水島パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO:水島 昇(東京大学 大学院医学系研究科 教授)

【専門分野】医化学、細胞生物学

東京医科歯科大学にて博士号(医学)取得後、基礎生物学研究所を経て、2004年東京都臨床医学総合研究所室長、2006年東京医科歯科大学医学部教授、2012年10月より東京大学医学部教授を務める。その間、日本生化学会会長・理事、日本分子生物学会理事、日本細胞生物学会理事などを歴任。日本学術振興会賞、井上学術賞、武田医学賞、トムソン・ロイター引用栄誉賞、上原賞、持田記念学術賞、藤原賞など多数受賞。American Society for Clinical Investigation、EMBOメンバーシップ。哺乳類を中心とし、オートファジーなどの細胞内分解の分子機構と生理的意義について、細胞生物学、生化学、遺伝学、生理学、生物物理学的研究を行っている。

創発アドバイザー(五十音順)

乾 隆
大阪公立大学 大学院農学研究科 教授
大戸 茂弘
九州大学 大学院薬学研究院 教授
大場 雄介
北海道大学 大学院医学研究院 教授
粂 昭苑
東京工業大学 生命理工学院 教授
後藤 典子
金沢大学 がん進展制御研究所 教授
竹田 潔
大阪大学 大学院医学系研究科 教授
土居 久志
大阪公立大学 研究推進機構 特任教授
中山 啓子
東北大学 大学院医学系研究科 教授
深水 昭吉
筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 教授
南 康博
神戸大学 大学院医学研究科 教授
梁 明秀
国立感染症研究所 ウィルス第3部 部長

創発研究者一覧

2022年度採択

安藤 康史

(水島パネル)

脳内ペリサイトの新規生理機能の探求
脳内では神経・血管・グリア細胞などが、互いに密に連携する神経血管ユニットを形成することで、複雑かつ秩序だった中枢高次機能が発揮されます。本研究では、知見が乏しい毛細血管を被覆するペリサイトを基軸とし、新たなペリサイト-周囲細胞間相互作用を解析することで、新たな脳内ペリサイトの生理機能の探求と、その分子制御機構の解明に挑戦します。これらの解析を通して、中枢高次機能の調節機構の解明や中枢疾患の制圧を目指します。

遠藤 裕介

(水島パネル)

脂質代謝による病原性T細胞系譜の追跡と革新的治療法の創出
医学が発展した現在でも、多くの炎症性疾患に対しては根治治療の実現は困難です。本課題では、脂質代謝という新たな観点からアレルギーや自己免疫疾患など難治性疾患に取り組み、従来の手法では捉えることのできなかった難治性の原因となる「病原性T前駆細胞」を同定します。また、病原性T前駆細胞特異的な因子を標的として、これまでには実現し得なかった世界初の革新的根治治療法の創出に貢献します。

王 青波

(水島パネル)

ゲノム制御機構を解明する、解釈可能な汎用予測モデルの構築
本研究は、任意のゲノム変異がどの細胞種/状態でどの遺伝子の発現を制御するのかを、その機構と共に参照できるスコア体系の構築、即ち遺伝暗号表のゲノムワイドな拡張を目指します。生物学研究の現場、及び臨床の現場で誰もが第一の選択肢として利用するゲノム変異の「辞書」を提供する破壊的イノベーションとしての可能性を含む研究です。

河合 喬文

(水島パネル)

細胞が持つ「電気信号」の意義を多面的に理解する
脳や心電図に代表されるように、我々の身体では至るところで「電気信号」が生成されます。この電気信号の生成・感知機構では、「電位依存性イオンチャネル」と呼ばれる分子が主たる役割を担っています。しかし私は近年、生体内の電位感知には、それ以外のメカニズムも関わっていることを見出しています。本研究では、これまで見過ごされてきた新たな電位感知機構にスポットを当て、幅広い生体組織を対象に研究を行います。

小林 祥久

(水島パネル)

薬剤耐性から迫る発がん機構
がんはあらゆる治療薬に耐性を獲得するため根治が難しいです。私は、肺がんの薬剤耐性の研究をしてきた中で「薬剤耐性に必須の要素は何か」という観点からアプローチすることで、予想外に発がん遺伝子ファミリーRASの弱点とその回避機構の解明に成功しました。本研究では、1〜2年で起こる様々な薬剤耐性を長年の蓄積で生じる発がんの縮図と捉えて、薬剤耐性の切り口から新規発がん機構解明に挑戦してがんの根治を目指します。

小松 紀子

(水島パネル)

T細胞分化可塑性に基づく組織恒常性の破綻機構の解明
T細胞は免疫応答の司令塔として重要な役割を果たしますが、線維芽細胞など体を支持する間質細胞も免疫応答を制御する機能をもつことが知られつつあります。本課題では新たに見出した外的環境に応じて柔軟に性質を変える T 細胞と組織特異的に存在する間質細胞との相互作用に着眼して、免疫疾患および非免疫疾患における組織の恒常性破綻機構を解明し、新たな疾患概念を創出することを目指します。

佐藤 荘

(水島パネル)

疾患特異的マクロファージから繙く抗腫瘍メカニズムの包括的理解
近年、免疫系をターゲットにした薬の開発により、これまで治らなかった病気が治るようになりつつあります。この免疫細胞の多くは細胞に多様性がありましたが、マクロファージにはそれが見られませんでした。私達は、マクロファージに疾患ごとのサブタイプがあることを世界に先駆けて証明してきました。本研究では対象疾患をがんに定め、新規サブタイプによるがん抑制メカニズムの研究を行い、革新的な治療法の開発につなげます。

