研究開発の俯瞰報告書 論文・特許データから見る研究開発動向(2024年)
エグゼクティブサマリー
JST研究開発戦略センター(以降、CRDS)は、国内外の社会や科学技術イノベーションの動向及びそれらに関する政策動向を把握・俯瞰・分析することにより、科学技術イノベーション政策や研究開発戦略を提言し、その実現に向けた取り組みを行っている。
CRDSは2003年の設立以来、科学技術分野を広く俯瞰し、重要な研究開発戦略を立案する能力を高めるべく、その土台となる分野俯瞰の活動に取り組んできた。この背景には、科学の細分化により全体像が見えにくくなっていることがある。社会的な期待と科学との関係を検討し、科学的価値を社会的価値へつなげるための施策を設計する政策立案コミュニティーにあっても、科学の全体像を捉えることが困難になってきている。このような現状をふまえると、研究開発コミュニティーを含めた社会のさまざまなステークホルダーと対話し分野を広く俯瞰することは、研究開発の戦略を立てるうえでは必須の取り組みである。CRDSでは、政策立案コミュニティーおよび研究開発コミュニティーとの継続的な対話を通じて独自の視点でまとめた研究開発戦略立案の基礎資料「研究開発の俯瞰報告書」(以降、俯瞰報告書)を発信してきた。
今回お届けする「論文・特許データからみる研究開発動向(2024年)」は、俯瞰報告書を補完するよう、各分野・各国における研究開発の過去から現在にかけての状況を数値の側面から捉えようとするものである。調査対象の国・地域は、日本、米国、英国、ドイツ、フランス、韓国、中国、EUを基本とし、調査対象期間はデータ取得が可能な直近10年間(論文は2012-2021 年、特許は2013-2022 年)とした。
第1章では、研究開発に関するインプット情報として、研究開発費と研究者数のデータをまとめた。第2章及び第3章では、論文および特許動向に関するデータを、研究開発のアウトプット情報としてまとめた。第2章では、7つの重要分野(環境・エネルギー、システム・情報科学技術、ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンス・臨床医学、量子、通信、半導体)について分析し、第3章では、分野別の「研究開発の俯瞰報告書(2023年版)」で取り上げた研究開発領域のうち、142について分析を行った。また、各分野・各研究開発領域で見られる特徴的な傾向等をデータの”ポイント”として併せて掲載した。なお、本報告書に掲載した数値データのみから各分野の動向を把握することは困難であることに注意されたい。社会や政策の動きを捉えつつ、数値では見えない最先端の研究動向等を把握することも重要であり、分野別の俯瞰報告書と併せてお読みいただきたい。
これらの俯瞰的調査は、政策立案コミュニティーにおける活用だけでなく、研究者が関連する研究の状況を知ることや、専門外の科学技術の状況を理解し連携の可能性を探ることにも活用されることを期待している。また、各科学技術分野や各国の研究開発動向を知りたいと考える方々に広く活用していただきたい。CRDSとしても、得られた示唆を基に検討を重ね、わが国の発展に資する提案や発信を行っていく。
※本文記載のURLは2024年1月時点のものです(特記ある場合を除く)。
目次
研究開発の俯瞰報告書 論文・特許データから見る研究開発動向(2024年)
1. インプット(研究開発費・研究者数)
- 1. インプット(研究開発費・研究者数)
- 1.1 研究開発費の国際比較
- 1.2 政府による研究開発費の国際比較
- 1.3 日本の分野別研究開発費
- 1.4 研究者数の国際比較
2. アウトプットの分析(分野別)
- 2. アウトプットの分析(分野別)
- 2.1 俯瞰対象の分野
- 2.1.E 環境・エネルギー
- 2.1.S システム・情報科学技術
- 2.1.N ナノテクノロジー・材料
- 2.1.L ライフサイエンス・臨床医学
- 2.2 その他の分野
- 2.1 通信
- 2.2 半導体
- 2.3 量子
- 2.1 俯瞰対象の分野
3. アウトプットの分析(研究開発領域別)
3.1 研究開発領域別の分析(3.1章の構成・各分析項目の解説)
- 3.1.E 環境・エネルギー
- 3.1.E1 電力のゼロエミ化・安定化
- 3.1.E1.1 火力発電
- 3.1.E1.2 原子力発電
