2017年度の国際科学オリンピック記者説明会が8月8日都内で開催され、日本代表生徒の国際大会での成績や、2018年8月に茨城県つくば市で開催される第30回国際情報オリンピック日本大会の概要が報道陣に向けて説明されました。 説明会には、国際科学オリンピックを終えた日本代表生徒5名が出席し、国際大会の様子や後輩へのメッセージなどを語りました。
国際的リーダーとしての活躍を期待
今年の国際科学オリンピックは、8月上旬までに6教科(数学、化学、生物学、物理、情報、地理)が世界各国で開催されました。 日本からは、のべ27名の代表生徒が出場し、金メダル8個、銀メダル14個、銅メダル3個という結果を残しました。
記者説明会の冒頭で登壇した安藤 慶明JST総括理事は、「未来共創の推進と未来を創る人材の育成はJST事業の3本の柱の1つであり、重要な責務」と述べ、 国際科学オリンピックへの代表生徒派遣支援を含めた次世代人材育成事業の意義を説明しました。
国際大会でメダルを獲得した代表生徒たち
国際科学オリンピックに向けた国内1次選考の参加者は年々増加傾向にあり、2016年には19,200余人にまで増加。 安藤理事は、「国際科学オリンピックは、優れた資質を持つトップ層の育成はもちろん、科学に興味を持つ生徒の裾野を広げることにもつながっている。 科学好きな生徒たちが活躍する機会として今後も継続支援していきたい。 代表になった生徒さんには、将来、国際的場面でリーダーとして活躍してくれることを期待している。未来のイノベーションを起こして欲しい」と話しました。
日本で初めての国際情報オリンピック開催へ向けて
情報・数学の両オリンピックを支援している富士通株式会社は、意欲的にチャレンジを続ける人材、グローバルな舞台で活躍できる人材を今後も支援していくことを表明。 同社 常務理事 人事本部副本部長の梶原ゆみ子氏は、「多様性の時代となった今、広い視野で社会課題を解決すること、科学技術で人々を幸福にすることが求められている。 日本の発展を維持するには、従来以上に産官学の連携が重要になってくる。 互いに連携して発展していけるよう、国際大会日本代表になるような人たちには、日本のみならず世界の未来を牽引するグローバルな資質を備えた人材となってくれることを期待している」と語りました。
富士通株式会社 常任理事長
人事本部副本部長 梶原ゆみ子さん
続いて登壇した国際情報オリンピック日本大会副委員長の筧 捷彦早稲田大学名誉教授は、 2018年9月1日~8日、茨城県つくば市で開催される第30回国際情報オリンピック日本大会の概要を紹介しました。 同大会は日本初の開催となり、約85の国と地域から選手と関係者合わせて860名程度の参加が見込まれています。 「競技運営、大会運営、広報活動などあらゆる場面で、産学官の協力が必要になります。 この大会を多くの方々に知っていただき、ご支援をお願いしたい」と呼びかけました。
世界のトップ高校生たちと交流し、切磋琢磨
説明会の後半は、2017年度の日本代表生徒が各国で行われた国際科学オリンピックの様子を報告しました。
ブラジルのリオで開催された国際数学オリンピックには、111の国と地域から615名の選手が参加。金メダルを獲得した髙谷悠太さん(開成高等学校3年)は「ブラジルの街を自由に楽しむことができた。 全員の試験結果も良く、国別順位で第6位という好成績を残すことができた」と大会を振り返りました。髙谷さんは国際数学オリンピックの他にも国際情報オリンピックで金メダルを獲得し、両大会で世界1位となる輝かしい成績を収めました。
国際数学オリンピック代表 高谷悠太さん
タイのナコーンパトムで開催された国際化学オリンピックからは銀メダルを受賞した柳生健成さん(愛知県立岡崎高等学校3年)が出席。 「化学の勉強は楽しいが、学校との両立が大変だった。今回の大会に参加できたのは、お世話になった先生方、OBのみなさんによるサポートのおかげです」と感謝の意を述べました。
国際化学オリンピック代表 柳生健成さん
国際生物学オリンピックイギリス大会に参加した江口彩花さん(桜蔭高等学校2年)は、 「大会に出場し、生物学への興味がさらに深まった。生物が好きな人たちが集まる場に行けたこと、すごい選手たちに出会えたことでやる気が高まりました」と語りました。
国際生物学オリンピック代表 江口彩花さん
大会出場を通して出会った人とのつながりが財産になる
説明会の後半は、2017年度の日本代表生徒が各国で行われた国際科学オリンピックの様子を報告しました。
国際物理オリンピックインドネシア大会には5名の代表選手が参加し、金メダル2個、銀メダル3個獲得という結果を残しました。 渡邉明大さん(東大寺学園高等学校3年)は、金メダル受賞とともに、日本人初となる「Absolute Winner」(総合最高得点)、および「Experimental Winner」(実験問題最高得点)の表彰を受けました。 渡邉さんは、「知識は家にいても得られるが、人脈は家では得られない。国際大会に出ることで、人脈がどんどん広がった。国際物理オリンピックへの出場はそういった点で一線を画している」と自身の経験を振り返りました。
国際物理オリンピック代表 渡邊明大さん
国際情報オリンピックイラン大会に出場した4名の代表選手は、金メダル3個と銀メダル1個を獲得し、国別順位で1位という好成績を収めました。 川﨑理玖さん(筑波大学附属駒場高等学校3年)は、「海外の選手から『日本大会を楽しみにしている』と声をかけてもらった。代表として参加できるのは今年が最後だが、来年の日本大会の成功に向けてお手伝いできればと思っている」と日本大会への期待を示しました。
国際情報オリンピック代表 川﨑理玖さん
当日は、国際大会に参加中の国際地理オリンピックの代表生徒たち、および大会直前の最終合宿中の国際地学オリンピックの代表生徒4名からも、それぞれに動画メッセージが届きました。
国際科学オリンピック日本開催の成功を目指して
記者説明会最後の質疑応答で、「大会を振り返っての課題は?」という質問に対して、まず挙げられたのは、英語力でした。 国際数学オリンピック代表の髙谷さんは、「世界中からトップクラスの生徒が集まっているのだから、問題についての議論をするためにより専門的な英語力を身に付けるべき」とさらなる飛躍をめざす意志を込めて回答しました。
「今後、国際科学オリンピックを志す後輩たちに向けたアドバイスを」というリクエストを受けた代表生徒たちは、「自分がその分野の勉強を楽しんでいるという気持ちを大切に、好きなことを突き詰めてほしい」、「積極的に挑戦して欲しい」などと応えていました。
また、今後日本では、2018年国際情報オリンピック(茨城県)、2020年国際生物学オリンピック(長崎県)、2021年国際化学オリンピック(大阪府)、2022年国際物理オリンピック、 2023年国際数学オリンピックと国際大会の開催が続きます。各国の大会に参加した生徒たちに大会主催者への要望を求めたところ、「各国の選手間同士で交流する時間・場を設けられるといい」、「イベントでスケジュールを一杯にせずに、自由行動を多くしてほしい」、「Wi-Fi環境を整えて欲しい」、「おいしい食事を用意してほしい」、「コンテストが第一なので、食事などは国の特色を押し出さないでユニバーサルな物を提供してほしい」などの意見が挙がりました。
グローバル人材としての飛躍のきっかけとなる国際科学オリンピックへの参加。世界各国から集まったトップ高校生たちとの交流により、代表生徒たちは更なる高みを目指し、学問への探究心を強めたようです。