島田 裕子

(水島パネル)

寄生蜂毒研究に基づく上皮選択的な細胞死誘導の解明
私は、内部寄生蜂ニホンアソバラコマユバチが、宿主ショウジョウバエ幼虫の体内にある将来の成虫組織となる上皮細胞に細胞死を誘導する現象に着目し、上皮組織選択的に作用する寄生蜂毒の同定とその作用機序を明らかにすることを目指します。寄生蜂の巧妙な生存戦略を支える毒成分の多様性とその作用機序を包括的に理解することによって、新たな知の創出に貢献し、寄生蜂毒の天然医学資源としての価値を評価します。

杉浦 大祐

(水島パネル)

シスインタラクトーム解析法の開発による免疫制御機構の解明
免疫細胞の機能は、細胞表面上の様々なリガンド・受容体による相互作用で厳密に制御されており、様々な疾患の創薬ターゲットになると期待されていますが、その全貌が解明されているわけではありません。本研究では、特に同じ細胞上で隣り合って結合(シス結合)するタンパク質の相互作用に着目し、免疫細胞上で機能する新たなシス結合タンパク質を探索、生理的な意義・機能を解明し、画期的な創薬への応用を目指します。

高野 愛

(水島パネル)

マダニ臓器間における病原体許容能力の解明
致死率の高い感染症を含め、数多くの病原体を媒介するマダニについて、臓器・細胞集団毎に生物学的に特徴の異なる細胞(群)を分離し、分子生物学的に新たな特徴を明確にします。さらに、それぞれの細胞群について、病原体に対する許容力や、病原体感染時の細胞動態を解明することで、未だ不明な点の多いマダニ体内における病原体の長期維持メカニズムの一端を明らかにすることを目標としています。

谷川 俊祐

(水島パネル)

新規全胚培養システムを用いた血流と尿排出路を有する次世代腎臓オルガノイドの創出
ヒトiPS細胞から腎臓オルガノイドの作成が可能になりましたが、機能を持つ腎臓へ成長させるには血流(入口)と尿の排出路(出口)が必要です。本研究では血流と尿排出路を有する次世代型の腎臓オルガノイドを構築し、豊富な血流によってオルガノイドが成長・成熟できる新しい培養システムを確立します。これにより正確な病態再現に基づいた創薬と移植可能な腎臓の作製を目指します。

中西 祐貴

(水島パネル)

マトリセルラー蛋白を標的としたがん脆弱性誘導の試み
がん細胞のみでなく、がん組織全体の脆弱性誘導を目指し、細胞外マトリックスのマトリセルラー蛋白(MCP)に注目します。MCPは、その制御機構や役割の多くが未解明ですが、特に病的状態で誘導されることから、診断・治療のバイオマーカーやターゲットとなる可能性があります。がんに誘導されるMCPの全貌(ランドスケープ)を解明、制御することで、がん脆弱性を誘導し、治療効果を増強させることに挑戦します。

永安 一樹

(水島パネル)

うつ病のセロトニン仮説の創造的破壊
うつ病をはじめとする精神疾患は全世界で大きな社会問題となっています。精神疾患治療薬の大部分が作用するセロトニン神経は、従来抗うつ効果を担うと考えられてきましたが、最近私たちの研究チームは正反対の機能を持つセロトニン神経が脳内に存在することを見出しました。本研究では、このセロトニン神経の多様性に着目することで、従来の治療薬の限界を打破することを目指します。

西原 秀昭

(水島パネル)

血液脳関門という新たな診断、治療ターゲットの確立
神経疾患では脳の恒常性を維持する血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)の異常が病気の発症や進行と関与します。ただし臨床を反映したモデルがないため、詳細は分かっていません。本研究では、独自に開発した「患者iPS細胞からBBB構成細胞を作製する技術」を用いてこの問題を克服し、患者BBBに着目して神経疾患の病態解明を行うことで、BBBを標的とした革新的な診断技術と創薬に挑戦します。

西村 多喜

(水島パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

革新的なオンデマンド脂質プローブ作成技術の確立
これまでに開発した新しい脂質プローブスクリーニング系を改良するとともに、脂質プローブに特化した合成ライブラリーを作製します。これらの革新的な技術を使って、様々な脂質分子種や膜脂質組成に対する脂質プローブを圧倒的なスピード&高効率で作製します。最終的には、開発した新規脂質プローブを用いて新たな生命現象の発見に繋げつつ、脂質プローブの配列情報も公開することで、世界へのインパクトを最大化します。

福井 一

(水島パネル)

血行力学特性が規定する心臓内腔形態の秩序形成
心臓は拍動し、細胞に対する外部からの力学刺激は発生から恒常性維持に至るまで必須の役割をもちますが、「力が果たす作用」は殆ど理解できていません。本研究では心臓管腔内の血流情報を切り分けて捉え、力学刺激を細胞内情報に変換する生物学的機構(メカノトランスダクション機構)の全容に迫ります。そして適切な血流と収縮力を保つための心臓管腔形態がどのように形成されるのか、新たな理解の提示を目指します。

松田 隆志

(水島パネル)

血圧制御を司る神経機構の研究
本研究では、血圧制御に関わる神経回路機構および脳内炎症による新規の慢性的昇圧機構の解明を目指します。生きた個体の脳内において複数の細胞の活動を同時に制御・観察する手法(マルチカラーin vivoイメージング)を確立し、異なる神経回路により伝達される血圧制御シグナルが統合される仕組みや、炎症性細胞が血圧制御に関わる神経活動を調節する仕組みを解析します。本研究は、複数の情報が脳内で統合される普遍的な仕組みの解明に繋がるものです。

