田中パネル

創発PO・創発アドバイザー一覧

創発PO:田中 純子(広島大学 理事・副学長 大学院医系科学研究科疫学・疾病制御学 特任教授)

【専門分野】公衆衛生学、社会科学

お茶の水女子大学を卒業後、広島大学医学部助教。2009年同大学教授。2012年肝炎・肝癌対策プロジェクト研究センター、2019年疫学&データ解析新領域プロジェクト研究センターを立ち上げ、2020年より広島大学理事・副学長を務める。その間、JSPS学術システム研究センター専門研究員、日本学術会議連携会員、厚生労働省 肝炎対策推進協議会委員、同薬事・食品衛生審議会専門委員、日本赤十字社 需給予測委員会委員などを歴任。広島大学教育賞、同学長賞などを受賞。医学博士。専門は、ウイルス肝炎(HCV, HBV)の疫学を中心に、免疫血清学的研究。医療、保健、福祉、医療行政の現場で「科学的根拠に基づく医療」が求められる中、持続感染者の推定により具体的な肝炎対策に大きく貢献。アジア・アフリカにおけるウイルス肝炎対策を視野にin silico, in vitroの疫学研究を推進。また、疫学、公衆衛生学分野の国内外の人的育成に尽力。

創発アドバイザー(五十音順)

伊藤 裕
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授 ・ 慶應義塾大学 名誉教授
大高 洋平
藤田医科大学 医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座 教授
真田 弘美
石川県立看護大学 学長
椎名 毅
芝浦工業大学SIT総合研究所 教授
清水 昭伸
東京農工大学 大学院工学研究院 教授
竹谷 豊
徳島大学 大学院医歯薬学研究部 教授
永田 知里
岐阜大学 大学院医学系研究科 教授
成瀬 恵治
岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授
増田 和実
金沢大学 人間社会研究域 教授

創発研究者一覧

2022年度採択

東 直輝

(田中パネル)

DNA一分子の遺伝子検出による薬剤耐性菌の迅速検査
薬剤耐性菌の感染による死者数の増加が深刻な問題になっています。死者数の増加を抑制するには、感染者の早期治療と迅速な感染拡大対策の実現が必要であり、これには細菌の薬剤耐性の高速検査が必要です。しかし、これまでは細菌の薬剤耐性の検査に半日を要していました。そこで本研究では、細菌のDNA一分子で薬剤耐性に関する遺伝子を高速に検出する方法を創出し、飛躍的に高速な薬剤耐性検査を実現することを目指します。

雨宮 歩

(田中パネル)

在宅介護を支えるポイントオブケアAI
ポイントオブケアAIが在宅で音声や動作等のデータから本人の認知機能低下の早期発見と介護者の状況を、看護の観点でアセスメントします。具体的には受診の必要性や予測される症状を知らせ、必要に応じて地域ネットワークとつなげ活用可能な社会資源の情報を提供します。本人に対する認知機能低下早期発見だけでなく、介護者の状況もアセスメントし、持続可能な介護の促進を通して地域の高齢者を支え、住みなれた地域で安心してくらせる社会の実現に貢献します。

伊藤 綾香

(田中パネル)

脂質リモデリングから読み解く自己・非自己認識と治療への応用
自己免疫疾患は、免疫が自分自身の組織や細胞に過剰に反応して発症します。その治療は、免疫抑制薬が主流であり、副作用として感染症罹患が大きな問題となっています。本研究では、免疫細胞における脂質の量的・質的変化に着目して自己・非自己認識が破綻する機構を解明し、副作用を回避できるような自己免疫疾患の診断・予防・治療・食事療法の確立につなげることを目的とします。

小栗 靖生

(田中パネル)

脂肪組織の栄養・代謝学的な多様性の解明
生活習慣病を打破するためには、疾患の発症や食事・栄養療法において個人差を生み出す基本原理を理解する必要があります。脂肪組織は、栄養学的に最も重要な代謝部位の1つであり、発現部位によりその役割が異なります。しかし、栄養学的な役割の違い(多様性)を規定する要因は未解明です。そこで本研究では、脂肪組織の栄養代謝能を一細胞単位で解析することにより、脂肪組織の栄養・代謝学的な多様性の全容解明に挑戦します。

