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バイオテクノロジーと材料・デバイス技術による細胞の集団的適応性の制御・設計 ~動的材料システムの創出~
エグゼクティブサマリー
本戦略プロポーザルは、バイオテクノロジーと材料・デバイス技術を組み合わせることで、細胞の集団的挙動を制御し、多様な高次機能と同時に、用途や使用環境に応じて機能や物質的状態が動的に変化する「適応性」を備えた材料システム(動的材料システム)の創出を目指す研究開発戦略である。
細胞集団に由来する適応性を活かすことで、動的材料システムは、これまでのバイオテクノロジーおよび材料・デバイス技術の枠を越えて、多様な技術的ソリューションを提供する。これは、物質製造・物質循環の最適化や、医療・創薬への利用、地球環境・生物多様性の保全、社会福祉や個々人のWell-beingの実現などへ拡がるものである。
これまでに、細胞集団を材料やシステムに組み込んだ様々な応用的研究事例が報告されている。しかし現状、その性能や適応性の制御は十分でなく、社会実装は限定的である。
本戦略プロポーザルでは、細胞集団の複雑な挙動で成り立つ高次機能と適応性を実現するため、細胞集団と材料・デバイスの複合で生じる多様な動態の理解と、その理解に基づいた合理的な設計・構築手段の確立を目指し、次の研究開発課題の実施を提案する。
【研究開発課題1】細胞集団と材料・デバイスの複合的動態の理解
細胞集団と材料・デバイスの相互作用で生じる複合的動態への理解が必要である。(A)入力となる刺激や細胞外環境条件を与える材料・デバイス技術や細胞間相互作用の制御、(B)出力となる応答そのものや、細胞集団および細胞外物質の物性・物質構成の計測、(C)入力と出力の間の関係性を結びつけるモデルや理論、これらの研究開発を一体的に推進することが重要である。特に、多様な時空間スケールに適応できるこれらの手法開発が必要である。
【研究開発課題2】動的材料システムの創製
特定の高次機能と適応性の実現を目指し、細胞集団と材料・デバイスの複合から成る動的材料システムの創製を進める必要がある。研究開発課題1で培われるモデルや理論と結びつけながら、(A)動的材料システムを設計し、そして(B)動的材料システムを構築することが求められる。
上記の研究開発課題の実施においては、工学的応用を目指した発想と、それを支える生命科学と材料科学のアプローチ、さらにシステム全体の時空間スケールをつないだ理解を目指し、物理・化学の基盤的知見や解析技術も糾合した研究開発の推進が必要である。そこで、次の3つの方策を提案する。
【方策1】先導的研究コミュニティを起点とした継続的な交流・議論の場の創出
コミュニティ内で活発な議論を行いながら、研究開発課題を推進し、規範形成等の起点としても機能させる。
【方策2】長期(〜10年)のチーム型プロジェクトの実施
多様な分野の研究者でチーム型の研究プロジェクトの実施し、社会実装まで途切れることなくつなげることが重要である。
【方策3】研究拠点の設置
研究拠点において、分野を跨いだ共同研究の促進、人材の育成と確保、さらにデータベース基盤等の研究インフラの構築も行うことが求められる。
これらの方策により、研究開発課題の効率的な推進に加えて、新規研究領域として長期的に定着するための裾野を持った研究基盤を構築していくことが重要である。
図 バイオテクノロジーと材料・デバイス技術の融合による動的材料システムの創出
※本文記載のURLは2024年9月時点のものです(特記ある場合を除く)。