丸山 剛

(水島パネル)

MHC-I 認識により制御される上皮細胞の細胞競合性免疫
細胞は自身の細胞内の微小な変化を、抗原というかたちで細胞外へ提示します。この内在性抗原の提示はクラスI-MHC(MHC-I)に依存しており、傷害性T細胞などの活性化によるがん細胞を含む異常細胞の認識および排除に極めて重要な役割を担います。最近私は、独自に同定した正常細胞の形質膜タンパク質受容体AltRが、がん変異細胞において発現亢進するMHC-Iを認識することで、上皮細胞の抗腫瘍能を惹起することを見出しました。このことは、細胞間相互作用シグナルの実体の一つを解明したことに加え、非免疫細胞である上皮細胞が、異常細胞のMHC-Iを認識するという免疫細胞様のサーベイランス機構を有する、という新たな発見です。本研究課題では、MHC-Iを介して促進される上皮細胞の攻撃・排除様式の探究を目的とします。

三野 享史

(水島パネル)

免疫におけるRNA制御の分子基盤
免疫が正しく機能する事は生体の恒常性維持に重要です。特に、免疫が過剰に働いてしまうと急性呼吸促拍症候群や、肺線維症、多発性硬化症などの自己免疫疾患の発病に繋がります。近年、この免疫の厳密な制御にRNA制御が重要であることが明らかになりつつありますが、その全容は未だに解明されていません。そこで、本研究では、免疫におけるRNA制御の分子機構を解明することを目指します。

三宅 崇仁

(水島パネル)

神経病態薬理学基盤拡張にむけたプレシナプトロジーの創成
現代の医学においても、精神疾患・神経変性疾患は治療の難しい病です。その背景には、脳神経機能がいまだに十分に理解されていないことがあります。本研究で私は、これまで見過ごされてきた神経機能コンポーネント「プレシナプス」に着目し新しいバイオ技術を開発することでプレシナプスを”見える”化し、病による脳機能の破綻メカニズムの解明に挑戦します。本研究を発展させることで、新しい作用機序をもつ神経系疾患治療薬の創成に貢献したいと考えています。

宮地 孝明

(水島パネル)

小胞型神経伝達物質トランスポーターを切り口とした革新的創薬
神経伝達の異常は生活習慣病のがんや全身性の合併症を発症し、予後不良を引き起こします。分泌小胞に伝達物質を運ぶ小胞型神経伝達物質トランスポーターは神経伝達の起点となる必須分子ですが、その多くは不明です。私は独自のトランスポーター評価技術を用いて、小胞型神経伝達物質トランスポーターの全体像と仕組みを明らかにし、これを切り口として、生活習慣病の克服に資する全く新しいタイプの革新的創薬を目指します。

宮西 正憲

(水島パネル)

造血幹細胞機能維持体外細胞増幅技術の開発
造血幹細胞を用いた細胞・再生医療は、白血病などの悪性の血液疾患以外にも、遺伝子改変技術等を組み合わせることで、将来的には様々な難治性疾患を根治しうることが期待されています。その一方で、造血幹細胞が生体内にごく僅かしか存在せず細胞の調整そのものが容易でないことが、これら夢の技術開発の大きな障害となっています。そこで本研究では、これらの医療技術開発に革新をもたらす体外細胞増幅技術の開発を目指します。

森 貴裕

(水島パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

合理的酵素機能改変による革新的生体触媒の創出と利用
遺伝子解析技術の発展により、様々な天然薬物の生合成遺伝子群と酵素機能が明らかとなっています。次に考えるべきは、いかにこの知見を創薬に利用するかです。私は、立体構造と計算化学、進化工学を組み合わせた超合理的手法による酵素の機能改変技術と生合成酵素のアセンブリーの最適化による生産効率向上を組み合わせることにより、既存の天然薬物を凌駕する生物活性を持つ化合物群の高効率生産系の構築を目指します。

諸石 寿朗

(水島パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

共生と排除が紡ぐ細胞社会の理解と制御
多細胞生物では、性質や機能の異なる様々な細胞が混在し、組織という一つの機能構造体を形成します。このように多様な細胞が混在する細胞社会において、その秩序が保たれる仕組みは大きな謎です。本課題では、細胞間において行われるコミュニケーションを共生と排除という二つの視点から理解することを目標とします。これにより、細胞社会の秩序を保つ仕組みを明らかにし、その変容としてがんなどの病態を捉えることを目指します。

簗取 いずみ

(水島パネル)

鉄毒性制御による老化進行抑制、疾患予防への挑戦
鉄は酸化還元反応を触媒する酵素の活性中心として機能する必須金属ですが、過剰量存在すると毒性を発揮し、鉄依存的な細胞死=フェロトーシスを誘発します。本研究では、過剰鉄が誘発するフェロトーシス機序の解明に取り組みます。また、多くの生物では加齢に伴い鉄蓄積を引き起こし、疾患や老化を促進することが報告されています。私は、鉄代謝に着目し、フェロトーシス制御による新たな疾患予防や老化細胞特異的除去の開発に挑戦します。

山中 聡士

(水島パネル)