小野田 淳人

(田中パネル)

超微小粒子は如何にして脳の老化を加速させるのか
ナノサイズの超微小粒子は粗大な物質にはない性質を持ち、生物に対しても特異な作用を示します。本研究では、体内に取り込まれた超微小粒子の表面相互作用によるタンパク質の異常構造化を軸に、脳機能異常が生じる基本原理を解明します。その原理に基づき、環境汚染粒子による影響を動物や細胞を用いずに予測するDXモデル、医療用ナノマテリアルの生体適合性向上に向けた設計や迅速スクリーニングに資する技術的知見を創出します。

金子 賢太朗

(田中パネル)

脂質構造マップによる母子間相互作用の理解と肥満研究の展開
高脂肪である母乳はなぜ乳児の肥満を誘導しないのでしょうか。私は母乳に含まれる特殊脂質構造が食欲中枢の視床下部において摂食抑制ホルモン作用を増強し抗肥満効果を示す可能性を見出しました。本研究で視床下部機能や内分泌機能、高次脳機能と母乳特異的な脂質構造の関わりを紐解くことで母乳が高脂肪である生理的意義の解明を目指すとともに、脂質構造の質と視床下部機能に着目した抗肥満機序の解明から、脂質のイメージを覆す新しい肥満と老化の研究を展開したいと考えております。

後藤 義幸

(田中パネル)

腸内細菌が司る感染感受性・抵抗性体質の理解
感染症では、体内に病原体を保持しながら健康な人(保菌者)もいれば、重篤な症状を呈する人もいますが、このような感染に対する感受性・抵抗性体質が、どのように決まるのか明らかになっていません。本研究では、腸内細菌叢を制御することで感染症モデルマウスを新たに創出し、感染症を制御する腸内細菌を同定・分離・投与することで、感染感受性・抵抗性体質の理解と感染抵抗性体質を獲得する戦略の確立を目指します。

齋藤(千見寺) 貴子

(田中パネル)

細胞老化が形成するストレスレジリエンスな細胞社会の解明
うつ病は全世界で3億7千万人以上が発症し、年々増加し続けています。ストレスが引き金となって発症すると言われていますが、原因はわかっていません。ストレスに強い人と弱い人の違いは何か?私たちはどのようにストレスから回復(レジリエンス)するのか?細胞老化という現象から明らかにします。そこから、ストレスを受けても回復できる「ストレスレジリエンス薬/治療」という新たな戦略の創成に挑戦します。

下田 麻子

(田中パネル)

細胞外小胞表層糖鎖プロファイリングと再生医療応用
細胞が分泌するナノ~マイクロサイズの微粒子である細胞外小胞は、生体情報を細胞から細胞へと伝達する重要な役割を担っています。しかし、不均一な性質を持つ集団である細胞外小胞を効率よく分離する技術は未だに確立していません。本研究では細胞外小胞表面の糖鎖プロファイリング技術を活用した(1)細胞外小胞分離・精製技術の開発、(2)糖鎖を介した細胞との相互作用制御および医療応用への展開を目指します。

高草木 洋一

(田中パネル)

超偏極−核磁気共鳴法で創発する未病の科学と代謝診断治療学
分子代謝は生命活動に必要なエネルギーを産生する根源的な仕組みであり、その異常をいち早く検知することは、発症の未然防止や早期診断に直結します。本研究では、NMR/MRI の高感度化技術である超偏極を応用開発し、分子代謝の直接観測に基づく未病の見える化と未病ケアの創成に挑戦します。これを踏まえ、疾患の発症前や発症の超早期に正常化することを目指した、人生 100 年時代に相応しい医療のカタチを追究します。

宝田 剛志

(田中パネル)

