海外調査報告書
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科学技術・イノベーション動向報告~ドイツ~

エグゼクティブサマリー

 21世紀初頭の不況を脱し、現在ユーロ圏で独り奮闘状態のドイツ。ギリシャへの財政支援でも中心的な役割を果たしている。2013年、アメリカ合衆国オバマ大統領は第二期政権最初の一般教書演説1で、研究と教育のために尽力する決意を語った。質の高い教育がより良い職を得ることにつながるとした上で、とりわけドイツの職業教育制度が手本になると言い、再生可能エネルギーを通した雇用の創出について特定のドイツ企業の名を挙げて敬意を表した。昨今のドイツ経済の好調は、シュレーダー前連邦首相(社会民主党)が断行した失業給付金の引き下げや、公的年金支給額の実質的な引き下げなどの社会制度改革をはじめとした構造改革に起因するという見方がある一方で、単一通貨ユーロの導入で欧州に3億人規模の大きな市場を得たことが大きいとする分析もある。本稿では、ドイツの経済状況を論じることが主旨ではないため他に委ねるとして、シュレーダーの後に政権についた現連邦首相メルケル(キリスト教民主同盟)が2006年に発表した科学技術イノベーション基本政策「ハイテク戦略」を中心に論じる。
 同戦略のほかにも、大学や公的研究機関の位置づけ、科学システムなどについて調査を実施し、ドイツ経済復活の原動力となったイノベーション政策の分析を試みる。各種データや図表は2014年末の時点で公表されているものに更新した。