国際科学技術コンテスト

科学オリンピックだより 2014 Vol.13 7教科の代表生徒が語る国際大会の魅力 ~2014年度国際科学オリンピック記者説明会~

数学を筆頭に、各教科で日本代表生徒が活躍

勢揃いした7教科の代表生徒たち

 2014年度の国際科学オリンピックに関する記者説明会が8月6日、都内で開かれました。日本が選手派遣する7教科の大会関係者と代表生徒が出席し、国際大会を目指す取り組みや今年の成績、今後の課題などを語りました。

 今年の国際科学オリンピックで日本選手は、金メダル7個を含む24のメダルを獲得(6教科終了時点)する活躍を見せています。

 特に第55回国際数学オリンピックでは、金4、銀1、銅1と出場6選手全員がメダリストに。国別順位も5位と、過去最高だった09年大会に迫る好成績を上げました。派遣団長の藤田岳彦・中央大学理工学部教授は、「合宿や通信添削による事前研修の効果が大きい。今後も準備学習の充実に取り組みたい」と述べました。

 同大会金メダルの山本悠時さん(東海高校3年)は、「国際大会の問題は思考力重視で、考える楽しさを感じるものが多い」と印象を語り、「教科書でオリンピックの問題を紹介すれば、数学の面白さに気づく生徒も増えるのでは」と提案しました。

数学を筆頭に、各教科で日本代表生徒が活躍

 国際化学オリンピック銅メダルの林杏果さん(豊島岡女子学園高校3年)は、「事前研修では大好きな実験がたくさんできたし、大会での海外生徒との交流も刺激になりました」と成果を報告。貴重な経験のできる機会だけに、「自分には無理と思わず、自信を持って挑戦してほしい」と呼びかけました。

 「競技プログラミングで一番難しいのは、勉強しようと一歩を踏み出すこと」と語るのは、国際情報オリンピック金メダルの髙谷悠太さん(開成中学3年)。「始めると楽しいし、国際大会を経験した先輩も丁寧にサポートしてくれるので、ぜひ参加してほしいです」と、挑戦の大切さを強調していました。

記者説明会の模様

 科学オリンピック国内選考への参加者は年々増えており、2013年度は7教科合計で1万6000人を超えました。中高校生の認知度が着実に高まるなか、2016年には地学、18年情報、20年生物学、22年物理と、国際科学オリンピック日本開催が続く予定です。チャレンジする次世代の育成に向けて、大会関係者からは「今後は小学生への情報発信や支援も充実させていく必要がある」との声が上がっていました。

科学オリンピックで理数系のトップ人材育成を
~静岡県「オリンピックチャレンジ」事業がスタート~

日本代表生徒の指導者らが特別講義

 静岡県では今年度から、理数分野に高い意欲と能力を持つ高校生を支援する「オリンピックチャレンジ」事業をスタートしました。県立高校の希望生徒を対象に、国際科学オリンピック日本代表の指導にあたる第一線の講師陣が特別講義を実施。科学オリンピックへの参加を後押しすることにより、国際大会のメダリストや、グローバルに活躍できる理数系人材を育成するプランです。

 今年度は、物理、化学、生物、地学の4分野に76人の生徒が参加し、8月から来年2月にかけて各4回受講します。

 8月11日に掛川市の県総合教育センターで行われた2回目の「オリンピックチャレンジ」では、原田勲・岡山大学名誉教授(物理)、永澤明・埼玉大学名誉教授(化学)、石井規雄・国際生物学オリンピック日本委員会副主査(生物)らが、講義や実験指導のほか、科学オリンピックに向けた準備のポイントや、科学を学ぶうえでの心構えなどを語りました。

化学コース講義の様子

講義と実験で身近な「化学」に目を向ける

 この日の永澤教授の講義テーマは「水」。化学的な特徴に加え、台風や温暖化といった気象や、植物の光合成、「パスタをゆでるときに塩を加える理由」など、身近な現象と水の関わりについて具体例を挙げながら紹介していきました。

 後半は、イオンによる水和に関連した実験として、紙タオルと紙おむつの吸水量を比較しました。「紙おむつに使われている吸水性高分子は、自重の数百倍もの水を吸収することができる」と永澤教授。生徒たちは、わずか数グラムの紙おむつ材が、ビーカー一杯の水を吸収する様子を興味深そうに観察していました。一方、食塩水の実験に移ったグループからは、「こっちは全然吸わない」という声が。入れすぎた食塩水を取り除こうと苦心する生徒たちに、永澤教授は「なぜ食塩水は吸わないのか、理由を考えてみて」と化学的な考察を促していました。

 「オリンピックチャレンジ」は、今年から5か年計画で進められる予定です。静岡県では自治体主導の継続的サポートを通じて、まずは科学オリンピック国内二次選考に進める生徒を増やしていきたい考えです。

水をテーマにした実験をする参加生徒

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国立研究開発法人 科学技術振興機構 
理数学習推進部 才能育成グループ
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