四肢ヒト化マウスの開発によるがん研究のイノベーション
私は、「ヒト多能性幹細胞」×「がん研究(肉腫)」×「生殖工学(胚盤胞補完法)」といった、全く別々の分野の取り組みを融合させ、四肢ヒト化マウスを作製し、移植によらない同所性のヒト肉腫モデルを開発します。肉腫の起源が十分に解明されていないばかりか、マウス・ヒトのキメラ動物の作製成功例はなく、極めて挑戦性が高いが、これが成功すれば、臓器別ヒト化マウスによる同所性ヒトがんモデルの開発につながることが期待されます。

富松 航佑

(田中パネル)

空間マルチオミクスによる加齢性筋萎縮機構の解明
本研究では加齢に伴い多様化する細胞集団と組織の機能低下の因果関係を、加齢性筋萎縮をモデルに単一細胞空間マルチオミクスの開発とともに明らかにします。加齢性筋萎縮は、加齢に伴う骨格筋幹細胞の減少による筋再生能の低下です。この骨格筋幹細胞の減少は、幹細胞維持に必要な周辺細胞の異常が原因であることが示唆されてきました。しかしながら、細胞間相互作用の異常を解析するためには、加齢という時間軸上で細胞間の無数の因子を追跡するような解析が必要です。そこで私は単一細胞解像度で空間的な遺伝子発現変化とシグナル伝達を同時解析するオミクス手法を開発し、スナップショットデータから擬似時間を構築することで加齢に伴う幹細胞状態と周辺環境の因果関係解明を目指します。

中澤 直高

(田中パネル)

ニューロンがもつ力学刺激の検知機構に基づく生体力学素子の創出
本研究では、脳発生過程のニューロンがもつ力学刺激の検知機構とエネルギー代謝の関連に着目し、“ニューロンは細胞外環境からの機械刺激に応じて生体内エネルギーをどのように調節するのか”、という問いへの答えを明らかにします。これによって世界に先駆けて“メカノ代謝学”なる新たな学問分野の創生を主導するとともに、生体内の細胞がもつメカノセンシング機構を搭載した生体力学素子の開発を目指します。

中村 壮

(田中パネル)

巨核球成熟不均一性を解消させる培養法の確立
血小板製剤は、献血者の減少から安定した供給の確保は困難になりつつあります。そこでiPS細胞由来血小板を製造する一連の技術開発を行い、その中で乱流刺激が前駆細胞の巨核球株から血小板産生を促進させることを発見しました。しかし、依然、一部の巨核球のみが大量に血小板をつくる成熟の不均一性が観察されます。そこで私は巨核球の不均一性を解消して、人工血小板製剤が産業化レベルで製造できる方法の実現を目指します。

西川 昌輝

(田中パネル)

インスタント臓器の作成
室温で保存できいつでも復水(水で戻すこと)により使用可能なインスタント臓器の開発を目指します。まず、加圧凍結や極低温乾燥というこれまで用いられたことのない手法を用い、細胞や組織の凍結乾燥・復水技術の開発を試みます。さらに、3Dプリント技術と統合することで、復水して移植可能な大型インスタント臓器を開発します。本研究による技術的革新により、細胞保存、創薬、再生医療の分野の飛躍的進展が期待されます。

常陸 圭介

(田中パネル)

タンパク質のメチル化修飾に基づいたサルコペニアの克服
老化に伴う筋力・筋量の低下(サルコペニア)は健康長寿社会を実現するための大きな障害となりますが、その発症メカニズムは未解明であり治療法の開発も不十分です。私は、骨格筋のタンパク質に対する小さな化学修飾(メチル化修飾)の減少が筋力低下につながるという新発見を基に、サルコペニア発症のメカニズムを解き明かします。減少したメチル化修飾の回復によりサルコペニアを克服し、いつまでも健康に暮らすことができる社会の実現を目指します。

北條 宏徳

(田中パネル)

形と細胞分化の制御学
個体発生における組織形成メカニズムの理解は、失われた組織を再建する鍵となります。本研究では、ヒト多能性幹細胞を用いた骨発生モデルにおいて、オミクス解析とバイオエンジニアリング的手法を駆使することで、組織の形と細胞分化を規定する化学シグナルと物理シグナルを明らかにします。さらにその根底にある遺伝子制御ネットワークを解明することで、組織の形と細胞分化を自由に操作可能な技術開発に挑みます。

