科学技術未来戦略ワークショップ報告書
  • 環境・エネルギー

バイオマス・ネガティブエミッション技術の実用化加速基盤研究(第1回)および(第2回)

エグゼクティブサマリー

本報告書「バイオマス・ネガティブエミッション技術の実用化加速基盤研究(第1回)および(第2回)」は、大気中のCO₂除去技術であるネガティブエミッション技術のうち、バイオマスを活用するものについて、その基礎的研究や実用化加速のための基盤研究などの対応に関する方向性を明らかにすることを目的に、令和4年11月に開催した2回のワークショップでの議論を取りまとめたものである。

2050年カーボンニュートラル達成のためにはネガティブエミッション技術による大気中のCO₂除去が必須とされており、国内外においてさまざまな方法が検討されている。その中でバイオマスを活用した方法としては陸域での土壌炭素貯留、植林、バイオ炭、海域でのブルーカーボンなどがある。バイオマスによる炭素循環でのストック・フロー量の関係から大きなポテンシャルを持つ可能性があるが、現状ではCO₂吸収・固定を目的とした研究開発や社会実装はまだ不十分といえる状況にある。ここでは、バイオマスにおける温室効果ガスの排出・吸収・固定プロセスに関する現象解明とそのために必要な観測・計測技術、モデル評価技術、制御技術等を議論する。また、それに加えて、バイオマス固有の経済的な課題や社会的、倫理的、法的課題(ELSI)についても議論を行い、大規模な社会実装に向けた具体的な道筋について検討する。

なお、陸域と海域とで基礎となる研究開発や対象も異なるため、本ワークショップは、陸域と海域の2回に分けて実施している。第1回は、陸域として農地、森林での技術について取り扱い、土壌炭素貯留、森林資源管理などを対象としている。また、第2回では海域として沿岸部での技術、将来的には沖合の海藻養殖などについて取り扱い、海藻・海草などのブルーカーボンなどを対象としている。議論の主な概要は以下の通りである。

  • 基礎となる科学技術的課題として、陸域・海域ともに炭素循環・固定の時間スケールが百年以上の長期におよぶため、モデルと観測については長期的な取り組みが必要
  • 陸域においては比較的進んでいる地上部と比較して地下部、土壌の分解などの評価が困難であり、その対応が重要
  • 海域においては陸域と比較して、情報が不足しており、今後の観測技術や海藻類の分解過程の研究開発などが重要
  • その他として、社会実装に必要な技術、それを経済的に推進するための炭素価値評価、推進のための仕組みが重要

本報告書では各発表および総合討議を通じて、提案の方向性や推進方法などをまとめている。今回のワークショップで得られた結果を踏まえて、関連した研究開発領域・その研究体制など、国として推進すべき研究開発課題を整理し、戦略提言に繋げる予定である。

※本文記載のURLは2023年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。