- 3.1.E1.3 太陽光発電
- 3.1.E1.4 風力発電
- 3.1.E1.5 バイオマス発電・利用
- 3.1.E1.6 水力発電・海洋発電
- 3.1.E1.7 地熱発電・利用
- 3.1.E1.8 太陽熱発電・利用
- 3.1.E1.9 CO2回収・貯留
- 3.1.E2 産業・運輸部門のゼロエミ化・炭素循環利用
- 3.1.E2.1 畜エネルギー技術
- 3.1.E2.2 水素・アンモニア
- 3.1.E2.3 CO2利用
- 3.1.E2.4 産業熱利用
- 3.1.E3 業務・家庭部門のゼロエミ化・低温熱利用
- 3.1.E3.1 地域・建物エネルギー利用
- 3.1.E4 大気中CO2除去風力発電
- 3.1.E4.1 ネガティブエミッション技術
- 3.1.E5 エネルギーシステム統合化
- 3.1.E5.1 エネルギーマネジメントシステム
- 3.1.E5.2 エネルギーシステム・技術評価
- 3.1.E6 地球システム観測・予測
- 3.1.E6.1 気候変動観測
- 3.1.E6.2 気候変動予測
- 3.1.E6.3 水循環(水資源・水防災)
- 3.1.E6.4 生態系・生物多様性の観測・評価・予測
- 3.1.E7 人と自然の調和
- 3.1.E7.1 社会-生態システムの評価・予測
- 3.1.E7.2 農林水産業における気候変動影響評価・適応
- 3.1.E7.3 都市環境サステナビリティ
- 3.1.E7.4 環境リスク学的感染症防御
- 3.1.E8 持続可能な資源利用
- 3.1.E8.1 水利用・水処理
- 3.1.E8.2 持続可能な大気環境
- 3.1.E8.3 持続可能な土壌環境
- 3.1.E8.4 リサイクル
- 3.1.E8.5 ライフサイクル管理(設計・評価・運用)
- 3.1.E8.6 環境分析・化学物質リスク評価
- 3.1.E1 電力のゼロエミ化・安定化
- 3.1.S システム・情報科学技術
- 3.1.S1 人工知能・ビッグデータ
- 3.1.S1.1 知覚・運動系のAI技術
- 3.1.S1.2 言語・知識系のAI技術
- 3.1.S1.3 エージェント技術
- 3.1.S1.4 AIソフトウェア工学
- 3.1.S1.5 人・AI協働と意思決定支援
- 3.1.S1.6 AI・データ駆動型問題解決
- 3.1.S1.7 計算脳科学
- 3.1.S1.8 認知発達ロボティクス
- 3.1.S1.9 社会におけるAI
- 3.1.S2 ロボティクス
- 3.1.S2.1 制御
- 3.1.S2.2 生物規範型ロボティクス
- 3.1.S2.3 マニピュレーション
- 3.1.S2.4 移動(地上)
- 3.1.S2.5 Human Robot Interaction
- 3.1.S2.6 自律分散システム
- 3.1.S2.7 産業用ロボット
- 3.1.S2.8 サービスロボット
- 3.1.S2.9 災害対応ロボット
- 3.1.S2.10 インフラ保守ロボット
- 3.1.S2.11 農林水産ロボット
- 3.1.S3 社会システム科学
- 3.1.S3.1 デジタル変革
- 3.1.S3.2 サービスサイエンス
- 3.1.S3.3 社会システムアーキテクチャー
- 3.1.S3.4 メカニズムデザイン
- 3.1.S3.5 計算社会科学
- 3.1.S4 セキュリティー・トラスト
- 3.1.S4.1 IoTシステムのセキュリティー
- 3.1.S4.2 サイバーセキュリティー
- 3.1.S4.3 データ・コンテンツのセキュリティー
- 3.1.S4.4 人・社会とセキュリティー
- 3.1.S4.5 システムのデジタルトラスト
- 3.1.S4.6 データ・コンテンツのデジタルトラスト
- 3.1.S4.7 社会におけるトラスト
- 3.1.S5 コンピューティングアーキテクチャー
- 3.1.S5.1 計算方式
- 3.1.S5.2 プロセッサーアーキテクチャー
- 3.1.S5.3 量子コンピューティング
- 3.1.S5.4 データ処理基盤
- 3.1.S5.5 IoTアーキテクチャー
- 3.1.S5.6 デジタル社会基盤
- 3.1.S6 通信・ネットワーク
- 3.1.S6.1 光通信
- 3.1.S6.2 無線・モバイル通信
- 3.1.S6.3 量子通信
- 3.1.S6.4 ネットワーク運用
- 3.1.S6.5 ネットワークコンピューティング