萬代 新太郎

(田中パネル)

循環細胞外小胞の制御によるサルコペニア・慢性腎臓病の克服
慢性腎臓病は世界人口の8億人以上が罹患し、サルコペニア(骨格筋量・筋力の低下)、心血管病や認知症など全身臓器の機能低下を介して、“腎性老化”を招きます。本研究は腎臓-骨格筋を軸に、血液中の循環細胞外小胞が形成する未知の臓器間ネットワークを明らかにすることで、既存の透析療法を一部代替する①透析代替薬、骨格筋量・筋力を高める②運動代替薬、の開発によって、健康長寿寿命を延伸可能な先進医療を目指します。

吉原 利典

(田中パネル)

運動不足が世代を超えて伝播する分子メカニズムの解明
運動不足は生活習慣病や加齢性疾患の進行と密接に関わる喫緊の課題であると同時に、子や孫の将来の健康リスクにも繋がる可能性があります。本研究は、妊娠以前の両親の運動不足が後天的な遺伝情報として、次世代の子どもに伝播される仕組みを解き明かすことで、真に実用的な健康対策の研究・開発に取り組みます。本邦においてこれまで存在しなかった「世代を超えた生涯に渡る健康対策」を実現することが本研究の目指す未来です。

2021年度採択

伊藤 哲史

(田中パネル)

「ことば」音認知とその障害の神経基盤の解明
言語音認知障害は有病者が多く、患者のQOLを下げる重大な問題です。言語音弁別の鍵は音の時間変化で、これを検出する時間変化検出細胞や聴覚注意細胞を選択的に制御できれば言語音認知障害改善や脳内言語音再生技術開発につながります。本研究は時間変化検出細胞や聴覚注意細胞を選択的に操作する技術を開発し、コミュニケーション音声認知とその障害の神経基盤を解明することで、言語音認知障害の治療戦略を打ち出していきます。

井上 貴雄

(田中パネル)

局所脳温の制御技術確立とその垂直水平展開
頭痛がすれば額を氷嚢で冷やし、火傷をすればその箇所を流水で冷やすと思います。冷却は症状を緩和させ、悪化を抑制します。しかし、病気の症状は体の外側だけでなく内側でも起きます。そして、体内の部位を体外から冷却することは困難です。私は脳局所にある病気の部位を冷却で治療する研究をしてきました。本課題では、脳を含む生体内の局所を冷却するデバイスを開発し、その冷却手法や治療効果の原理を含めて研究を実施します。

上田 瑛美

(田中パネル)

生体網膜イメージング技術の開発と認知症医療への応用
眼の網膜は唯一観察可能な神経で、認知症発症前から神経変性の原因物質が沈着することが報告されています。網膜内の異常蛋白を直接的に検知できれば、早期かつ特異的な認知症の診断につながります。本研究では、脳との連関からみる網膜のポテンシャルに着目し、工学分野と融合的研究を行い、新たな生体網膜イメージング技術を開発し、既存技術を付与することで、眼からどこまで認知症の診断、早期発見に迫れるか挑戦します。

海塩 渉

(田中パネル)

寒冷負債の解明とモデル化による高血圧予見医学への挑戦
本研究では「寒冷負債:寒い住宅への長期居住による血管へのダメージの蓄積」の影響を解明し、寒冷による短期・長期の血圧変動を予測するヒト循環器系の工学モデルを開発します。モデルを基に、建物設備の故障を予測する「予知保全」を応用することで循環器疾患の危険因子である高血圧を先回りで回避する「予見医学」実現を目指します。新たな概念:寒冷負債の構築、医工融合による予見医学の両輪で、健康長寿に貢献します。

大岡 忠生

(田中パネル)※研究開始の猶予制度を利用中

AIとオミックス情報の融合による先制医療の社会実装への挑戦
遺伝子やたんぱく質、代謝物といった人間の生体情報を網羅的に収集し、人工知能を用いた統合的な解析を行う事で、がんや生活習慣病の発症をいち早く検知し、病気の発症自体を予防出来る可能性があります。本研究では、実際の健康診断施設を活用して健康な人々から網羅的に生体情報を収集し解析する事で、様々な病気を発症前に検知・治療する新たな手法を開発し、更にそれらを社会実装する事で未来の医療システムの実現を目指します。