動物界における生体内タンパク質分解誘導分子の発見
狙った標的タンパク質を分解するタンパク質分解誘導分子は、新たな創薬アプローチとして世界中で精力的に研究・開発が行われています。一方で、植物ホルモンのような生体内タンパク質分解誘導分子は生理学的に極めて重要な機能を果たしていますが、動物細胞においてそのような分子の報告例はありません。本研究では、試験管内、細胞内、生体内の相互作用解析技術を駆使することで動物界における生体内タンパク質分解誘導分子の発見を目指します。

2021年度採択

井上 飛鳥

(水島パネル)

GPCRシグナルの自在な切り分けから目指す安全性の高い創薬
既存薬の多くは、細胞表面センサーであるGタンパク質共役型受容体(G-protein-coupled receptor、GPCR)に作用して薬効を発揮します。本研究で、GPCRを起点とする多様な細胞内情報(シグナル)伝達の作動原理を解明することを目指します。この研究成果は、薬効を担う特定のシグナル因子を選択的に誘導しながら副作用に関わるシグナル因子を発動しない安全性の高い「バイアス型」GPCR作動薬の開発に貢献します。

大石 篤郎

(水島パネル)

オーファンGPCRのリガンド発見と新たながん治療の創生
体内で離れた細胞同士が通信する手段にリガンドと受容体があります。合図を送る細胞から放たれたリガンドは、離れた細胞にある特定の受容体に結合し信号を送ります。現在臨床で使われる薬の3割は受容体の一つG蛋白質共役型受容体(GPCR)を標的としていますが、その中でリガンドが見つかっていないオーファンGPCRが約100個あります。私たちはオーファンGPCRのリガンドを探し新しいがん治療開発に挑みます。

垣内 伸之

(水島パネル)

細胞の個体内進化の解析
多細胞生物であるヒトの体内で細胞は、生涯を通じてゲノム・エピゲノム変異を獲得し続け、置かれた環境に適応し、自然選択されます。この細胞の進化のパターンは生活習慣や慢性疾患などによって変化することがわかってきました。本研究は、様々な臓器を構成する細胞のゲノム・エピゲノム異常を解析し、疾患に特徴的な細胞の個体内進化を明らかにすることにより、疾患の原因を究明し、治療応用可能な知見の確立を目指します。

香山 尚子

(水島パネル)

腸管における間葉系細胞を中心とした細胞間相互作用の包括的理解
小腸や大腸では、上皮細胞・免疫細胞・腸内細菌がお互いを認識・制御し合うことで健康な腸の状態が保たれていると考えられています。しかし、3者の研究が進んだ現在でも、多くの消化管疾患の発症原因は解明されていません。本研究では、腸に豊富に存在する間葉系ストローマ細胞を中心に据えた腸内細菌・上皮細胞・免疫細胞により形成される「異種細胞間相互作用」を理解し、その異常が腸管組織におよぼす影響を明らかにします。

川口 綾乃

(水島パネル)

上皮構造からの細胞離脱による器官形成制御
体を構成する各器官が適切な機能を発揮するためには、各器官が作られる発生過程で細胞たちが適切な位置に移動し配置されることが重要です。本研究では、脳の発生を主要なモデルとして、上皮構造から細胞が離脱し移動していく際に働く実行役分子に注目し、この仕組みを明らかにします。得られた成果を利用して、人工的に細胞を動かし、器官形成を制御する技術を得ることを目指します。

北嶋 俊輔

(水島パネル)

内在性二本鎖RNA産生機構の解明およびがん免疫療法への応用
免疫チェックポイント阻害薬はがん治療に革命をもたらしましたが、一部のがん患者にしか奏功しません。しかし、がん細胞内に二本鎖のRNAを発生させることで抗ウイルス応答を活性化させ、免疫細胞のがんに対する免疫応答を誘導することができます。細胞内で二本鎖RNAが発生する分子機構は未解明な点が多く、それらを解き明かし薬剤により制御することで、免疫チェックポイント阻害薬に対する治療抵抗性の克服を目指します。

木塚 康彦

(水島パネル)

N型糖鎖の分岐形成機構の解明と制御
本研究では、タンパク質に結合する糖鎖が細胞の中で作られる仕組みを明らかにします。ヒトのタンパク質は、その半分以上が糖鎖と結合しており、糖鎖の形はタンパク質毎に異なります。そしてタンパク質の上の糖鎖の形の変化は、がんやアルツハイマー病など様々な疾患に関わることがわかっています。本研究では、生化学的手法を用いて、タンパク質に固有の糖鎖ができる仕組みを解明し、それを制御する手法を開発します。

木戸屋 浩康

(水島パネル)

血管機能の概念を革新するアンジオクライン血管学の創出
本研究では、従来の「輸送路」を対象とした血管研究から脱却し、アンジオクラインファクターの産生により「組織の司令塔」として働く血管の新たな側面を明らかにします。病態進展や発生過程など生体環境が劇的に変動する局面においては、アンジオクラインファクターの産生パターンの切り替えスイッチが起きます。本研究では、この「アンジオクラインスイッチ」の実態を解明することで、組織微小環境の革新的な統御法の開発を目指します。

佐々木 伸雄

(水島パネル)

組織幹細胞を制御する“加菌”システムの開発
これまでの研究成果により、組織幹細胞の恒常性を制御する(⾃⼰)細胞間シグナルの全体像が明らかになってきました。しかし、我々は⾮⾃⼰細胞である共⽣細菌にも組織幹細胞をコントロールする能⼒があることを新たに発⾒しました。本研究では、腸内共⽣が成⽴する原理の理解を通して、幹細胞制御の観点から腸内細菌の秘めた⼒を明らかにし、微⽣物を利⽤した腸内環境を⾃在にデザインする技術の創出を⽬指します。

