戦略プロポーザル
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次世代AIモデルの研究開発

エグゼクティブサマリー

本プロポーザルでは、急速な技術発展を示し、大きな社会インパクトをもたらしつつある人工知能(AI)技術について、特に活発化している基盤モデル・生成AIの後追い開発や応用開発にとどまらず、その先の次世代AIモデルを創出する基礎研究の戦略提言を行う。

AI技術の発展は著しく、超大規模深層学習で作られた基盤モデルに基づく生成AIは、極めて自然な対話応答性能や高い汎用性・マルチモーダル性を示すようになった。人間の知的作業全般に急速な変革をもたらし、産業、研究開発、教育、創作などさまざまな分野に幅広く波及し、大きな社会インパクトが見込まれている。一方、フェイクやなりすましなどへの悪用、ハルシネーション、社会的バイアスの増長、著作権侵害をはじめ、種々の社会的問題が指摘されている。また、海外のビッグテック企業提供サービスへの過度な依存は、経済安全保障面や科学研究・産業の国際競争力の面でリスクとなる。このような期待や懸念の中、基盤モデル・生成AIの後追い開発や応用開発への取り組みが活発化し、政策面ではその後押しや喫緊の問題への対策・ルール整備などが進められている状況である。

この状況を踏まえ、本プロポーザルでは、さらにその先の次世代AIモデルを創出する基礎研究にフォーカスし、中長期を見据えた戦略強化を狙う。そのために取り組むべき重要な研究開発課題として、以下の4点を示した。

  1. ① 次世代AIモデルの基本原理・基本アーキテクチャーの研究
  2. ② AIモデルの発展で生じる人間・社会との不整合リスクへの対処技術の研究
  3. ③ AIモデルの発展に連動した科学研究や問題解決のプロセス革新の研究
  4. ④ AIと人間・社会の関係とその在り方に関する研究

①が次世代AIモデル設計の中核になるが、②のAIリスクへの対処技術にも同時に取り組むことが不可欠である。①と②はいわば車の両輪のような関係となる基礎研究だが、そこから社会的な価値を生み出すための基礎研究が③のプロセス革新研究である。また、①②③は主に情報科学技術の研究であるのに対して、④は人・AI共生社会の在り方に関する人文・社会科学の研究である。④によって①②③の技術要件・指針が定まる一方、①②③の技術発展の結果として④の考え方や目標が変わり得る。これら四つは、相互に影響し合い、連動しながら進展するものである。

また、AI分野では基礎研究においても、ビッグサイエンス化、ハイスピード化・ハイインパクト化、非オープン化の傾向が強まっている。このような研究開発形態が変化している状況における研究開発体制・基盤やプログラムの在り方を考え、それを支える研究エコシステムをつくることが必要である。そのために検討すべき8つの要件も示した。

※本文記載のURLは2024年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。