岸 哲史

(田中パネル)

睡眠ダイナミクスの人工的操作によるヒト睡眠能力の拡張
睡眠は人々の心身の健康の基盤を成す重要な生命現象であり、良質な睡眠を如何に獲得するかは現代社会の本質的な課題です。本研究では、私自身のこれまでの研究成果を基礎として、ヒト睡眠ダイナミクスの人工的操作を実現する基盤技術を開発します。睡眠中の脳の状態遷移現象を制御することにより、睡眠薬に頼らない新たな睡眠改善手法を提案するとともに、脳・精神・身体機能の回復・改善・向上を促すヒト睡眠能力の拡張に資する技術開発を目指します。

佐久間 臣耶

(田中パネル)

高速マイクロ流体制御が拓く超高分解能時空間バイオプシーの学理
近年、スフェロイドや、オルガノイドなどの細胞凝集体の理解に注目が集まっており、3次元空間での細胞状態・動態・刺激応答等の、生物学的な理解の深化だけでなく、創薬・医学分野での応用が期待されています。本研究では、高速マイクロ流体制御技術を確立し、高い時空間分解能で、細胞凝集体のマルチモーダル解析を可能とする超高分解能時空間バイオプシーの学理を創出することで、力学的・生物学的連成の相互作用の理解を目指します。

田村 彰吾

(田中パネル)

骨髄発生の再現により達成する骨髄オルガノイド開発
本研究は人類がいまだ開発の糸口を見いだせていない骨髄オルガノイドの開発に挑みます。オルガノイドは発生生物学、疾患病理学、再生医療などの研究ツールとして期待されますが、骨髄オルガノイドの開発はほとんど進んでいません。骨髄オルガノイドは、骨髄発生の基盤的研究、血液腫瘍や造血不全疾患の疾患モデル、さらには骨髄移植に代替しうる新たな再生医療マテリアルの革新的シーズとして発展することが大いに期待できます。

張 慧

(田中パネル)

計算科学とナノ微細加工技術を駆使した超高感度Si ナノワイヤバイオセンサシステムの創製
新型ウイルスの感染抑制が世界的課題となる中、PCR検査より短時間、抗原抗体検査より高精度な検査法が渇望されています。本研究では、計算科学とナノ微細加工技術を用いてSiナノワイヤバイオセンサを作製し、その構造、電気特性、表面状態を最適化して、検体に含まれる極微量の特定ウイルスの迅速・高精度検出を実現します。また、多チャネル同時計測システムを構築して、ハイスループットな革新的検出システムを創製します。

津村 遼介

(田中パネル)

形態化身体知を規範とした自動診断プラットフォームの創生
今後日本では高齢者割合の増加や現役世代の減少・地域偏在化が想定され、労働力に制約が出てくる中で、どのように医療サービスを持続的に地域間格差なく提供するかが課題となります。医療従事者のスキルの多寡や住んでいる場所に依存しない医療サービスの提供を目指し、本研究では、生活習慣病予防のための腹部超音波検査を対象に、ロボティクスを用いた術者の形態化身体知を規範とした自動診断プラットフォームを構築します。

鶴岡 典子

(田中パネル)

極細径針1本で刺激・計測を行う極低侵襲局所負荷試験
本研究では、外径0.2mm、長さ1~2mm程度の微細針1本を皮膚に刺入し、皮膚局所に刺激(負荷)を与え、その反応を計測することで身体の状態を把握する、局所負荷試験針を開発します。全身の代表として皮膚局所で身体の状態をモニタリングし、負荷試験を行うことは、使用者の負担軽減につながるだけでなく、局所の皮膚に対する負荷試験という新たな手法により、皮膚のメカニズム解明に役立ち、新たな知の創出につながります。

中川 桂一

(田中パネル)