- 3.1.S6.6 将来ネットワークアーキテクチャー
- 3.1.S6.7 ネットワークサービス実現技術
- 3.1.S6.8 ネットワーク科学
- 3.1.S7 数理科学
- 3.1.S7.1 数理モデリング
- 3.1.S7.2 数値解析・データ解析
- 3.1.S7.3 因果推論
- 3.1.S7.4 意思決定と最適化の数理
- 3.1.S7.5 計算理論
- 3.1.S7.6 システム設計の数理
- 3.1.S1 人工知能・ビッグデータ
- 3.1.N ナノテクノロジー・材料
- 3.1.N1 環境・エネルギー応用
- 3.1.N1.1 蓄電池
- 3.1.N1.2 分離技術
- 3.1.N1.3 次世代太陽電池
- 3.1.N1.4 電解・燃料電池
- 3.1.N2 バイオ・医療応用
- 3.1.N2.1 人工生体組織・機能性バイオ材料
- 3.1.N2.2 生体関連ナノ・分子システム
- 3.1.N2.3 バイオセンシング
- 3.1.N2.4 生体イメージング
- 3.1.N3 ICT・エレクトロニクス応用
- 3.1.N3.1 革新半導体デバイス
- 3.1.N3.2 脳型コンピューティングデバイス
- 3.1.N3.3 フォトニクス材料・デバイス・集積技術
- 3.1.N3.4 IoTセンシングデバイス
- 3.1.N3.5 量子コンピューティング・通信
- 3.1.N3.6 スピントロニクス
- 3.1.N4 社会インフラ・モビリティ応用
- 3.1.N4.1 金属系構造材料
- 3.1.N4.2 複合材料
- 3.1.N4.3 ナノ力学制御技術
- 3.1.N4.4 パワー半導体材料・デバイス
- 3.1.N4.5 磁石・磁性材料
- 3.1.N5 物質と機能の設計・制御
- 3.1.N5.1 分子技術
- 3.1.N5.2 次世代元素戦略
- 3.1.N5.3 データ駆動型物質・材料開発
- 3.1.N5.4 フォノンエンジニアリング
- 3.1.N5.5 量子マテリアル
- 3.1.N5.6 有機無機ハイブリッド材料
- 3.1.N6 共通基盤科学技術
- 3.1.N6.1 微細加工・三次元集積
- 3.1.N6.2 ナノ・オペランド計測
- 3.1.N6.3 物質・材料シミュレーション
- 3.1.N7 共通支援策
- 3.1.N7.1 ナノテク・新奇マテリアルのELSI/RRI/国際標準
- 3.1.N1 環境・エネルギー応用
- 3.1.L ライフサイエンス・臨床医学
- 3.1.L1 健康・医療
- 3.1.L1.1 低・中分子創薬
- 3.1.L1.2 高分子創薬(抗体)
- 3.1.L1.3 AI創薬
- 3.1.L1.4 幹細胞治療(再生医療)
- 3.1.L1.5 遺伝子治療(in vivo 遺伝子治療 / ex vivo 遺伝子治療)
- 3.1.L1.6 ゲノム治療
- 3.1.L1.7 バイオマーカー・リキッドバイオプシー
- 3.1.L1.8 AI診断・予防
- 3.1.L1.9 感染症
- 3.1.L1.10 がん
- 3.1.L1.11 脳・神経
- 3.1.L1.12 免疫・炎症
- 3.1.L1.13 生体時計・睡眠
- 3.1.L1.14 老化
- 3.1.L1.15 臓器連関
- 3.1.L2 農業・生物生産
- 3.1.L2.1 微生物ものづくり
- 3.1.L2.2 植物ものづくり
- 3.1.L2.3 農業エンジニアリング
- 3.1.L2.4 植物生殖
- 3.1.L2.5 植物栄養
- 3.1.L3 基礎基盤
- 3.1.L3.1 遺伝子発現機構
- 3.1.L3.2 細胞外微粒子・細胞外小胞
- 3.1.L3.3 マイクロバイオーム
- 3.1.L3.4 構造解析(生体高分子・代謝産物)
- 3.1.L3.5 光学イメージング
- 3.1.L3.6 一細胞オミクス・空間オミクス
- 3.1.L3.7 ゲノム編集・エピゲノム編集
- 3.1.L3.8 オプトバイオロジー
- 3.1.L3.9 ケミカルバイオロジー
- 3.1.L3.10 タンパク質設計
- 3.1.L1 健康・医療
3.2 分野毎の研究開発領域の概観
- 3.2 分野毎の研究開発領域の概観
- 3.2.E 環境・エネルギー
- 3.2.S システム・情報科学技術
- 3.2.N ナノテクノロジー・材料
- 3.2.L ライフサイエンス・臨床医学