国際科学技術コンテスト

科学オリンピックだより 2011 vol.9 科学オリンピックが理科の授業を変えていく… ~教員向け特別研修がスタート~

実験で知る“世界水準”の理科教育

国際化学オリンピックの実験課題を通じて世界水準の理科教育に触れ、授業づくりのヒントを探る─。科学オリンピックを題材にした新たなコンセプトの教員研修が、この秋スタートしました。

 その第1弾が、11月26日に大阪府立天王寺高等学校で開かれました(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構、協力:日本の化学の未来を考える会、大阪府教育委員会)。

 大阪府内の高等学校から理科教員11名が参加し、中村朝夫・芝浦工業大学教授と米澤宣行・東京農工大学教授の指導の下、実験課題に取り組みました。

若い教員の実験指導スキル育成の場に

題材は、ランベール-ベールの法則を活用した溶液中の鉄イオンの濃度分析実験。国際化学オリンピック国際大会の過去問題を4時間程度の授業計画にアレンジしたもので、目視での濃度分析と機器計測が核になっています。

 参加者は2人1組で意見交換しながら、2本のネスラー管の溶液色の濃さが同じになるように量を調節する作業や、高校の理科室では目にする機会の少ない紫外可視分光光度計による計測を行い、結果をワークシートにまとめました。

 研修後の討論では、「学生時代を思い出して楽しかった」「授業を受ける生徒の気持ちがよくわかった」「化学オリンピックに親しみを持てた」といった感想が出ました。また、「学校現場では若い教員が実験指導の経験を積むのが難しくなっている。若い先生方にもこうした研修の場を提供してあげたい」という声も聞かれました。

中村朝夫・芝浦工業大学教授(右)

 中村教授は参加者に、「物質が変化することを学ぶことが化学の基礎。授業の中で、ものに触れる経験を増やしてほしい」とメッセージ。理科教育の充実を後押しするため、現場で実践可能な授業プランを提案すると共に、「研修の場で築いた先生方とのネットワークを生かし、授業づくりをお手伝いしていきたい」と話しました。

 なお特別研修の第2弾は、2012年2月に埼玉県で実施される予定です。

ワークショップで国際情報オリンピックの世界を体験

視覚的にわかりやすいように開発されたプログラミング言語「スクラッチ」を体験するワークショップが、11月3日に中京大学豊田キャンパスで開かれ、中高生たちがプログラミングの楽しさと奥深さに触れました。

 「どんな迷路でも脱出できるプログラムづくり」という課題を与えられた参加者は、実物の迷路を歩いて脱出方法を検討した後、チームで相談しながらプログラムを組み、作品を発表。まとめでは、「協力して課題に取り組んだことが新鮮だった」「スクラッチは手軽で面白い」といった声が上がっていました。

今回のイベントは、国際情報オリンピックへの関心を高めてもらおうと企画されたもの。兼宗進・大阪電気通信大学教授は、「今日体験したことは国際情報オリンピックにもつながる内容。楽しみながら参加できる大会なので、ぜひ挑戦してください」と中高生たちにメッセージを送りました。

先輩たちに聞く、チャレンジの価値と科学の魅力

サイエンスアゴラ パネルディスカッション

 11月18日~20日に東京・お台場で開催された「サイエンスアゴラ2011」の一環として、国際科学オリンピックに関するパネルディスカッションが行われました。

 過去の日本代表メダリストの他、体験型学習講座「未来の科学者養成講座」、研究施設見学や実験体験ができる「サイエンスキャンプ」の参加者ら6名のパネリストが登壇。科学オリンピックを目指す中高生やその保護者を前に、科学に興味を抱いたきっかけ、国際大会や科学イベントで得た経験などを語り、フロアからの質問に答えました。

 ディスカッションでは、2012年3月に行われる「科学の甲子園」も話題に。その名の通り、都道府県代表の高校生がチームで科学の能力を競う大会で、現在各地で選考会が実施されています。個人でエントリーする科学オリンピックだけでなく、仲間と参加できる舞台が加わったことで、チャレンジのチャンスが広がりました。

 都内中学校で科学部部長をしている2年生の男子生徒は、「運動部の大会のように文化部にも競える場がほしいと思っていたので、科学オリンピックや科学の甲子園には興味がある」とのこと。同じ道を志す先輩との交流は刺激になった様子で、「あきらめずに探究を続けることの大切さを感じました」と感想を語ってくれました。

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国立研究開発法人 科学技術振興機構 
理数学習推進部 才能育成グループ
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