音と細胞に関する研究開発
医療において音は、痛みなく生体内を診断するのみならず、生体を刺激・制御するツールとして研究・応用が進められています。しかしながら、音と生体の相互作用、特に初期作用については計測の困難さから不明な点が多く残されています。本研究では、音と生物の構成単位である細胞の相互作用について、独自の可視化技術により現象の理解をすすめるとともに、音と細胞に関する医療アプリケーションの開発に挑みます。

中島 雄太

(田中パネル)

包括的がん医療実現にむけた免疫細胞モジュールの創成
がんの根治を実現するためには、早期発見と早期治療が重要です。本研究では、免疫細胞が持つ、「異物を見つける」「異物の情報を伝える」「異物を退治する」などの機能を「マイクロデバイス・生体材料」などの工学技術と融合することによって、早期のがん診断とがん治療を達成する革新的技術を創出します。この技術を基盤とし、がんの診断から治療までを一括で実現できる包括的がん医療への道を切り拓きます。

野本 貴大

(田中パネル)

代謝制御型薬物送達技術に基づく次世代医療モダリティの革新と創出
2020年、がん細胞を選択的に殺傷するホウ素中性子捕捉療法が、世界に先駆け日本において保険適用されました。このような中性子などの外部エネルギーを利用して超低侵襲的にがんを治療する技術は、第4のがん治療法の免疫療法に続く第5のがん治療法として大いに期待されています。本研究ではこの第5のがん治療法の適用範囲を大幅に拡大する薬剤を開発し、さらに多様ながんを治療することのできる革新的医療技術の創出を目指します。

藤田 岳

(田中パネル)

医工融合による低侵襲・高解像な感音難聴の精密診断の実現
空気の振動である「音」は、耳の奥にある内耳蝸牛で電気的な信号に変換されます。この蝸牛が障害されることにより、感音難聴が生じます。しかし、生きている人の蝸牛内部を直接観察する技術は存在せず、現在でも、目の前の患者さんの感音難聴の原因はわかりません。本研究では外科的な技能・知識と工学的テクノロジーの融合により、感音難聴の原因をリアルタイムに診断し、治療につながる画期的な技術の開発を目指します。

水本 憲治

(田中パネル)

ヒト微生物叢への時系列因果関係推定の応用-疾病制御を目指して
開発が進む時系列因果関係推定法を用いて 1)ヒトの間で流行をもたらす多種の病原体間の相互作用を検証します。流行のタイミング・規模の予測にも応用し、流行対策に活用します。2)腸内・子宮内・口腔内・皮膚細菌叢等から得られるDNAデータと併せ、細菌間の相互作用に加え、細菌叢プロファイルとヒトの健康との関係性を検証します。適した細菌叢の同定を行い、例えば創傷治癒期間の短縮化、不妊治療等への応用を目指します。

毛利 彰宏

(田中パネル)

うつ病を予防するセルフマネジメントシステムの構築
個々人レベルでの分子変動を健常から時系列的に追跡可能とするバイオリソースを用い、健康、抑うつ状態からうつ病発症になる過程での遺伝的要因および環境的要因を明らかにします。血中オミックス解析よるうつ病特異的分子を同定します。同定した要因・分子を基礎研究により実証します。これらを基盤にうつ病の発症前での早期発見を可能とする簡易測定デバイスを開発し、生活習慣の改善によるセルフマネジメントシステムを構築します。

2020年度採択

市原 大輔

(田中パネル)

印刷型ブラスト波源で実現する針なし注射
本研究では導電性インク印刷技術を用いた針なし注射装置を開発します。パルス電流による微小領域のジュール加熱でブラスト波を生成し、非定常圧縮された膜面から薬剤粒子を生体組織に向け高速で射出します。本手法により貫入に必要な速度まで粒子を簡便に加速でき、従来の注射と同等の効果を医療機関に掛からず低侵襲に達成します。これはセルフメディケーションの促進に繋がり、健康的な生活の確保と福祉の推進に貢献します。

岩部 真人

(田中パネル)

