国内大会への参加から世界の舞台へ
実験訓練を受ける生物学オリンピック代表生徒
世界の高校生たちが、各教科・科目の知識と応用力を競う国際科学オリンピック。今年も7月から10月にかけて、数学、化学、生物学、物理、情報、地学、地理の7大会が開催されます。日本からは計31人の代表が参加し、各国の生徒たちと成績を競い、親睦を深めます。
日本代表は、各教科・科目の国内大会の成績優秀者から複数回の選抜を経て決定します。代表候補に選ばれた段階から、所定のテキストでの自学、所属校や近隣の大学の先生による指導など、本番に向けた準備がスタート。高校の学習範囲を超える問題が出され、筆記だけでなく実験やフィールドワークのある国際大会も多いため、こうした準備学習はどの国においても重要になっています。
各大会4~6人の代表が正式決定した後は、合宿形式の強化訓練でさらなる力量アップをはかります。国によっては一足先に開催国入りし、現地実習で最終調整する場合もあります。
挑戦の先にあるチャンスをつかみ、努力を重ねて世界と競う力をつけた31人の精鋭たち。今年の国際科学オリンピックでの日本のメダルラッシュに期待が膨らみます。
“最難関”を勝ち抜いた4人が目指すもの……
7月21日にワシントンで開幕される第44回国際化学オリンピック・アメリカ大会には、加藤雄大さん(筑波大学附属駒場高校3年)、澁谷亮太さん(大阪教育大学附属高校天王寺校舎3年)、副島智大さん(立教池袋高校3年)、山角拓也さん(灘高校3年)が出場します。国際大会への第一歩となる「全国高校化学グランプリ2011」(一次選考)の参加者は、7教科・科目中で最多の3049人。加藤さんら4人は、最も厳しい道を勝ち抜いた日本代表と言えます。
三重大学で合宿訓練中の科学オリンピック代表生徒
4月上旬の代表決定後は、武蔵大学(東京都)、秋田大学、三重大学で強化合宿。6月の三重合宿では、セスキ炭酸ナトリウム(トロナ石)の分析など本大会を想定した実験に加え、大学教授や日本代表OBによる講義、実験課題への対応を検討するディスカッションを行い、準備学習の総仕上げとしました。合宿を終えた副島智大さんは、「代表OBによる講義は大会準備としてはもちろん、自分が大学生として進むべき道を考える上でも参考になる内容でした」と満足そう。昨年のトルコ大会でも金メダルを獲得しており、「競技での目標は、もちろん2年連続金メダル」と話していました。
一方、自身と学校にとって初の金メダルに挑むのは加藤雄大さんです。同校は国際科学オリンピックの常連校ですが、「この大会の金メダリストはまだ出ていないので、できれば自分がメダルを持ち帰りたいです」と意気込みを語ってくれました。
指導者・代表生徒が国際大会への抱負を語る
~国際科学オリンピック記者説明会~
国際科学オリンピックの開幕を直前に控えた7月6日、東京都内で記者説明会が行われ、7つの教科・科目の関係者と3人の日本代表が、選考の経緯や準備学習の内容、国際大会への抱負を語りました。
日本代表の生徒たちは、「目標は金メダル」とする一方で、海外の生徒との交流も強く意識している様子。国際情報オリンピック代表の劉鴻志さん(栄光学園高校2年)は、「今大会のようなコンテストは他にもいくつかあるので、参加者と情報交換してみたい」。2大会連続で国際数学オリンピックに出場する村井翔悟さん(開成高校3年)は、「前回大会では英語という言語の壁を感じたけど、今回はそれを乗り越えて交流してみたい」と述べました。
国際化学オリンピックに連続出場する副島智大さん(立教池袋高校3年)は、海外の生徒と共有できる話題探しや会話のきっかけになるお土産選びなど、「交流に向けた準備も万全」とし、「去年は自分の積極性が足りずに思うように交流できなかったので、今年は自分から声をかけてコミュニケーションをはかりたい」と話していました。
副島さんら国際化学オリンピック代表の指導にあたった米澤宣行・東京農工大学教授は、「代表生徒たちは日本の科学界や社会のリーダーになりうる人材。国際大会では海外の生徒と真剣な議論を交わし、自分たちの立ち位置や将来を考えてほしい」と期待を寄せています。
左から副島智大さん、村井翔悟さん、劉鴻志さん
日本代表がメダル9個獲得の好スタート!
~国際数学、生物学オリンピック結果速報~
7月初旬から開かれていた、第53回国際数学オリンピック・アルゼンチン大会と、
第23回国際生物学オリンピック・シンガポール大会で、 日本代表が9個のメダルを獲得しました。
この後開催される他大会の代表を勇気づける、幸先のよいスタートとなりました。
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国際数学オリンピックで銀メダル 4、銅メダル 1 獲得 (100カ国・地域から548人が参加)
銀メダル 北村 拓真さん (灘高等学校3年) 小松 大樹さん (栄光学園高等学校3年) 村井 翔悟さん (開成高等学校3年) 野村 建斗さん (筑波大付属駒場高等学校1年) 銅メダル 宮本 大輔さん (灘高等学校1年) 優秀賞 林 興養さん (静岡県立浜松北高等学校3年)
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国際生物学オリンピックで銀メダル 4 獲得 (59カ国・地域から236人が参加)
銀メダル 荒木 大河さん (宮崎県立宮崎西高等学校3年) 野田 夏実さん (桜蔭高等学校3年) 前田 智大さん (灘高等学校2年) 依田 和樹さん (筑波大付属駒場高等学校3年)