調査報告書
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人工知能研究の新潮流 ~日本の勝ち筋~

エグゼクティブサマリー

本報告書は、人工知能(AI)技術の研究開発において、「第4世代AI」と「信頼されるAI」という2つの潮流が生まれていることを踏まえ、AI技術の社会的価値を高め、日本の国際競争力を強化するための研究開発の戦略提言をまとめたものである。

第1の潮流「第4世代AI」はAI技術の精度・性能を高める流れに沿ったもので、現在の深層学習を中心とした第3世代AIが抱える問題を克服する新しいAIアーキテクチャーの研究開発である。現在の深層学習は、高い精度・性能を示し、さまざまな応用が広がっているが、a.学習に大量の教師データや計算資源が必要であること、b.学習範囲外の状況に弱く、実世界状況への臨機応変な対応ができないこと、c.パターン処理は強いが、意味処理・説明等の高次処理はできていないこと、いった問題が指摘されている。「第4世代AI」は、深層学習によるパターン処理から、知識・記号推論を含む言語・記号処理までを、統一した考え方で融合することで、上記の問題点a・b・cの克服を目指している。その際に、人間の知能のメカニズムに関する研究成果・知見から学ぶことは有効である。

第2の潮流「信頼されるAI」はAIと社会との関係が拡大したことで生まれた精度・性能とは異なるタイプの研究開発である。AI技術のさまざまな応用が生まれ、社会に広がるにつれて、AIのブラックボックス問題(解釈性・説明性が求められる)、バイアス問題(公平性が求められる)、脆弱性問題(頑健性・安全性が求められる)、品質保証問題(品質保証・信頼性が求められる)、フェイク問題(情報の信憑性が求められる)等が顕在化した。AIに対する社会的要請として、AI社会原則・AI倫理指針といったものが、国・国際レベルで議論・策定された。このような問題克服・要請充足のための研究開発が「信頼されるAI」である。「信頼されるAI」の実現に向けて、AIシステム開発のための新しい方法論・技術体系「AIソフトウェア工学」の確立に取り組む必要がある。また、人間の側については、人間の主体的意思決定を支援・促進するための「意思決定・合意形成支援」の研究開発の重要性が高まっている。

本報告書は2部構成をとり、第1部では研究開発の2つの潮流と3つの戦略提言「第4世代AIの研究開発」「AIソフトウェア工学の研究開発」「意思決定・合意形成支援の研究開発」の内容・全体像をまとめ、第2部ではそれらに関わる9つの注目研究開発領域の動向や国際比較についてまとめている。AIの技術開発は米中二強と言われる状況だが、「信頼されるAI」の研究開発の推進によって、安全性・信頼性といったAI品質で日本の強みを打ち出すことが期待できる。また、「第4世代AI」への取り組みは世界的に始まったばかりであり、その推進を強化することで、日本にも先行チャンスがある。

なお、この戦略提言は、JST CRDSが2018年から2020年にかけて3件の報告書(戦略プロポーザル)に分けて発信してきたものであり、その骨子は既に国の戦略・施策にも盛り込まれている。しかし、それら3件を異なる切り口から発信してきたため、戦略提言の全体像や2つの潮流との関係を必ずしも明には示していなかった。そこで、本報告書では、2つの潮流と戦略提言の全体像をまとめ、併せて、関連する注目研究開発領域の最新動向を示した。

※本文記載のURLは2021年6月時点のものです(特記ある場合を除く)。