鈴木 淳

(水島パネル)※2023年3月卒業

革新的技術の創成による脂質を介した細胞間相互作用の解明
個体における臓器内の細胞間相互作用に注目した因子の解析は重要ですが、哺乳類の臓器を用いた網羅的な解析は未だ困難です。そこで本研究では、研究代表者がこれまでに開発した網羅的スクリーニング技術を、細胞間相互作用を保持した哺乳類個体臓器に適用可能な技術に深化させ、脂質を起点とした細胞間相互作用に関わる因子群を臓器レベルで同定し、その分子機構を解明することを目的とします。

太口 敦博

(水島パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

脱分化細胞の再分化誘導法の確立による機能蘇生医学の創発
慢性臓器障害は様々な原因をきっかけとして恒常的に臓器の機能が低下した病態です。現状ではその進行を遅らせる治療が主体で、機能を回復させることは困難です。本研究では、臓器の細胞が生理的な発生段階で機能を獲得する過程と、病的な環境下で機能を喪失する過程の両面からその分子機構に迫ることで、障害細胞に機能回復を誘導し得る制御因子を見出し、機能蘇生医学という新たな慢性疾患の治療戦略を創出することを目指します。

武田 はるな

(水島パネル)

大腸がんの転移機構の解明
転移性大腸がん形成の分子機序は依然として不明な点が多くあります。本研究では慢性炎症ががん悪性化促進作用を持つことに着目し、トランスポゾンを用いたマウス生体内スクリーニングを行い、転移関連遺伝子を網羅的に同定します。さらに、サイトカイン刺激した大腸オルガノイドのオミクス解析を行い、慢性炎症刺激に対して大腸上皮細胞がどのように応答するかを明らかにします。これらの統合解析により転移を制御する分子機序解明し、新規治療法解明を目指します。

中西 未央

(水島パネル)

前駆細胞の脱分化による組織再生メカニズム解明とその制御法の創出
幹細胞と前駆細胞は組織にダメージが加わると各々の役割を平常時とは劇的に変化させ、組織を再生します。本研究では従来の理解を覆す前駆細胞から幹細胞への「脱分化」の発見にもとづき、これらの細胞による組織再生制御の基本原理を造血系をモデルとして解明します。さらに脱分化を薬剤で制御することで、組織再生の誘導・異常な脱分化が引き起こす老化の抑制を実現し、再生医療・抗老化医療のイノベーション創出を目指します。

鍋倉 宰

(水島パネル)

記憶NK細胞の人為的分化誘導法の開発とその応用
ナチュラルキラー(NK)細胞はがんの排除に必要不可欠な免疫細胞です。しかし、これまでにNK細胞によるがん免疫応答を増強する手法は開発されていません。近年、NK細胞が強力な抗がん活性を持つ記憶NK細胞に分化する事が明らかになりました。本研究では、記憶NK細胞の分化を制御する分子機構の解明を通し、人為的に記憶NK細胞分化を促進する事で、がん免疫を増強するというコンセプトを確立する事を目指します。

野中 元裕

(水島パネル)

エピトープ模倣ペプチドの横断的解析と液性免疫の制御
自己免疫疾患では多くの場合、自己のタンパク質の他、核酸(DNAやRNA)、糖鎖、脂質など様々な物質に対する自己抗体が分泌されます。私は、それら複雑な生体高分子のうち、自己抗体に結合する構造単位(エピトープ)に着目し、エピトープを模倣するペプチドの配列情報を取得していきます。また、これらペプチドを用いて、病因となるB細胞を除去可能な方法を開発し、自己免疫疾患の治療法の創出に貢献します。

兵藤 文紀

(水島パネル)

電子伝達体をプローブとする多重超偏極イメージング法の創成
生体内で繰り広げられる酸化還元反応を担う内因性レドックス分子に着目した新たな分子画像診断技術の創成に挑戦します。電子の授受を媒介する電子伝達体は生合成や代謝を担い、その挙動は生理機能のみならず多くの病気にも関与します。電子伝達体をMRIの高感度化技術である超偏極MRIのプローブとして活用する技術を開発して、生合成や代謝反応・神経伝達をリアルタイムで可視化し、病気の超早期診断や未病の検知に資する新技術を創出します。

平井 志伸

(水島パネル)

脳生理機能を支える糖の脳内動態の解明
脳を構成する細胞群は状況に応じて活動パターンを変化させます。細胞の活動にはエネルギーが必要ですが、エネルギー源となる糖がどのような形態で脳内に取り込まれ、どのように細胞に利用されていくかという代謝経路には未解明な点が多く存在します。私はこの代謝経路の不調が細胞活動パターンを変化させ、脳疾患発症、及び病態変化という脳機能の『揺らぎ』を作り出す一因と考え、健康な脳機能発現の基盤となる糖の脳内代謝経路の全貌解明に挑戦します。

船戸 洋佑

(水島パネル)

生命がマグネシウムに応答する仕組みの解明
マグネシウムは全ての生命にとって必要不可欠なミネラルです。また加齢とともに体から減ってゆき、老化や高血圧などのさまざまな老化関連疾患を引き起こすと言われています。しかし、マグネシウムが体から失われる仕組みやマグネシウムと老化や老化関連疾患を結びつけるメカニズムはほとんどわかっていません。本研究では生命がマグネシウムに反応する仕組みの解明を通じて、この謎を明らかにすることを目指します。

星野 歩子

(水島パネル)

