2024年9月21日、科学技術振興機構(JST)の東京本部別館2階セミナールームで2024年度国際科学オリンピック参加報告と、創刊45周年を迎えた人気旅行ガイドブック「地球の歩き方」とのコラボレーション冊子の発表会が行われました。
2024年度国際科学オリンピック参加報告をした代表選手7名と、
原口亮治・JST理数学習推進部長(後列左端)、
筧捷彦・日本科学オリンピック委員会運営委員長(後列右端)
全7大会で現地開催が復活!
異国の文化に触れ、世界の仲間と出会えた貴重な体験を報告
国際科学オリンピックは、世界中の科学に興味を持つ中高校生たちが科学技術に関する発想力や知識、問題解決能力などを競う国際的なコンテストです。今年は、2019年以来、政府の支援を受けて日本代表生徒を派遣している全7教科・科目において現地開催が復活し、総メダル数27個(金メダル9個、銀メダル14個、銅メダル4個)を獲得しました。
第一部の2024年度国際大会参加報告では、原口理数学習推進部長の挨拶に続き、筧委員長が国際科学オリンピックの概要や本年度の日本代表生徒の成績について報告しました。その後、各国際科学オリンピックの日本代表生徒7名が登壇。国際大会を通じて触れた異文化や仲間との出会いについて写真とともに紹介し、成績だけにとどまらない、多くのものを得ることができたと振り返りました。
その後、国際科学オリンピック親善大使を務める山崎直子さんから、科学の道を志す中高生への応援メッセージが公開されました。山崎さんは「科学の道への源は好奇心だと思います。皆さんがワクワクする気持ちを大切に、科学の道で挑戦し続け、世の中に貢献されていくことを楽しみにしながら、応援しています!」と温かなエールを送りました。
ビデオでメッセージを送ってくださった山崎直子さん
2024年度の国際大会と日本代表生徒の結果
大会名 | 開催地 | 代表人数 | 成績 | 参加国・ 地域数 |
---|---|---|---|---|
第65回国際数学オリンピック | イギリス/バース | 6 | 金メダル2名 銀メダル2名 銅メダル1名 |
108 |
第56回国際化学オリンピック | サウジアラビア/リヤド | 4 | 金メダル2名 銀メダル2名 |
90 |
第35回国際生物学オリンピック | カザフスタン/アスタナ | 4 | 銀メダル4名 | 81 |
第8回ヨーロッパ物理オリンピック | ジョージア/クタイシ | 5 | 金メダル1名 銀メダル2名 銅メダル1名 |
55 |
第36回国際情報オリンピック | エジプト/アレクサンドリア | 4 | 金メダル2名 銀メダル2名 |
91 |
第17回国際地学オリンピック | 中国/北京 | 4 | 金メダル2名 銀メダル2名 |
30 |
第20回国際地理オリンピック | アイルランド/ダブリン | 4 | 銅メダル2名 | 46 |
科学オリンピックを旅になぞらえて紹介
コラボ冊子にも掲載された経験者ならではの声をゲストが生報告
第二部の「地球の歩き方」コラボ冊子発表会ではまず、国際科学オリンピック親善大使の桝太一さんからのビデオメッセージを公開。桝さんは「科学オリンピックが『地球の歩き方』とコラボし、まるで旅のように紹介されると聞いていますが、両者は素晴らしい出会いがあるという点で共通すると思います。科学オリンピックも決して一人旅ではなく、同級生や先輩・後輩、また歳の離れた大人たちなど、普通ではなかなか巡り会えない人々と出会える、そんな場であると思います。これからも科学の旅人が増え、たくさんの人々が繋がっていけるように、国際科学オリンピックがもっと多くの人に伝わることを心から願っています」と今後の科学オリンピックの発展に向けた熱いメッセージを送りました。
ビデオでメッセージを送ってくださった桝太一さん
筧運営委員長と株式会社地球の歩き方の加藤みのりさんによるコラボ冊子の制作背景や紙面説明、制作にあたっての工夫点などの紹介に続き、国際科学オリンピックのオリンピアン2人を招いてのトークセッションが行われました。ゲストとして登壇したのは、2011年度国際地学オリンピック日本代表の浅見慶志朗さんと、2023年度国際生物学オリンピック日本代表の髙橋都さん。限られた時間ながら、科学オリンピックに関する思い出や今後の夢など、経験者ならではの貴重な意見を語ってくれました。
イタリアでの国際大会に参加した浅見さんは、「国際地学オリンピックはその地域の地質に関する問題などが出題されるのですが、古い石造の石柱を使ったテストなど現地ならではの問題を一般のお客さんがいるカフェや教会など街中で解いたことが衝撃的でした」と当時を振り返り、それ以来「今でも建物などの石を見ると種類がわかるので、少し面白い習慣がついてしまいました」と述べました。また、髙橋さんは国際科学オリンピックに参加して得たものの一つとして「度胸」を挙げ、「国内選考の合宿で人生初の一人旅をし、自身を一段階大人にしてくれたと思います。その後、とんでもないような事態が起きても、何とかなるでしょうという気持ちが自分の中にあるのは、科学オリンピックの経験があったからだと思います」と答えました。
科学オリンピックの思い出について語る浅見さん(左)と髙橋さん(右)
また、今回のコラボ冊子について「科学オリンピックを知らないと挑戦してみようという気にもなりませんが、今も埋もれている才能はたくさんあると思います。今回の冊子はそのような才能を発掘するのに良い入口となると思います」と浅見さん。髙橋さんも「『地球の歩き方』は私にとってもすごく身近で、幼い頃から本棚にあり、また国際大会に出場する際にもお世話になりました。『地球の歩き方』を見て、こんな国があるんだと知ったこともたくさんあったので、それと同じように科学オリンピックを知ってもらえることはすごく良いことだなと思います」と述べ、多くの中高生がこのコラボ冊子を手にすることで科学オリンピックについて知り、挑戦するきっかけとなることに大きな期待を寄せました。さらにお二人自身も、自らの経験や学問の魅力を積極的に中高生たちに伝えていきたいとの思いを語ってくれました。
左から加藤さん、浅見さん、髙橋さん、筧委員長