科学技術未来戦略ワークショップ報告書
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トラスト研究戦略 ~デジタル社会における新たなトラスト形成~

エグゼクティブサマリー

本報告書は、2022年6月11日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ「トラスト研究戦略~デジタル社会における新たなトラスト形成~」の内容をまとめたものである。

トラスト(信頼)は、相手が期待を裏切らないと思える状態だと考えられる。リスクがあるとしても、相手をトラストできると、安心して迅速に行動・意思決定ができる。顔が見える身近な人たちの間で育まれた「旧来のトラスト」は、デジタル化の進展に伴い、うまく機能しなくなってきた。バーチャルな空間にも人間関係が広がり、複雑な技術を用いたシステムに依存するようになり、情報の非対称性が拡大している。さらに、だます技術も高度化している。このような状況に対して、デジタル社会においてもうまく機能する新しいトラストの仕組み作りが必要になってきた。

このような問題意識のもと、JST CRDSでは2021年6月から「デジタル社会における新たなトラスト形成」をテーマとして、人文・社会科学から人工知能、医療まで、幅広い分野の動向を俯瞰するセミナーシリーズやワークショップ、さまざまな分野・立場の有識者へのインタビューなどを通して調査・検討を進めてきた。本ワークショップでは、その検討結果に基づき、JST CRDSから、本テーマの目指す姿と意義、研究開発の方向性に関する素案を示すとともに、さまざまな立場の有識者14名に参加をお願いし、それぞれの切り口から話題提供、コメント、議論をいただいた。

トラストには、「対象真正性」(本人・本物であるか?)、「内容真実性」(内容が事実・真実であるか?)、「振る舞い予想・対応可能性」(対象の振る舞いに対して想定・対応できるか?)という3側面があり、現在の取り組みの多くは、このいずれかの側面に重点を置いている。今後の方向性として、これら3側面を併せてトラストを多面的・複合的に扱っていくことの必要性が高まると考えている。

本ワークショップでの話題提供も、このトラストの3側面を踏まえて、対象真正性に重点を置いたトラストサービス、内容真実性に重点を置いたフェイク問題、振る舞い予想・対応可能性に重点を置いたTrustworthy AI(信頼される人工知能)のそれぞれの研究開発状況・課題・方向性を紹介いただいた。さらに、これらに横串を通す法制度・ガバナンスの考え方・方向性についても話題提供をいただいた。

それを受けて、産業界の視点、および、人文・社会科学の視点から、取り組みの方向性や意義、学際的研究の推進方法などを含めて、コメンテーターからの意見を皮切りにして総合討議を行った。デジタル社会における新たなトラストの仕組みは、技術開発・制度設計による対策だけでなく、産業的なインパクトや社会受容性といった面からも検討していくことが必要なことを再確認した。

※本文記載のURLは2022年7月時点のものです(特記ある場合を除く)。