調査報告書
  • 科学技術イノベーション政策
  • 海外動向
  • 横断・融合

人文・社会科学の知に着目した国際比較 -社会課題解決型の研究・イノベーションに向けた基礎的調査-

エグゼクティブサマリー

日本では第6期科学技術・イノベーション基本計画の下、「総合知」の概念が提唱され、科学技術・イノベーションに人文・社会科学の知の統合が求められている。

世界ではSDGsの達成のために社会変革 (Social Transformation) が必要とされ、ESG投資はいまや前提となり、その中でも社会インパクト投資が進んでいる。イノベーション研究の文脈では、従来の産学官連携型を超えた社会・市民参画型のトランスフォーマティブイノベーションの考え方が提唱されている。

一方、アカデミアの世界では、現在の研究評価システムは論文の引用数などの偏った利用となっており、質・実績・インパクトを評価するのに不十分といった問題意識から、多様で包摂的な研究文化のもとで、複数の異なる特性を有する質の高い研究を促し、把握し、報奨するような評価のアプローチを指す「責任ある研究評価 (Responsible Research Assessment) 」または「責任ある研究測定 (Responsible Research Metrics) 」の考え方が出てきている。論点の一つとして、社会的インパクトの評価についても各国で検討がなされている。

これらは独立して異なる文脈から出てきた事象であるが、交差している部分もあり、将来の社会課題解決への総合知を発揮した大学の貢献、参画のあり方を考える上で重要な視点ではないかと考える。

本報告書は、こうした国内外の背景を踏まえ、社会課題と科学技術のみならず、ガバナンスや経済とファイナンス、個別または協働の行動といった人文・社会科学コミュニティのコミットが必要であるという問題意識の下、人文・社会科学にも深く関連する科学技術・イノベーション政策、研究評価、人材などの視点から海外動向調査 (一部、日本との比較) を行ったものである。

本報告書でまとめた内容については、関係ステークホルダーに発信していくこととしており、また、日本の課題として浮かび上がった事項については、今後、CRDSにおいて深掘検討を進めていく予定である。

この報告書が、第6期科学技術・イノベーション基本計画などの実行に資するとともに、科学技術と社会とのコミュニケーションと信頼の醸成のための基盤となり、科学技術の多様な国際協力の展開に貢献をすることを期待したい。

※本文記載のURLは2023年3月時点のものです(特記ある場合を除く)。