運動バイオマーカーの確立と革新的運動模倣薬の開発
社会全般のオートメーション化による運動不足は生活習慣病の根本的な原因です。一方で運動は健康長寿に向けた最善の方略の一つですが、その作用メカニズムの多くが未解明のままです。本研究課題では、運動によって血中濃度が増加する生理活性物質(新規運動バイオマーカー)を同定します。また、運動の作用メカニズムに基づく革新的運動模倣薬を開発し、疾病を未病の段階で防ぐ究極の健康長寿社会の実現を目指します。

梅村 将就

(田中パネル)

交流磁場の持つ抗腫瘍効果のメカニズム解析とがん治療への応用
我々は特定の周波数の交流磁場が、抗腫瘍効果を持つことを発見しました。これまでの研究では、発熱媒体を使わず、温熱効果でもなく、交流磁場刺激のみで抗腫瘍効果を示すことがわかっています。実際に様々ながん種の培養がん細胞や担癌マウスに対して強い抗腫瘍効果を示しています。一方、正常細胞ではこの効果は認められません。この限られた範囲の交流磁場が、なぜがんに対して抗腫瘍効果を持つのかについて調べます。

榎本 彩乃

(田中パネル)

臨床用OMRIの技術基盤の構築と実証研究
様々な疾病にはフリーラジカルが関係しています。基礎研究では多くのエビデンスが示される一方で、フリーラジカル計測器は臨床機器として確立されていません。本研究では大幅な低電力化のアイデアにより、初のフリーラジカル計測・診断医療機器プロトタイプを実現します。その結果、人体中でのフリーラジカルと疾病の関係が直接明らかになるため、創薬研究など医療分野において多大な発展をもたらすことが予想されます。

小野 悠介

(田中パネル)

骨格筋維持システムの解明と健康長寿戦略の創出
生涯にわたって自立した生活を送るためには、筋萎縮を抑制し筋量を維持することが重要です。しかし、筋萎縮を引き起こす上流因子(トリガー) となるメカニズムについてはあまりわかっていません。本研究では、不活動、糖尿病、加齢等により誘発される筋萎縮の共通トリガーを同定し介入標的を見出します。解明したメカニズムを応用することで、健康長寿社会の実現に資する技術基盤を構築します。

郭 媛元

(田中パネル)

脳機能の解明に向けた多機能三次元神経プローブの開発
本研究では、脳機能を多面的に理解するため、行動中の動物の脳内で化学的・電気的な情報を位置分解的に収集できる「多機能三次元神経プローブ」の開発を目指します。本プローブはタコの足のような形状を持ち、各肢を精密に動かして多様な化学物質・電気信号を高速検出することができます。このプローブを用いて脳内の特定の細胞や領域を標的し、脳の局所から全域にわたる多様な信号の記録・操作を実現し、脳機能の解明に迫ります。

渋川 敦史

(田中パネル)

世界最速光波面シェイピングによる光散乱との共生
本研究では、すりガラスや生体組織などによって生じる光散乱と共存・共生する光技術を開発します。具体的には、生体組織における従来のアクセス空間1×1×1mm3を、最大10×10×3mm3まで拡大することを目指します。最終的に、この能力を生きたマウス脳などに適用することで、極めて広範囲な空間における神経活動を光操作・観察します。

谷 直樹

(田中パネル)

大脳基底核深部電極を使用したBrain Machine Interface開発
本研究ではパーキンソン病患者さんに留置された深部電極から、視床下核の神経活動を運動、認知、情動データと共に記録するPlatformを作成します。視床下核は大脳皮質-基底核ループにおいて運動、認知、情動情報のHubとして働き、深部電極からは多様なデータを記録することができます。得られたデータベースは人工知能等で解析し、運動、認知、情動Brain Machine Interface実現を目指します。

田原 優

(田中パネル)

テーラーメイド時間健康科学の確立
体内時計や睡眠の乱れは生活習慣病などの健康被害に直結します。規則正しい生活は体内時計を維持するために重要ですが、どうしても不規則な生活になってしまうのが現代社会です。本研究では、動物試験、シミュレーション、ヒトビッグデータ解析を駆使することで、実生活における不規則な生活を科学的に理解し、これまでに無いより実践的な時間健康科学の確立を目指します。

仲上 豪二朗

(田中パネル)

