国際科学技術コンテスト

科学オリンピックだより 2023 Vol.23 「科学は国境もジェンダーも越えて未来を創る」

2022年10月22日、このテーマを掲げた『国際科学オリンピック オンライン イベント』がYouTubeを通じた生配信形式で行われました。

2023年7月に日本国内で開催される国際数学オリンピック、国際物理オリンピックを控えたタイミングで、会場となった都内のスタジオには基調講演に立った原山優子先生をはじめ、過去の国際科学オリンピックメダリストたちが集結。サテライト会場からリモート参加となった2人の女子高校生も加わり、科学談義に大いに花を咲かせました。

開会挨拶を述べる北原委員長

日本科学オリンピック委員会運営委員長の北原和夫先生の開会挨拶を皮切りにイベントはスタートし、協賛であるスリーエムジャパン株式会社の宮崎社長、科学オリンピック親善大使の桝太一氏らによる応戦メッセージも紹介されました。

第1部の基調講演は、東北大学名誉教授で元理化学研究所理事の原山優子先生。「何もないところでいろいろなものを構築する美しさ」にひかれて数学を専攻した原山先生は、母親となった後に「学校のシステムに疑問を抱き」教育学に進んだそうです。さらに、学校教育の経済的価値についても興味を持ち経済学も学んだとのことで、さまざまな角度から科学に携わってきた女性研究者です。

基調講演に登壇した原山先生

今回は『知る」を楽しむ』と題した講演で、「点数を取ることだけに終始するのではなく楽しむことに重きを置いてほしい」と訴え、「なぜ?」をきっかけに科学的に考えることを提案しました。
その一例として「食事に科学を見る」というお題を視聴者に投げ掛ける場面もありました。食材が加工されていたり、作る人の愛情が味に影響を与えたりすることなどに触れ、「食の中に科学の相当な部分があることを考えてもらいたい」と“宿題”を出し、視聴者に考えるきっかけを与えてくれました。

第2部では、『「科学」に国境はあるか?』、『「リケジョ」ってどんなヒト?』、『「科学」×「〇〇」の先にあるもの』の3つのテーマに沿ってトークショーが行われました。

トークショーに登壇したメダリストたち。左から、五十嵐さん、近藤さん、野田さん、渡邉さん

登壇したのは、過去に国際科学オリンピックでメダリストに輝いた経験を持つ近藤宏樹さん、野田夏実さん、渡邉明大さんの3人です。モデレーターを務めた五十嵐美樹さんに加え、途中からはサテライト会場の前田陽由さん、安井万央さんも参加しました。2人の通う清真学園高等学校は、先進的理数教育を実施するスーパーサイエンスハイスクール(SSH校)に指定されています。

『「科学」に国境はあるか?』では、渡邉さんが初めて国際科学オリンピックに出場した際、「海外の選手と相部屋だった」と仰天エピソードを披露。代表選手5人に対して2人1部屋の部屋割りだったためで、お互いに英語が母国語ではなく無言の時間が続いたそうです。でも、「彼が日本で出版された物理のテキストの英訳版を持っていたことをきっかけに仲良くなった」と思い出を振り返ってくれました。

〇〇に好きな言葉を入れて、科学がボーダーやジェンダーを超える可能性を探った『「科学」×「〇〇」の先にあるもの』では、保険会社で働いていた経歴を持つ近藤さんが「私は〇〇に『社会』を入れました」と発表。「保険や金融商品は確率や統計を元に作られている」とのことで、「細かいことは分からなくても、何か確率の考え方でできているのだと知れば、お金の使い方に正しい感覚が持てるのではないか」と、身近にある科学について語っていました。

そんなトークショーの中で大きな盛り上がりを見せたのが、『「リケジョ」ってどんなヒト?』というテーマ。理系の女性を指す「リケジョ」という言葉に、実際の「リケジョ」たちはどんなイメージを持っているのでしょうか。
スタジオの野田さんは「そう呼ばれることは多い」とした上で、「リケジョになろうと意識したことはなくて、たまたま理系だっただけ」と言います。さらに「その言葉の裏に“理系なのに”とか“女子なのに”というのがあるのだとすれば、まだまだなのかなと思います」と話してくれました。

清真学園高校の2人もリモートで出演

SSH校に通う前田さんは「特別な感情は抱いていません」としながらも、「そういう言葉が存在しているということは、社会的な偏見があるのかもしれない」とのコメント。
一方で、同校の安井さんは「私はリケジョという言葉にポジティブな印象を持っています」と言います。「尊敬とか憧れのイメージが強い言葉なので、友達に言われるとうれしかったりします」と意見を述べて、当の女性たちでも受け取り方はさまざまな様子でした。

オンラインイベントの模様は、現在もYouTubeで視聴できますので興味を持った方はぜひご覧ください。
一つ裏話をお伝えすると、映像では国際科学オリンピックのロゴを背景にお話ししていますが、実は現場はグリーンバックを用いたバーチャルスタジオになっていました。こうすることで使い捨てのセットが不要となり、エコにもつながるというわけです。

さて、冒頭でもお話しした通り、2023年には日本で国際数学オリンピックと国際物理オリンピックが開催されます。
今後国際科学オリンピックへの参加を目指す方にとっても、応援する方にとっても、今回のイベントが興味を持つきっかけになればうれしいです。基調講演で原山先生が伝えてたように「なぜ?」の心を忘れずに、国境もジェンダーも越えて科学を楽しんでいきましょう。

配信スタジオの様子

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