- 高齢領域
2020年6月1日
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ニーズ
人口減少・高齢化に負けない地域や社会をつくる -
領域・プログラム
「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」研究開発領域

- 研究開発プロジェクト名
「高齢者の営農を支える「らくらく農法」の開発」 - 研究代表者
寺岡 伸悟(奈良女子大学文学部人文社会学科教授) - 研究開発期間
平成23(2011)年度~平成26(2014)年度 - 報告書
終了報告書(PDF:1,107KB) - Webサイト
『コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン』研究開発領域
「まだまだ農業を続けたい」と願う高齢者を支えるには、どんな方法があるでしょう。
寺岡プロジェクトでは、「コミュニティ」「生業(農業)」「道具(機械)」「からだ(健康)」の視点から、営農の負荷を低減し、高齢になっても、からだが「らく」で「楽しく」農業を続けられる手法を開発しました。
その象徴ともいえるのが、高齢営農者のニーズを追求した電動運搬車です。
地元企業『三晃精機』との協働で開発されたこの運搬車は、農業のみならず工事現場など運搬作業の必要なさまざまな現場に導入していただき、作業の負荷低減に役立っています。
写真上は、「らくらく号シリーズ」の電動クローラー。果樹畑の急斜面や、イノシシの掘った穴などがある不整地でも使用可。電動ならではの安定した低速での動きや遠隔操作機能、急坂での停止機能など、安全性も高い。ボタンとレバーで簡単に操作でき、95歳の女性も迷わず直感的に動かすことができた。
クローラータイプ以外にも一輪車と三輪車がある。写真下は三輪車。低重心で泥詰まりしないインホイールモーターを採用し、別売りのライトで夜間の作業も可能。
「らくらく農法」は、以下4つの視点から成り立っています。
1. コミュニティ
「集落点検」を行い、現状を把握する。畑の現状や将来の見通し、家族の状況や伝統・文化について、話し合いながら幅広く見える化し共有する。
マニュアルはこちら:
2. 生業(農業)
必要に応じて、体力的に負担の少ない栽培品目へと転換。事業化し安定経営を目指す。
3. 道具(機械)
電動運搬車を開発。
4. からだ(健康)
農作業は「運動」ではなく「労働」であり、疲れが発生することを自覚する。そのうえで、疲労低減の対策を行う。
実例:
研究開発拠点となった奈良県下市町では、柿の栽培が盛んです。2については、からだへの負担が少ない柿葉栽培への転換と事業化への支援を行いました。4については、柿営農作業に独特の体勢で発生する負荷を特定。からだの強張りをほぐす体操を考案し、DVDを町ぐるみで作成、町営TVで放映しています。
- 動画はこちら(YOUTUBE)→https://www.youtube.com/watch?v=spFvY7vOyAU
「まだまだ農業を続けられる」と確信できる営農手法が出来上がりました。どの程度「らくらく」なの? というかたは、一度、電動運搬車をお試しください。「らくらく農法」の一端をご体感いただけます。
※所属・役職は、プロジェクト終了当時のものです。
(文責:RISTEX広報)
その後の活動
2016年7月
「研究開発成果実装支援プログラム【成果統合型】」の統合実装プロジェクト「高齢社会課題解決に向けた共創拠点の構築」(平成28年7月~平成31年3月)に参画。
2016年7月
奈良女子大学と奈良県吉野郡下市町の包括的連携協定を締結。拠点として「奈良女子大学下市アクティビティセンター」を開所。
2017年12月25日
三晃精機より、低床型電動運搬車発売。
重心の低い低床型。パイプフレーム製で荷台のサイズをカスタマイズ可。
2019年3月
プロジェクトの海外展開で相互訪問したトルコのアクデニス大学と奈良女子大学との間で、学術交流協定を締結。
2019年5月
韓国の政府系ITファンディング機関IITPが、下市町を視察。
電動三輪車で「라쿠라쿠 프로젝트(らくらく農法)」を体験中。