質の進化的基盤に、比較認知科学的手法でアプローチします。敵対的な集団間関係を築くチンパンジーと寛容なボノボ、ヒト社会の特徴である重層社会の萌芽をみせるウマなど、多様な動物種を対象に、内集団・外集団の形成過程や集団心理のメカニズムを生理・認知・行動・社会・生態レベルから多層的に明らかにします。

2021年度採択

大黒 亜美

(石塚パネル)

匂い物質感受性の変化や個人差の解明
私たちは日常、身の回りの香水や柔軟剤など様々な匂いを感知して生活しています。これらの匂いを過敏に感じ取り神経症状が現れる化学物質過敏症が社会的に問題となっており、私たちも体調が悪い時には、これらの匂いを過剰に感知し、不快に感じられることがあると思います。しかし、匂い物質の感受性の個人差や体調による変化がなぜ生じるのかは不明です。本研究では嗅覚系の薬物代謝酵素に着目することで、その解明を目指します。

小野 大輔

(石塚パネル)

厳しい地球環境に適応するための哺乳類生体機能の解明
冬の厳しい環境を乗り越えるための、ユニークな動物のシステムとして「冬眠・日内休眠」が知られています。一部の哺乳類では、日長や環境温度を感知し、過酷な環境が来る季節や時刻に合わせ生体機能を調節し、能動的低代謝を示しますが、そのメカニズムはよく分かっていません。本研究では、動物がどのように概日時計を使って、日長やその他環境変化を感知・記憶し、生体機能を変化させているかを神経回路レベルで明らかにします。

小林 博樹

(石塚パネル)

野生動物間情報通信網による高線量地帯の生態調査
私は社会的に貴重な情報である被曝地域等の音響生態学(サウンドスケープ)のフィールド調査において、AIを用いたデータ解析や野生動物間情報通信網による広域線量計測機構の実現となる研究活動を行います。具体的には実際に生息する野生動物を用いたセンサーネットワーク実験を試みます。そして解析精度の向上のため愛好家の活動を利活用したAI用教師データの生成を行います。この研究により高線量地帯に生息する鶯の鳴き声の長期変化の可視化を達成します。

佐藤 拓哉

(石塚パネル)

寄生生物による生物機能創発機構の解明と制御への基盤研究
自然界には、宿主の行動を操作し、自らの利益となる生物機能を自由自在に引き出している寄生生物が多くいます。それらの寄生生物は、宿主の生体システム全体を破綻させず、かつ自然環境の変動に左右されない頑健性も備えた行動制御を達成しています。本研究では、寄生生物による「宿主操作」を生物学における新たな研究モデルに据え、動的な生物機能の利用に破壊的イノベーションを引き起す知識基盤を創出することを目指します。

新村 毅

(石塚パネル)

家畜における致死的暴力性の起源の解明と制御
本研究では、家畜の致死的暴力性(共喰い)をテーマとして、その分子メカニズムを明らかにし、さらに、攻撃的だった野生動物がいつどこでどのように人類に近づいたのか?という家畜化の起源を明らかにします。また、致死的暴力性という問題行動を抑制した新品種を造成することで、生産現場において生じている大きな経済損失を解消し、人と動物の持続可能な関係性の未来を創造します。

福永 久典

(石塚パネル)

環境放射線被ばく後の精子形成と次世代影響
放射線事故・原子力災害後の環境放射線被ばく、とくに精巣の被ばくから次世代影響がどのように生じるかは明らかではありません。本研究では、時空間的に「不均一なエネルギー付与」という環境放射線被ばくの特徴に着目し、遺伝子改変マウスや生体内イメージングを用いて、精巣被ばくと遺伝的影響を結ぶメカニズムの解明に挑みます。そして、安全性の高い革新的な放射線制御技術・イノベーションの創出を目指します。

宮田 治彦

(石塚パネル)

雌の生殖路における精子機能調節機構
体内受精を行う哺乳類では、雌の生殖路内を精子が移動して卵子と受精します。これまでは、試験管内で受精を再現する体外受精を用いて多くの受精研究が行われてきました。その一方で、雌の生殖路における受精機構については多くの謎が残されています。本研究では、雌の生殖路における受精の可視化や精子機能調節因子の探索など、体内受精に焦点を絞った研究を展開し、医療・畜産分野における生殖補助技術への応用に繋げます。

2020年度採択

佐久間 知佐子

(石塚パネル)