母胎連関エクソソームが司る自閉症発症機序の解明
発達障害のひとつである自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつきの脳の機能障害が原因だと考えられていますが、その詳細は未だ解明されていません。エクソソームは全ての細胞から産生される微小胞であり、新たな細胞間コミュニケーションツールとして着目されています。本研究は、ASDの病態についてエクソソームを母胎間媒体とした作業仮説を挙げ、「母体と胎児の間をエクソソームが往来し、胎児の脳発達に影響をもたらす機構」について検証します。

三浦 恭子

(水島パネル)

長寿齧歯類特有の恒常性維持機構の解明と応用
ハダカデバネズミ(Naked mole-rat、デバ)は、マウスと似た体サイズでありながら最大寿命が37年以上もある最長寿齧歯類であり、強い老化耐性・発がん耐性を示すことから、組織の恒常性維持能力が著しく高いと考えられます。本研究では、デバ特有の長期恒常性維持機構を解析し、将来ヒトへ応用可能な恒常性維持因子の同定を目指します。将来的には、加齢性疾患を「予防」する革新的な方法の創発が期待されます。

森田 斉弘

(水島パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

疾患オルガネラ間コミュニケーションの動的変化と生理機能の解明
細胞においてオルガネラは区画化され互いに独立して機能していますが、オルガネラ同士の物理的な接触をともなうコミュニケーションが細胞の恒常性の維持に必要であることが提唱されています。特に、疾患発症時におけるオルガネラ間の相互作用の動的変化や生理的意義の解明は、今後の課題となっています。本研究課題では、肥満により誘発されるがんにおいて、オルガネラ間相互作用の動的変化を観察し、その生理機能を明らかにすることを目的としています。本研究課題の遂行により、細胞内のエネルギー恒常性維持の新たな制御機構を解明するだけでなく、がんに対する新規治療戦略の提唱が期待されます。

山本 玲

(水島パネル)

革新的 in-vivo cell history recorderマウスモデルの確立
生体内での細胞分裂を精密に追跡することができれば、様々な生命現象や疾患の理解に繋がります。そこで私は、細胞分裂と細胞系譜をあらゆる細胞種で追跡可能となる汎用性の高いマウスシステムの構築を目指します。これにより、生体内での細胞分裂パターンを再構成し、機序解明を行うことができ、細胞の分裂機序の解明も期待できます。

兪 史幹

(水島パネル)

エレボーシスを切り口とした腸恒常性維持機構の解明
多くの成体組織の恒常性は、分化細胞の死と幹細胞の増殖のバランスの上に成り立ちます。このバランスが崩れると、組織の萎縮や、組織異形成・癌化につながります。本研究は、新規細胞死エレボーシスを切り口に、ショウジョウバエの高度に発達した遺伝学、ライヴイメージング、単一細胞でのトランスクリプトーム解析を組み合わせることで、分化細胞の死と幹細胞の増殖による腸恒常性維持機構を解明することを目指します。

弓本 佳苗

(水島パネル)

播種性腫瘍細胞を標的とした革新的ながん治療法の開発
がんの死因の9割は転移によるものと言われていますが、がん転移を標的とした治療戦略はほとんど存在しません。がん転移治療の上で特に障害となっている問題の1つに、播種性腫瘍細胞(disseminated tumor cell; DTC) が挙げられます。本研究課題では、これまでの研究成果を元に、DTCを標的とした2つの遺伝子について薬剤開発をおこなうことで、DTCを撲滅し再発のない革新的ながん治療法を構築することを目標とします。

吉岡 耕太郎

(水島パネル)

DDS内在型2本鎖核酸医薬技術の創生
核酸医薬はRNAを標的とした新時代の薬であり、様々な薬物送達(DDS)分子との併用が試みられましたが、未だ標的臓器は限られています。そこで発想を転換して「核酸分子自体にDDS機能を内包する」全く独自の2本鎖核酸技術の開発に成功しました。本研究では、ナノレベルの核酸化学修飾設計や原子レベルの標的分子への結合解析等の分野横断的な新規技術を駆使して、個々の標的臓器に即したDDS内在型核酸分子を発展的に続々と生み出します。

2020年度採択

浅井 禎吾

(水島パネル)※2023年3月卒業

合成生物学を基盤とする革新的天然物創製研究
生物が創り出す天然物は、歴史的にも比類なき医薬資源である。一方で、複雑な構造や供給の難しさなど、利便性の低さから創薬研究の第一線から退いている状況にある。本研究では、遺伝子資源を包括的に活用する天然物の合成生物学研究を基盤として、天然物の探索・創製、構造展開および供給に関してイノベーションを段階的に引き起こし、天然物を再び創薬研究に実用可能にする技術開発、ノウハウの蓄積および人材育成を推進する。

有澤 美枝子

(水島パネル)

生体親和性分子が担う環境ストレス応答医農薬品の創生
地球規模の環境ストレスに適切に応答する医薬品および食物生産法の開発が求められています。本研究では、多様な生物現象に対応できる生体親和性の極めて高い新規有機小分子化合物の開発を基盤として、バイオスティミュラント・脳疾患改善薬・免疫制御薬/抗アレルギー薬・抗ウイルス薬などの創製に挑戦します。このような医農薬品開発のアプローチは世界的に見て例がなく、学術と産業の二面から貢献することが期待されます。

魏 范研

(水島パネル)