創傷難治化予知・予防スマートドレッシング
「難治性創傷」は高齢者に多く発生しますが、発症メカニズムが不明なため予防が困難です。そこで、創傷治癒を促進または遅延させる成分は創傷から産生される滲出液に含まれることに着目し、滲出液のマルチオミックス解析により難治化の原因因子を特定します。さらに、その濃度を常にモニタリングし、さらに難治化を防ぐための最適な治療を自動的に開始するスマートドレッシングを開発することで、難治性創傷の根絶を目指します。

花岡 宏史

(田中パネル)

革新的内視鏡治療のための局所投与用光免疫療法薬の創出
本研究は、光に反応する薬剤を投与後、光を照射することで、がんを治療する光免疫療法を内視鏡へと展開した、新しい内視鏡治療法の創出を目的とします。がんに対して局所投与するのに最適な光免疫療法薬を開発することで、簡便かつ治療効果の高い内視鏡下での光免疫療法の確立を目指します。本治療法は、内視鏡治療の適応症例を大きく拡大すると期待され、がん治療における破壊的イノベーションにつながると考えられます。

福田 治久

(田中パネル)

健康データ創発的多地域コホート研究基盤の構築
本研究は、自治体が保有する保健・医療・介護・行政等の健康関連データを住民単位で統合したデータベース(LIFE DB)を構築し、今後20年間に渡り追跡評価することで、ライフコース健康学を創出するものです。健康の関連要因・健康の波及効果の解明、データサイエンスに立脚したEvidence-Based Health Policyの変革、ヘルスケア産業における開発プロセス革新などを通じて、健康寿命延伸と健康格差解消に向けた創発的研究成果を産出することをめざします。

古市 泰郎

(田中パネル)

骨格筋再生医療を基盤とした健康寿命の延伸
骨格筋の萎縮は生活の質を低下させますが、その治療薬は完成していません。本研究ではその代替治療法として、骨格筋の幹細胞(筋細胞に成ることのできる未熟な細胞)を生体外で「筋芽細胞」として大量培養し、それを生体に移植する再生医療の実現を目指します。移植効率の向上と移植細胞の機能強化に挑戦し、効率性と汎用性の高い方法を確立します。骨格筋「発」の健康効果を再生医療によって体現し、健康寿命の延伸に貢献します。

前田 恵理

(田中パネル)

未婚男性への教育介入は精液所見と将来の出生力を改善するか
先進諸国の男性の精液所見は近年悪化していることが知られていますが、一般男性を対象に生活環境要因と将来の妊娠出産との関係を長期的に評価した研究は極めて少ない状況です。
本研究では男性を対象に、生活環境要因等、修正可能なリスク因子を測定し、精液所見や出生力との関連を明らかにします。さらに、将来の健康と家族形成を見据えた保健教育を実施し、男性への教育によって不妊や妊娠・分娩合併症の予防が可能か検討します。

松井 崇

(田中パネル)

脳疲労のグリア―神経連関機構を解明するスポーツ神経生物学
疲労はアスリートや社会人にとって克服したいものですが、過活動を防ぐ生体防御機構でもあります。脳のアストロサイトに貯蔵されるグリコーゲン由来の乳酸は神経のエネルギーとして認知機能や持久性能力を担う一方、中枢疲労シグナルにもなりえます。本研究では、持久運動の疲労動物モデル、培養脳細胞、遺伝子導入等を駆使し、この新説を実証する「スポーツ神経生物学」を推進します。

松﨑 賢寿

(田中パネル)

多臓器発生を最大化する「場と細胞膜」の硬さの定量解明
本研究では光技術と高分子技術を組み合わせ、ミクロからマクロまでの「場と細胞膜」の硬さを計測・制御できる独自のシステムを構築し、技術的イノベーションを起こします。この技術が、臓器毎に異なるオルガノイド(臓器の種)の培養法を“身近な指標である硬さ”で統一化する破壊的イノベ ーションをもたらします。これにより誰もが平易にオルガノイドを扱うことが実現され、基礎生物学から創薬学まで革新的な発展が期待できます。

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