海外調査報告書
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科学技術・イノベーション動向報告 ドイツ編

エグゼクティブサマリー

4期16年の長期にわたるメルケル政権が終わり、2021年9月の総選挙で中道左派の社会民主党(SPD)が第一党となった。緑の党(Bündnis 90/Die Grünen)と自由民主党(FDP)の3党で構成される新政権が誕生、科学技術・イノベーションの分野については、前政権から継続して総研究開発費対GDP比3.5%の達成を目標に、各省で実施されているミッション志向型の研究開発をEUとの協力に基づいて推進、国際競争力の強化を目指すとしている。科学技術・イノベーション政策を所管する連邦教育研究省(BMBF)大臣にはFDPからシュタルク・ヴァッチンガー氏が任命され、これまで以上にイノベーション創出に軸足をおいた政策の方針が出されている。周知のとおりドイツは日本と並ぶものづくり大国で、科学技術・イノベーション活動の多くが産業技術の発展と共にある。近年は欧州連合(EU)の主要国として、英国離脱(ブレクジット)後のリーダーシップをフランスと共に担う役割が期待されている。さらに国連の目標である2050年カーボンニュートラル実現に向けた実施戦略である「欧州グリーン・ディール」政策にも深く関与している。経済構造の似た日本にとってドイツの研究開発システムは大いに参考となるものであるという見方がある反面、ドイツの置かれた環境の違いや内包する独自の様々な課題もあり、我が国の科学技術・イノベーション政策の検討においては、ドイツに特有な研究開発システムの現状を理解することが重要であるということも考えられる。

このため、単にドイツの科学技術・イノベーション活動の特徴だけではなく、その課題も含め出来るだけ多様な側面についての情報を取り込むことを試みた。

※本文記載のURLは2023年2月時点のものです(特記ある場合を除く)。