RNA修飾が創発する生命原理の理解と応用
RNAには多様な化学修飾が存在し、転写後遺伝子発現を調節し、高次生命機能に不可欠である。最近、RNAが代謝された後、化学修飾を含むRNA塩基(以下、修飾ヌクレオシド)が細胞外に分泌され、なかには代謝や免疫応答など生体恒常性を調節しうるものも存在することが明らかになりつつある。本研究はこれら修飾ヌクレオシドの生理機能の解明と生体機能制御への応用を目的として、新たな生命科学分野の創発と創薬イノベーションに挑戦する。

岡本 一男

(水島パネル)

骨・免疫・がん連関に基づく、がん骨転移の病態理解と制御
がんの遠隔臓器への転移はがん患者の最大の死因であり、中でも骨転移は予後不良であり QOL を著しく損ないます。しかしながら未だ骨転移の根治療法は存在しません。本研究では、前転移段階において形成される転移誘導性骨環境を提唱し、その形成機構の解明に取り組むとともに、骨転移に対するがん免疫応答を骨構成細胞、免疫細胞、がんの三者関係から解き明かすことで、がん骨転移を予防し治療する画期的医療の開発を目指します。

籠谷 勇紀

(水島パネル)

直接リプログラミングによる長期生存能を持つメモリーT細胞の誘導
本研究では免疫システムの中心を担うメモリーT 細胞を若返らせ、がん治療へ応用することを目標とします。メモリーT 細胞は時間経過とともに老化して機能が衰えますが、遺伝子レベルで複数の改変を加えることで、長期生存能を有する初期状態に戻すための研究開発を行います。体内のがん細胞を攻撃するT 細胞はしばしば老化が進んでおり、本研究成果の応用によりがん免疫療法に革新的な治療効果改善をもたらすことが期待されます。

笠井 淳司

(水島パネル)

胎児医療に向けた神経発達障害発症機構の解明
発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)は、社会性・コミュニケーション障害が主な症状ですが、発症原因は未だ不明であり、主症状を緩和する治療施策は極めて乏しいのが現状です。そこで本研究課題では、対症療法しか選択肢がない発達障害治療において、特にASD の胎児医療を実現するための道筋を示し、根本的な治療(原因療法)を可能にする精神疾患治療のイノベーションに繋げることを目指します。

河岡 慎平

(水島パネル)

がんに起因する宿主の多細胞連関の異常に関する統合的研究
本研究では、がんによって個体に不調が生じるのはなぜか、という根本的な問題に、「がんに起因する宿主の多細胞連関の異常」という新しい視点でとりくみます。がんを根治できない場合、がんに起因する身体の不調を抑え込むことが重要です。そのためには、がんによって不調が生じるしくみを理解する必要があります。本研究を進展させ、がんを消せなくても健康長寿を全うできるような世の中を実現する一助になりたいと考えています。

倉石 貴透

(水島パネル)

非感染性自然免疫活性化機構の全貌解明
自然免疫は感染最初期に働く防御機構です。ところが最近、感染に関係なく自然免疫が活性化して炎症が起こり、生活習慣病や関節リウマチなどの発症基盤になることがわかってきました。しかし、病原体非依存に自然免疫が活性化するメカニズムはまだほとんどわかっていません。本研究では、モデル生物であるショウジョウバエを使って大規模な変異体スクリーニングを行うことで、病原体非依存の自然免疫機構の全体像を明らかにします。

昆 俊亮

(水島パネル)

がん細胞誕生時の生体内反応の解明
本研究では、がん細胞が誕生した時に、正常間質細胞がどのような挙動を示すのかを観察します。さらには、de novo発がんマウスを用いて、正常間質からがん間質へと遷移するいくつかのタイムポイントにおいて遺伝子発現解析を行い、同期性に揺らぎを示す遺伝子もしくは細胞群を同定し、がん臨界の本態を明らかにすることを目的とします。

塩田 拓也

(水島パネル)

EMMアセンブリーアッセイによるグラム陰性菌制御法の創出
微生物と我々の関係は、抗菌薬が効かない耐性菌の発生や、様々な疾病に関わる体内微生物のバランスをどう維持していくかなど様々な問題を抱えています。本研究では、微生物が外界と関わる際に必要な外膜タンパク質に注目し、これを制御する技術の確立を目指します。この実現は、新規抗菌薬の開発はもちろん、菌を殺さず制御する事を可能にし、健康寿命の延伸という大きな課題について破壊的イノベーションを起こします。

島田 緑

(水島パネル)

プロリン異性化による立体的ヒストンコードの解明
DNA を適切に折りたたむヒストンの化学修飾は、遺伝子発現に重要であり、生命現象の根幹をなします。本研究では、プロリンの異性化による立体構造変化によって引き起こされる遺伝子発現制御を実証し、その生物学・医学的意義を解明します。プロリン異性化が担う生命現象の解明という独創的な研究分野を開拓します。そしてがん等のヒト疾患発症、病態重篤化との関連性を追求し、新たな創薬研究へと展開します。

砂川 玄志郎

(水島パネル)

休眠が惹起する低代謝適応のメカニズムの解明とヒト組織への実装化
休眠は低代謝状態になることで動物がエネルギー供給不足を切り抜ける生存戦略です。休眠中は通常では死に至るような低代謝状態となりますが、その低代謝適応能の原理を解明し応用することで、現在の医療では救命できない症例を減らせると考えています。冬眠は最も長期の休眠です。私たちは冬眠しないマウスを冬眠様状態に誘導することに成功しており、この冬眠モデルマウスを活用し、世界に先駆けて低代謝医療の実現を目指します。

高柳 友紀

(水島パネル)