感染症媒介蚊の吸血を制御する口吻味覚基盤の包括的理解
蚊によって媒介される感染症の脅威は年々深刻化しています。蚊の吸血行動は、病原体が体内へと送り込まれる根源の行動で、分子メカニズムの理解が求められます。宿主へと誘引された蚊が、どのように血液を感知して吸血を始め、満腹になり、吸血を終えるかは未解明な点が多くあります。本研究では、蚊の味覚に注目して、一連の吸血行動がどのように制御されるかを解明することで、将来的に蚊の行動を制御するための知見を得ます。

佐藤 和秀

(石塚パネル)

時間・空間光励起制御による革新的疾患モデル開発解明研究
近年慢性難治疾患が高齢化や環境・食生活の変化で増加しており、その罹患期間の長さ、医療的治療の限界、医療経済上の負担増から、ますます問題となってきています。本研究では、光を用いた特定機能細胞の空間的・時間的な除去技術を開発し応用することで、臓器特異的難治慢性疾患の新しい疾患動物モデルを作成し、治療法や診断への応用へと結びつける挑戦的な研究です。

原 健士朗

(石塚パネル)

精子産生における生殖細胞移動の役割
ほ乳類雄体内における生殖細胞の多様な移動現象の意義は謎に包まれています。本研究では、精子産生における生殖細胞移動の役割の解明を目的とし、生殖細胞の移動履歴と分化・生存・成熟との関係を検証します。単なる局在変化を越えた細胞移動の役割解明を目指す挑戦的研究ですが、達成されれば、細胞移動に焦点を当てた精子品質制御の学術基盤が構築され、家畜・野生動物・ヒトの精子品質制御法開発への応用発展が期待されます。

福田 信二

(石塚パネル)

計算知能と数理モデルを統合した高解像度生態水理シミュレータの開発
本研究では、水域ネットワーク情報基盤の基軸となる高解像度水環境観測技術や情報統合アルゴリズムを開発し、観測データに基づく非定常水環境解析システムを構築するとともに、高解像度な生物の空間分布等の観測結果から、生物の空間分布モデルや個体行動・群集動態モデルの開発と高精度化に取り組みます。最終的には、要素モデルの統合と可視化により、河川~農業水路網における統合生態水理環境シミュレータの開発を目指します。

藤井 一至

(石塚パネル)

熱帯荒廃地の炭素貯留を高める人工土壌のデザイン
増え続ける世界人口を養う食糧の増産と森林保護を両立するためには、土壌の肥沃度を消耗するだけでなく、劣化土壌の再生が必要です。これまで土壌劣化とみなされてきた土壌酸性化と植物・微生物の適応機構を活用し、食品廃棄物、火山灰から作製した人工土壌を熱帯荒廃地(石炭採掘跡地)に移植することで土壌発達と有機物蓄積を加速できることを実証し、持続可能な食糧生産と炭素貯留を両立する土壌エコテクノロジーを提案します。

峰野 博史

(石塚パネル)

マルチモーダルフェノタイピングによる適応型情報協働栽培手法の確立
本研究では、先端IoE (Internet of Everything)を駆使して、静的かつ動的な植物生理情報や生育に影響する農作業も含めたマルチモーダルフェノタイピング技術を切り拓くとともに、マルチスケール・マルチモーダル・マルチテンポラルな経時データセットの革新的な知能化によって、行動変容を伴うヒューマンインザループによる革新的な適応型情報協働栽培手法の確立を目指します。

宮崎 亮

(石塚パネル)

腸内細菌叢の再構築による創発的共生システムの解明
腸内細菌叢の形成原理や宿主との関連性は極めて複雑で難解です。腸内共生システムとして優れた特徴を有するミツバチを用いて腸内細菌叢を実験的に再構築し、個々の腸内細菌の挙動を1細胞レベルで可視化・定量することで、腸内細菌叢の時空間ダイナミクスおよび関連する宿主行動・生理機能の解明に挑みます。ミツバチを腸内細菌叢研究の新しいモデルとして確立し、腸内細菌叢が制御する宿主機能・行動の分子基盤に迫ります。

安尾 しのぶ

(石塚パネル)

周期的環境を利用した新しいストレスバイオロジーの開拓
現代社会はストレス社会と呼ばれ、多くの人がストレスによる心身の不調を経験しています。疾患憎悪や生体機能の破綻に関与するストレスは「ディストレス」に相当しますが、一方で生体はポジティブなストレスである「ユーストレス」にも直面し、疾病への耐性強化や治癒力加速に繋がります。本研究では、ユーストレス下のマウスモデルを用いてポジティブな生体制御系の網羅解析を行い、人工制御技術の創出や人への応用を目指します。

Researchmap 本サイトの研究者情報はResearchmap登録情報に基づき更新されます。