海外調査報告書
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EUの研究・イノベーション枠組みプログラム Horizon Europe

エグゼクティブサマリー

本報告書は、欧州連合(EU)にて2021年から新たに始まった研究・イノベーション枠組みプログラム(Framework Program:FP)「Horizon Europe」とそれを補完するEUの科学技術・イノベーション関連プログラムについて最新動向をまとめたものである。
報告書の章立てと要点は以下に示す通りである。

第1 章:FPの歴史について紹介
第2 章:本報告書の中核となる章で、Horizon Europeの詳細について様々な観点から説明
第3 章:Horizon Europeを補完する他の科学技術・イノベーション関連プログラムの紹介
第4 章:まとめ(Horizon Europeの特徴とそこから見えるわが国への示唆となり得る事項)

FPとは、EU加盟国を対象とした複数年にわたる研究助成プログラムである。共同研究開発プロジェクトを通じて、EU における科学技術分野の能力および産業競争力の向上を目指して実施されている。また、近年では欧州研究圏(ERA)の構築・強化、グローバリゼーションへの対応、気候変動などの社会的課題の解決なども目的とされている。
最初のFPであるFP1は1984年に38億ユーロの予算で始まり、その後年々予算と取り組み内容を拡大し、第9期のFPに相当するHorizon Europeでは、2021〜2027年の7年間で955億ユーロの予算が措置されている。
Horizon Europeは三本の柱と「参加拡大とERA強化」から構成される。第一の柱で最先端研究、第二の柱で社会的課題解決と欧州の産業競争力強化に資する取り組み、第三の柱で市場創出に向けた取り組みへ資金を提供する。「参加拡大とERA 強化」では、東欧諸国など、科学技術力で西欧・北欧と比べ遅れを取っているEU 加盟国からの参加を拡大し、ERAを強化しようとする取り組みを進める。

EUでは、グリーン化やデジタル移行といった全体の基本政策がHorizon Europeを含む各プログラムに明確に反映されている。例えば、2050年までの気候中立を目指す「欧州グリーン・ディール」の一環として、Horizon Europeの全体予算の35%以上は気候変動対策に充てることが義務づけられている。
また、目的の異なる様々な政策・プログラムを組み合わせ、大きな政策目標を達成しようとすることもEUの特徴といえる。デジタル分野を例にとると、Horizon Europeの全体予算の35%程度はデジタル関連の研究・イノベーション活動に充てられる見込みである。さらに、「デジタル・ヨーロッパ」というプログラムでは、高性能コンピューターや人工知能、デジタルスキルへ資金を提供し、「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ」というプログラムでは、5Gなどデジタルインフラへの投資を行う。このように、EUでは、あらゆる政策・プログラムを補完的に運用し相乗効果(シナジー)を生み出すことで政策目標の実現を目指している。

Horizon Europeの制度設計に見られるEUの特徴(強み)として、以下の5点を挙げることができる。これらのすべてを我が国の政策にそのまま当てはめることは現実的ではないが、学ぶこともできる部分も多いと思われる。

(1) 数年をかけての綿密な全体制度設計
(2) 個別プログラム単位での設計・評価・改善
(3) 全体・個別プログラムにおける予算の柔軟な運用
(4) 政策の一貫性
(5) 他の政策・プログラムとのシナジー、総局(日本の省庁に相当)間の連携

本報告書によってHorizon EuropeやEUの科学技術・イノベーション関連プログラムへの理解を深めることで、日本の科学技術・イノベーション政策を検討する上で有益な視座を提供できれば幸甚である。

※本文記載のURLは2021年11月時点のものです(特記ある場合を除く)。