幼少期の社会的環境が成熟後の生きやすさに及ぼす影響
社会性やレジリエンス(困難や逆境を乗り越える力=回復力)の個人差に起因した「生きづらさ」は、長期的な心身の健康問題の原因になり得ます。本研究では幼少期の社会的環境が社会性とレジリエンスの発達に与える影響について、脳内メカニズムを明らかにします。「生きづらさ」を神経科学的に解明し、社会性障害やストレス性疾患の治療だけでなく、疾患リスク予測、「生きやすさ」の獲得推進による一次予防への応用を目指します。

谷口 陽祐

(水島パネル)

非天然核酸による損傷DNAシーケンシング技術の創成
これまでの技術では成し得ない遺伝子のキズである損傷核酸を含むDNAを直接正確に読み取るため、「損傷核酸を認識可能な人工核酸の創成」と「リン酸修飾体を用いたDNAシーケンシング技術」の開発に挑戦します。具体的には、損傷核酸やDNA合成酵素の性質を軸に化学修飾を施した人工核酸、DNA合成の材料となるトリリン酸体に化学修飾を施した人工核酸の化学合成を行い、ポリメラーゼ伸長反応への効果を詳細に検証します。

樽野 陽幸

(水島パネル)※卒業(研究開始前)

チャネルシナプス研究の拡張と深化、そして応用へ
私はこれまでに、味覚を担うとともに細胞間情報連絡の概念を覆す「チャネルシナプス」の存在を発⾒しました。本研究では、チャネルシナプスの全⾝での多様な医学・⽣理学的役割やその動作・形成の分⼦機構を解明することで⽣命科学の新概念を打ち⽴てます。さらに得られる学術的知⾒とその制御技術開発により、肥満や⾼⾎圧などの⽣活習慣病の予防や治療を通じて健康⻑寿社会に資する破壊的イノベーションのシーズを創出します。

冨樫 庸介

(水島パネル)

抗腫瘍免疫応答に重要な真のネオ抗原の同定と発がんとの関係解明
がん免疫療法の効果は未だ満足のいくものではないです。がん免疫では遺伝子変異由来の「ネオ抗原」が注目されていますが、従来の「ネオ抗原」だけでは説明できない現象も多く、本研究では今まで注目されていない領域の遺伝子や免疫細胞にも焦点を当て、「真のネオ抗原」を同定して治療応用を目指します。またがんになる手前の病変でも「真のネオ抗原」含めどのような免疫状態になっているか解明し、がんの予防方法などに応用します。

内藤 尚道

(水島パネル)

臓器特異的血管構築機構の解明と応用
血管は臓器ごとに多様な構造と機能を持ち、臓器が正常に機能するために重要です。線維化疾患、癌など様々な疾患では、血管構造が壊れ臓器機能が障害されます。しかし、多様な血管構造が構築される機序、及び疾患で壊れる機序は不明です。本研究ではこれまで未解決である、これらの分子機序を解明します。様々な難治性疾患の病態を血管構築という新たな視点から解明して、革新的な治療法の開発につながる基礎研究を実施します。

三宅 康之

(水島パネル)

ウイルス感染における宿主因子の動態と分子機能の解明
ウイルス感染における分子反応の連続的な作用機序には多くの不明な点が残されており、抗ウイルス薬の開発にはその分子基盤の理解が必須です。本研究はウイルスが細胞に感染する際に働くウイルスタンパク質と宿主因子の複合体機能を分子レベルで明らかにします。将来的にはクライオ電子顕微鏡技術等を用いることで、超分子複合体構造をも明らかにし、創薬への応用を目指します。

山本 拓也

(水島パネル)

細胞運命を制御する空間トランスクリプトミクス
RNAは生命の設計図と生物機能を繋げる重要な橋渡し役であり、RNAの制御機構を理解することは、生命活動の根幹を担う原理の解明に直結します。本研究では、網羅的解析を含むさまざまなRNA解析技術を駆使し、細胞運命変換過程におけるRNA細胞内局在制御機構の全体像の解明を目指します。また、RNA局在制御機構が破綻した場合に生じる機能変化を明らかにし、RNAを特定の場所に局在させる生物学的意義を探求します。

山本 雅裕

(水島パネル)

次世代型免疫細胞サブセット解析手法の開発とその実装
私たちの体の中では、日々、免疫系の細胞たちがウイルスなどの病原体に感染した細胞や癌細胞を体から除去して、健康が保たれています。最近の計測技術の著しい進歩によって、未知の免疫細胞たちがいることが分かってきましたが、それらが何をやっているのかよく分かりません。そこでこの研究では、それらを解析できる研究する画期的な方法を開発して、マウスを使って調べ、医学的に重要な新しい免疫細胞を探索します。

横井 暁

(水島パネル)

がん細胞外小胞の臨床応用へ向けた基盤技術開発研究
本研究は、ナノテクノロジーによるエクソソームをはじめとした細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)抽出の技術革新と、がん領域における新しいEVリキッドバイオプシー戦略の創生を目的としています。全く新しいEV解析技術の実現を目指し、同技術により新しいEVの機能を明らかにし、医療応用を目指します。本研究で目指す知見・技術はがん領域を中心としたEVトランスレーショナル研究を大きく促進させるもので、その価値はがんに留まらず多くの疾患へと適応が可能となると考えています。バイオロジーとナノテクノロジーの融合によって初めて可能になる新しい知見を得るために挑戦的研究に取り組んでいます。

Researchmap 本サイトの研究者情報はResearchmap登録情報に基づき更新されます。