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人工知能と科学 〜AI・データ駆動科学による発見と理解〜
深層学習を始めとする人工知能(AI)技術やビッグデータ処理、IoT(Internet of Things)デバイス、センサー、ロボティクスの高度化と普及により21世紀の科学技術のあり方は大きな変容を遂げようとしている。IT化・デジタル化を駆使した研究開発プロセスの変革(リサーチトランスフォーメーション)は研究開発の効率化だけでなく、様々な分野での新発見の促進や新しい科学の方法論をも生み出しつつある。
本プロポーザルでは、AIの応用分野としても有望視される「科学研究の自動化」を目指し、「仮説」の取り扱いに焦点を当てた以下3つの研究開発課題を提案する。
(1)大規模・網羅的な仮説生成・探索
(2)仮説評価・検証のハイスループット化
(3)人間中心の科学研究サイクル統合
研究開発を通じて実現される自動化AIシステムは、仮説の生成と検証のクローズドサイクルを実行する人間参加型のシステムであり、最先端研究の強力な支援ツールになると期待される。例えば生命科学・医学分野では新型感染症のワクチンの高速開発や安全・有効な薬の高速発見、材料科学分野では所望の機能を持つ材料の自動設計・最適化、入力された組成・構造の化合物の合成方法の自動決定などが可能となる。また、様々な分野において、科学者自身が立てた仮説の検証や、盲点となっている仮説の探索といった使い方もされるだろう。多くの産業での国際競争力にも直結し、多様なAIシステムとして実現・運用されることに加えて、その利用法の体系化と普及により我が国の研究開発力の底上げも期待される。
国は基盤技術の研究開発と整備に加えて、AI・ビッグデータ技術やロボティクスを自在に使いこなす人材・組織の育成、データ共有の仕組みづくり、コミュニティの醸成などにも取り組む必要がある。本プロポーザルでは以下3つの側面から推進方法を提案する。
(1)共同利用施設の強化
(2)グランドチャレンジ
(3)分野を越えた教育・普及
分野により自動化すべきタスクや装置は異なるため、AIシステムの研究開発と運用は当面分野毎・タスク毎に行われるだろう。分野毎の拠点形成と合わせハブとしての機能も有する「AI駆動科学」共同利用施設の設置・運用が求められる。またAIシステムの実現方法は様々なアプローチが可能なためグランドチャレンジを掲げ、達成に向けたアイディアを幅広く募るような研究開発プログラムの実施が望ましい。
加えて、機械学習をベースとするAIシステムでは、データの量と質が鍵となるため、負例・失敗例の共有を促進する制度も重要である。数学・論理学などの推論ツールや検証のプロトコルなどについての教育・普及の重要度も増している。ハンズオンの訓練に加え、教育の体系化にも留意した研究開発推進が望まれる。
※本文記載のURLは2021年6月時点のものです(特記ある場合を除く)。